―大洋州地域―

 

第2節 大洋州地域

 

1. 概    観

 

 近年,わが国と豪州・ニュー・ジーランドとの関係は,経済関係の急速な発展とアジア・太平洋における重要なパートナーとして同地域の政治的安定と経済的繁栄に対して有する共通の利害関係を背景に,ますます緊密化しつつあるが,この過程は今後さらに進むものと期待される。過去1年のわが国とこれら両国との関係を回顧するに,(イ)両国政府要人の接触が活発に行なわれ,両国間の対語と相互理解が促進されたこと,(ロ)貿易を中心とする経済関係の大きな発展が記録されたことが注目される。

 

2. 豪州との関係

 

 (1)豪州からはゴートン首相,マッキュアン副首相(兼貿易産業相),マクマーン外相,スウオーツ国土開発相など多数の連邦および州政府の要人が訪日した(肩書はいずれも来日当時)。

 わが国からは,愛知外相がウエリントンでの第5回ASPAC閣僚会議に出席(ニュー・ジーランドの項参照)の途次豪州を公式訪問したが,これらの訪問の機会を利して,両国政府要人の間で活発な協議が行なわれた。また,70年10月には,東京において両国の外務次官レベルの定例の事務レベル協議が開催され,両国が共通の関心を有するアジアの諸問題などにつき卒直な意見の交換が行なわれた。なお,1971年1月三笠宮殿下ご夫妻がキャンベラで開催されたオリエンタリスト会議にご出席かたがた同国を公式訪問された。

(2)経 済 関 係

(あ) 日豪経済関係は,大きな進展を示した。特に貿易の大幅な伸びが印象的である。1970年(暦年)の対象貿易額は20億9千万米ドル(前年17億1千万ドル)で対前年比22%の増加である。うち輸出は自動車,鉄鋼,綿織物などを中心に5億9千万ドル(前年4億7千万ドル)で対前年比24%の増加,輸入は鉄鉱石,羊毛,石炭,など計15億6百万ドル(前年12億4千万ドル)で対前年比21%の増加である。 貿易以外の資本進出の分野でも大きな進展がみられつつあり,また,わが国の経済発展のために不可欠な天然資源の安定した供給源としての豪州の重要性は増大しつつあり,今やわが国にとつて豪州は米国に次ぐ第2位の輸入相手国であり,豪州にとつてわが国は最大の輸出市場である。両国の経済関係は今や「もはや後戻りができない」といわれるまでの相互依存関係にあるが,この経済関係の緊密化は両国にとつて相互に大きな利益をもたらしており,今後ともいつそう促進されていくことが望ましい。

 しかしながら,両国の経済関係には全く問題がないわけではなく,たとえば,わが国の立場からいえば,(イ)現在わが国に不利な貿易バランスをいかに拡大均衡の方向で解決するかの問題,(ロ)豪州政府独特の関税政策の運用振り,輸出ガイドラインをはじめとする資源政策の今後の帰すう,経済界の間で要望がたかまりつつある通商航海条約の締結問題,(ニ)わが国商社員,技術者の豪州入国滞在問題,(ホ)豪州農産品の対日アクセス増大要請にどう対処するかなどをあげることができる。

 両国の経済関係が今後より緊密化し高度かつ多岐にわたるにしたがい両国の視点の相違,利害関係の対立からもろもろの問題がさらに発生しうることは予想されうることである。その際,個々の問題についてはその特性に即した合理的な解決が図られるべきことはもちろんであるが,同時に両国が,アジア・太平洋地域の安定と繁栄に対して有する重要な役割と責任にかんがみ,日豪両国間の長期的な友好関係促進という大きな視野から問題を見ることがますます必要となつてくるであろう。

(い) なお,1970年末,東京において漁業協定に基づくパプア・ニュー・ギニアに関する協議が行なわれた結果,同地域沖合における本邦まぐろはえ繩漁船の操業期間の4年間延長(1975年11月末まで),これら漁船のラバウルおよびマダン入港,同地域マダン地区における漁業事業振興に関連するわが国の技術協力などにつき合意をみた。また政府は日豪両国の経済的相互協力関係の増進をはかり,かつ,豪州の資源開発及び資源の輸出に関する実情を把握し,その成果を今後のわが国の資源政策に反映させるため,1971年3月から4月にかけて経済調査団(団長,田実三菱銀行会長)を派遣した。

 

3. ニュー・ジーランドとの関係

 

 (1) ニュー・ジーランド政府の対日関係重視姿勢を反映して,ホリオーク首相兼外相,マーシャル副首相,ロイ・ジャック議会議長,ムルドーン蔵相,シース内相,ゴードン運輸相,アダムズ・シュナイダー関税相など多くの同国政府要人が来日した。

 他方,我国からは,愛知外務大臣が1970年6月ウェリントンで開催された第5回ASPAC閣僚会議に出席かたがた同国を訪問した。 1971年1月には,三笠宮殿下ご夫妻がニュー・ジーランド政府の賓客として公式に同国を訪問された。1970年11月には東京において両国の外務次官レベルで定例の事務レベル協議が開催され,アジア情勢,地域協力問題などにつき卒直な意見の交換が行なわれた。

 (2) 経 済 関 係

 近年,わが国とニュー・ジーランドとの経済関係は順調な拡大を示している。1970年のわが国の対ニュー・ジーランド貿易は2億7千万米ドル(前年2億2千万ドル),対前年比21%の増加を示した。うち輸出は1億1千万ドル(前年8千万ドル)で対前年比42.9%増加,輸入は1億6千万ドル(前年1億4千万ドル),対前年比9.5%増である。すでにわが国は,ニュー・ジーランドにとつて第3位の輸出市場であり,また第4位の輸入相手国であるが,両国のこのような経済関係は,今後さらに拡大し続けるものとみられる。ニュー・ジーランドにおいては,英国のEEC加盟が同国の経済に与えるべき影響,特に英国市場に大きく依存している同国の乳製品,ラム等の農産品の取扱いの問題に対し,同国の死活問題として重大な関心が払われ,随時の機会に英国政府および関係EEC諸国に対し,その利益保護のため活発な働きかけが行なわれた。かかる事情もあり,ニュー・ジーランド政府は対日貿易をいつそう拡大することに意欲的であり,同国要人来日などの機会をとらえてわが方と熱心な協議が行なわれた。

 ニュー・ジーランドとの貿易については,わが国にとつては同国のライセンス制度の問題,英連邦関税と最恵国税率との格差の問題,ニュー・ジーランド農産品,特に酪農品の対日アクセス増大問題などがある。なお,現行漁業協定に基づくわが国漁船の操業期間は1970年末をもつて終了したが,同協定は日・ニュー・ジーランド政府間の友好的な協力もあつて,おおむね順調に実施運営されたものといえよう。

 

4. 南太平洋地域との関係

 

 わが国は,1970年6月4日独立の日をもつてトンガ王国を承認した。また,わが国は1970年10月10日の独立の日をもつてフィージーを承認し同国の独立式典に中島茂喜衆議院議員を特派大使として派遣した。

 

大洋州地域要人来往訪者一覧

 

(1)        来 訪 者

 

(2)      往 訪 者

 

 

 

 

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