-国連の強化と軍縮外交の推進-

 

第5節 国連の強化と軍縮外交の推進

 

 国際連合は,紛争と流血の惨事の拡大を防ぎ,その平和的解決をはかる上にこれまでも地味ながら相応の能力を発揮してきた。わが国は平和国家として,国連において積極的に協力する決意であり,今後の世界平和のためには,国際連合の平和維持機能を,一段と強化する必要があると考え,そのためにわが国は,安全保障理事会の構成,表決方法,総会の権限等の再検討の必要性につき,加盟国の注意を喚起し,また,旧敵国条項や信託統治理事会に関する条項の再検討を希望している。

 また,軍縮は,国際緊張緩和の努力の中で最も重要な役割を占める。わが国は1969年7月軍縮委員会に参加し,世界平和に貢献する重要な場を得た。わが国は,全面完全軍縮を窮極の目標としているが,そのためには超大国間に現在保たれている戦争抑止力のバランスが崩れないように留意しつつ,一歩一 歩可能なところから部分的軍縮措置の実施を積み上げていくことが現実的であると考えている。その際,各々の措置の結果が,すべての国家の安全を均しく確保するようなものでなければならないことは当然である。わが国はかかる見地に立って,今後とも,核兵器実験の全面禁止,海底における軍備競争防止,化学,生物兵器の禁止等の問題につき,軍縮委員会その他あらゆる軍縮の場において積極的な役割を果たす方針である。

 核兵器不拡散条約については,わが国は,核兵器保有国の数が増えることは,核戦争の危険を増大させると信じてこの条約の精神に賛成し,条約の作成過程において軍縮,安全保障,原子力の平和利用問題についてのわが国の主張が条約に反映されるよう努力を重ねた結果,条約中にわが国の主張がかなり取り入れられたので,1968年春の国連総会での条約推奨決議に賛成投票した。従って,わが国としても,この条約が近く発効する(3月5日発効)との見通しを得たのを機会に3月3日条約に署名した。同時に政府は声明を発し,わが国はこの条約が核軍縮の第一歩となるものと確信し,フランス,中共その他できるだけ多くの国がこの条約に参加することを望むこと,核兵器の全面撤廃までの間,核兵器国は特別の責任を負うものであるとの自覚がなければならないこと,非核兵器国の原子力平和利用の研究,開発,実施が妨げられてはならないこと等基本的考え方を内外に明らかにした。

 

 

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