資  料

 

 

一、国会における内閣総理大臣および外務大臣の演説

 

1 第五十六回(臨時)国会における佐藤内閣総理大臣所信表明演説

(外交に関する部分)

(昭和四二年七月二八日)

真の平和の永続的な維持は世界人類の理想であり、日本国民の最大の願望であります。平和こそ不変の国是であり、長い将来にわたる民族繁栄の礎であります。

しかるにヴィエトナムにおいては、関係各国の再三の和平への努力にもかかわらず、いまだ平和解決のきざしのみえないことは、まことに残念であります。長期にわたる戦争によって、尊い人命の損失はもとより、一つの民族文明が破壊されつつあることは、同じアジアの一員として坐視できない思いであります。わたくしは、ここにあらためて、紛争当事者に対し、平和的手段による紛争解決のため、よりいっそうの努力を傾けるよう強く要望するとともに、わが国としても、独自の立場から、あらゆる機会をとらえて和平実現のため努力したいと考えます。

わたくしは、先般朴大統領の再任に際し、韓国を訪問し、韓国首脳と隔意のない意見の交換を行なったのでありますが、引き続き、近く中華民国、東南アジアおよび太洋州諸国を歴訪し、各国首脳と腹蔵のない意見の交換を行ない、相互の理解と協力をいっそう深めたいと考えます。

幸い、最近アジア諸国の間には連帯と協力の気運が高まりつつあり、先般バンコックにおいて開催された第二回アジア太平洋閣僚会議においても、それぞれの立場の相違を越えて、相互の理解と協力につき真剣な意見の交換が行なわれたことは、まことに喜ばしいと存じます。わが国は、今後引き続き、アジア諸国がさらに連帯感を強化し、ともに手を携えて開発を推進し、アジアに恒久的な平和と民生の安定をもたらすことができるよう積極的に努力してまいる決意であります。

ソヴィエト連邦との間には、このたび初めて第一回の定期協議が行なわれ、日ソ間の諸問題および国際情勢全般に関して率直な意見の交換を行なうことができたことはきわめて有意義でありました。政府は、今後ともあらゆる機会をとらえて、日ソ間の諸懸案の解決のため、一歩一歩努力を積み重ねていく所存であります。

わたくしは、さらに今秋米国を訪問する予定でありますが、この機会に日米間の諸懸案をはじめ、広く重要な国際問題について米国首脳と忌憚のない意見を交換するとともに、アジアの平和と繁栄についてのわれわれの率直な意見を伝えたい考えであります。

わが国経済は、関税の一括引下げ、資本取引の自由化の進展に伴い、いよいよ全面的な国際化の時代に入ることとなりました。この間にあって、最近における経済の動向は、設備投資が増加傾向を示し、消費需要も堅調に推移し、各分野にわたり、かなりの上昇傾向にあります。他面、国際収支については、輸出の伸び悩みと輸入の増勢が続き、総合収支は赤字基調にあります。今後の経済運営にあたっては、国際収支を中心とした経済の動きを十分に注視しつつ、機動的、弾力的な施策を講じ、景気の行き過ぎを未然に防止するとともに、産業の国際競争力の強化と貿易の振興に努め、経済の安定した持続的成長を図ってまいります。

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2 第五十七回(臨時)国会における佐藤内閣総理大臣所信表明演説

(外交に関する部分)

(昭和四二年一二月五日)

第五十七回国会に臨み、わが国が当面する内外の諸問題につきわたくしの所信を述べ、国民各位の理解と協力をお願いしたいと存じます。

わたくしは、先般東南アジア、太洋州諸国を歴訪し、さらに米国を訪問して、それぞれの国の首脳と膝を交えて率直な意見の交換をいたしました。これらの会談を通じて、わが国に対する各国の理解を深め、同時に国際的重要問題の所在を明らかにし得たことは、きわめて有意義であったと信じます。

とくに、東南アジアの諸国が社会的、経済的基盤を異にし、また、それぞれ独自の政治的立場をとりつつも、民族の尊厳維持と真の独立達成のため真剣な努力を重ね、同時に新しい連帯感に基づいて協調への意欲を示しつつあることに深い感銘をおぼえました。しかしながらこれら開発途上の国々が、自らの力だけで、政治、経済、社会体制の近代化を図ることは、あまりにも大きな負担であり、先進諸国の効果的かつ時宜に適した援助が必要であります。このためアジア各国は、わが国に対しきわめて大きな期待を寄せています。この期待はわが国がアジアの一員であり、他国の内政に干渉しない平和国家であるという認識と理解に基づくものであるだけに、わたくしは今後とも国力の許す限り、これら諸国の期待にこたえるべきであると考えます。

ヴィエトナム問題は、今日のアジアが当面している最も困難な課題であり、まさにアジアの悲劇といわねばなりません。わたくしがさきに歴訪した東南アジア各国は、わが国と同様、ヴィエトナムに公正かつ永続的な平和が一日も早くもたらされることを待望しております。

アジアの多くの国々は、南北ヴィエトナムが話合いに入ることを強く希望しております。米国は、いつでも、どこでも話合いに応ずるとの意志を表明しており、また民意によって選ばれた南ヴィエトナムの新政権も積極的な和平への姿勢を示しております。わたくしは、この際、北ヴィエトナムが呼びかけに応じ話合いのテーブルにつき、すみやかに同一民族間の争いに終止符を打ち、アジアに平和をもたらすことを心から期待するものであります。

わたくしは、ヴィエトナム平和は必ず達成されるとの確信のもとに、注意深く和平への動向を見守り、当事者間に相互信頼の機運を醸成するとともに、早期解決のため忍耐強く努力する決意であります。

今日、日米両国は、太平洋の両岸において、それぞれの立場から世界の平和と繁栄に大きく寄与しております。しかるにわが沖繩、小笠原は戦後二十二年を経たにもかかわらず、いまだに米国の施政権下にあるという不自然な状態にあります。

不安定な現下のアジア情勢のもとで、沖繩がわが国を含む極東の安全のために果たしている役割を無視し得ないことは申すまでもありません。しかしながら、沖繩、小笠原の祖国復帰は日本国民の一致した願望であります。今回の訪米に際し、わたくしはジョンソン大統領に対して、このような国民的願望を率直に伝えるとともに、日米間の相互信頼と協力の基礎に立って、沖繩、小笠原問題を解決すべきであると強く主張いたしました。

その結果、沖繩については、施政権を返還するとの基本的方針のもとに、日米間で、沖繩の地位について協同かつ継続的な協議を行なうことに合意いたしました。わたくしはこの協議を通じて、両三年内に、米国との間に、返還の時期について合意に達し得るものと確信しております。

さらにまた施政権返還に備えて、本土との一体化を促進するため那覇に日米琉諮問委員会を設置し、南方連絡事務所の機能を拡大することについて合意が成立いたしました。

小笠原については、一年内にその返還が実現する運びとなりました。政府は小笠原の施政権返還にともなう具体的な取極のための米国との協議を早急に進めるとともに、旧島民の帰島、島の再開発など必要な措置について、検討を行ない、これら諸島の返還受入れに万遺漏なきを期する所存であります。

このようにまず小笠原の返還が決定し、沖繩についてはその解決への方向づけがなされたことは、明らかに大きな前進であります。政府は、今後とも究極の目標たる沖繩の本土復帰を一日も早く実現するよう最善の努力をする決意であります。国民各位においても、沖繩問題の本質を理解し、いっそうの協力を切望してやみません。

また、現在まで未解決のまま残されている北方領土問題についても、今後あらゆる機会をとらえて、その打開のため努力を傾けてまいる所存であります。

わたくしは、東南アジア、太洋州諸国歴訪およびアメリカ訪問を通じて、わが国の国際的地位が飛躍的に高まっていることを身をもって感じました。戦後二十二年にして、米ソに次ぐ世界第三の工業国になりつつあるという賞讃の言葉もしばしば耳にしました。しかしながら国際的地位が向上したということは、その半面、国際的責任がそれだけ重くなったということであります。われわれ日本国民は、同じアジアの多くの国々が貧困と飢餓と疾病からの脱出に苦慮している姿を見過ごすことはできません。

軍事力だけが平和確保への前提であった時代は去って、政治的安定と経済的繁栄が国際平和の不可欠の条件となった今日、われわれ日本国民が国際社会において果たすべき役割りは測り知れないものがあります。わたしは日本国民がこのような国際的責任を地道に果たすとともに、国民一致して自らの国を自らの手で守る気概を持ち、現実的な対策を考えることこそ、わが国の国際的地位の向上とアジアの安定とに寄与し、ひいては近い将来、沖繩の祖国復帰にもつながることを確信するものであります。

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3 第五十八回(通常)国会における佐藤内閣総理大臣施政方針演説

(外交に関する部分)

(昭和四三年一月二七日)

第五十八回国会に臨み、当面する内外の諸問題について、わたくしの所信を明らかにしたいと存じます。

わが国はことしで明治改元百年を迎えました。国民各位とともに、明治の輝かしい経営のあとをしのび、国家民族の永い将来にわたる発展のため努力する決意を新たにしたいと思います。

明治維新は封建時代から近代への一大転換でありました。東洋の一小国であった日本は、ほぼ半世紀の間に世界的な国家に成長いたしました。当時、諸外国との友好を深め、すすんで西欧文明をとり入れ、近代国家としての基盤を確立した国民の気概と活力、指導者の識見と勇断に深い尊敬の念を禁じ得ません。

じ来一世紀、われわれは第二次大戦で敗れたいたでを乗り越えて、焦土と廃墟の上に奇蹟的といわれる復興を成し遂げ、わが国は、世界有数の先進工業国に発展いたしました。この成果をふまえつつ、国際社会における枢要な国家としての地位を保ち、真に民族の恒久的な繁栄の基礎を築くべく、次の百年に向かって新しい出発をしなければなりません。わたくしは、この機会に、長期的な展望に立った重要な政治の課題にふれ、国民各位のご理解を得たいと思います。

まず第一に、二十世紀後半の人類は核時代に生きております。この核時代をいかに生きるべきかは、今日すベての国家に共通した課題であります。

われわれは、核兵器の絶滅を念願し、自らもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さない決意であります。しかしながら、米ソ二大核保有国に続き、イギリス、フランス、中共は、それぞれの立場で核兵器をてことして国家利益の追求を図ろうとしております。

このため、われわれは、当面、核兵器拡散防止に関する公正な条約の早期締結に努め、さらに国際間の交渉による核軍縮の達成に全力を傾けねばなりません。そして核保有国が、核兵器で威かくしたり、これを使用したりすることを不可能とする国際世論を喚起し、人類の理性が核兵器を支配する正常な国際環境をつくらねばなりません。

世界における唯一の被爆国民としての悲惨な経験を持つわれわれの発言は、世界政治の在り方に重大な示唆を与え、大きな指標となるべきであります。

人類にとって次の世紀にかけての最大の課題は、核エネルギーを中心とした科学技術の進歩の問題であります。核エネルギーの平和利用の分野は予測のつかないほど広大なものであり、あわせて、宇宙、海洋開発などの面で世界各国民がその知力を競う時代が到来することは、必然であります。これからのいわゆる「巨大科学」の時代に、われわれ日本民族は、自らの繁栄と人類の進歩のために積極的に取り組まなければなりません。

われわれは、核エネルギーの平和利用における国際的進歩に遅れをとらないよう、渾身の努力をしなければなりません。そして、科学技術の面における貢献によって、核時代におけるわが国の威信を高め、平和への発言権を確保し、国際社会に建設的な提言を行なうべきであります。

第二に、国際政治の中心課題は今後とも南北問題であります。世界総人口の約三分の二をかかえる発展途上国には、政治的不安定、社会体制の遅れ、国民経済の貧困が目だち、とくに経済発展の面で先進諸国との格差は、年々増大する一方であります。

貧困と飢餓、疾病と文盲を追放するため積極的協力をすることは、先進諸国に課せられた共同の責任であると申さねばなりません。とくに、アジアの一員であり、アジアの平和と繁栄が自国の平和と繁栄に直接結びついているわが国としては、まずアジア諸国の民生安定に積極的に寄与しなければなりません。発展途上国に対するわれわれの経済協力は、アジアの連帯を推進し、平和への布石となるのであります。

小笠原の返還交渉は順調に進み、近く関係協定を国会に提出して承認を求めることといたします。

沖繩の祖国復帰は国民的総意であります。両三年内に返還の時期についてめどをつけるため、日米間の外交折衝を進め、まず返還を実現することに全力を傾ける決意であります。このため、米国との相互信頼の基礎に立って、安全保障上の要請をふまえつつ、現実的な解決策を生み出すべく努力してまいりますが、それまでの間、本土との一体化施策を進め、教育、経済、社会、文化などの各面で本土との格差を是正し、復帰にそなえる方針であります。

戦争によってわれわれの手から離れた領土を平和時に回復することが、きわめて困難な問題であることは申すまでもありません。幸いにして、沖繩問題は基本的解決の方向へ向かって着実な軌道に乗せることができました。祖国復帰を一日も早く実現するためには、このことによってわれわれ日本国民が、いっそう世界の平和と繁栄のために寄与し得るという信頼感を、国際社会にうえつけることが何よりも大切であります。

一方、北方領土返還問題の前途には大きな困難が横たわっております。領土問題は、日本民族の誇りにつながるものであり、大きな国家利益の問題であります。われわれは、その回復に向かって忍耐強く努力しなければなりません。

ヴィエトナムにおいて依然戦火が続いていることは、まことに遺憾に堪えません。わたくしは、一日も早く公正な平和がもたらされることを、心から望むものであります。ヴィエトナム戦争の早期終結は国際世論であり、わたくしは、当事者が互に意思疏通を図り、一日も早く話し合いのテーブルにつくことを期待してやみません。わが国としても、平和実現のためできるだけの努力を続けてまいります。

最近における三十八度線を越えて発生した事件および先日の米艦だ捕事件によって、アジアに新しい緊張が生まれようとしております。世界、とくにアジアの平和を心から願う日本国民にとって、まことに憂慮に堪えないところであります。われわれは、アジアの平和維持のため、朝鮮半島をめぐる諸問題が一日も早く平和裡に解決されるよう切望してやみません。

中国情勢の安定なくしては、アジアにおける真の平和と繁栄の達成は困難であります。わたくしは、中共内部の動きを注意深く見守りつつ、これまでどおり政経分離の原則のもとに、貿易、文化の交流を進める政策を続けてまいります。

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4 第五十八回(通常)国会における三木外務大臣の外交演説

(昭和四三年一月二七日)

ここに、わが国外交の基本政策について所信を申し述べたいと存じます。

およそ一国の外交政策には、その国のおかれた環境から来る基礎条件があります。わが国の基礎条件とは一体何でありましょうか。

日本は海に囲まれた島国である、国土は狭く資源に乏しい、巨大なアジア大陸に隣接している。

これが日本の置かれた環境であります。こうした環境は、平和に生きて行こうと決意する日本に、基礎条件として、次の三つの方向を与えました。

すなわち日本は、海洋国家として孤立主義はとれず、世界の中の日本、アジア太平洋の中の日本、として生きて行く道を考えなくてはならぬということであります。

さらに日本は、自給自足経済ではなく、広く世界との貿易によって立って行かねばならぬということであります。

そして日本は、隣接するアジア大陸とは、脅威も受けず、脅威も与えず、相互尊重の善隣関係を持たねばならぬということであります。

時代がいかに変ろうとも、日本の環境に変りがない以上、日本の生きて行く方向とその舵取りとしての日本外交の基本路線に変りはありません。

輝かしい明治百年の歴史の中においても、こうした基本路線に背いて、自給自足経済を試みたり、大陸国家たらんとした場合は失敗でありました。これは歴史の尊い教訓であります。

私は、一年前、この議場で外交に関する所信を表明して以来、「戦争と平和」の問題に真剣に取組んでまいりました。

しかし、一年という期間はあまりにも短く、問題は余りにも大きく、そのすべてに成果を挙げたとは申せません。しかし、ある問題は相当に、ある問題は幾分なりとも、ともかく前進したことは事実であります。

まず、日米間の最大の懸案である沖繩、小笠原の施政権返還について申し述べたいと存じます。この問題は、昨年十一月の佐藤総理大臣の訪米により、解決の方向に大きく前進したことは御承知のとおりであります。小笠原の返還実施については、アメリカとの間に目下交渉を進めており、交渉がまとまり次第、今国会に提出して承認を求める所存であります。

沖繩については、総理訪米の際の共同声明で確認された如く、施政権返還の方針の下に、日米両国政府間で近く協議を開始する考えであります。

さらに、施政権返還の際の摩擦を最少限にするため、沖繩の住民とその制度の本土との一体化を促進し、住民の経済的、社会的福祉を増進するため、援助を一層増大する等、引続き最善の努力を傾けるつもりであります。また、この目的のため今回沖繩に設置される諮問委員会には、わが国の見解をできるだけ反映せしめるため、積極的な努力を払って行く考えであります。

わが国とアメリカは、あらゆる分野において、緊密な協力と友好の関係を維持し、強化してまいりました。この協力、友好関係は、将来においても揺ぎなきものであります。従って、複雑な沖繩問題も両国の相互信頼に基く話し合いによって解決できるものと確信いたします。

ひるがえって、ヴィエトナム戦争については、遺憾ながら事態は必ずしも一年前より好転しているとは申せません。戦争の惨禍はむしろ拡大さえしております。

しかし私は希望を捨てるものではありません。本年を何とか転換の端緒をつかみ得る年にすべく努力を続けるつもりであります。

ヴィエトナム問題についてわが国に対し国際的に二つの方向からの期待が寄せられております。一つは、アメリカと関係の深い国であってしかも軍事的に圏外に立っている日本こそ、アメリカに率直に勧告できる立場にあるとの期待であります。もう一つは、アジアの国である日本こそは、北ヴィエトナム、ヴィエトコンに対し、アメリカの真意を理解させ得る立場にあるという期待であります。

私は、このような、双方からの期待に応えるべく努力をいたしたいと考えております。北側との接触も厭うものではありません。

過去一年間に、アメリカ、南ヴィエトナムは勿論、ソ連、東欧、イギリス、カナダともヴィエトナム和平については色々と話し合いを行ない、また提案も試みました。「相互保障」方式などもその一つであります。

現在のところ、北ヴィエトナム爆撃をアメリカが一方的に停止すべきか否かに議論が集中されております。

北爆が好ましいと思っているものは誰一人あるはずはありません。

しかし、北爆停止は戦争終結に役立つ方向で実現されなければかえって危険な面も有しております。すなわち、北爆が停止されても、北から南への補給や派兵が続く場合は、逆に更に激しい北爆再開となることを私は恐れるものであります。

問題は相互不信の除去であります。このため、たとえば、北ヴィエトナムの友好国を通じての何等かの保障が必要でありましょう。形はアメリカの一方的無条件の停止でも、そうした保障なしには、実際問題として北爆停止の実現はむずかしいのではないでしょうか。

この場合、北ヴィエトナム友好国側のこのような保障に対し、北ヴィエトナムは、アメリカの友好国側にいかなる保障を求めるでありましょうか。知りたい点であります。もしそれが、和平が達成された暁のアメリカ軍の撤退と基地撤去でありますならば、アメリカの友邦は挙って保障国たり得るでありましょう。

ヴィエトナム人の運命はヴィエトナム人自身が決めるべきであります。北ヴィエトナムもヴィエトコンも、そして南ヴィエトナム政府自体も、できるだけ早く、アメリカをして安んじて撤兵をし得る環境を作り、その上で自分達で民族自決を図るべきものと考えます。こうした環境を速かに作ることを当面の目標として、現実的、実際的解決の道の探究をアメリカ並びに全ヴィエトナムの人々に私は強く訴えたいのであります。

最近、北鮮が米国の艦艇を拿捕する事件が起りました。この事件は、わが国と極めて近い地域に起ったものでありますだけに、われわれとしても重大な関心を抱かざるを得ません。

私は、この地域を新たなる紛争の地域にしては絶対にいけないと信ずるものであります。

私は、当事者がこの事件を速かに解決するため、冷静にして慎重な態度で対処することを強く要望するとともに、わが国としても事態の平和的解決のため協力を惜しまぬ覚悟であります。

以上、当面の重要な問題について申し述べましたが、ここに、過去一年のわが国の外交活動を振り返ってみたいと存じます。東南アジア経済開発の問題、日ソ間懸案の検討問題、核兵器拡散防止条約の問題、ケネディ・ラウンドの交渉問題、中東の問題等はすべて前進をとげております。

東南アジア経済開発問題については、昨年四月マニラで第二回東南アジア開発閣僚会議を開催いたしました。この会議において、東南アジア漁業開発センターが正式に決定をみ、わが国の技術指導のもとに作業を開始することになりました。第三回会議は来る四月シンガポールで開かれる予定でありますが、政府としては、アジア開発銀行の営業開始、農業開発特別基金の設置等の進展と歩調を合わせながら、東南アジアに対する多角的経済協力を一層強化する所存であります。

またアスパック、すなわちアジア太平洋閣僚会議は、昨年七月バンコックで第二回会議を開きました。第三回会議は本年七月オーストラリアのキャンベラで開かれる予定であります。この会議は、アジア太平洋地域の連帯と協力の精神を深め、適当な共通の事業を行なうのみならず、参加国外相級の自由率直な定期的話合いの場として健全な発展をとげて行くよう今後とも協力してまいりたいと考えております。

私はアジアの繁栄は、アジア諸国の相互協力に太平洋諸国の連帯協力が加わることにより始めて促進され得るものと確信しております。アジアと太平洋の接点にあるわが国として、この重要な長期的課題に出来得る限りの貢献をなすべきであると存じます。幸いアジア太平洋諸国間の相互理解と連帯協力の気運は、官民のレベルを問わず、各種の交流を通じて次第に高められております。ヴィエトナム戦後の永続的なアジアの安定と平和を考えた場合、アジア太平洋地域協力の基盤が一層強化される必要のあることは申すまでもありません。

昨年佐藤総理大臣が韓国並びに中華民国を手始めに、広くアジア太平洋諸国を歴訪されたことは、わが国とこれら諸国との相互理解と協力の進展に大いなる功績を収めたものと信じます。

日ソの関係につきましては、私は昨年七月、第一回日ソ定期協議のためソ連を訪問し、コスイギン首相その他ソ連政府首脳部の人達と親しく会談する機会を得ました。その際にコスイギン首相の行なった提案に基づき、日ソ間のあらゆる懸案の総ざらいを行なうため、昨年以来両国政府間の話し合いを開始いたしました。このような交渉を通じて両国間に長期的に安定した善隣友好関係を樹立し得ることを期待するものであります。北方領土の問題につきましては、いかに時間がかかろうとも、あくまでもわが公正なる主張の下にその解決を図る覚悟であります。

核兵器拡散防止条約の問題については、去る一月一八日、米ソ敵国が一八カ国軍縮委員会に提出した核兵器拡散防止改訂条約案には、日本の主張も相当にとり入れられております。今後政府としては、公正な条約が実現されるよう一層の努力を傾ける所存であります。

昨年の国際経済は、一方に、ケネディ・ラウンドの関税一括引下げ交渉が妥結し、国際通貨基金における特別引出権創設についても合意が成立する等、大きな進展がありましたが、他方、昨年秋より本年初頭にかけて、ポンドの切下げ、ドル防衛の強化を契機に、わが国をめぐる国際経済環境は厳しさを増しております。しかしながら、わが国としましても先進工業国の一員として、この困難な国際環境の克服に協力してまいりたいと考えております。

さらに、今日の日本は世界の南北問題解決に貢献する心構えが必要であると思います。

勿論、日本国内にも解決すべき幾多の経済的、社会的問題を抱えておりますが、しかし、国内問題が片づいてから南北問題にかかるといって過せるものではありません。日本の長期的な繁栄はアジアの繁栄の中にこそ約束されるものであります。アジアの先進工業国として、アジアの南北問題に対する日本の寄与は当然の責務であります。貧困は国際不安定の原因であります。南と北との格差が縮まらない限り世界の不安定は解消されません。南北問題に対する国民の理解を求めたいと存じます。

中東問題については、国際連合が安全保障理事会を通じて、解決の方途を示し得たことは大きな進展というべきであります。この間、安全保障理事国として公正な見地から関係各国の意見の調整に陰の努力を続けたわが国の活動は高く評価されております。中東問題の終極的解決は当面困難とは考えられますが、今後も国連の場を通じ正しい解決の方向へ向って力を尽す所存であります。

私は、昭和四三年という年は、世界的に新たな展開が始まる年になるかも知れぬと考えております。それだけに日本外交にとっても重要な年であります。これからの日本外交を推進して行くためのわれわれの心構えは、一体どうあるべきでありましょうか。国民各位とともに深く考えるべき課題であります。

今日を核外交時代と呼ぶ人があります。そして、軍事力の背景のない外交は無力であり、現代の力の象徴は核兵器であるから核兵器を持たない国は国際的発言力が弱いという意見があります。私はこの意見に組することはできません。たとえ核兵器を持たなくとも、今後日本が日本の立場から世界の平和と繁栄に貢献するならば、国際社会で尊敬され重視され得る日本たり得ることは間違いありません。

しかし、核エネルギーの平和利用の面における機会均等だけは絶対に確保せねばなりません。このことに保証を求める日本の主張を曲げるようなことは、私はいたしません。

核時代といえども、一国の防衛にその国民が最大の努力を払うという世界普遍の原則に変りはありません。国の安全確保に関する責任は自ら負わねばならぬことは申すまでもありません。しかし、現実問題として、一国のみで国の安全を確保することは不可能であります。今日は集団安全保障の時代であります。

このような、世界に共通した集団安全保障体制をとることが却って戦争に近づくという考え方は、世界に通用する議論ではありません。

われわれは、日本の安全に関する日米安全保障条約の意義を正当に評価し、自主的判断に基づき、自らの防衛努力とともに日米安全保障条約を堅持して行く考えであることを明らかにいたしておきたいと思います。

さらに今日はいずれの国とも共存共栄の道を追求せねばならぬ時代であります。共存共栄を否定すれば対決と戦争しか残りません。

現在の世界が、イデオロギーを超えて共存の方向に大きく動いていることは、まことに喜ぶべき傾向であります。この中で、中共は未だ資本主義、自由主義との共存を認めておりません。しかし中共が永久に現在のままであるとは思われませんが長い目をもって私は大陸隣人の良識を期待するものであります。

人類三十数億、百数十カ国、そこには、ありとあらゆる考え方、民族、慣習の違いがあります。互いに文化交流を通じ相互の理解を深め、「共存の哲学」を悟る以外に人類の生きて行く道はないのではないでしょうか。

私は、流動する世界情勢の中にあって、歴史の教訓に学びつつ、日本の環境からくる外交の諸原則に副って、国益の増進と世界の平和と進歩のために全力を傾ける所存であります。国民各位の御理解と御支持を期待するものであります。

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二、日本政府と各国政府との共同コミュニケ

 

1 ヴィリー・ブラント・ドイツ連邦共和国副首相兼外務大臣の日本訪問に関する日独共同コミュニケ

(昭和四二年五月一二日)

ヴィリー・ブラント・ドイツ連邦共和国副首相兼外務大臣は、クラウス・シュッツ外務次官その他の高官を帯同して、本年度の日独外相定期協議を行なうため、五月九日東京に到着した。同副首相夫妻は、一〇日天皇・皇后両陛下に謁見を賜わった。同外務大臣は、また、一〇日佐藤総理大臣と会見し、一一日および一二日の両日三木外務大臣との間で協議を行なった。一一日には、事務レヴェルの協議も行なわれた。

この第三回目の定期協議は、一九六六年一月椎名悦三郎前外務大臣のボン訪問に際して行なわれた協議に引きつづくものであり、極めて友好的な雰囲気のもとに行なわれた。両外務大臣は、アジアにおける情勢および欧州の諸問題につき意見を交換し、現下の世界情勢に関し、両国の共通の関心ある事項について討議を行なった。その際両外務大臣は、東西緊張緩和の趨勢に歓迎の意を表した。両外務大臣は、軍縮が世界的規模で行なわれるよう具体的な措置がとられることの必要性を強調した。両外務大臣は、核兵器の製造を行なわず、かつ、かかる兵器に対する管理権の取得を求めないことは、日独両国政府がつとに宣明している政策であること、および日独両国が原子力平和利用の分野において、すでに自発的に国際管理に服していることを指摘した。両外務大臣は、核兵器拡散防止条約について意見の交換を行ない、このような条約が核兵器非保有国による原子力の平和利用を妨げるものであってはならず、また真に世界平和の維持に有効な貢献を齎すものでなければならないことにつき意見の一致をみた。

両外務大臣は、日独両国が、アジアおよび欧州における緊張緩和のための努力を強化継続し、諸問題の平和的解決につとめることにつき意見の一致をみた。

三木外務大臣は、アジア太平洋地域諸国に連帯感と進取の精神が急速に高揚していることを指摘し、さらに同地域の開発途上にある諸国における生活水準の向上が、これらの国の政治的安定、ひいてはアジア太平洋地域および世界の平和の維持に大きな関係があることを力説し、これら諸国の援助に域外先進国であるドイツが協力することを希望した。

ブラント外務大臣は、三木外務大臣の意見に同感の意を表し、ドイツができる限り、これら諸国の援助に協力する用意があることを明らかにした。ブラント外務大臣は、真の永続的な世界平和の確立のためには、ドイツの分割が平和的手段により、かつ民族自決の基礎に立って克服されることが不可欠の要素であるとの見解を強調した。三木外務大臣は、この見解に同感の意を表するとともに、日本政府が常に理解と同情をもってドイツ国民の国家再統一への願望を支持していることを確認した。

この点に関し、ブラント外務大臣は、一九六七年四月一二日のドイツ連邦議会におけるドイツ政府声明に言及して、ドイツ民族がドイツの分割の期間中できる限り二つにわかれて隔離されたままでいないようにすることがドイツ政府の意向であると述べた。同外務大臣は、また、ドイツ政府は、ドイツにおける暫定的措置は受け入れることができるが、このことは、ドイツにおける現状を承認するものと解されてはならない旨を強調し、同政府の関心は、政治的前提条件なしに、人道上の問題の軽減をはかることにあると述べた。

両外務大臣は、さらに、両国間の関係の発展について討議し、前回の定期協議以来両国政府間において、両国が共通に関心を有する諸問題に関して接触と意見の交換が一層緊密かつ建設的に行なわれるようになったことを満足の意をもって確認した。両外務大臣は、両国間の経済関係が良好に発展してきており、この関係が両国経済界の指導者の接触および技術協力の強化により、更に増進されることを希望した。両外務大臣は、文化面における両国間の協力が、過去一年の間に、特に学術、技術および芸術の交流ならびに実習生、青少年の交換の分野において強化されたことを喜び、両国における文化会館の開設が両国の文化協力を一層緊密にするものであることを認めた。

両外務大臣は、日独間の定期協議は、両国関係を相互理解と友好親善の基礎の上に発展させるに資するところが大であることにつき意見が一致し、〈今後もこれを積極的に進める希望を表明した。

両外務大臣は本年八月の日本国の大使会議のさいに予定されている三木外務大臣のドイツ訪問にあたり、両外務大臣が再会する機会が与えられることを満足の意をもって確認した。

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2 コルネリウ・マネスク・ルーマニア外務大臣の訪日に際しての共同コミュニケ

(昭和四二年六月八日)

コルネリウ・マネスク・ルーマニア社会主義共和国外務大臣は、夫人とともに、日本国政府の賓客として、一九六七年五月三一日より同六月七日まで日本を公式に訪問した。

マネスク大臣夫妻は東京・大阪および京都の各都市において経済・文化、及び観光の面で興味ある場所を訪問し、日本国民のゆたかな文化的伝統ならびに経済及び社会の分野における日本国民の発展に親しく接する機会を得た。

ルーマニア外務大臣夫妻は、滞日中、皇居において、天皇、皇后両陛下に謁見を賜わった。ルーマニア外務大臣は、また、佐藤総理大臣及び菅野通商産業大臣を訪問した。

マネスク外務大臣は、三木外務大臣と二回にわたって会談した。会談は打ちとけた友好的な雰囲気の中に行なわれた。この会談において、両国外務大臣は現下の国際情勢および日本・ルーマニア両国が相互に関心をもつ諸問題について率直に意見を交換した。

両国外務大臣は、両国間の貿易額が、過去数年間に数倍に増加したことをよろこぶとともに、両国間の貿易および経済関係をさらに拡大する可能性がなお多々あることを認めた。この点に関し、両国外務大臣は、日本とルーマニアの間の通商航海条約ができる限り早い機会に締結されるよう努力すべきことに合意した。

両国外務大臣は、日本・ルーマニア間の友好関係を強化発展せしめるべきこと、および、このために経済および文化の面において具体的な諸措置を講ずべきことについて、合意した。

両国外務大臣はヴィエトナムの現状についての関心を表明した。両国外務大臣は、右事態を最終的に解決するためには一九五四年のジュネーヴ協定を基礎とすべきであるという点で意見が一致し、また、ヴィエトナムにおける紛争の停止のために必要な諸条件を造り出すためにとるべき方法について、それぞれの立場を表明した。

両国外務大臣は、国際問題の諸局面について意見を述べ、日本・ルーマニア両国が、民族独立および主権、平等、内政不干渉ならびに互恵の原則に基づいて、平和と国際協力のためにその努力を続けるべきことに合意した。

両国外務大臣は、全世界に平和と安全を確保するために国際連合が有する重要性を考慮し、国連憲章に規定された諸原則に基づいて、国際協力の機構としての国際連合の効率を強化することに賛意を表明した。

両国外務大臣は、核兵器拡散防止条約の問題に関し、核戦争の危険を除去するために有効な措置をとることの必要性を指摘し、特に、核兵器非保有国がこの条約によって原子力の平和利用の分野における近代科学技術の成果を享受する上に不利益を蒙ることがあってはならないことを強調した。

日本国外務大臣は、本邦に来訪した最初のルーマニア外務大臣であるマネスク大臣の今日の訪問が、日本・ルーマニア両国間の友好関係と相互理解を一層増進するために大いに貢献したことに満足の意を表明した。

ルーマニア外務大臣は、滞日中に示された暖かい歓迎と厚遇に対し衷心感謝の意を表明した。

両国外務大臣は、相互理解のために両国政府が接触し、意見の交換を行なうことが重要であり、また有益である旨を強調した。

マネスク外務大臣は、三木外務大臣がルーマニアを公式に訪問するように招待した。日本国外務大臣は、この招待を受諾した。訪問の時期は追って外交経路を通じて取決められることとなった。

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3 三木外務大臣のソヴィエト連邦訪問に関する日ソ共同コミュニケ

(昭和四二年七月二五日)

日本国外務大臣三木武夫は、一九六七年七月二〇日から二五日までソヴィエト連邦を訪問した。

三木外務大臣はモスクワのほかレニングラードを訪問した。同大臣はこれらの都市において文化及び学術機関ならびにソ連国民の生活の一部を視察した。日本国外務大臣夫妻及び同行者はあたたかい接遇を受けた。

三木外務大臣はコスイギン・ソヴィエト連邦大臣会議議長と会見し、また、バイバコフ・ソヴィエト連邦大臣会議副議長、グロムイコ外務大臣及びクズネツォフ第一外務次官と会談した。

会見及び会談においては、日ソ両国風係の問題及び両国がその解決に関心を有する国際問題について意見の交換が行なわれた。

三木外務大臣とグロムイコ・ソヴィエト連邦外務大臣は日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約の批准書を交換した。

三木外務大臣とイシコフ・ソヴィエト連邦漁業大臣は漁業の分野における学術上および技術上の協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に署名した。

三木外務大臣とバカーエフ・ソヴィエト連邦海洋船舶大臣は海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の補足に関する書簡を交換した。

会見および意見の交換は、極めて有益であった。

日本国とソヴィエト連邦外務大臣との次回定期協議は東京で行なうことに合意された。

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4 三木外務大臣のポーランド訪問に際しての共同コミュニケ

(昭和四二年七月二七日)

三木武夫日本国外務大臣は、アダム・ラパツキー・ボーランド人民共和国外務大臣の招待により、七月二五日から同月二七日までポーランドを公式訪問した。

この訪問中、三木外務大臣は、スタニスラフ・クリスチンスキー・ポーランド人民共和国国家評議会副議長およびヨーゼフ・チランケーヴィチ閣僚会議議長に表敬した。

三木外務大臣は、政治問題につきラパツキー外務大臣と、また、日本・ポーランド間の経済関係の一層の発展に関する問題につきトロンプチンスキー外国貿易大臣と広範な話合いを行なった。

三人の大臣は、両国間の通商が成功裡に拡大していることを満足をもって認め、かつ、通商関係の拡大ならびに経済、産業および技術の分野における協力が両国の利益に合致するものであるとの確信を表明した。この問題に関し、三木外務大臣およびトロンプチンスキー外国貿易大臣は、日本・ポーランド混合委員会を開催することに合意した。この委員会は、一九六七年秋、ワルシャワにおいて開かれる。

この話合いにおいて、両国外務大臣は、日本・ポーランド二国間関係を討議し、現在の国際問題につき意見を交換した。話合いは率直な、かつ、相互理解の増進を希望するとの雰囲気のうちに行なわれた。

両国外務大臣は、文化および科学交流の発展に対し満足の意を表明した。両国外務大臣は、これら諸分野におげる両国間の接触を拡大するためにさらに具体的措置をとることを合意した。

両国外務大臣は、国際情勢の討議にあたり、独立、主権および内政不干渉の諸原則に基づき国際協力を推進し、かつ、国際問題が平和的話合いにより解決さるべきであるとの希望を表明した。

両国外務大臣は、東南アジアにおける情勢につき、関心を表明するとともに、この地域における諸問題に関するそれぞれの立場を表明した。

両国外務大臣は、ジュネーヴ協定に規定されている諸原則がヴィエトナム問題解決の基礎を構成するものであることを合点し、かつ、この問題を早期に解決する必要性を強調した。

両国外務大臣は、中東における紛争を討議した際、この地域における永続的平和を確保するために良好な条件を醸成することが重要であることを述べ、また、この目的を達成するためイスラエル軍が一九六七年六月五日以前の線までただちに撤退することが必要であり、適当な措置がとられるべきことを合意した。

三木外務大臣は、さらにアジアにおける諸問題に関する見解を表明した。ラパツキー外務大臣は、特に欧州の安全保障問題およびこの問題に関するポーランドの発意につきその見解を表明した。同外務大臣は、ドイツ問題の重要性を同国の経験に徴し説明した。三木外務大臣はここに述べられたポーランドの立場を関心をもって聴取した。

両国外務大臣は、有効な国際管理の下において実施さるべき全面完全軍縮に関する条約が、国際平和と安全保障にとり決定的重要性を有するものであるとの確信を表明した。両国外務大臣は、核兵器拡散防止に関する条約の締結が極めて重要であり、これは軍備競争を停止せしめることに寄与し、かつ、国際緊張緩和に役立つであろうということに合意した。両国外務大臣は、また、その他の関連措置も全面軍縮の促進を助長するものである旨述べた。

両国外務大臣は、全世界に平和と安全を確保するために国際連合が有する重要性を考慮し、国連憲章に規定された諸原則の完全なそん重、および遵守を基礎として、国際協力の機構としてのこの機関の効率を強化することに賛意を表明した。

ポーランド外務大臣は、同国を訪問した最初の日本国外務大臣である三木武夫大臣の今回の訪問が、日本・ポーランド両国間の友好関係と相互理解を一層増進するために大いに貢献したことに満足の意を表明した。日本国外務大臣は、今回の訪問に当り、同大臣に示されたポーランドのあたたかい歓迎と厚情に対し衷心より感謝の意を表明した。

両国外務大臣は、直接の個人的接触および意見の交換が重要、かつ、有益であることを認め、両国政府が相互にとり関心のあるすべての事がらにつき接触を続けることを合意した。

三木武夫日本国外務大臣は、アダム・ラパツキー・ポーランド外務大臣が日本国を公式に訪問するよう招待した。ポーランド外務大臣は満足の意をもってこの招待を受諾した。訪問の時期は、追って外交経路を通じて取決められることとなった。

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5 三木外務大臣のチェッコスロヴァキア社会主義共和国訪問について

(昭和四二年七月三〇日)

三木外務大臣は、夫人および随員とともに、V・ダヴィド外務大臣の招待により、一九六七年七月二七日から二九日まで、チェコスロヴァキア社会主義共和国を公式訪問した。

三木大臣は、滞在中、ヨーゼフ・レナールト総理大臣に表敬し、ワーツラフ・ダヴィド外務大臣およびフランチーシェク・ハモウズ外国貿易大臣と会談した。

三木大臣とワーツラフ・ダヴィド大臣は会談に際し、現在の国際諸問題についての意見を交換し、両国関係を一層発展させることに関連する諸問題をとりあげた。

双方は、経済、科学技術協力ならびに文化、スポーツの分野において、日本、チェッコスロヴァキア関係をきらに一層発展させるための可能性が存在することを合意した。

フランチーシェク・ハモウズ外国貿易大臣との会談に際し、双方は、貿易が増加傾向にあることを認め、さらにそれを発展させる方途を探求する必要があることを合意した。

訪問中の諸会談は、丁重かつ友好的な雰囲気のうちに行なわれた。

三木外務大臣は、ワーツラフ・ダヴィド・チェッコスロヴァキア社会主義共和国外務大臣が日本国を公式訪問するように招待した。

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6 三木外務大臣のハンガリー訪問に際しての共同コミュニケ

(昭和四二年八月一日)

三木外務大臣は夫人とともに、ハンガリー政府の賓客として一九六七年七月二九日より同月三一日まで同国を公式訪問した。

三木外務大臣は、その滞在中、イエノー・フォック閣僚会議議長およびヨーゼフ・ビーロー外国貿易大臣を訪問した。

三木外務大臣は、その滞在中、ヤーノシ・ぺーテル外務大臣と会談した。

両国外務大臣は、打ちとけた友好的な雰囲気の中に行なわれた会談において、現下の国際問題および日本・ハンガリー両国が相互に関心をもつ諸問題について率直に意見を交換した。

両国外務大臣は、日本・ハンガリー間の友好関係が多くの分野において、強化、発展していることを満足をもって認め、両国関係を強化発展させるために今後具体的な諸措置を講ずべきことについて合意した。

三木外務大臣は、アジアにおける諸問題に関する意見を表明した。これに対してぺーテル外務大臣は、欧州における情勢についてその見解を述べた。両国外務大臣は、日本およびハンガリーは今後とも平和のために国際的活動を通じて貢献すべきことについて合意した。

ペーテル外務大臣は、同国を訪問した最初の日本の外務大臣である三木大臣の今回の訪問が、日本・ハンガリー両国間の友好関係と相互理解を一層増進するために大いに貢献したことに満足の意を表明した。

三木外務大臣は、ハンガリー滞在中に示された暖かい歓迎と厚遇に対し衷心より感謝の意を表明した。

三木外務大臣は、ぺーテル外務大臣が日本を公式に訪問するように招待した。ぺーテル外務大臣は、この招待をよふこんで受諾した。訪問の時期は追って外交経路を通じて取決められることとなった。

7 第一回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ

(昭和四二年八月一一日)

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一 第一回日韓定期閣僚会議は一九六七年八月九日から一一日までの三日間東京で開催された。

二 会議には、韓国側からは張基栄副総理兼経済企画院長官、崔圭夏外務部長官、徐奉均財務部長官、金栄俊農林部長官、朴忠勲商工部長官及び安京模交通部長官が金東祚駐日大使とともに出席し、李洛善国税庁長及び呉定根水産庁長も参加した。

三 日本側からは、三木武夫外務大臣、水田三喜男大蔵大臣、倉石忠雄農林大臣、菅野和太郎通商産業大臣、大橋武夫運輸大臣及び宮沢喜一経済企画庁長官が、木村四郎七駐韓大使とともに出席し、泉美之松国税庁長官及び久宗高水産庁長官も参加した。

四 会議は、次の議題を採択し、討議した。

(一) 両国関係一般のレヴュー及び展望並びに国際情勢一般に関する意見の交換

(二) 両国の経済情勢の説明

(三) 経済協力問題

(四) 貿易問題

(五) 租税問題

(六) 農林水産問題

(七) 海運問題

五 両国の閣僚は、終始率直かつ友好的雰囲気の中に、議事を進めた。

両国の閣僚は、まず全体会議において両国関係の全般的レヴューを行ない、両国それぞれの経済情勢につき説明を行なった後、両国関係及び国際情勢、経済協力、貿易、租税、農林水産、海運の各問題別の個別会議を開催し、最後に再び全体会議を開催して総括を行なった。

六 両国の閣僚は、国際情勢一般に関して広範囲に意見を交換した。日本側は、世界的な緊張緩和の情勢を指摘し、日本の外交の基本方針が平和の維持にあることを説明した。韓国側は、アジア地域における緊張状態の存在を強調し、共産主義勢力の直接の脅威に直面している韓国の特殊な立場を説明した。

両国の閣僚は、両国間の緊密な協調関係がアジア太平洋地域での自由諸国の平和と繁栄に寄与することを確認し、アジア太平洋閣僚会議(ASPAC)等を通ずる地域的協力体制の維持強化のため引続き協力することに意見の一致をみた。

七 両国の閣僚は、両国間の条約及び諸協定の実施状況を含め、両国間における諸般の関係を検討し、相互の理解と信義に基づき両国間の協調関係を着実に発展させなければならないこと、及び両国間の諸問題に関して、一層緊密な協議を行なうことが必要であることに意見の一致をみた。

(一) 韓国側は、在日韓国人の法的地位及び待遇に関する協定の日本国内における実施に関して去る七月二〇日及び同二一日の両日にわたり東京で開催された両国政府関係実務者の会談で了解された事項は、最短期間内に確認されるべきであると述べ、これに対して日本側は異議がない旨表明した。

(二) なお「北送問題」については、韓国側はこれに強く反対する立場を再び明らかにし、その即時打切りを要請した。これに対し日本側は、今年一一月をもって終了することになっているいわゆるカルカタ協定を再延長する考えのないことを明らかにした。

八 日本側は、日本の経済事情に関し、昨年に引続き本年も国内経済活動が活発に推移している反面、国際収支等に問題が生じるおそれの出てきたことを指摘し、今後における均衡がとれ安定した経済成長のため財政金融政策の適切な運営をはかる意図であると述べた。

韓国側は、昨年九月、ソウルで開催された日韓経済閣僚懇談会以後の韓国の経済成長につき説明し、特に第二次経済開発五カ年計画の早期完遂の展望を明らかにした。

九(一) 韓国側は、韓国の第一次経済開発五カ年計画をはるかに上廻る顕著な経済成長の実績を説明し、第二次経済開発五カ年計画の早期達成に対する日本側の協力を要請し、これに必要な一般プラントについて今後二億ドルを限度とする新たな商業上の民間信用にかかる輸出承認を一九七〇年上半期までに、これらプラントが完成するよう行なうことを要請した。

日本側は、これに対し、二億ドルを限度とする新たな商業上の民間信用にかかる輸出承認を行なう用意がある旨を述べ、その実行のスケジュールについては、至急両国政府間で協議することに合意した。

(二) 九千万ドルの漁業協力のための民間信用供与及び三千万ドルの船舶輸出のための民間信用供与については、日本政府は一九六七年以降一九六八年末までに三千万ドルを限度として輸出承認を行なうこととし、その後もなるべく速やかに実施するよう両国政府間で合議することとなった。

(三) 一九六七年八月一〇日現在すでに韓国側が銀行保証状を発行したプラント契約に関しては、日本政府は所要の手続を経て今後六カ月以内に輸出承認を行なうこととした。

十 両国の閣僚は両国貿易の現況と趨勢を検討し、互恵の原則に基づき将来両国貿易の拡大と均衡を図ることを念頭におきつつ意見の交換を行ない、

(一) 開発輸出、加工貿易及び合弁投資等を含む貿易拡大の方策に関し検討するため両国政府の関係者によって構成される貿易合同委員会を設けるとの韓国側提案について日本側は同意した。

(二) 加工貿易に関する韓国側の要望については、日本側は韓国に対して、原材料の無為替輸出及び機械設備の貸与はケース・バイ・ケースで認めることとしており、逆委託加工によって再輸入される商品の原材料部分に対する関税免除については、現状では困難であるが、国内産業と競合しない品目についてはなお十分検討してみたい旨述べた。

また特恵関税制度についてはなお検討中であるがこれを実施する場合には韓国側の要請する品目に対して十分に配慮する旨述べた。

(三) 韓国側が要請したプロトタイプ技術訓練センターの設置については、日本側は、その要請に考慮を払い、今後事前調査等により具体的な内容を検討する旨述べた。

(四) 韓国産葉煙草輸入要請に対して、日本側は試験輸入の結果をまって将来の輸入額の増加を検討する旨約した。

(五) 在韓日本商社問題に関する日本側の要望に対し、韓国側は現在問題となっている商社に対するオファー商の登録を認めることを考慮し、商社員等の入国、滞在及び家族同伴についても好意的な検討を行なう旨述べた。

(六) 工業所有権の保護に関しては、日本側は韓国側の要望した関係資料の提供等の便宜をはかり、韓国側は日本の工業所有権の保護に対し好意的考慮を行なう旨約した。

(七) 日本映画輸入に関する日本側の要望に対し、韓国側は文化映画につき好意的に検討すると述べた。

一一(一) 日本側は、在韓商社に対する課税問題に関し、韓国政府が、韓国内での事業活動に対応した合理的な課税を行なうことにより、早期にこれを解決することを要望した。

これに対し、韓国側は関係国内法の解釈の許す限り、公正妥当な課税となるよう措置することを確認した。

両国の閣僚は、租税条約を中期に妥結するため本年一〇月から交渉を開始することにつき、意見の一致をみた。

(二) これに関連して、韓国側は、在日韓国人に対する日本政府の課税に関して日本政府の好意的な配慮を要請し、かつ、これら在日韓国人の経済活動、特に銀行設立の許可と信用組合の認可及び活動について、日本政府が特別な考慮を払うことを要望し、日本側は、韓国側のこの要望を具体的に検討することを約した。

一二(一) 両国の閣僚は、農林水産物の貿易については、

(1) 韓国の農林水産物輸出増大を促進するため、日本産品と競合しないものにつき、両国の実務者により契約栽培及び飼育に関する調査を行なうことについて合意した。

(2) 生牛については、将来の牛肉輸出を促進する趣旨から、牛肉の品質、価格等について必要な資料を得るため、この際例外として、本年度内に生牛の試験輸出をするよう早急に検討することに合意した。

(3) 農林水産物の輸入制限品目に関する日本側の輸入割当は、日本産品との競合に留意しつつ、漸増を期することに合意した。

(二) さらに漁業問題については、

(1) 韓国側は、漁業協力のための民間信用供与九千万ドルの使用に関し、日本国内の船台事情と船価にてらして、必要に応じ、韓国国内造船のための資材及び機器の輸出を認めるよう強く要請した。これに対し、日本側はその趣旨を理解し、これについて検討する旨述べた。

(2) 漁業協力のための民間信用供与九千万ドルのうち五千万ドルの運用と関連し、海外漁場における市場の共同開拓並びに両国漁業の相互発展等の共同利益をはかるため、両国当局は、民間の合作投資及び相互協力を奨励することに合意した。

(3) 韓国側は、両国間の増大する水産物の需要を充たし、併せて交易の拡大をはかるため、日韓両国当局は、韓国沿岸増殖事業開発のための共同調査を年内に実施するよう提案した。これに対し、日本側は、日本産品と競合しないものにつき、これを実施することに同意した。

(4) 韓国側は、両国間の現行協定に基づく漁業協力の見地から、日本国が最近制定した「外国人漁業の規制に関する法律」の施行について、韓国漁船の日本寄港等に支障をもたらすことがないものと理解する旨述べた。これに対し、日本側は同法律の運用に当っては、韓国漁船の日本寄港等に支障のないよう配慮する旨表明した。

十三 日本側は、海運問題に関し、なるべく速やかに海運自由の原則に基づく海運協定を締結することにつき、韓国側の協力を要望し、韓国海運振興法の運用につき、日本海運に不利な影響を与えないよう韓国側の善処を望んだ。

これに対し、韓国側は、海運自由の原則を将来実現されるべき共同の努力目標とし、両国海運の実情を勘案しながら、海運協定の早期締結のため今後とも継続して努力する旨述べた。

なお、韓国側は同法は特定国を対象とするものでなく、自国海運の現状にかんがみ、その育成のためやむを得ざるものである旨、またその運用面においては日本側の要望に留意する旨述べた。

十四 両国の閣僚は、今回の会議が、両国の相互理解を深め、相互の協力を一層推進する上に極めて有益であったことに意見の一致をみた。

十五 第二回日韓定期閣僚会議は、来年、日韓両国政府が合意する時期にソウルで開催されることに合意をみた。

十六 韓国側閣僚はこのたびの第一回日韓定期閣僚会議中に日本国政府と国民から示された歓待に対して謝意を表した。

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8 第六回日米貿易経済合同委員会共同コミュニケ

(昭和四二年九月一五日)

一 第六回日米貿易経済合同委員会は、昭和四二年九月一三日、一四日、一五日、ワシントンにおいてディーン・ラスク国務長官議長の下に開催された。

委員会は、アジアにおける継続中の紛争及び中近東における緊張に特に重点を置いて世界情勢一般を検討した。委員会は、アジアの中の地域協力強化についてのアジア人のイニシアティヴ及び具体的な成果を歓迎した。

同委員会は、これらの発展が同地域及び世界にとって有益であり、安定、繁栄及び平和にとり有意義であることにつき合意した。

人類、なかんずく、低開発国の男子、女子、子供にとって負担となる数多くの且つ複雑な困難、危険及び苦悩を認識し、両国政府は、アジア・太平洋協力を強化するための変らざるパートナーシップを誓約した。

二(一) 委員会は、両国が繁栄を享受してはいるが、政府が注視していく必要のある経済調整問題に直面していることに留意した。両国代表団は、一九六六年に五〇億ドルを既に越えた日米貿易の継続的な成長に対しても貢献するであろう両国経済の安定的且つ持続可能な拡大の重要性につき合意した。

(二) 委員会は、世界の経済成長と進歩に副う措置により国際収支ポジションを均衡させる米国の決意とともに、国際収支を強化するため先般執られた日本の措置に留意した。委員会は、近年における各々の国際収支面における諾困難に対処するに当り、両国政府間に非常に有益な協議が行なわれてきたことを認めた。この国際収支に関する協議が継続されるべきことが合意された。

(三) 委員会は、広範囲にわたる日米間の貿易経済関係上の諸問題を、両国の特定産業が直面している個別的な困難を含め、討議した。日米貿易の全般的な成長及び両国間の関係は、その経済関係が両国政府が友好的な雰囲気の中で貿易障害の軽減の可能性を建設的に取扱い得るほど密接なことにつき満足の念が表明された。両国政府は、現在未解決のないしは時折生ずるであろう問題を共同して検討することとした。

(四) 委員会は、国際投資問題を考慮した。日本代表団は、一九六七年七月一日に実施された私的投資の日本への受け入れを自由化する計画につき報告し、且つ一九七二年初め頃には可成り広汎な分野において一層の自由化が行なわれるように一年ないし二年の期間を置いて同計画を再検討することが日本の意向であることを述べた。

米国は、最初の措置としての日本の計画の策定に払われた努力を多としつつも、同措置にはやや失望を禁じえないとし、自由化が出来るだけ早められるよう希望を表明した。同国は、また日本における既存の米国企業の運営に悪影響を及ぼすものと見られる先般の諸措置につき懸念を表明した。米国代表団は、米国における日本の投資が積極的に促進されていることを繰り返して説明し、且つアラスカの開発に貢献する投資に対する日本の関心が昂まっていることに喜びを表明した。

(五) 委員会は、漁業に関する問題を討議し、漁業関係の諸問題のうちあるものについて過去一年間に両国間で相互に受諾し得る取決めが結ばれたことに留意した。

(六) 委員会は、海運、航空及び旅行問題の過去一年間における推移を検討し、密接な協議を継続することにつき合意した。委員会は、特に都市交通問題、海上・航空・陸上輸送技術及び安全性並びに輸送に係る環境汚染に関する発展の研究及び協力につき密接に協議することに合意した。委員会は、両国間の海上、航空旅行及び貨物運送を容易化する方法を研究するための適当な場を設けることにつき合意した。

米国訪問計画とともに、大阪における七〇年の万国博覧会により生ずる必要性に鑑み、旅客を処理するための改良された技術を開発する必要が特に留意された。

三(一) 諸国間の商品及び役務、資本並びに人間の自由な移動に対する制約を縮小させるための多角的な経済機構における日米間の密接な協力を継続することが委員会により強調された。

委員会は、相互の理解と忍耐強い交渉により世界貿易を拡大するために達成され得るものの例としてケネディ・ラウンドの目覚しい成功を歓迎した。世界貿易の拡大に対するケネディ・ラウンドの偉大な貢献を認める一方、委員会は、貿易に対する関税及び非関税障害の軽減と世界の低開発地域がその開発のため必要とする貿易への参加を増進するに当り、ガットを通じて行なわれるべきものが依然多く残されていることを指摘した。両国政府は、これらの目的を達成するため他の諸国と協力して執り得べき今後の貿易上の諸方策を検討するであろう。

(二) 委員会は、低開発国の経済開発を促進するための努力を支持する建設的な措置の重要性を認め、低開発国の貿易問題に特に注意を払った。委員会は、国連貿易開発会議が低開発国の貿易問題を考慮するための重要な場であることに留意した。委員会は、特恵関税問題が明年のニュー・デリーにおける国連貿易開発会議第二回会議の主題となるであろうことにつき意見が一致し、且つ、日本代表団は、特恵関税が供与される場合に日本が直面する諸問題を強調し、日本が問題を真剣に検討していることを述べた。委員会は、この問題につき協議を継続することに合意した。

(三) 両国代表団は、東西貿易関係上の問題及び両国政府の政策を討議した。米国代表団は、東欧諸国及びソ連との非戦略物資に関する貿易政策がこれら諸国との連絡と接触の有益な途を開くための協力の一環として絶えず検討されていることを述べた。同代表団は、中共、北鮮、北ヴィエトナムとの経済関係を持たない理由及び米州機構によるキューバに対する経済禁輸の理由を説明した。日本代表団は、対中共貿易の現状を説明し、ソ連及び他の東欧諸国との貿易関係を一層発展させる意図を有することを述べた。

(四) 委員会は、世界の通貨準備の不足が国際貿易及び投資の成長を制約しないことを確保するため、必要な場合、補足的な通貨準備を供給するための基金の特別引出権創出計画を作成するに当り、十カ国会議及び国際通貨基金においてとられた重要な措置を歓迎した。両国代表団は、この計画が国際通貨基金のリオ・デ・ジャネイロ会議において承認されることを希望した。

四(一) 委員会は、一九六七年四月マニラにおいて開催された第二回東南アジア開発閣僚会議及び他の重要な域内の会議に反映されている自助及び地域協力の必要性がアジアの諸国の間で一層自覚されていることを認めた。

(二) 委員会は、アジア開発銀行がこの地域の経済開発に貢献する機構として現在活動していることに留意した。米国代表団は、日本の同銀行に対する強くかつ一貫した支持及びアジアの開発にとっての農業の重要性を強調する日本の主導的立場に殊に留意した。委員会は、日本がアジア開発銀行により運営される主として農業のための特別基金に対し一億ドルを目途として拠出することを決定したことに留意した。委員会は、また、大統領が米国議会に対して四年間に亘りアジア開発銀行の農業を含む各種目的のための特別基金に対する二億ドルの拠出の授権を要請する意図であることに留意した。

五 委員会は、天然資源の開発及び利用のための日米協力に関する年次報告を受領した。この二国間の協力計画が日米間の科学、技術及び資源保護の分野における広範囲に及ぶ交流に対して行なった貢献を認め、委員会は、北西太平洋岸及びアラスカの木材資源の利用に対する日米相互の関心に係わる資源保護上及び貿易上の利害を調和させるという当面の問題を共同して検討することに合意した。

六 委員会は、雇用共同研究を行なうという二国間の合意に満足の念を表明し、且つ同研究が人間の潜在能力の充分な活用にとって重要な貢献となることが期待されることを認めた。

七 米国代表団は、次回会合を日本において開催するとの日本代表団の招待を受諾した。

八 米国側委員は、ラスク国務長官、ファウラー財務長官、ユードル内務長官、フリーマン農務長官、トローブリッジ商務長官、ワーツ労働長官、ボイド運輸長官及びアクレー大統領府経済諮問委員会委員長であり、ジョンソン駐日大使、ロス通商交渉特別代表とガウド国際開発庁長官の他、関係各省の随員が同席した。

日本側委員は、三木外務大臣、水田大蔵大臣、倉石農林大臣、菅野通商産業大臣、大橋運輸大臣、早川労働大臣及び宮沢経済企画庁長官であり、下田駐米大使と近藤外務審議官の他、関係各省の随員が同席した。

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9 一九六七年二月一四日および一五日のワシントンにおける会談後の佐藤栄作総理大臣とリンドン・B・ジョンソン大統領との間の共同コミュニケ

(昭和四二年一一月一五日)

一 佐藤総理大臣とジョンソン大統領は、一一月一四日および一五日の両日ワシントンにおいて会談し、現下の国際情勢および日米両国が共通の関心を有する諸問題に関し意見を交換した。

二 総理大臣と大統領は、日米両国が、ともに個人の尊厳と自由という民主主義の諸原則を指針として、世界の平和と繁栄をもたらすため、今後とも緊密に協力して行くことを明らかにした。両者は、平和維持機構としての国際連合の権威と役割りを高めること、核兵器拡散防止条約の早期締結を含め、軍備の管理および軍備拡大競争の緩和を促進すること、並びに開発途上の国、特に東南アジアの開発途上の国に対して効果的な援助を与えることの重要性に留意した。

三 総理大臣と大統領は、最近の国際情勢、特に極東における事態の発展について隔意なく意見を交換した。両者は、中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況を作ることが重要であることに意見が一致した。また総理大臣と大統領は、中共が究極的にいかなる対外姿勢をとって行くかは現在のところ予想し難いが、自由諸国としては、アジア地域の政治的安定と経済的繁栄の促進のため、引続き協力することが肝要であることに意見が一致した。さらに両者は、アジアにおける持続的な平和確立の見地から、中共が現在の非妥協的態度を捨てて国際社会において共存共栄を図るに至るようにとの希望を表明した。

四 大統領は、米国が南ヴィエトナム人民の自由と独立を擁護するため、引続き援助を続ける決意であることを再確認した。同時に、大統領は、紛争の正当かつ永続的な解決を見出すため、いつでも話合いに入る用意のあることを明らかにした。総理大臣は、紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明するとともに、できる限り平和探求に努力するとの日本の決意を再確認した。総理大臣は、また、北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を表明した。総理大臣は、東南アジア訪問において、共産主義の干渉と浸透に対処するための自由世界の努力に対し、広範な支持のあることを見出した旨を述べた。総理大臣と大統領は、南ヴィエトナムの新しい政府が、安定した民主的諸制度と住民の社会的、経済的な向上に向って前進を続けることが重要であることに意見が一致した。

五 総理大臣と大統領は、日本を含む極東の安全保障の問題について、隔意なく意見を交換した。両者は、日本の安全と極東の平和および安全の確保のため、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力および安全保障条約を堅持することが両国の基本政策であることを明らかにした。総理大臣と大統領は、平和と安全の維持が、単に軍事的要因のみならず、政治的安定と経済的発展にもよるものであることを認めた。総理大臣は、日本がその能力に応じてアジアの平和と安定のため、積極的に貢献する用意があると述べた。大統領は、このような日本の努力はきわめて貴重な貢献をなすであろうと述べた。

六 総理大臣は、最近の東南アジア諸国訪問に言及し、これら諸国が自助の精神に立脚して自国民の福祉と繁栄の増進に努力していることを説明するとともに、このような努力に対し引続き援助の必要があることを指摘した。総理大臣は、日本政府としては、この必要に応えるため、援助量を拡大し、その条件を緩和することにより、特に農業、漁業、運輸、通信の分野において、東南アジア地域に対し、より有効な二国間ないし多角的な援助を供与することに引続き努力する意図であることを表明した。総理大臣は、特に東南アジアにおいて地域協力の促進に向って望ましい趨勢がみられたことを説明するとともに、アジア開発銀行とその特別基金の前途の明るいことに言及した。総理大臣は、さらに、日本政府としては、その運営の拡大を援助することにより、これらの機構の一層の活用を図りたい意向であると述べた。総理大臣と大統領は、開発途上の地域、特に東南アジア諸国に対する経済援助をさらに強化する必要を認め、この分野で一層緊密に協議することに合意した。

七 総理大臣と大統領は、沖繩および小笠原諸島について隔意なき討議をとげた。総理大臣は、沖繩の施政権の日本への返還に対する日本政府および日本国民の強い要望を強調し、日米両国政府および両国民の相互理解と信頼の上に立って妥当な解決を早急に求めるべきであると信ずる旨を述べた。総理大臣は、さらに、両国政府がここ両三年内に双方の満足しうる返還の時期につき合意すべきであることを強調した。大統領は、これら諸島の本土復帰に対する日本国民の要望は、十分理解しているところであると述べた。同時に、総理大臣と大統領は、これら諸島にある米国の軍事施設が極東における日本その他の自由諸国の安全を保障するため重要な役割りを果していることを認めた。

討議の結果、総理大臣と大統領は、日米両国政府が、沖繩の施政権を日本に返還するとの方針の下に、かつ、以上の討議を考慮しつつ、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意した。

総理大臣と大統領は、さらに、施政権が日本に回復されることとなるときに起るであろう摩擦を最小限にするため、沖繩の住民とその制度の日本本土との一体化を進め、沖繩住民の経済的および社会的福祉を増進する措置がとられるべきであることに意見が一致した。両者は、この目的のために、那覇に琉球列島高等弁務官に対する諮問委員会を設置することに合意した。日米両国政府および琉球政府は、この委員会に対し各一名の代表者と適当な要員を提供する。この委員会においては、沖繩と日本本土との間に残存している経済的および社会的障壁を除去する方向への実質的な進展をもたらすような勧告を案出することが期待される。東京の日米協議委員会は、諮問委員会の事業の進捗について高等弁務官から通報を受けるものとする。さらに、日本政府南方連絡事務所が高等弁務官および米国民政府と共通の関心事項について協議しうるようにするため、その機能が必要な範囲で拡大されるべきことにつき意見の一致をみた。

総理大臣と大統領は、小笠原諸島の地位についても検討し、日米両国共通の安全保障上の利益はこれら諸島の施政権を日本に返還するための取決めにおいて満たしうることに意見が一致した。よって、両者は、これら諸島の日本への早期復帰をこの地域の安全をそこなうことなく達成するための具体的な取決めに関し、両国政府が直ちに協議に入ることに合意した。この協議は、この地域の防衛の責任の多くを徐々に引受けるという総理大臣が表明した日本政府の意図を考慮に入れるであろう。総理大臣と大統領は、米国が、小笠原諸島において両国共通の安全保障上必要な軍事施設および区域を日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づいて保持すべきことに意見が一致した。

総理大臣は、小笠原諸島の施政権の返還は、単に両国の友好関係の強化に貢献するのみでなく、沖繩の施政権返還問題も両国の相互信頼関係の枠の中で解決されるであろうとの日本国民の確信を強めることに役立つであろうと述べた。

八 総理大臣と大統領は、ケネディ・ラウンド交渉が成功裡に終結した後の貿易および経済政策について意見を交換した。両者は、世界貿易の継続的な拡大が両国の利益に最もかなうものであると認め、この目的のため引続き緊密に協力することを約した。両者は、より自由な貿易をもたらし、また、他の国際取引の一層の自由化をもたらす諸政策を支持することを再確認した。両者は、両国政府が、両国間の貿易および経済問題に関して相互に満足すべき解決策を見出すため、引続き緊密に協議すべきであることに意見の一致をみた。両者は、さらに、両国それぞれの全般的な国際収支の均衡を早期に回復することが両国の基本的関心事であることに注目し、この目的を達成するため、相互に支援すべきことに意見が一致した。この点に関連し、かつ、相互に有益な両国間の貿易および金融関係の継続拡大を可能ならしめるとともに、アジア太平洋地域の開発と安定を増進するため、両者は、早い機会に日米貿易経済合同委員会の小委員会を設置することにより、同委員会を一層活用することに意見の一致をみた。この小委員会は、両国の短期的および長期的国際収支の問題を含め、両国にとって重要な経済および金融問題を協議する場となろう。

九 総理大臣と大統領は、日米両国間の科学分野における協力が活発であり、かつ、拡大しつつあることに満足の意を表明した。両者は、特に、一九六五年一月の前回の会談の結果設立された日米医学協力計画によってなされた貢献および科学協力に関する日米委員会が引続き業績を挙げていることを認めた。

総理大臣と大統領は、宇宙空間の平和的探査と利用について討議し、宇宙空間の平和利用に向っての人類の進歩の過程における新たな道標である月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家活動を律する原則に関する条約が最近発効したことに満足の意を表明した。両者は、現在までの日米両国間の宇宙開発に関する協力を再検討し、将来の協力の可能性を検討した。両者は、両国政府が宇宙空間の科学的研究および平和利用のための衛星を開発し、打上げることを中心に、かかる協力の可能性をさらに検討することに意見が一致した。

総理大臣と大統領は、増大する世界の人口のための食糧源として、また、鉱物源として海洋の重要性が高まりつつあることを認識して、天然資源の開発利用に関する日米会議を通じて、海洋資源の利用のための調査および技術開発の分野で日米両国の協力を一層拡大する方法を探究することに意見の一致をみた。このため、日米天然資源計画の一環としてこの分野における両国間の協力について両国政府に対する報告および勧告を準備すべきことに意見が一致した。

総理大臣と大統領は、原子力平和利用の促進が人類の福祉の増進のための無限の可能性を含むものであり、この分野において日米両国が緊密な協力関係にあることに満足の意を表明した。両者は、原子力の分野における新協定締結のための現在の交渉が順調に進捗していることをよろこび、特に、総理大臣は、ウラン二三五、プルトニウム等の核燃料の日本に対する供給を増加するとの米国政府の意向に満足の意を表した。

一〇 総理大臣と大統領は、今回の第二回目の会談がきわめて有意義であったことに満足し、今後とも緊密な個人的接触を続けるべきであるとの希望を表明した。

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10 クーヴ・ド・ミュルヴィル・フランス共和国外務大臣の日本訪問に関する日仏共同コミュニケ

(昭和四二年一二月二日)

クーヴ・ド・ミュルヴィル・フランス共和国外務大臣は、三木外務大臣と日仏間の定期協議を行なうため、一一月二九日から一二月二日まで日本を訪問した。

同外務大臣は東京滞在中、一一月三〇日に佐藤総理大臣と、また一二月一日および二日の両日三木外務大臣と会談を行なった。

日仏両政府間の事務レベルの協議も行なわれた。

この両国外務大臣の会談は、日仏定期協議の第五回会合であり、国際間の諸問題ならびに日仏両国間の関係について、極めて有益な意見の交換が行なわれた。

両外務大臣は、東南アジアにおいて今日なお戦闘が行なわれていることに憂慮の念を表明し、このような戦闘を終結させ平和的解決をもたらすことが、世界の緊張緩和と平和の確立のためにも肝要であることを認めた。

三木外務大臣は、日本政府が、東南アジア地域における安定と民生の向上に寄与するため、同地域の諸国との協力に多大の重要性をおいていることを説明した。

両外務大臣は、これまでパリで行なわれて来た日仏貿易交渉で残された問題点が解決されたことを認め、本交渉の妥結が将来における日仏通商関係の拡大に貢献するとの確信を表明した。また、両外務大臣は、日仏両国経済界の指導者が相互に交流を行なうことが貿易拡大に寄与し、相互理解を深める上に有益であると認め、一昨年発足した日仏経済委員会が達成した業績について満足の意を表明した。

両外務大臣は日仏文化混合委員会において、相互に日本研究、フランス研究を奨励するための措置が執られたことに満足の意を表するとともに、両国間における文化交流及び科学技術協力の緊密化の重要性につき意見の一致をみた。

両外務大臣は、今後とも日仏両国間に先ずることあるべき諸問題を解決し、かつ国際間の諸問題について意見を交換するため、あらゆるレベルにおいて接触を強化する両国政府の意思を再確認した。

両外務大臣は、次回の日仏定期協議を一九六八年にパリで開催することにつき意見の一致をみた。

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三、第二回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ(昭和四二年四月二八日)

一 第二回東南アジア開発閣僚会議は、一九六七年四月二六日から二八日までフィリピンのマニラにおいて開催された。

二 会議にはインドネシア共和国、日本国、ラオス王国、マレイシア、フィリピン共和国、ヴィエトナム共和国、シンガポール共和国およびタイ王国の八カ国が参加した。

会議には、インドネシア共和国からフランス・セダ大蔵大臣、日本国から三木武夫外務大臣、ラオス王国からインペン・スルヤタイ計画協力兼司法大臣、マレイシアからモハメッド・キール・ジョハリ文部大臣、フィリピン共和国からエドウァルド・ロムアルデス大蔵大臣、マルセロ・S・バラトバット商工大臣、アントニオ・V・ラキサ公共事業通信大臣およびアルフォンソ・カララン国家経済審議庁長官、ヴィエトナム共和国からグェン・ヒュウ・ハン経済財務大臣、シンガポールからS・ラジャラトナム外務大臣、ならびにタイ王国からポット・サラシン国家開発大臣が出席した。

三 会議には、またカンボディア王国からヘム・ファンラシー駐比大使、アジア開発銀行から渡辺武総裁が出席した。

四 フェルディナンド・E・マルコス大統領は、マニラ会議の開会式における歓迎の挨拶において会議の意義を強調した。マルコス大統領は「われわれはこの地域とその住民に対する愛情および相互的な利益に基づいて、この平和の会議のため一堂に会することを選んだのであり」、従って会議は「アジアの指導者の兄弟的友好関係の一つの頂点である」旨をのべた。大統領は、さらに第二回閣僚会議は「域内開発の現状についての、われわれの真剣な関心を示すものである」と付言した。

五 会議における討議は終始率直かつ和気あいあいたる雰囲気の下で進められ、またアジアが直面する重要な開発問題の早期解決に対する参加国の強い関心を反映した。

六 会議は東南アジアにおける経済開発の進展と問題点に関する全般的な評価を行ない、東南アジア諸国各国の経済において或る程度の進歩があったことを認めた。会議はまた昨年日本の東京における第一回閣僚会議以来域内諸国の間に経済協力の面で一層の進展が見られたことを満足の意を以て注目した。

会議は特にアジア開発銀行の設立および東南アジア農業開発東京会議の開催のごとく経済開発のための地域協力および連帯性の強化に資した一連の重要な出来事を想起した。

しかしながら、会議は地域的協力の基礎を一層強化するため更に努力する緊急な必要を認めた。

七 東南アジアが大きな経済的可能性を有する重要な地域であり、この可能性はこれが効果的な計画と実施を通じて共同して活用され開発されるならば、将来の発展と繁栄のための確固たる基礎を提供することの出来るものであることを強調した。会議は如何なる地域的プロジェクトの成否も資金的および技術的寄与における共同の努力のほかに更に重要なことには、各国にこのような地域的プロジェクトとかみ合うことの出来る健全な開発計画と一貫性のあるプログラムが存在することによるところが大であることを確信した。

八 会議は地域内の発展途上にある諸国の有する重要問題の中には、人口の急速な増加と農業生産の遅滞があることを確認した。これに加えて開発プログラムに資金を供する財源の不足に注目し、アジア開発銀行がこの不足を緩和することに助けとなることを希望した。

九 本会議出席国は第二回閣僚会議が東南アジアの経済開発に向って確たる前進をもたらすであろうことを期待しつつ地域協力の推進という共同の努力において各自がその役割を果す意欲があることを表明した。

十 会議は東南アジア農業開発会議の報告をきいたのち地域の農業開発のための投資を拡大する緊急な必要があることおよび国内において必要資金を確保せんとする政府および民間の努力にかかわらず東南アジア諸国の農業開発プロジェクトのために緩和された条件による融資あるいは無償供与のための基金を設置することが必要であることに注目した。会議はかかる基金をアジア開発銀行の特別基金として設置することに全面的に賛同した。会議はアジア開発銀行に対し同銀行がかかる基金の重要性を全面的に認識し、この構想の実現のため積極的に検討を開始したことにつき謝意を表明するとともに同銀行総裁に対しかかる検討の結果を報告したことにつき、謝意を表明した。

一一 会議は次の諸点につき合意した。

(一) アジア開発銀行に対し農業開発基金の設置に関して具体的、包括的研究を更に行ない、かかる基金ができるだけ多くの財源をもって最も早い機会に設置されるように最善の努力を行ない、東南アジア閣僚会議に対し基金の管理と運用に関連する諸点につき報告するよう要請すること。

(二) 特別基金の運営に当っては閣僚会議を通じて表明された東南アジア諸国の見解と利益が充分に考慮に入れられるよう会議の要望として表明すること。

(三) 先進諸国に対しアジア開発銀行により管理されるかかる基金に対し相当額の拠出を行なうよう要請すること。

(四) アジア開発銀行および拠出諸国に対し東南アジアの農業開発に利用できる資金が極度に不足していることを認識し、この基金の運用に当り東南アジア諸国に主たる重点を置くよう要請すること。

一二 会議は農業開発特別基金に拠出するとの日本の申し出を感謝を以って歓迎した。

一三 会議は東南アジア漁業開発センターの設立を検討するため、昨年一二月東京で開催された東南アジア農業開発会議における決定に基づき設けられた作業部会の報告を聴取した。

一四 会議はこの報告に盛られた諸勧告を検討した後、東南アジア漁業開発センターの設立に同意した。会議は更に同センターの組織ならびに運営の態様およびその財政問題に関する協定案をそれぞれの政府に承認のために提出することにより同センター設立の最終的準備を行なう作業部会を会議参加諸国の代表の参加を得て三カ月以内に組織すべきこと、および日本がこのような作業部会を組織する責任を負うべきことに同意した。

一五 会議はこの地域の発展途上にある諸国が農業開発と併行して、工業化の努力を継続しなければならないことに注目した。会議は工業化への望ましい努力を阻害する次の四つの制約要因を認めた。

(a)資本の不足(b)国内市場の狭隘さ(c)外貨の不足および(d)技術の欠如。

この関連において、会議は東南アジア諸国間のより一層緊密な地域協力および各国におけるより一層強化された努力の必要性を認めた。

一六 会議は域内および域外の先進諸国に対し、第一回国連貿易開発会議の諸勧告にしかるべき考慮を払いつつ、発展途上にある諸国の半製品および製品に対する特恵待遇ならびに発展途上にある諸国の一次産品および製品に関する関税障壁を含む貿易制限の引下げまたは撤廃についての東南アジアの発展途上にある諸国の緊急な要請に慎重な考慮を払うよう勧奨することに合意した。

一七 会議は域内の貿易および経済協力のための一層の努力が必要であることを強調するとともに、このような努力は東京における第一回閣僚会議において了解されたところに従ってこの地域の運輸通信の必要性の見透しに重要な意義を有することに注目した。会議はこの地域の運輸および通信の必要性を一つの全体として見る必要があることを強調した。このために会議は運輸および通信のための地域的開発計画に関する勧告を作成し、この分野において外部から融資を受けるための適切な計画を見出し、準備するために東南アジア諸国の高級政府代表者会議をクアラ・ランプールにおいて開催するとの提案を全会一致をもって採択した。

会議はまた、現存する港湾施設の改善のための地域開発計画に関し、必要な研究を行なうことおよび東南アジアにおけるかかる施設の開発に関するセミナーを、一九六七年五月東京において開催することにつき合意をみた。

一八 会議は東南アジアにおける再保険プールの存在が地域内の危険負担のたくみな配合と保険料の蓄積を通じて資本形成の増加を促進することを認め、東南アジア各国の政府および再保険会社がかかるプールの設置の可能性を探究するようにとの希望を表明した。

一九 会議は現在の形式の会議が東南アジア諸国の経済開発を促進する上に極めて効果的であり、又、アジアに繁栄と安定をもたらす上で大きく寄与するであろうことを再確認し、従って一九六八年にシンガポールにおいてこの会議を再び開催することに合意した。

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