―南北問題―
第5節 南 北 問 題
南北問題は,先進国と開発途上国とが緊密なパートナーシップのもとに解決すべき現代の大きな課題である。世界が一つになつて繁栄に向うことが,究極的には真の平和と安定をもたらすゆえんであり,また経済面での協調なくして調和ある世界経済の発展はあり得ず,いかなる国といえども国際社会から孤立した状態で長期的繁栄は期待できない。
特に,近年ますます経済力を充実しつつあるわが国が,他の先進諸国と歩調を合わせ,国力にみあつた寄与を行なうことは当然の責務であり,かつ,また長期的にみて,わが国自体の繁栄にもつながるものである。わが国は,年々経済協力の拡大に努め,1969年実績では,12億6千万ドルと世界第4位の援助寄与国の地位を占めるに至つた。わが国はつとに対外経済協力について,国民総生産の1%目標達成,アンタイイングについて態度を明らかにしたが,更に借款条件の緩和,無償援助の増大,技術協力の拡充など,経済援助の質的並びに量的拡大を図り,もつて開発途上国の国造りの意欲を援助して行く方針である。また,先進諸国の協力による多角的援助に積極的に参加するとともに,対象地域として,近隣アジア地域はもとより,中南米,中近東,アフリカ等にもいつそうの援助を行なつてゆく必要がある。
南北問題解決のためには経済協力と並んで貿易の面を通じての協力も重要である。わが国はこのような観点から残存輸入制限の撤廃,KR譲許の繰り上げ実施を含む関税の引下げ等貿易障壁の軽減に努めてきたが,更に1970年10月のUNCTADにおける合意にしたがい,1971年早期に開発途上国に対する特恵関税供与を実施することとし,すべて所要の立法措置を下し,目下鋭意その準備作業を進めている。