-外交体制の整備充実-
第7章 その他外交機関の活動
第1節 外交体制の整備充実
1969年1月実施した外務省の経済関係機構改革の第二段階として,アジア局の再編成を行なうため,外務省組織令を改正し,1970年6月23日より施行することとなった。改正の概要は次のとおりである。
(イ) 地域政策課の新設
わが国の対アジア外交の推進に当り,近年同地域に対する外交政策の総合的な企画立案並びに同地域における多数国間協力に関する総合調整を行なう必要性が,とみに高まっていることにかんがみ,地域政策課を新設し,これらの任務を行なわしめることとした。
(ロ) 経済課の廃止とこれに伴う経済事務および所管国(地)の再配分
1969年1月の機構改革の際,暫定措置として設置された経済第一課および経済第二課を廃止し,これら二課の経済事務を各地域課に配分するとともに,従来の四課構成の地域課を五課構成とした。
1969年6月1日台北総領事館を,1970年1月1日アンカレッジ領事館を,それぞれ開設した。
これをもって1970年3月末現在のわが国の在外公館は,大使館117館(うち実館85,兼轄32),日本政府代表部3館(国連,ジュネーヴ国際機関,経済協力開発機構),総領事館41館,領事館10館となっている。
外務省における職員研修の制度は,在外に勤務し外交事務に従事する目的のもとに,外交上の基本的心得および外交知識のかん養と外国語および在外公館の事務に必要な知識を習得させ,かつ,わが国内事情,日本文化などについての一般的知識を深めさせるものをとりあげて行なってきたが,1969年度においては,研修の中心である外務省研修所の規則を改正し,従来の指導官に加えて専属の教官を任命しうることとするなど機構の強化と,聴講制度を設けるなど制度面の改正も行なうとともに,さらに前年度に引続き次のような研修を行ない,かつ(ニ)の夫人研修を本年度から実施した。
(イ) 外務省上級幹部に対し,外務大臣特命により外交に関する基本的かつ重要な問題についての調査研究を行なわせる上級幹部研究員制度に基づき,現在までに7名がこの研究を終了し目下1名が研究に従事している。
(ロ) 外務公務員採用上級試験合格職員をまづ研修所における国内研修を終了せしめ,次いで本省各局課において1年間の実務経験ののち,海外における研修に派遣した。
(ハ) 外務公務員採用中級試験合格職員についても,語学力強化のため,海外において6ヵ月間の語学研修を行なわせた。
なお,外務省語学研修員試験合格職員は,戦前の外務省留学生と同様に,海外において2~3年間の語学研修に専念せしめている。
(ニ) 在外公館に勤務する職員の夫人が直接,間接に果たす役割の重要性にかんがみ,在外勤務予定者の夫人に対し,その在勤中の夫人の役割を十分認識せしめることを主眼とした「夫人研修」を年に2~3回実施することとし,69年度においては69年9月および70年2月に実施したが,受講者は103名に達した。
(ホ) 本省の中堅職員のために,国際情勢,国内事情のうちから特定の問題をとりあげて省内研修を実施したが,今後これを更に強化して行く計画である。
外交関係の事務が適正に実施されているかどうかは,内閣,国会,会計検査院などによって常時管理が行なわれているが,外務省においても大臣官房を中心として自ら外交関係事務の管理を十分行なうとともに,とくに在外公館については,随時外交問題に造詣の深い有識者を査察使として派遣し,在外公館の事務処理状況等の査察を実施している。
1969年度においては,アフリカ地域に岡田勝二(人事院任用局長)欧州地域に大口駿一(前農林次官)の両氏をそれぞれ査察使として派遣し,これら地域の各在外公館の査察を実施した。
外務省には,幕末の開国関係の文書を含め,わか国の外交関係の記録が多数整理・保存されており,1970年4月1日現在記録ファイルの総数は約74,000冊に達している。
外務省では,これらの記録のうち重要なものを系統的にとりまとめた「日本外交文書」をおおむね年間4冊宛刊行しており,1969年度においては,大正7年(1918年)なかばから大正8年(1919年)なかばまでの分を編集・刊行した。これで「日本外交文書」の総冊数は113巻となった。
なお,1969年は,明治2年(1869年)の外務省設置以来丁度百周年にあたり,外務省ではこの機会にこの百年間における外務省の活動ぶりをとりまとめた「外務省の百年」を刊行した。
また,これらの出版物のもととなった外務省記録については,内外研究者の閲覧希望が多いが,目下東京都港区麻布狸穴に建築中の「外交史料館」が完成(1970年夏ごろの予定)すれば,閲覧希望者への便宜供与も容易になるものと期待される。
1970年1月31日閣議決定をみた45年度予算の中,外務省予算は総額451億700万円で,前年度の393億6,200万円に比し57億4,500万円の増,14・6%の伸 びである(前年度の伸びは11・2%であった)。前年度に比し予算の伸びが大きかったのは国家予算全体の伸びが大きかったことに応じて伸びた外,特に万博接遇費が6億4,000万円計上されたことによる。また,昭和45年度の一般会計予算総額中に占める外務省予算の比率は0.57%である。
45年度の予算の特色は第一に経済技術協力の強化(総額117億円)で,44年度に比し18・6%の伸びを示すとともに(国連開発計画拠出金の20%増を含む)第3国国際機関研修制度,派遣専門家の待遇および環境改善等種々の新機じくが打ち出されたこ。第二に機構関係として近く設置を予定される沖繩復帰準備委員会に対する日本政府代表事務所および軍縮外交推進のためジュネーヴ軍縮委員会に対する日本政府代表部の新設が認められたことである。その外,内外広報および文化交流の強化,子弟教育の充実,旅券業務体制の整備,日本国際問題研究所の強化,旅費改訂等についても相当の増額をみた。
わが国は,国際博覧会史上アジアで初めて開催される日本万国博覧会に,できるだけ多数の国の参加を得て充実した意義あるものとするため,1969年においても引きつづき在外公館を通じて未参加国に対して参加勧奨に努めるとともに,総理大臣または万博担当大臣の特使および万博日本政府代表のほか日本万国博覧会協会幹部職員等を派遣して折衝を行なった。その結果同年中に新たに中央アフリカ共和国ほか25ヵ国が参加を決定し,参加決定国は合計81ヵ国に上ったが,他面,財政事情その他の理由により5ヵ国(ポーランド,イスラエル,ガイアナ,ハイティ,コンゴー(キンシャサ))が参加を取り消したので,実際の参加国は76ヵ国(わが国を除く)となった。このほかに4国際機関,1政庁,6州および3市が参加して,1970年3月15日から9月13日まで183日間,史上最大の規模をもって日本万国博覧会が開催されるに至った。参加国および参加国際機関等は別表のとおりである。
日本万国博覧会の開会式は,3月14日午前11時から正午まで,大阪府下千里丘陵の会場内お祭り広場で,天皇,皇后両陛下のご臨席の下に,各国政府代表等の特別招待者約6,500人,一般招待者約1,000人,計7,500人の出席を得て挙行された。それは,日本万国博覧会のスタートを飾るにふさわしい厳粛かつ花やかな儀式で,出席者に多大の感銘を与えた。
〔式典次第〕
(1) 天皇,皇后両陛下および皇族ご臨場 11.00
(2) 日本国旗掲揚,日本国歌斉唱 11.01~11.02
(3) 参加国旗等入場,掲揚 11.03~11.20
(4) 統一万国博旗引渡し,掲揚 11.21~11.28
(5) 挨拶および祝辞(内閣総理大臣,日本万国博覧会々長,衆議院議長,参議院議長,参加国代表(カナダ政府代表),大阪府知事) 11.29~11.45
(6) 博覧会国際事務局会長メッセージ(録音による) 11.45~11.46
(7) 天皇陛下開会のおことば 11.47~11.48
(8) 祝典序曲演奏 11.50~11.55
(9) 皇太子殿下諸装置スゥイッチ・オン 11.56
(10) 各国ホステス,子供のパレード 11.57~12.10
(11) 大エンディング 12.10~12.15
(12) 天皇,皇后両陛下および皇族ご退場 12.15
日本万国博覧会の意義をさらに高め,かつ,これら参加国および参加国際機関のわが国に対する認識を深めるとともに,わが国との親善に寄与するため,政府は,1968年10月29日の閣議において上記参加国の元首および国際機関の長を博覧会の期間中わが国に招待し,この招請に応じて来日する元首,またはこれに代って来日する閣僚級以上の代表および国際機関の長を,政府賓客として接遇することを決定した。
外務省は,上記決定にもとづき1969年5月以降,在外公館長を通じて参加国政府および国際機関に対し招請状を発出した。この招請にもとづき4月8日現在までに来日した賓客および来日方を申し越した賓客は別表(2)のとおりである。
これらの政府賓客は,短期間のうちに多数の国から相次いで訪日するので,元首の来日に際しては通常の国賓並みの接遇はできないとしても,宮中では午餐を賜り,または,総理大臣は晩餐を催されることとなっている。また,これら賓客の日程には必ず大阪の万国博覧会の視察を組み入れ,原則として当該国の万博ナショナル・デーの行事に参列されることとしている。
1969年5月27日から4日間第3回万博政府代表会議が,また,1970年1月21日から3日間第4回万博政府代表会議が,それぞれ過去2回の政府代表会議と同じく京都国際会館において開催された。
第3回政府代表会議は,博覧会の準備作業が進むにつれて生じてきている共通の新たな問題を,参加国間の協議を通じて解決することを主な目的とし,同時に,参加各国間の展示館の建設,管理運営の準備等の歩調を整える必要から開催されたものである。会議の議題は,ナショナル・デー,スペシャル・デー(国際機関等の場合)のプログラムおよび開会式計画のほか,とくに3月4,5両日ヴァンクーヴァーで開催された第2回運営委員会,および第3回政府代表会議の直前に開かれた第3回運営委員会(5月26日)において討議された議題,すなわち,営業参加,政府代表等の地位,冷水,賃金その他の運営費,催し物プログラム,テーマ館出品,美術館出品,公用車の駐車,宿泊施設,航空貨物,同旅客運賃,設備の処分および国内・外広報等を中心としたものである。
第4回政府代表会議は,万博開催前の最後の会議であり,その主な目的は,準備段階における懸案事項の解決をはかること,および博覧会運営の具体的方法について協議することである。会議の議題は,博覧会運営の総括説明,開会式計画,会場サーヴィス施設の紹介,儀典およびVIPの接遇,公式記録および公式記録映画,報道関係のほか,とくに1969年9月30日より2日間日本万国博協会本部ビルで開催された第4回運営委員会,およびこの第4回政府代表会議の前,1月19日に開催された第5回運営委員会において討議された議題,すなわち,諸税と関税,食堂および売店,自由円勘定および銀行業務,保険,陸上輸送および駐車場,展示館管理費用,宿泊施設およびコンテスト等を中心としたものである。同会議への参加者は71ヵ国,4国際機関,1政庁,6州,3市であり,オブザーヴァーとして博覧会国際事務局代表のほか,今回初めて海外から2企業,国内から1地方公共団体,2公社,27民間企業,団体が出席した。
万国博覧会は,オリンピックと並ぶ平和の祭典として1851年以来,世界の文化の交流,産業の発展に大きな役割を果してきたが,その統一理念を象徴するシンボル・マークがなかった。よってわが国は,1968年11月,第64回博覧会国際事務局(BIE)理事会において,1970年日本万国博開催を機会に統一シンボル・マークを制定することを提案し,採択された。次いでBIEは,このマークを条約加盟34ヵ国が公募した作品のなかから選定することを決定した。
わが国は,応募作品13,389件,44,628点のうち3点を選んでBIEに送り,BIEは,17ヵ国から推せんのあった47点について審査した結果,1969年11月14日の第66回理事会において,わが国が推せんした作品(松島正矩作,青紫の円のなかに白色の幾重にも重なった矢印を表現し,人類の進歩と向上を象徴化しているもの)が万国博の紋章として選定された。この紋章をとり入れた万国博覧会の旗は,わが国で製作され,3月14日日本万国博開会式に際し,カウッキーBIE副会長から石坂日本万国博覧会協会会長に手交され,会場に掲揚された。
外務省は,日本万国博開催に伴う本邦入国査証について関係省および日本万国博協会と検討した結果,できる限りの範囲内で入国手続を簡易化することとし,万博参加国の政府代表,万博関係者およびその家族については,日本万国博協会より発行された証明書あるいは参加国等の発行する証明書にもとづいて,直ちに現地公館限りで査証を発給し得るよう措置した。ただし,各国パビリオンの役務に従事する者および営業関係者に対しては,現地査証の範囲から除いたが,この取り扱いについては,万博協会と密接な連絡をとり,できる限り早急に査証指示を行なうこととした。なお,これら万博関係者およびその家族に対しては,すべて査証手数料を免除している。また,万博開催期間中(3月15日から9月13日まで)に来日する者で,査証申請書に万博観覧を目的としている者に対して発給する観光査証についても,すべて査証手数料を免除することとした。
別表 (1) 日本万国博覧会参加国,国際機関,州,市等
I.国
1. カ ナ ダ 2. 韓 国 3. ア メ リ カ 4. 中 華 民 国 5. オ ラ ン ダ 6. ザ ン ビ ア 7. ソ 連 邦 8. ベ ル ギ ー 9. ド イ ツ 10. ス イ ス 11. ニュー・ジーランド 12. オ ー ス ト ラ リ ア 13. フ ラ ン ス 14. ブ ル ガ リ ア 15. ク ウ ェ イ ト 16. 連 合 王 国 17. キ ュ ー バ 18. ト ル コ 19. ポ ル ト ガ ル 20. タ イ 21. フ ィ リ ピ ン 22. ア ル ジ ェ リ ア 23. メ キ シ コ 24. デ ン マ ー ク 25. ノ ー ル ウ ェ ー 26. ス ウ ェ ー デ ン 27. フ ィ ン ラ ン ド 28. エ テ ィ オ ピ ア 29. ラ オ ス 30. ビ ル マ 31. ギ リ シ ャ 32. ド ミ ニ カ 33. サウディ・アラビア 34. チェッコスロヴァキア 35. セ イ ロ ン 36. 象 牙 海 岸 37. タ ン ザ ニ ア 38. イ ン ド ネ シ ア 39. ア イ ス ラ ン ド 40. ガ ー ナ 41. サ イ プ ラ ス 42. マ ダ ガ ス カ ル 43. ウ ガ ン ダ 44. シ ン ガ ポ ー ル 45. パ キ ス タ ン 46. ガ ボ ン 47. イ ン ド 48. チ リ 49. ヴ ァ チ カ ン 50. ヴ ィ エ ト ナ ム 51. コ ロ ン ビ ア 52. ネ パ ー ル 53. エ ク ア ド ル 54. ペ ル ー 55. イ タ リ ア 56. 中 央 ア フ リ カ 57. アルゼンティン 58. ブ ラ ジ ル 59. ナ イ ジ ェ リ ア 60. ア ブ ・ ダ ビ 61. イ ラ ン 62. マ レ イ シ ア 63. ア フ ガ ニ ス タ ン 64. エル・サルヴァドル 65. カ ン ボ デ ィ ア 66. マ ル タ 67. ヴ ェ ネ ズ エ ラ 68. ア 連 合 69. モ ナ コ 70. ニ カ ラ グ ァ 71. パ ナ マ 72. コ ス タ ・ リ カ 73. ウ ル グ ァ イ 74. モ ー リ シ ァ ス 75. シェラ・レオーネ 76. アイルランド |
(参加年月日) 1966.10.7 1966.11.4 1966.11.16 1967.1.24 1967.1.31 1967.2.10 1967.3.3 1967.4.10 1967.7.11 1967.7.20 1967.7.24 1967.7.26 1967.7.28 1967.8.3 1967.8.25 1967.9.20 1967.10.27 1967.11.7 1967.11.16 1967.11.27 1968.1.25 1968.2.16 1968.2.21 1968.3.8 1968.3.8 1968.3.8 1968.3.29 1968.4.4 1968.4.23 1968.5.10 1968.5.25 1968.6.7 1968.6.20 1968.6.29 1968.8.16 1968.8.16 1968.8.16 1968.8.24 1968.8.26 1968.9.10 1968.9.21 1968.9.26 1968.9.27 1968.9.28 1968.10.30 1968.11.22 1968.12.3 1968.12.10 1968.12.17 1968.12.26 1968.12.27 1969.1.7 1969.1.13 1969.1.13 1969.1.21 1969.1.27 1969.2.6 1969.2.21 1969.3.4 1969.3.17 1969.3.31 1969.4.22 1969.4.23 1969.4.25 1969.5.14 1969.6.6 1969.6.7 1969.6.19 1969.6.23 1969.7.30 1969.8.4 1969.8.20 1969.9.29 1969.10.28 1969.10.30 1969.11.6 |
II.国 際 機 関
(参加年月日)
1. 国際連合(UN)(国連本部および23関連機関(注)) 1968.3.15
2. 経済協力開発機構(OECD) 1968.6.11
3. 欧州共同体(EC) 1969.1.23
4. アジア開発銀行(ADB) 1969.4.28
注
国際原子力機関(IAEA)
国際労働機関(ILO)
国際連合食糧農業機関(FA0)
国際連合教育科学文化機関(UNESCO)
世界保健機関(WHO)
国際復興開発銀行(IBRD)
国際開発協会(IDA)
国際金融公社(IFC)
国際通貨基金(IMF)
国際民間航空機関(ICAO)
万国郵便連合(UPU)
国際電気通信連合(ITU)
世界気象機関(WM0)
政府間海事協議機関(IMC0)
関税貿易一般協定(GATT)
国連貿易開発会議(UNCTAD)
国連開発計画(UNDP)
国連工業開発機関(UNIDO)
国連児童基金(UNICEF)
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
国連調査訓練研修所(UNITAR)
パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)
世界食糧計画(WFP)
(計 23)
III.州, 市 等
1. 香 港 2. ケベック州(カナダ) 3. ブリティッシュ・コロンビア州(カナダ) 4. オンタリオ州(カナダ) 5. ワシントン州(アメリカ) 6. ハワイ州(アメリカ) 7. アラスカ州(アメリカ) 8. サン・フランシスコ市(アメリカ) 9. ミュンヘン市(ドイツ) 10. ロス・アンジェルス市(アメリカ) |
(参加年月日) 1967.5.23 1967.12.15 1967.12.15 1968.3.12 1968.8.22 1969.5.6 1969.6.24 1968.3.18 1969.10.14 1969.12.17 |
注 参加年月日は,当該国または国際機関等から日本政府あて参加を通報した文書の日付。