-日本国政府が関与した重要共同コミュニケおよび政府声明-
3.日本国政府が関与した重要共同コミュニケおよび政府声明
(昭和44年4月18日)
1.日加閣僚委員会の第5回会合は,昭和44年4月17日と18日の両日東京の外務省において開催された。日本側代表は愛知外務大臣,福田大蔵大臣,長谷川農林大臣,大平通産大臣,菅野経済企画庁長官および板垣駐カナダ大使であつた。カナダ側代表はシャープ外務大臣,ベンソン大蔵大臣,ペパン通産大臣,デイヴィス漁業林業大屈,オルソン農業大臣およびモラン駐日カナダ大使であつた。
2.両国閣僚は,中国およびヴィエトナムを含むアジア情勢に重点を置きつつ,国際情勢一般について検討した。両国閣僚は,ヴィエトナム紛争が継続していることについて憂慮を表明し,パリで行なわれている会談が速やかにこの間題を平和的解決に導くことを強く希望した。また,両国閣僚は,ヴィエトナムに平和が回復した後に,この地域の平和を確保し繁栄を達成するためには,できるだけ広範囲の国際協力が必要であることを認識し,この目的のために,日加両国が果し得る役割について相互に密接な協議を続けることに合意した。両国閣僚は,アジアの平和と繁栄が全世界の平和と繁栄に重大な影響を有することを認識し,アジアの発展途上諸国による福祉向上のための個別および相互協力による努力が先進諸国からの経済,技術協力により補完される必要があることに合意した。この点に関し,日加両国はアジア開発銀行などの機関を通じて,既に両国間で行なわれている緊密な協議と協力をいつそう強化するための努力を惜しむものではない。
3.両国閣僚は,核兵器不拡散条約の締結を核軍縮へ向かつての重要な一歩として歓迎しつつ,軍備競争が続けられていることに対し懸念を表明し,主要国と18カ国軍縮委員会が二国間および多数国間の交渉を通じこの趨勢を逆転せしめるための努力を新たにすることを強く希望した。
4.委員会は,日本およびカナダにおける経済情勢を検討し,物価安定を達成するための措置が両国において依然必要とされてはいるとはいえ,日本およびカナダの経済が引き続き着実に拡大していることを満足の意をもつて認めた。
5.委員会は,また,国際金融情勢を検討した。委員会は,特別引出権制度の早期活動が,現在必要とされている国際通貨制度の強化に実質的に貢献するであろうことに合意した。
6.委員会は,東西貿易を含め国際貿易における主要な動きにつき検討を行なつた。委員会は,ケネディ・ラウンド交渉に基づく関税引下げが予定どおり実施されていることに留意するにあたり,同交渉のすべての結果が完全に実施されることが重要であること,並びに工業品および農産品の両分野におけるすべての貿易障害のいつそうの国際的自由化に導くための原動力を維持する必要があることを強調した。委員会は,輸入国および輸出国双方にとつて利益である国際穀物協定に対し両国が付与している重要性を再確認した。委員会は,自由貿易への努力を挫折するような保護主義的な動きに懸念を表明した。また,委員会は,輸出信用および輸出金融が国際貿易において果している役割について検討を行なつた。
7.両国閣僚は,両国それぞれの開発援助計画について予想されている拡大を討議した。委員会は,アジアの開発と繁栄が重要であることに留意した。発展途上国の経済的進歩の重要性を強調するにあたり,両国閣僚は,貿易の分野において,一般的特恵関税制度の早期実施が望ましいことを認めた。両国閣僚は,両国政府がそのような制度に向かつて協力を続けるべきであり,その際調整に伴う負担は先進諸国の間で公平に分担されるべきであることに合意した。
8.委員会は,前回の会合以来日加間の貿易が引き続き増大していることを認め,経済関係がより緊密化するに伴い,両国間の貿易が引き続き拡大するであろうという期待を記録にとどめた。カナダ側閣僚は,現在一次食糧品および工業用原料に著しく集中しているカナダの輸出産品を多様化することについて強い関心を示した。カナダ側閣僚は,輸入制限の段階的撤廃を図るという日本政府の発表を歓迎する一方,現在制限されている特定の品目の自由化に関するカナダ側の関心について,入念かつ早急な考慮を払うよう日本側閣僚に要請した。委員会は,カナダヘ輸出されている若干の日本産品について行なわれている自主規制を検討した。日本側閣僚は,これらの規制は最少限度にとどめられるべきであり,可能なかぎりすみやかに撤廃されることが望ましいとの見解を表明した。引き続いて,委員会は,新らしいカナダの反ダンピング法および関連する法令を審議した。
9.委員会は,貿易の流れが投資によつて拡大されうるものであることを認め,投資が日本とカナダとの間の貿易において果してきた有用な役割に留意した。カナダ側閣僚は,日本における早急かつより大幅な資本自由化の重要性を強調した。
10.両国閣僚は,農業の分野において共通に関心を有する事項,特に,農産物貿易を拡大することおよびこの分野において日加両国間の技術協力と連絡を増大することの可能性について意見を交換した。
両国閣僚は,資源保存措置に関する協力を含め太平洋における漁業に関連する諸問題について討議を行なうとともに資源の利用における科学技術上の協力など両国が関心を有する他の漁業問題についてさらに検討を行なうことに合意した。
11.委員会は,今回のトロント交響楽団の訪日等多くの分野における両国間の協力と交流が増大していることを歓迎した。両国閣僚は,文化交流をいつそう推進することにつき関心を表明した。さらにカナダ側閣僚は科学技術上の連繋を緊密化することが望ましく,それが日加両国間の関係を強化拡充することにもなる旨指摘し,日本側閣僚はこの問題を詳細に検討する旨述べた。
12.カナダ側閣僚は,日本に滞在中,日本政府の招待により,大阪で開催される70年万国博覧会の敷地を訪問した。万国博覧会には,カナダが国として参加するのみでなく,ブリテイッシュ・コロンビア,オンタリオおよびケベックの各州も展示館を設けることとなつている。カナダ側閣僚は,70年万国博覧会の成功を祈ると述べ,日本側閣僚は,カナダによる大規模な参加と協力に対し感謝を表明した。
13.閣僚委員会の日程には,日本側およびカナダ側閣僚のカウンターパート同志の間での個別会談が含まれており,その機会に相互に関心のある問題について詳細な討議が行なわれた。
14.両国閣僚は,第五回閣僚委員会が相互に関心のある多くの問題について両国間で意見の交換を行なう上に有益であつたこと,およびそれによつて日加両国間のますます緊密化しつつある関係に貢献したことに意見の一致を見た。委員会は,次回会合をカナダにおいて開催するようにとのカナダ政府の招待を受諾した。
(2) キージンガー・ドイツ連邦共和国首相の日本訪問に関する日独共同コミュニケ
(昭44年5月21日)
クルト・ゲオルク・キージンガー・ドイツ連邦共和国首相は,日本国政府の招待により,夫人並びに政府高官を伴い,1969年5月17日から5月21日まで日本を公式訪問した。
日本滞在中キージンガー首相夫妻は,天皇,皇后両陛下に謁見した。またキージンガー首相は佐藤総理大臣と会談し,友好と相互理解の雰囲気のうちに世界政治情勢一般および日独双方に関係のある諸問題に関し詳細にわたり意見の交換を行なつた。これらの会談は日独両国が極めて良好な関係にあることの証左であつた。
両国首相は,両国の政策が自由の保持,国際協力の推進,特に,正義の原則に基づく平和の確保を主目的とする点で一致していることを確認し,この目的のために行なわれるあらゆる努力を歓迎するとともに,両国が相互の信頼と協力を通じてこの目的達成のために尽力するとの決意を表明した。また,両国首相は,厳重かつ効果的な国際管理下における全面完全軍縮の重要性を強調した。
両国首相は国連憲章に規定されている民族自決の権利に基づくドイツ再統一の問題が基本的重要性を有しており,その平和的解決が欧州の恒久的,かつ,正義に基づく平和の達成のため不可欠であることについて見解の一致を見た。また両国首相は,ベルリンの自由が堅持されるべきことにつき意見の一致を見た。
両国首相は,アジアにおける平和の保持と政治的経済的安定が世界平和の維持のために重要な意義を有していることを確認した。両国首相は,ヴィエトナムにおける平和回復のための努力を歓迎し,これが1日も早く達成されることを希望した。また両国首相は両国が今後とも可能なかぎりアジアにおける政治的および経済的安定に引き続き貢献する用意があることを確認した。両国首相は日独間の経済関係および文化交流の良好な発展に満足の意を表するとともに,貿易,発展途上国援助,科学,技術,航空,海運の分野において今後とも協力し,もつて国際経済関係の望ましい発展に寄与せんとの意図を表明した。
両国首相は欧州経済共同体が欧州の発展に重要な貢献をなしていることを確認し,日本と欧州経済共同体の関係強化のための努力がいつそう促進せらるべきことについて意見の一致を見た。
両国首相は日独間の友好関係がすべての分野においてますます緊密の度を加えつつあることに満足の意を表するとともに,今回のキージンガー首相の訪日が日独両国民の相互理解を増進し両国の友好関係を強化したことに同慶の意を表明した。
キージンガー首相一行は京都を訪問した他,同首相一行のため計画された多数の催しに参加した。
キージンガー首相は佐藤総理大臣をドイツ連邦共和国に招待し,佐藤総理大臣はこの招待を感謝をもつて受諾した。訪問の期日は追つて決定される。
(昭和44年6月11日静岡県川奈)
1.日本政府の招待により,第4回アジア・太平洋閣僚会議は,オーストラリア,中華民国,日本,大韓民国,マレイシア,ニュージーランド,フィリピン,タイおよびヴイエトナム共和国の参加の下に,1969年6月9日から11日まで,日本の川奈において開催された。ラオス王国のオベザーバーは,会議のすべての会合に出席した。駐日インドネシア大使は,会議主催国政府の賓客として,開会式と閉会式に出席し,すべての閣僚から暖かく歓迎された。
2.日本国総理大臣佐藤栄作閣下は,開会演説において,会議参加代表を暖かく歓迎した。
総理大臣は,東アジア,東南アジアおよび南太平洋の諸国が,調和と緊密な協力の中に生きる必要がますます増大していることを強調しつつ,この地域を1つのまとまつた地域としてより明確に意識することをよびかけ,この地域を「太平洋アジア」と名付けることを提唱した。総理はASPAC諸国を結びつける最も基本的な要因は,これらの諸国が,他国を侵すことなく,他国からの干渉や圧迫を被ることなく,社会的,経済的発展の途をたどりたいという切実な願望であることを強調した。
3.閣僚は,3日間にわたり,世界および地域内の広範囲な諸問題を討議した。その率直かつ友好的な意見交換において,閣僚は,地域内の最近の情勢,この地域との関係における大国の政策およびこの地域に影響を与える周辺の諸情勢等の事項を検討した。
4.閣僚は,ひきつづき不確定な状況にある中国大陸の最近の情勢を検討した。閣僚は,これらの情勢が,他のアジア太平洋諸国に及ぽす影響にかんがみ,今後の情勢を注意深く観察する必要があることに同意した。
5.閣僚は,過去10年の地域内外の主要な情勢を検討するとともに将来を展望し,地域内のすべての国にとつて,域内およびその周辺の国際緊張を緩和するためあらゆる可能な努力を払いつつ,同時に,その政治的,経済的および社会的基盤を強化する努力を継続することがその利益であることに意見の一致をみた。したがつて,閣僚は,参加諸国が,建設と開発を促進する最善の努力を払うことを確認した。閣僚は,アジア太平洋地域内の諸国が,自らの努力を通じて,この地域の進歩と安定を確保し得るにいたるまでは,なおひきつづき域外の主要国の支援が必要であることに留意した。
6.閣僚は,ASPAC諸国の経済がひきつづき発展し,生活水準が向上していることを歓迎した。閣僚は,このような成果が,他の何ものにも増してASPAC諸国がとつてきた基本的政策の健全であることを立証するものであるとの確信を表明し,決意を新たにしてその方向に沿つての努力を続けることに同意した。
7.閣僚は,ASPAC諸国がその経済発展をさまたげる若干の不利な要因をかかえているにもかかわらず,農業,工業および貿易拡大の継続的発展を達成してきたことに深い満足の意を表明した。閣僚は,いそうの成長を促進するための方策として,域内の貿易を振興することが望ましいことに特に留意した。
8.閣僚は,過去1年間にヴィエトナム問題の平和的解決のより明るい見通しを開いた重要な発展を歓迎し,ヴィエトナム共和国が,経済,農村開発,政治その他の分野でひきつづき達成している進歩を満足の意をもつて留意した。閣僚は,ヴィトナム共和国政府および国民のその独立と自由を維持せんとの強い立場への深い同情を再確認した。閣僚は,また,同国政府の平和と安定を回復するための努力に敬意を表した。閣僚は,パリ会談が,できるだけ早く,公正にして永続的な平和への道を開くようにとの心からの希望を表明した。閣僚は,ヴィエトナムおよび戦争によつて影響を受けたその他の国の復興を助けるため,また,この地域での平和が公正かつ永続的であることを保証するために,できるだけ広汎な基礎に立つた国際的協力の枠組をつくることの必要を認識した。
9.閣僚は,朝鮮半島の情勢を検討し,大韓民国に対する武装侵透の増大を含む挑発的攻撃行為によつて作り出された緊張に対し懸念を表明した。閣僚は,これに関連して,大韓民国の政府および国民が,国家の安全を防衛し国民経済の急速な発展を維持するため,自国の立場を強化する努力を成功裡に進めていることを称揚した。
10.閣僚は,常任委員会報告書に留意し,同報告書に記録されたこの機構の活動の進展についての満足の意を表明するとともに,この進展を可能ならしめるために払われたすべての努力につき,東京における常任委員会の議長および委員に感謝の意を表明した。
11.閣僚は,ASPACが,政治的,社会的および経済的分野における緊密な協議と協力のための重要な場として今や確固たる地歩を占めるにいたつたことを歓迎するとともに,この機構が,所期の基本目的をいつそう効果的に達成するであろうとの確信を強めた。閣僚は,過去1年間のASPACのあらゆる活動を通じて実際的,現実的アプローチが維持されてきたことに賛同の意を表した。閣僚は,この機構の外向的性格につき常任委員会が払つてきた配慮を支持するとともに,この性格がすべてのASPACの事業に未参加諸国も閣僚会議の承認を条件に参加し得るとの申し合せに反映されていることに留意した。
12.閣僚は,国際機関および主要国際会議でのASRAC諸国問の非公式協議の慣行が,単にその会議が目的とする特定の間題に関する討議の機会を提供するだけでなく,共通の目的と間題に対する参加国間の意識を高めるものであり,極めて有益なものとなつたことに同意した。閣僚は,したがつて,この慣行が継続されるとともに,可能かつ適切な場合には更に拡大されるべきことに同意した。
13.閣僚は,常任委員会から提出された食糧肥料技術センター設立のための協定案を正式に承認し,この協定が会議の終了の際に署名のために開放されることに同意した。中華民国政府は,台北に設立されるセンターの設置国として,設立費および管理費を支弁することを約し,一方,このセンターの事業費は,参加国政府によつて分担される。センターは,特に化学肥料の使用とこれに関連する近代的農法の採用に関する技術的情報および経験の交換と普及の促進を目的とするものである
14.閣僚は,バンコクに設立が予定されるASPAC経済協力センターに関する計画大綱を検討し,これを承認した。閣僚は,このセンターができるだけ早く設立され得るよう,常任委員会が計画大綱に基づきセンター設立協定の起草を行なうことに合意した。閣僚は,参加諸国政府が任意に提供する専門家に直接関係する経費およびセンターのサービスを要請する諸国が負担する若干の経費を除き,センターの設立および運営の経費を当初の3年間全額負担するとのタイ政府の申出に感謝の意をもつて留意した。このセンターは,研究,調査,情報の交換およびその他の適切な活動を通じ,参加諸国間のいつそう緊密かつ調和のとれた経済関係を促進し,ASPAC地域全体の効果的な経済成長と発展を容易にすることを意図するものである。
15.閣僚は,ASPAC海洋協力計画に関する日本政府の提案を感謝の意をもつて受理し,詳細な検討と第5回閣僚会議への報告のため,常任委員会にこれを付託した。この提案は,海上におけるいつそうの安全を確保するための域内協力の枠組を作り出すことを目的とし,海難救助のための域内協力計画と海上交通施設の改善計画の2つの部分からなるものである。
16.閣僚は,アジアの青年を村落開発その他の類似の計画に関する奉仕活動に参画させる可能性を,常任委員会に研究させるとのフィリピンの提案に留意した。
17.閣僚は,ASPAC専門家登録機関およびASPAC文化社会センターの報告書を感謝の意をもつて留意した。閣僚は,この2つのASPAC事業が,それぞれの活動分野において,いまや重要な第一歩を印したことに満足の意を表明した。
18.閣僚は,ひきつづき年1回会合することに同意した。閣僚は,第5回閣僚会議を,1970年にニュージーランドで開催するとの同国政府の申出を感謝の意をもつて受諾した。その結果,また,確立された慣行に従い,常任委員会は,今後12ヵ月間,ウエリントンにおいてニュージーランドの外務大臣の司会のもとに会合し,また,ニュージーランド政府は,第5回閣僚会議までの間および同会議中において,取次ぎにあたるとともに実際上の事務局を提供する。
19.閣僚は,日本滞在中,日本の政府および国民から寄せられた暖かく,寛大な歓迎に心からの感謝の意を表明した。閣僚はまた,過去1年間の常任委員会の活動についての日本政府の便宜と手配に対し,深い感謝の意を表明した。
(昭和44年7月31日東京)
第7回日米貿易経済合同委員会は,昭和44年7月29日,30日,31日,東京において愛知撥一外務大臣議長の下に開催された。
委員会は,日米両国間の貿易および経済関係につき討議した。両国代表団は両国の経済力および両国経済のダイナミックな成長並びに,日米両国を密接に結びつけている広汎な貿易関係について多大の満足の意を表明した。両国代表団は討議の対象とされている現下の事項はこれらの目ざました成功の枠内の問題であるとの見解をとつた。
会議の冒頭において,日本代表団は,アポロ11号宇宙船による歴史的な月旅行の画期的な成功について米国代表団に祝意を表した。委員会は,この目ざましい功績は人類の無限の可能性を立証するものであると認めた。
委員会は,平和目的のための宇宙開発における協力についての外務大臣と国務長官との間の交換公文を歓迎した。委員会は,この取り決めが,この心をかき立てる重要な分野における日米協力の新たな前進であると認めた。
I
委員会は現在の世界情勢の推移を検討し,アジアにおいて依然として緊張が存在することに留意したが,米国および連合諸国がヴィエトナムにおける戦争を終結させる方途を見出すためにとりつつあるイニシアティヴを是調し歓迎した。
委員会は,アジアの経済発屋と安定とは世界全体の平和と繁栄にとつて重要な開連を有することを認め,同地域にとつての経済的および社会的発展,民主制度の発展ならびに多角的な経済協力の重要性を強調した。
米国代表団は,日本の国連軍縮委員会加入を歓迎し,軍縮の話し合いにおいて,日本が貴重な貢献をなし得るであろうとの見解を表明した。
会議の期間中外務大臣および国務長官は,沖繩の施政権の日本への返還の問題を討議した。
II
委員会は,日米両国の経済の現状および財政金融政策を検討した。米国代表団は強化された予算措置と金融引き締め政策により,米国経済の冷却効果が生ずるとの確信を表明した。日本代表団は均衡のとれたかつ継続的な経済成長政策を引き続き追求する意図を説明した。委員会は,両国の各々の経済政策は世界経済の成長と進歩とを達成するとの方向に導かれるべきであることに合意した。
III
1.委員会は,日米間の貿易経済関係の現状を検討し,1968年には70億ドルを超え,海洋をはさむ二国間貿易としては今までのところ最大である日米貿易の継続的な成長に留意した。米国代表団は,日本に有利な日米貿易関係の不均衡が米国において重大な問題をひきおこしており,これらの問題の解決のために具体的な措置がとられるべきであることを強調した。日本代表団は,貿易収支は多角的な観点から考察されるべきであり,また貿易関係の基礎となつている複雑な諸要素に対し十分な考慮が払われるべきであることを指摘したが,両国間の貿易問題に関する相互に受諾可能な解決の探求のため引き続き米国と協議する用意があることを表明した。
いずれにせよ,両代表団は貿易問題はそれがいかに困難であろうとも,相互理解と共通の利益の精神の下に克服し得ることに意見の一致をみた。
2.委員会は,より自由な貿易の原則を全世界に貫徹することは両国の利益に合致することに合意した。これに関連して,日本代表団は,米国内における保護主義的見解の増大につき強い懸念を表明した。米国代表団は,特に日本の貿易収支の大幅な黒字にかんがみ,日本の多数の貿易制限につき深い憂慮を表明し,制限撤廃を促進することにより日本が日米貿易関係における完全な相互主義に向かつて前進するよう強い希望を表明した。日本代表団は,日本政府は1971年末までに残存輸入数量制限のかなりの分野を自由化しようと言明した。委員会は,貿易自由化のいつそうの進展につき討議するため,1969年秋に会議を開催することに合意した。これに関連して日本代表団は重大な経済的社会的問題のために農産物の輸入自由化にともなう諸困難にもかかわらず日本政府は前記の会議において貿易自由化および他の農産物貿易問題を討議する用意があることを述べた。
3.米国代表団は,毛および化合繊製品の米国への急速な輸入増大によつて重大な問題が生じているとの見解を表明し,国際的な解決を見出すことの重要性を強調した。
日本代表団は国際的な解決の必要性について納得しないところであるが,将来の行動の過程についていかなるコミットメントを行なうことなく討議を継続する用意があることを述べた。
4.委員会は,非関税障壁について討議し,日米双方から提示されたリストに留意し,相手国から提示されたリストに関するコメントの交換を2ヵ月以内に行ない,ついで専門家レベルでの討議を行なうことにつき合意した。
5.米国代表団は日米両国の各々が資本自由化の結果もたらされる資本および技術のより自由な交流の利益を得られるように日本が資本自由化計画を促進することにより投資における完全な相互主義に向かつて前進するよう強い希望を表明した。
日本代表団は,日本政府は1970年中に第3次自由化を実施し,1972年の早い時期までに日本経済のかなりの分野が自由化されるよう,引き続き自由化計画の見直しを行なう旨述べた。
6.委員会は,漁業に関する多くの問題について有益な意見の交換を行なつた。
7.委員会は,航空,海運および旅行に関する最近の推移を検討し,引き続きこれらの事項につき協議することに合意した。委員会は,日米航空協定に関する最近の協議の結果に留意し,9月に東京で再開される協議において満足すべき合意が得られることについての希望を表明した。
IV
1.委員会は,相互援助の新たな手段の探求についてのアジア諸国のイニシアティヴを歓迎し,これらの諸国の社会的および経済的進歩を日米両国が支持することを表明した。
2.日本代表団は,種々の国内的間題にもかかわらず特にアジアに対する経済援助を実質的に拡大するとの日本政府の意図を表明した。
米国代表団はこの事態を歓迅し,米国も同地域の経済発展を促進すべき諸計画に引き続き参加することを述べた。
これに関連して,委員会は,ヴィエトナムにおける敵対行為の終息がヴィエトナムおよびその近隣諸国に対する経済援助への幅広い国際的参加をもたらすこととなることを希望した。
3.また,委員会はアジアの経済開発におけるアジア開発銀行の重要な役割に留意し,この役割をいつそう強化することの重要性につき合意した。委員会は,アジア開発銀行および他の国際的な援助計画における日米両国政府の経験によつて立証されたように援助に関する多角的アプローチの有効性を認めた。
V
1.委員会は,国際金融体制の運営を検討し,調整過程を改善することの重要性を強調し,また,この関連で調整過程と両立する方法で運営される国内経済政策の役割を認めた。委員会は特別引出権の早期発動およびIMFクオータの増額の見通しを歓迎した。
2.委員会は,発展途上国の持続的経済成長と,国際貿易の健全な基盤の設定には,開発援助と並行して発展途上国の貿易機会が引き続き拡大されることが肝要であることにつき合意した。委員会は,発展途上国に対する一般特恵スキームの策定のために現在OECDおよびUNCTADで行なわれている討議につき検討し,この問題について,引き続き両国間の緊密な協議を継続することが合意された。
VI
1.委員会は,第6回合同委員会において実施が合意された日米雇用共同研究が成功裡に終了したことに留意し,両国における人的能力の開発に資するため,職業に関する共同研究を行なうことを検討することについての合意に満足の意を表明した。委員会はまた,最近の技術革新に起因する労働政策上の諸問題に関する意見交換は有益であると認めた。
2.委員会は運輸技術および運輸体系,超高速陸上輸送体系に対する需要とその社会的および経済的価値,ならびに運輸が環境に及ぼす影響を改善するための方法につき研究するための日米運輸問題研究会の設立に合意した。
3.委員会は共通の環境上の諸問題を検討し,天然資源の開発利用に関する協力についての年次経過報告を了承し,特に本計画の海洋科学および森林管理の分野への拡大に留意した。
4.日本代表団は,1970年万国博覧会における米国の参加と協力に謝意を表明した。米国代表団は,この有意義な国際博覧会の成功を祈る旨表明した。
VII
委員会は,次回会議を外交チャネルを通じて決定される相互に好都合な時期にワシントンにおいて開催することに合意した。
VIII
日本側委員は,愛知外務大臣,福田大蔵大臣,長谷川農林大臣,大平通産大臣,原田運輸大臣,原労働大臣および菅野経済企画庁長官であり,下田駐米大使,森外務審議官および関係各省庁の随員が同席した。
米国側委員は,ロジャース国務次官,ハーディン農務長官,スタンズ商務長官,トレイン内務次官,ホジソン労働次官,ベッグズ運輸次官,マクラッケン大統領府経済諮問委員会委員長およびペティー財務次官補であつた。ギルバート大統領通商交渉特別代表が参加した。マイヤー駐日大使および各省随員が同席した。
(昭和44年8月28日東京)
1.第3回日韓定期閣僚会議は,1969年8月26日から28日までの3日間,東京において開催された。
2.会議には,日本側からは,愛知揆一外務大臣,福田赳夫大蔵大臣,長谷川四郎農林大臣,大平正芳通商産業大臣,原田憲運輸大臣および菅野和太郎経済企画庁長官が金山政英駐韓大使とともに出席し,吉国二郎国税庁長官および森本修水産庁長官も出席した。
3.韓国側からは,金鶴烈副総理兼経済企画院長官,崔圭夏外務部長官,黄鍾律財務部長官,趙始衡農林部長官,金正濂商工部長官および姜瑞竜交通部長官が厳敏永駐日大使とともに出席し,李洛善国税庁長および金在植水産庁長も出席した。
4.会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。
(1) 両国関係一般および国際情勢
(2) 両国の経済情勢
(3) 経済協力問題
(4) 貿易問題
(5) 農林水産問題
(6) 交通運輸間題
5.両国の閣僚は,終始,率直かつ友好的なふん囲気のうちに議事を進めた。
会議は,まず全体会議において、国際情勢および両国関係を全般的に討議し、両国の経済情勢についてそれぞれ説明を行なつた後、国際情勢および両国関係、経済協力、財務、貿易、農林水産および交通運輸の核問題に関する個別会議を開催し、最後に再び全体会議を開催して総括を行なつた。
6.両国の閣僚は,両国関係全般に関して検討した結果,両国政府が長期的な観点から互恵の原則と信義に立脚した両国間の善隣協調関係をいつそう発展させるため引き続き努力することに合意した。
7.両国の閣僚は,国際情勢一般,特にアジア太平洋情勢に関して広く意見を交換し,沖繩問題にも言及した。
8.両国の閣僚は,アジア太平洋情勢の検討にあたつて,地域内の一部に緊張が存続している事実に遺憾の意を表し,かかる緊張にもかかわらず,地域内の自由と民主主義を国是とする諸国が着実に経済的社会的発展を遂げつつあることに満足の意を表した。両国の閣僚は,これら諸国がかかる発展のために相互に協力し,アジア太平洋地域の緊張緩和のためさらに努力すべきであることに意見の一致をみた。
9.両国の閣僚は,両国の安全と繁栄が極めて密接な関係にあること,およびアジアにおける平和と繁栄が両国共通の目標であることを認め,その目標の実現のために,両国が引き続き協調し,努力することを再確認した。
10.韓国側は,北からの大韓民国に対する侵略的挑発行為が継続激化している最近の事態を説明し,また,大韓民国の政府および国民が朴大統領の指導の下に固く団結し,自由友邦国家の継続的な理解と支持を得て,一面国防一面建設の国家政策を成功裡に遂行している事実を説明した。日本側は,これに対し,大韓民国の政府と国民が,かかる事態に対処しつつ,自国の安全の確保と経済開発の分野でなし遂げた画期的な業績に対して敬意を表明した。
11.両国の閣僚は,ヴィエトナム問題に関するパリ会談を含む最近の情勢に注目し,外部からの圧力と脅威なしに自らの将来を決定しうる自由と権利がヴィエトナム国民に保証されるような公正にしてかつ永続的な平和が可及的速かにもたらされるようにヴィエトナム問題が解決されることについて強い希望を表明した。
12.両国の閣僚は,過去1年間におけるアジア太平洋理事会の活動とその成果に対し満足の意を表し,この機構を通ずる地域的協力体制のよりいつそのう発展と強化のため,両国が引き続いて協力することに合意した。
13.両国の閣僚は,両国が引き続いて国際連合その他の国際的な機構および会議を通じて協力することが有益であること,特に韓国統一のための国際連合の諸般の努力に対し引き続いて協力することを再確認した。
14.両国の閣僚は,1969年8月19日および20日の両日にかけて開催された両国法相会談が法的地位協定に基づく在日韓国人の永住資格の取得の促進に貢献したことを歓迎し,今後とも教育および生活の向上等を通じて彼等の福祉がいつそう増進されるために努力が払われるべきであることに意見の一致をみた。
15.韓国側は,在日韓国人の信用組合の設立および公庫の代理業務の取扱い等について,日本側の好意的配慮を要望し,日本側は,信用組合の設立問題は都道府県知事の認可事項であるが,政府としては好意的に考慮している旨述べ,また,公庫の代理業務については,原則として差別しない考えであるが,公庫の性格等から考えて,実際上,種々問題があると述べた。
16.韓国側は,在日韓国人の家族送金規制を緩和するとともに帰国時持帰り金の枠を引き上げるよう要請したのに対し,日本側は,在日外国人の経常的所得の本国向け定期送金について従来の制限を廃止するとともに,帰国時持帰り金の枠についても従来の日本銀行自動許可枠一世帯当たり1万ドルを5万ドルに引き上げることとした旨発言した。
17.両国の閣僚は,在日韓国人の「北送」および在樺太韓国人の帰還問題を討議し,第2回日韓定期閣僚会議の共同コミュニケに述べられたそれぞれの立場を確認した。
18.韓国側は,総合製鉄所の建設につき,日本の対韓経済協力における最優先計画として,日本側の協力を要請した。日本側は,これに深い理解を示し,これに協力するため,本計画のより具体的かつ実際的調整のため,調査団を派遣することを約した。
19.両国の閣僚は,民間実業人による合弁投資の積極的進出が両国間の経済関係の緊密化に資するものであることを確認した。
20.両国の閣僚は,日本から供与される漁業協力,船舶輸出および一般プラントのための民間信用の問題について,従来同様,本年も引き続き実施して行くことに意見の一致をみた。
21.二重課税防止協定に関し,両国の閣僚は,第2回日韓定期閣僚会議共同コミュニケで合意された課税原則に基づく協定の内容について合意に達し,同協定の発効に努力することに意見の一致をみた。
22.韓国側は,在日韓国人に対する諸般の課税問題について適正を期するよう日本側の措置を要望し,日本側は,これに対して今後とも十分に配慮することを約束した。
23.(1) 両国の閣僚は,両国間貿易の不均衡を漸次是正することが両国経済関係において極めて重要な問題であるとの認識をさらに深め,今後ともあらゆる可能な方法によりその解決に努力すべきであることに合意した。
(2) 韓国側は,加工再輸入品の原材料分関税軽減制度の適用品目の追加につき日本側の特段の配慮を要請したのに対し,日本側は,1969年末までを目途に品目追加に関し,積極的に検討する旨約した。また,日本側は,韓国側の関税引下げ要請に関し,非食用海草の一部,はまぐり(生鮮,塩蔵),莞草敷物を含む若干の品目についてKR最終税率の繰上げ実施等の関税率の引下げを検討する旨約した。
(3) 日本側は,文化映画の輸入促進,工業所有権の保護,差し当たり韓国在住の日韓合弁法人が日本人から特許を受ける権利等の譲渡を受けた場合特許権等の享有を認めることについて要請したのに対し,韓国側は,前向きに検討する旨約した。
24.農林水産間題に関し,
(1) 韓国側は,農林水産物の輸出拡大の観点から,農水産物の開発輸出について両国民間資本の合弁投資,契約栽培,特にそのための技術協力等への日本側の積極的な協力を要請したのに対し,日本側は,国内産品の需給事情を考慮しつつ,一次産品の貿易拡大のために相互に適当と認める品目を選定し,当該品目の開発輸出に関する具体的方策を極力推進することに合意した。
(2) 韓国側は,現行ののりの輸入時朝および取引方式は合理的でないことを指摘し,韓国のり生産漁民の利益を図るため,現行方式の改善を強く要請したのに対し,日本側は,現行ののりの輸入時期および取引方式を直ちに変更することはできないが,本問題は,両国ののりの生産流通の実態の進展に伴い漸進的に解決されるべきものである旨述べた。
両国は,今後,本問題を両国の関係者の間において検討することに合意した。
(3) 韓国側は,1969年の輸入割当数量の残枠については本年の例外措置として輸入を認めるよう要請したのに対し,日本側は,残枠については,所定の期限までに極力輸出されるよう述べ,なお残枠を生じた場合には検討する旨述べた。
25.両国の閣僚は,両国間の海運協定締結問題および船舶借款問題について極めて有意義な意見の交換を行なつた。
26.両国の閣僚は,今回の会議が,両国の相互理解を深め,かつ,友好協力関係をいつそう確固とする上に極めて有益であつたことに意見の一致をみた。
27.両国の閣僚は,第4回日韓定期閣僚会議を,来年,両国政府が合意する時期にソウルで開催することに合意した。
28.韓国側閣僚は,このたびの第3回日韓定期閣僚会議に際して日本国政府と国民から示された歓待に対して謝意を表明した。
(6) 佐藤栄作総理大臣とリチャード・M・ニクソン大統領との間の共同声明
(昭和44年11月21日)
1.佐藤総理大臣とニクソン大統領は,11月19日,20日および21日にワシントンにおいて会談し,現在の国際情勢および日米両国が共通の関心を有する諸問題に関し意見を交換した。
2.総理大臣と大統領は,各種の分野における両国間の緊密な協力関係が日米両国にもたらしてきた利益の大なることを認め,両国が,ともに民主主義と自由の原則を指針として,世界の平和と繁栄の不断の探求のため,とくに国際緊張の緩和のため,両国の成果ある協力を維持強化していくことを明らかにした。大統領は,アジアに対する大統領自身および米国政府の深い関心を披瀝し,この地域の平和と繁栄のため日米両国があい協力して貢献すべきであるとの信念を述べた。総理大臣は,日本はアジアの平和と繁栄のため今後も積極的に貢献する考えであることを述べた。
3.総理大臣と大統領は,現下の国際情勢,特に極東における事態の発展について隔意なく意見を交換した。大統領は,この地域の安定のため域内諸国にその自主的努力を期待する旨を強調したが,同時に米国は域内における防衛条約上の義務は必ず守り,もつて極東における国際の平和と安全の維持に引き続き貢献するものであることを確言した。総理大臣は,米国の決意を多とし,大統領が言及した義務を米国が十分に果たしうる態勢にあることが極東の平和と安全にとつて重要であることを強調した。総理大臣は,さらに,現在の情勢の下においては,米軍の極東における存在がこの地域の安定の大きなささえとなつているという認識を述べた。
4.総理大臣と大統領は,特に,朝鮮半島に依然として緊張状態が存在することに注目した。総理大臣は,朝鮮半島の平和維持のための国際連合の努力を高く評価し,韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊要であると述べた。総理大臣と大統領は,中共がその対外関係においてより協調的かつ建設的な態度をとるよう期待する点において双方一致していることを認めた。大統領は,米国の中華民国に対する条約上の義務に言及し,米国はこれを遵守するものであると述べた。総理大臣は,台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつてきわめて重要な要素であると述べた。大統領は・ヴィエトナム問題の平和的かつ正当な解決のための米国の誠意ある努力を説明した。総理大臣と大統領は,ヴィエトナム戦争が沖繩の施政権が日本に返還されるまでに終結していることを強く希望する旨を明らかにした。これに関連して,両者は,万一ヴィエトナムにおける平和が沖繩返還予定時に至るも実現していない場合には,両国政府は,南ヴィエトナム人民が外部からの干渉を受けずにその政治的将来を決定する機会を確保するための米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように,そのときの情勢に照らして十分協議することに意見の一致をみた。総理大臣は,日本としてはインドシナ地域の安定のため果たしうる役割を探求している旨を述べた。
5.総理大臣と大統領は,極東情勢の現状および見通しにかんがみ,日米安保条約が日本を含む極東の平和と安全の維持のため果たしている役割をともに高く評価し,相互信頼と国際情勢に対する共通の認識の基礎に立つて安保条約を堅持するとの両国政府の意図を明らかにした。両者は,また,両国政府が日本を含む極東の平和と安全に影響を及ぽす事項および安保条約の実施に関し緊密な相互の接触を維持すべきことに意見の一致をみた。
6.総理大臣は,日米友好関係の基礎に立つて沖繩の施政権を日本に返還し,沖繩を正常な姿に復するようにとの日本本土および沖繩の日本国民の強い願望にこたえるべき時期が到来したとの見解を説いた。大統領は,総理大臣の見解に対する理解を示した。総理大臣と大統領は,また,現在のような極東情勢の下において,沖繩にある米軍が重要な役割を果たしていることを認めた。討議の結果,両者は,日米両国共通の安全保障上の利益は,沖繩の施政権を日本に返還するための取決めにおいて満たしうることに意見が一致した。よつて,両者は,日本を含む極東の安全をそこなうことなく沖繩の日本への早期復帰を達成するための具体的な取決めに関し,両国政府が直ちに協議に入ることに合意した。さらに,両者は,立法府の必要な支持をえて前記の具体的取決めが締結されることを条件に1972年中に沖繩の復帰を達成するよう,この協議を促進すべきことに合意した。これに関連して,総理大臣は,復帰後は沖繩の局地防衛の責務は日本自体の防衛のための努力の一環として徐徐にこれを負うとの日本政府の意図を明らかにした。また,総理大臣と大統領は,米国が,沖繩において両国共通の安全保障上必要な軍事上の施設および区域を日米安保条約に基づいて保持することにつき意見が一致した。
7.総理大臣と大統領は,施政権返還にあたつては,日米安保条約およびこれに関する諸取決めが変更なしに沖繩に適用されることに意見の一致をみた。これに関連して,総理大臣は,日本の安全は極東における国際の平和と安全なくしては十分に維持することができないものであり,したがつて極東の諸国の安全は日本の重大な関心事であるとの日本政府の認識を明らかにした。総理大臣は,日本政府のかかる認識に照らせば,前記のような態様による沖繩の施政権返還は,日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負つている国際義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではないとの見解を表明した。大統領は,総理大臣の見解と同意見である旨を述べた。
8.総理大臣は,核兵器に対する日本国民の特殊な感情およびこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。これに対し,大統領は,深い理解を示し,日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく,沖繩の返還を,右の日本政府の政策に背馳しないよう実施する旨を総理大臣に確約した。
9.総理大臣と大統領は,沖繩の施政権の日本への移転に関連して両国間において解決されるべき諸般の財政及び経済上の問題(沖繩における米国企業の利益に関する問題も含む。)があることに留意して,その解決についての具体的な話合いをすみやかに開始することに意見の一致をみた。
10.総理大臣と大統領は,沖繩の復帰に伴う諸問題の複雑性を認め,両国政府が,相互に合意さるべき返還取決めに従つて施政権が円滑に日本政府に移転されるようにするために必要な諸措置につき緊密な協議を行ない,協力すべきことに意見の一致をみた。両者は,東京にある日米協議委員会がこの準備作業に対する全般的責任を負うべきことに合意した。総理大臣と大統領は,琉球政府に対する必要な助力を含む施政権の移転の準備に関する諸措置についての現地における協議および調整のため,現存の琉球列島高等弁務官に対する諮問委員会に代えて,沖繩に準備委員会を設置することとした。準備委員会は,大使級の日本政府代表および琉球列島高等弁務官から成り,琉球政府行政主席が委員会の顧問となろう。同委員会は,日米協議委員会を通じて両国政府に対し報告および勧告を行なうものとする。
11.総理大臣と大統領は,沖繩の施政権の日本への返還は,第二次大戦から生じた日米間の主要な懸案の最後のものであり,その双方にとり満足な解決は,友好と相互信頼に基づく日米関係をいつそう固めるゆえんであり,極東の平和と安全のために貢献するところも大なるべきことを確信する旨披瀝した。
12.経済問題の討議において,総理大臣と大統領は,両国間の経済関係の著しい発展に注目した。両者は,また,両国が世界経済において指導的地位を占めていることに伴い,特に貿易および国際収支の大幅な不均衡の現状に照らしても,国際貿易および国際通貨の制度の維持と強化についてそれぞれ重要な責任を負つていることを認めた。これに関連して,大統領は,米国におけるインフレーションを抑制する決意を強調した。また,大統領は,より自由な貿易を促進するとの原則を米国が堅持すべきことを改めて明らかにした。総理大臣は,日本の貿易および資本についての制限の縮小をすみやかに進めるとの日本政府の意図を示した。具体的には,総理大臣は,広い範囲の品目につき日本の残存輸入数量制限を1971年末までに廃止し,また,残余の品目の自由化を促進するよう最大限の努力を行なうとの日本政府の意図を表明した。総理大臣は,日本政府としては,貿易自由化の実施を従来よりいつそう促進するよう,一定の期間を置きつつその自由化計画の見直しを行なつていく考えである旨付言した。総理大臣と大統領は,このような両国のそれぞれの方策が日米関係全般の基礎をいつそう強固にするであろうということに意見の一致をみた。
13.総理大臣と大統領は,発展途上の諸国の経済上の必要と取り組むことが国際の平和と安定の促進にとつて緊要であることに意見の一致をみた。総理大臣は,日本政府としては,日本経済の成長に応じて,そのアジアに対する援助計画の拡大と改善を図る意向であると述べた。大統領は,この総理大臣の発言を歓迎し,米国としても,アジアの経済開発に引き続き寄与するものであることを確認した。総理大臣と大統領は,ヴィエトナム戦後におけるヴィエトナムその他の東南アジアの地域の復興を大規模に進める必要があることを認めた。総理大臣は,このため相当な寄与を行なうとの日本政府の意図を述べた。
14.総理大臣は,大統領に対し,アポロ12号が月面到着に成功したことについて祝意を述べるとともに,宇宙飛行士たちが無事地球に帰還するよう祈念を表明した。総理大臣と大統領は,宇宙の探査が科学の分野における平和目的の諸事業についての協力関係をすべての国の間において拡大する広範な機会をもたらすものであることに意見の一致をみた。これに関連して,総理大臣は,日米両国が本年夏に宇宙協力に関する取決めを結んだことを喜びとする旨述べた。総理大臣と大統領は,この特別な計画の実施が両国にとつて重要なものであることに意見の一致をみた。
15.総理大臣と大統領は,軍備管理の促進と軍備拡大競争の抑制の見通しについて討議した。大統領は,最近ヘルシンキにおいて緒についたソヴィエト連邦との戦略兵器の制限に関する討議を開始することについての米国政府の努力の概要を述べた。総理大臣は,日本政府がこの討議の成功を強く希望する旨述べた。総理大臣は,厳重かつ効果的な国際的管理の下における全面的かつ完全な軍縮を達成するよう,効果的な軍縮措置を実現することについて日本が有している強い伝統的な関心を指摘した。
(昭和45年2月3日)
日本国政府は,核兵器の拡散が核戦争の危険を増大させると信じており,核兵器の拡散を防止することは世界平和維持に関する日本国政府の政策と一致するものであるので,この条約の精神に賛成してきた。
日本国政府は,以下に述べる基本的考え方に基づきこの条約に署名する。
日本国政府は,この条約が核軍縮の第一歩になるものと確信し,またこの条約を効果あらしめるため,できるだけ多くの国がこの条約に参カロすることを望むものである。特に,核兵器を保有していながら,いまだこの条約に参加の意図を示していないフランス共和国政府および中華入民共和国政府が速やかに条約に参加して,核軍縮のための交渉を誠実に行なうよう希望するが,それまでの間でも,この条約の目的に反するような行動をとらないよう希望する。
この条約は現在の核兵器国に対してのみ核兵器の保有を認めるものである。このような差別はすべての核兵器国が核兵器を自国の軍備から徹廃することによつて窮極的には解消されなければならないものであるが,それまでの間核兵器国は特別な地位にあると同時に特別の責任を負うものであるとの自覚がなけれぱならない。
この条約は,核兵器その他の核爆発装置またはその管理の取得のみを禁止の対象とするものである。従つて,非核兵器国は,この条約によつて,原子力平和利用の研究,開発,実施おびよこれらのための国際協力をいかなる意味においても妨げられてはならないし,これらの活動のいかなる面においても差別的な取扱をされてはならない。
日本国政府は,以上の基本的考え方に基づき次の諸点に強い関心を有することを表明する。
これらの問題は,日本国政府が本条約を批准するに当り,また将来条約締約国として条約運用の再検討に参加する際においても強い関心を払うであろうことを強調する。
I 軍縮および安全保障
1.この条約の第6条で,締約国は,「核軍備競争の早期の停止および核軍備の縮小に間する効果的な措置につき,並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について,誠実に交渉を行なうことを約束」している。日本国政府は,特に核兵器国がこの約束に従い,具体的な核軍縮措置をとることが,この条約の目的実現のため必要であると考える。わが国も軍縮委員会のメンバーとして,軍縮の促進に協力する考えである。
2.日本国政府は条約の前文に,「諸国が,国際連合憲章に従い,その国際関係において,武力による威嚇または武力の行使をいかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも,また,国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」との規定が設けられたことを重視し,核兵器国が非核兵器国に対し,核兵器を使用しまたはその威嚇をしてはならないことを強調する。
3.同様に,日本国政府は,核兵器の使用を伴う侵略の犠牲またはそのような侵略の威嚇倣橡となつた条約締約国である非核兵器国に対しては,国連憲章に従い,援助提供のため直ちに安全保障理事会の行動を求める意図がある旨確認した米,英,ソの宣言を重視するとともに,核兵器国が非核兵器国の安全保障のための実効ある措置につき更に検討を続けることを希望する。
4.日本国政府は,条約批准までの間,軍縮交渉の推移,安全保障理事会による非核兵器国の安全保障のための決議の実施状況に注目するとともにその他日本国の国益確保の上から考慮すべき問題につき引き続き慎重に検討するであろう。
5.日本国政府は,条約第10条に,「各締約国は,この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは,その主権の行使として,この条約から脱退する権利を有する。」と規定されていることに留意する。
II 原子力平和利用
1.わが国がこの条約の第3条に基づき国際原子力機関との間に締結する保障措置協定の内容は,他の締約国が個別的にまたは他の国と共同して国際原子力機関との間に締結する保障措置協定の内容に比して,わが国にとり,実質的に不利な取扱いとなることがあつてはならない。日本国政府としては,この点を十分考慮した上で条約の批准手続をとる考えである。
2.日本国政府は,核兵器である米国および英国の政府が自国の安全保障に直接関係のないすべての原子力活動に国際原子力機関の保障措置適用を受諾するとの意思表示を行なつたことを条約を補完する措置として高く評価し,この保障が忠実に実行されることに最大の関心を有する。また他の核兵器国が同様の措置をとることを強く希望する。
3.保障措置は,核燃料サイクルの枢要な箇所において適用されるとの原則に従い,かつ,その手続は,費用対効果の原則を考慮し合理的であり,可能な限り各国の管理制度を活用し,できる限り簡素なものでなけれぱならない。さらに保障措置の適用によつて,産業機密の漏洩その他産業活動が阻害されることがないように十分な措置が講じられなければならない。日本国政府としは,国際原子力機関が技術の進歩に照して,上記の方向で保障措置の内容が改善されるよう不断の努力を行なうことを希望するものであり,日本国政府としてもこれに協力する用意があるが,この目的のため関係国の協力を望むものである。
4.保障措置適用の対象となる非核兵器国は,保障措置適用の費用に関し,不当な負担を課されないものと了解する。
5.この条約の第3条に基づきわが国が国際原子力機関との間に締結する保障措置協定に従つて保障措置が適用されるときは,現行のわが国と米国,英国またはカナダとの間の原子力平和利用における協力にかかる現行の保障措置は,これによつて代置されるよう措置されるべきものと考える。
6.原子力の平和利用および核爆発の平和的応用のための国際協力に関するこの条約の第4条および第5条の規定は具体的措置によつて促進されなければならない。特に核兵器その他の核爆発装置の製造にも利用しうるとの理由によつて非核兵器国におけるいかなる原子力平和利用活動も禁止若しくは制限され,または,非核兵器国に対する原子力平和利用に関する情報,物質,設備若しくは資材等の移転も拒否されてはならない。
(1970年3月23日)
1.第5回日米文化教育会議は,1970年3月18日から23日まで東京で開催された。会議は,第1回会議以来の両国間の文化教育交流の総合的検討を行なつた後,今後における両国間の文化教育交流および協力を拡大させるための諸方策,アジア諸国に対するそれぞれの文化教育計画の経験の交換並びに日米両国の有識層・文化人の間の相互理解を増進させるための諸問題に関し討議を行なつた。
会議は,最近急速に発展しつつある両国関係に対応して,文化教育交流事業を拡大する必要性がいつそう高まつたこと,および社会の急速な変化に伴つて,新しい文化教育上の諸問題が生じつつあることを認め,次の勧告を採択した。
(1) 教育交換の拡大計画に関する諸問題および両国民の相互理解の増進に関する諸問題について,ひきつづき討議を行なうこととし,そのためそれぞれの分野の専門家の会合を行なうこと。
(2) 両国間の次の分野における交流活動を日米両国において奨励すること。
イ,新聞,テレビジョンその他マスメディア関係者の交流
ロ,両国の産業界が文化教育面で行なつている国際交流活動に関する情報の交換
ハ,両国の初等中等学校教員および中等学校生従の交
ニ,両国の中等学校および大学における相手国の文化,歴史に関する教育
ホ,世代間の断層の問題および青少年問題についての情報交換ヘ,テレビ番組の交流
(3) 両国において従来から行なわれている次の事業をさらに強化すること。
イ,アメリカにおける日本研究および日本におけるアメリカ研究
ロ,アメリカ人に対する日本語教育および日本人に対する英語教育
ハ,留学生に対するカウンセリング
ニ,日本における人文および社会科学の成果を紹介する文献の翻訳
ホ,人文および社会科学分野の共同研究
ヘ,図書館職員,図書資料および図書館の管理・運営に関する情報の交換
(4) 大学についての共通問題に関し適当な時期に関係専門家によるセミナーを開催すること。
2.会議が討議した各議題についてのハイライトは,次のとおりであつた。
(1) 第1回会議以来の両国間文化教育交流の総合的検討
両国代表は,第1回の会議以降現在までの8年間に払われた多くの努力の結果として,文化教育の交流が一段と推進されたことを認めた。
とくに,アメリカにおける日本研究,日本におけるアメリカ研究および図書館協力の成果が高く評価された。言語教育,芸術交流事業等については,今後さらに促進する必要があることが指摘された。また,他の分野に比べて立ち遅れていた人文および社会科学の領域における共同研究については,これが組織的,かつ,活発に実施されるにいたつたことが高く評価された。
会議は,両国民の間の一層効果的な理解を図るためには,日本研究および米国研究を含む人文科学および社会科学の分野でのいつそう多くの専門家の養成と交流を促進することが急務であることを認め,かつ,この会議設立の趣旨に立ちかえつて重要な研究課題を設定して共同研究をさらに進めるとともに,日米双方とも相手国国民のもつ価値観に対する理解を深めることが必要であることが指摘された。
また,それぞれの国民が相手国についての正しいイメージをもつことによつて誤解の発生を防ぐ上で,新聞とテレビジョンが大きな役割を果たすことにかんがみ,新聞記者およびテレビジョンプロデューサーの交流の活発化が望ましいことが強調された。
さらに,両国代表は,外国語としての日本語または外国語としての英語の教育に関し,現在双方が行なつている事業の強化および教育方法の改善について,両国の関係者が常時情報および意見の交換を行なうことが望ましいことを指摘した。
(2) アジア諸国に対するそれぞれの教育文化計画の経験の交換
日米両国は,この分野で多くの類似の経験をもつていることにかんがみ,かつ両国の経験についての情報と意見の交換がそれぞれの国で行なわれている事業の改善に役立つことを認め,両国のこれまでの経験とこれらの経験から生じたさまざまの問題点について意見を交換した。
とくに,留学生の受入れの問題については,(イ)受入れ国の言語を能率的かつ効果的に修得させること,(ロ)留学生の派遣国の国情に精通した専門家を養成すること,(ハ)留学生の母国の国情に即した受入体制および教授方法を研究すること,並びに(ニ)留学生が帰国後において留学中に修得した知識および技術を生かしうるよう配慮することの必要性が強調された。
(3) 教育交換計画の拡大とこれに関連する問題
会議は,日米両国がいつそう緊密な関係に移行しつつある新しい情勢に対応して新たな観点から,両国間の教育交換のあり方およびその拡大の方途について意見の交換を行なつた。
両国代表は,今後の両国間の教育交換を一層効率的に実施するため学生,学者,研究者の交換の重要性を指摘するとともに,さらに,両国の相互理解にとつて特に影響力の強い新聞,テレビジョン等の分野における関係者の交流を含めることの望ましいことが指摘された。
両国代表は,さらに,政府の関与する公の教育交換計画は,民間の資金では実現が困離な分野,とくに,日本におけるアメリカ研究,アメリカにおける日本研究,日本人に対する英語教育,アメリカ人に対する日本語教育,並びに,人文および社会科学の分野に重点をおくべきことを指摘し,また,その実施に当つては,それぞれの分野で質的に優れた者を選ぶことが必要であることが指摘された。また過去において,両国間の公の計画により米国に留学した日本人の多くが現在日本の各界の中堅となつており,他方同計画により日本に留学した米国人の多くが米国における日本研究を推進していることは,この計画の果してきた大きな役割を実証するとともに,これを高く評価すべきであることが指摘された。
(4) 両国の有識層・文化人の相互理解増進に関する諸問題
会議は,日米両国の有識者の相互理解を妨げている要因およびこれらの要因を緩和し,相互理解を増進する方法について,十分な分析を行なつた。
両国代表は,両国民の相互理解を困難にしている要因は,単に両国の言語および伝統が異なることにあるばかりでなく,両国間の政治および経済の問題とも無関係でないことをも考慮に入れて,両国の広い範囲の知識層および文化人の間の相互理解の促進が,阻害要因の除去を図る上で,大きな役割を果すことを指摘した。
両国代表は,また両国の社会がそれぞれ急速に変化していること,およびそれぞれの社会の内部における断絶の現象も上記の問題と関係があることを指摘した。
3.会議は,第4回会議の最終コミュニケに基づき設立された日米文化教育協力に関する合同委員会の両パネルの事務局を強化すべきことを勧告した。1972年ワシントンにおいて開かれる次回会議の期日は,1971年ハワイで開かれる合同委員会において協議する。