-安全保障理事会-

 

第2節 安全保障理事会

 

 

1.中 東 問 題

(1)中東問題について,問題解決の政治的大綱を定めた1967年11月22日の安保理決議242の枠内で解決策を見出し,ヤーリング国連事務総長特別代表の任務を側面から援助せんとする米,ソ,英,仏のいわゆる4大国会談は2月から実現した。4大国会談は,しかしその後アラブ,イスラエル双方が従来からの立場を依然堅持したため,問題解決について何ら緒を見出さないまま,国連第24回総会を迎えることとなり中断された。総会開会当初は各国首脳がニュー・ヨークに参集するので,各国間の打診工作を行なう好機であり,ヤーリング特別代表は9月中旬より10月中旬までニュー・ヨークに滞在し,関係諸国との話し合いを行なった。しかし目ぼしい成果は得られなかった模様で,12月より4大国会談が再開され,現在に至っている。

(2)1969年においてアラブ諸国とイスラエルの間の小競り合いは益々激化したため,ウ・タン事務総長は4月,5月,7月の3回にわたって安保理に報告書を提出し,事態が悪化していること,スエズ運河地帯では国連休戦監視機構要員の負傷事件まで生じていることを指摘し,スエズ運河地帯は既に戦争状態にある旨の強い警告を発した。

(3)この間,安保理は4回開催されたが,その審議状況次のとおり。

(あ)ジョルダン・イスラエル紛争

ジョルダンはイスラエルのジェット機がジョルダンの村落を攻撃したことについて,また,イスラエルはジョルダンの休戦違反について,それぞれ緊急安保理の開催を要請,理事会は3月27日より4月1日まで問題を審議した。その結果4月1日,イスラエルのジョルダン村落攻撃を非難する趣旨の決議案を賛成11,反対0,棄権4で採択した。

(い)エルサレムの地位の問題

ジョルダンはイスラエルがエルサレムからアラブ住民を追放し,回教寺院を破壊し,新法律を制定して,エルサレムからアラブの要素を払拭しようとしているとして,安保理開催を要請,理事会は6月30日から7月4日までこの問題を審議した。その結果,理事会は7月4日,エルサレムの地位を変更せんとするイスラエルのあらゆる立法,行政措置は無効であるとする趣旨の決議案を全会一致で採択した。

(う)レバノン・イスラエル紛争

レバノンはイスラエル機がレバノン領南部村落を攻撃したことを理由に,また,イスラエルはレバノン領よりするテロ活動が激化していることを理由に,それぞれ安保理の開催を要請,理事会は8月13日より26日まで問題を審議した。その結果26日,理事会はイスラエルの計画的なレバノン領南部村落に対する空襲を非難する趣旨の決議案を全会一致で採択した。

(え)エル・アクサ回教寺院放火事件

エルサレムのエル・アクサ寺院火災の損害により生じた重大事態の検討をアルジェリア等25ヵ国が要請したため,理事会は9月9日より15日まで問題を審議した。結局理事会は15日,エルサレムの聖地等を破壊し,冒漬行為をすることは国際間の平和と安全保障を危殆に陥れるものであることを認める趣旨の決議案を賛成11,反対0,棄権4で採択した。

 

2.南部アフリカ問題

 

(1)南ローデシア問題

安保理による南ローデシア非合法政権に対する国連史上初の経済制裁の適用により,同政権の去就が注目されていたところ,スミス首相は,1969年5月白人優位の支配体制を確立する新憲法について6月国民投票を行なうことを宣言した。6月24日,安保理は本問題を討議し,英国による武力行使の要請,制裁の適用範囲の南ア,ポルトガル領モザンビクヘの拡大の2点を骨子とした決議案を表決に付したが,9カ国の賛成票が得られず否決された。さらに,本年3月2日に至り南ローデシアが共和国に移行したため,再び安保理が招集され,3月18日,南ローデシア非合法政権を認めない経済制裁をさらに強化するよう各国に要請するとの趣旨の決議案を賛成14,反対なし,棄権1で採択した。なお,本件会議においてAA諸国が昨年6月の決議案と同様強硬な決議案を提出したが,英,米の拒否権行使に会い(米の拒否権行使は国連史上初めて)否決された。

(2)ナミビア問題

ナミビア問題についての総会の活動は,近年一つの行き詰りに至った感があり,アフリカ諸国はこの問題を安保理で取り上げ南ア政府に圧力を加えようとする動きがあった。1969年3月20日安保理は,南アが直ちにナミビアから引き揚げよとの趣旨の決議案を賛成13,反対なし,棄権2で採択した。さらに,8月12日南アが10月4日までにナミビアから引き揚げることを要請するとの趣旨の決議案を賛成11,反対なし,棄権4で採択した。しかし,その後依然として南アがナミビアから引き揚げないため,本年1月再び安保理が招集され(わが国も安保理開催要請国に加わった),1月30日,委任統治権終了後のナミビアに関する南ア政府の行為は違法かつ無効である,すべての国に対しナミビアに関連して南ア政府といかなる取引も行なわないよう要請する,決議の履行状況を検討するため小委員会を設けるとの趣旨の決議案を賛成13,反対なし,棄権2で採択した。

(3)ポルトガルとザンビア,セネガルおよびギニア間の紛争

本問題はいずれもザンビア,セネガル,ギニアがポルトガル軍により自国領土を攻撃されたとして安保理に提訴したものである。安保理は,1969年7月28日ポルトガルとザンビア,12月9日ポルトガルとセネガル,また12月22日ポルトガルとギニア間の各紛争につき審議し,それぞれ,ポルトガルによるこれら諸国の領土攻撃を非難し,今後かかる領土侵犯を行なわぬよう要請するとの趣旨の決議を採択した。

 

 

目次へ