-わが国の経済協力の現状-
第3章 わが国の経済協力の現状
「経済協力」の正確な定義は,いまだ国際的に存在せず,OECDの開発援助委員会(DAC)では,「資金の流れ」として発展途上国に対する先進国の協力をとらえている。また経済協力の分類基準も画一的ではないが,ここでは,資金協力と技術協力に分け概況を述べると共に,国際機関を通じて行なわれる経済協力のための国際協力について略述する。
なお,二国間の経済協力関係の詳細については,第2部第1章「わが国と各国との諸問題」,また経済協力に関する国際協調のうち,アジアの地域協力のための諸機構については,第2部第1章1「アジア地域,概説」,更に国際連合を通じる経済協力については第2部第4章で述べることとする。
政府ベース協力には,二国間贈与,貸付,国際機関に対する拠出,出資等が含まれるが,1969年のわが国のこれら政府ベース協力は,約4億ドル(70年1月末現在推定値)に達し,1968年の約3億6,000万ドルより若干増加した。
政府ベース資金協力の1/2は通常,政府貸付の中の直接借款で占められ,1969年においても韓国,中華民国,インドネシア,フィリピンを始めとする各国にいわゆる「円借款」が供与された。二国間贈与のほとんどは,フィリピン,インドネシアに対する賠償およびビルマ,韓国,マレイシア,シンガポ一ル,タイに対する戦後処理に関連した無償経済協力であり約1億ドルが供与された。贈与の中で注目すべきものは,1967年の国際穀物協定の中の食糧援助規約に関連した食糧援助(いわゆるK.R.援助),プレクトノット.ダム計画(カンボディア),ナムグム・ダム計画(ラオス)等のメコン河開発プロジェクトに対する拠出に加えて,昭和44年度予算に経済開発特別援助費として新しく経費が計上された,(あ)南ヴィェトナム難民住宅建設,(い)ラオス空港拡張整備(う)ラオス,タイ間電気通信計画のための無償援助である。しかるにさこれらの新しい性格の援助はいずれも被援助国との交渉の遅れ等の理由により,1969年中に支出するに至っていない。
なお,国際機関に対する出資および拠出等については,第二世銀(IDA)に対する約4,400万ドルの増資,アジア開発銀行(ADB)に対する2,000万ドルの出資,同銀行特別基金に対する約2,000万ドルの拠出等が行なわれた。
民間ベースの経済協力は,発展途上国に対する直接投資および輸出信用に分けられるが,わが国の場合,活発な輸出の伸び等の要因により,例年政府ベースの経済協力を上回る比重を占めている。
1960年においても,アジア地域を中心に前年度(約7億ドル)を上回る直接投資および輸出信用が供与された。
わが国の援助量は1969年に初めて10億ドルに達し(約10億5,000万ドル),DAC諸国の中でも英国を追い抜き,米,仏,独に次ぐ第4位の地位を占めたが,第2回にUNCTADにおける国民総生産(GNP)の1%を目標とする決議との関連でみれば,いまだ0.74%にとどまっている。
援助条件については,従来DACの年次審査および発展途上国との具体的な交渉の場においてわが国の援助条件がきびしいことが指摘されてきた,わが国としても,低利による融資が可能な海外経済協力基金に対する政府出資の増加等により条件緩和に努め,1968年には,政府借款の平均条件が,金利3.74%返済間期18.1年に改善された。しかしながら,なお,1965年のDAC勧告条件(金利3%,返済期間25年)を満たしていない。