アフリカ諸国(北アフリカを除く)と日本
わが国のサハラ以南のアフリカ諸国向輸出は、一九六七年には七億九、四〇〇万ドル(わが国総輸出の七・六%)と前年の六億五、七〇〇万ドルに比し、二〇・九%の増加を示している。他方、輸入は一九六七年六億一、〇〇〇万ドル(わが国総輸入の五・〇%)と前年三億七、九〇〇万ドルに比し、六一・一%と大幅な伸びを示し、これまでの最高を記録した。
輸出の増大は、ザンビアに対する鉄道車輛の大量輸出と南アフリカ、ケニア等への輸出の伸び及びリベリア向け船舶輸出が、約七、〇〇〇万ドル増加したことに基因するが、その他の諸国についても、貿易関係の緊密化に伴い、一般的に輸出の絶対額は小さいが増大している。一方輸入面では、ケニア、タンザニア、シエラ・レオーネからの輸入が若干減少を示したが、その他の諸国特にスターリング地域からの輸入は増大し、特に、南アフリカ共和国(前年比一〇〇・五%増)とザンビア(六四・八%増)からの輸入は大幅に増加し、また、コンゴー(ブラザヴィル)、コンゴー(キンシャサ)、モーリタニア等からの輸入の伸びも顕著であった。かかる輸入の増大は、アフリカ諸国の要望に応じたわが国の輸入努力が実を結んだものといえよう。わが国としては、東アフリカ三国、ナイジェリア等依然として対日輸入制限を実施している諸国に対しては、相手国の産品買付につき、引続き努力するとともに、経済協力・技術協力等の施策を併せ、これら諸国の対日輸入制限を解除せしめるべく努力している。また、西部・中部アフリカの旧仏領諸国は、大部分独立時の旧宗主国フランスの地位を継承して、ガット三五条の対日援用を行なっており、さらに、対日三倍関税率の適用等、関税面、数量割当面で厳しい対日差別を行なっているので、これら諸国に対するわが国からの輸出にとって、大きな障害となっている。従って、わが国としては、このような対日差別の撤廃ないし緩和につき、種々の努力を重ねており、その結果、六八年二月には象牙海岸が従来の三倍税率の適用を撤廃し、最低税率を適用することになり、その成果は徐々に現われている。
エティオピア政府は、かねてからわが国との片貿易を不満としてきたところ、一九六七年八月一二日にアベベ・レッタ商工大臣一行が来日した機会に(海外からの貿易関係要人の来日の項参照)両国間の貿易協定締結について交渉を行なった結果、意見の一致を見るに至り、同月一八日東京において三木外務大臣と同大臣との間で署名が行なわれ、一九六八年一月一五日同協定は両国の必要国内手続を完了し、発効した。
同協定は、両国政府がそれぞれの国で施行されている法令の範囲内で、貿易および関税について他の第三国に対するよりも不利でない待遇を与えるほか、自国の領域内で相手国国民の入国、滞在、旅行、居住、その他の活動を容易にし、また相手国の船舶に対し自国および第三国の船舶に対するより不利でない待遇を与えることを定めており、この協定の締結の結果、両国間の通商経済関係の増進のための基礎が確立され、両国間の貿易についての双方業界の関心も一層高まるものと考えられる。
わが国の対コンゴー貿易額は一九六七年輸出五三〇万ドル、輸入八九〇万ドルと比較的低水準にとどまっているが、コンゴーは世界で屈指の鉱物資源保有国であり、その鉱産物(コバルト、銅、工業用ダイヤモンド等)に対するわが国の需要は今後ますます増大することが予想され、またわが国からコンゴーへの輸出も重工業製品を中心として今後相当の伸びが期待される。わが国は、こうした両国間の貿易発展の基礎固めを行なう意味で、同国と目下貿易取決めの締結を目指して交渉を行なっている。
一九六七年のわが国の対象牙海岸貿易は、輸出が前年比二五〇%増の三六五万ドル、輸入が同三四%減の七三二万ドルであり、入超幅は、一九六六年に比べ六二九万ドルだけ縮小した。
これには、コーヒー豆買付の減少(一九六六年の一八、三二六トンから一九六七年は七、八三七トン)および、わが国企業進出による繊維機械を中心とする機械類輸出の増加(一九六六年の九万ドルから一九六七年は一七七万ドル)が主な原因となっている。
なお、象牙海岸は従来、わが国に対しガット第三五条を適用し、かつわが国産品に対し、「花むしろ」と「茶」を除き最低税率の三倍の一般税率を適用し、わが方は現地大使館を通じその撤廃を要求していたが、その結果同国は一九六八年二月一五日より、全日本産品に対し最低税率を適用することとなった。しかしながら同国は数量割当面においては、依然、対日差別政策をとっているので、わが国は両国間の貿易関係の正常化を図るべく引続き折衝中である。
一九六七年の対リベリア輸出は、三億九、三三〇万ドルであり、ブラック・アフリカ諸国(北アフリカ諸国を除く)への総輸出額の半ばを占め、アフリカ諸国中第一位、全世界では米国、韓国、フィリピンに次いで第四位となっている。
しかしリベリアへの輸出額の大半は、いわゆる便宜置籍船といわれる船舶の輸出であって、これはリベリアの低廉な所得税を狙って、リベリアに便宜上設立されている外国系会社に属する船舶である。従ってリベリアへの直接の輸出とはならないので、これを除くと、同国向け輸出は他のアフリカ諸国と同様繊維品、機械類、雑貨等が輸出の大宗を占め、六七年は一、〇四〇万ドルとなる。
一方輸入は一、二三〇万ドルであるが、このうちには前述の会社に属する解体用船舶の輸入が含まれており、これを除くと僅かに一六〇万ドルで、しかもその殆んどは鉄鉱石の輸入(一五〇万ドル)で占められる。わが大手鉄鉱五社はニンバ鉄鉱石を一九六八年から五年以上にわたり年間約一九〇万トン買付ける契約を締結しており、今後わが国の対リベリア輸入の大幅増加が見込まれる。
6 東アフリカ三国(ケニア・ウガンダ・タンザニア)との貿易関係
わが国と東アフリカ三国との貿易は、三国の政府が、片貿易を理由として一九六五年四月に実施した対日輸入制限下にある。わが方は、輸入制限の撤廃ないし緩和をはかるため、従来より推進してきた一次産品買付促進のための各種調査団を東アフリカ三国に重点的に派遣し、さらに新たな東ア産品開発のために、六七年一〇月、開発輸入制度調査団を東ア三国に派遣した。また、一九六五年に供与を決定した円借款の早期運用についても種々の努力をはらっている。その結果、一九六七年の東アフリカ三国に対するわが方の輸出は、三、一九八万ドルと前年の二、六七〇万ドルに比し、一九・八%増加し、輸入についても三、一八一万ドルと前年の二、八八〇万ドルに比し、一〇・五%の増加を示しており、貿易バランスは、一対一・〇〇四とほぼ均衡している。
わが国の対ナイジェリア貿易は、わが国の極端な出超となっていたため、ナイジェリア政府は一九六三年八月わが国の繊維製品をライセンス制とし、さらに一九六五年八月には全品目の対日輸入をライセンス制とし、かつ、とりあえずの措置としてライセンスの発給を停止した。
わが方としては、従来からナイジェリア産品の買付促進や円借款の供与など種々努力を重ねてきたが、一九六六年には相当額の輸入が行なわれる見とおしがあったので、同年四月、わが方の輸入が増加してバランスが改善されることおよびわが方が引続き買付努力を継続する旨をナイジェリア政府に強調するとともに、対日輸入制限の緩和ないし撤廃をナ側に申し入れた。ナ側もわが方の努力をみとめ、同年七月対日輸入制限の一部緩和を発表した。現在ではクォーターの枠内でライセンスが発給されているが、内戦の影響によってナイジェリアの外貨が著しく逼迫してきたので、今後の対ナ輸出は困難を加えるものと思われる。
一九六七年の対ナ輸出は三、八三三・五万ドルで前年に比し一二三・八万ドルの減少であり、輸入は一、六一六・三万ドルで前年に比し、二四九・二万ドル増加し、片貿易は前年の二・九対一から二・四対一と改善された。
一九六四年までのわが国とガーナとの貿易関係は、わが国の輸出超過ではあったが、輸出入とも拡大傾向にあった。一九六五年にはココア豆の国際価格の暴落により、わが国の買付額が半減したため、三対一の片貿易となった。一九六六年はココア豆の国際価格の上昇に伴う買付額の増加とガーナの経済再建のための輸入抑制策によって、わが国の輸出が減少した結果、わが方の輸出は一、七七四・九万ドル、輸入は一、六六三・一万ドルとほぼ均衡したが、一九六七年にはガーナの輸入抑制によって輸出一、五五一万ドル、輸入一、九二七・四万ドルと、これまでとは逆にわが方の輸入超過となっている。
なお現在両国間には一九六三年三月に締結された日本ガーナ貿易協定があり、ガーナ側による対日差別はない。
南ローデシアに対する安保理決議による経済制裁に関しては、わが国も国連尊重、国際協力の観点から、これに参加し、禁輸品目に指定された同国からの、たばこ、砂糖、銑鉄、鉄鉱石、アスベスト、クローム、銅、原皮および皮革、肉および肉製品の輸入は全面的にストップし、また、輸出面では石油、石油製品、武器、弾薬のほか、自動車、航空機およびそれらの部品ならびに製造設備の輸出が完全に停止されている。わが国と同国の間には以前旧ローデシア・ニアサランド連邦当時の貿易取決めが適用されていたが、一九六五年末に上記取決めは失効している。
ザンビアとわが国との間には、一九六五年五月締結された貿易協定があり、その中で両国貿易は、それぞれの国の法令の範囲内で無差別の原則で律せられるべきことが規定されており、これにより従来英連邦諸国等と差別され、高関税を課せられていたわが国産品は輸出上相対的に有利になった。両国間貿易はわが国の著しい入超(一対五)となっている。これはザンビアが世界有数の銅産出国で、わが国も同国から毎年大量の銅を買付けているからである。ちなみにわが国は粗銅として年間約一二万トン輸入しているが、そのうち一〇万トンはザンビアから購入している。最近銅の世界的な需給のアンバランスから銅価格は高騰している折から、ザンビア銅の確保はわが国にとって極めて重要であるといえる。
ザンビアは、近年わが国の協力に対する期待感が非常につよく、一九六七年五月二度目の貿易使節団が来日し、同国の輸送力拡充のための大量の貨車を買付けるなど、わが国への接近が目立っており、わが国としても、これらザンビア側の動きに対し積極的な姿勢で臨んでいる。
マラウイとわが国との間には同国が独立して以来まだ貿易協定がないが、旧ローデシア・ニアサランド連邦当時の貿易取決めが事実上適用されている。両国の経済関係は従来余り深くないが、一九六七年八月同国大蔵大臣が来日し、マラウイ鉄道建設ならびに車輛購入につきわが国の援助を要請越し、わが国も出来るかぎり積極的に援助することにふみきったが、条件の点等で折り合いがつかない状況である。
上記三国との貿易量をみると、経済制裁下にある南ローデシアの場合は別として、ザンビアおよびマラウイは急速に増大しており、一九六七年わが国のザンビアに対する輸出は二、九〇〇万ドルで、前年に比べ二倍となり、またザンビアからの輸入は一億四、〇〇〇万ドルで、前年比六〇%と著しい増加を示している。同じく同年のマラウイに対する輸出は、六一一万ドル、マラウイからの輸入は六四万ドルと、他の国々に比べ量的には僅少であるが、前年に比し大幅な増加をみせている。
南アフリカ向け輸出については、国連において一九六三年に武器、弾薬、軍用車輛ならびにこれらの生産維持のための設備および資材の輸出禁止を要請する安保理決議が採択されており、わが国は右決議を忠実に履行してきている。
右禁輸品目以外のわが国の対南アフリカ貿易は、両国間に貿易協定が締結されていないにもかかわらず、過去数カ年拡大傾向を示している。一九六六年において輸出は一億二、六九八方ドル、輸入は一億三、三三五万ドルとほぼ輸出入が均衡していたが、一九六七年に至り輸出は一億五、六五二万ドルと増加したものの、輸入は二億六、七三九万ドルとなり、一億ドルを超える入超となった。南アフリカからの主要輸入品は農産物、鉱産物等の一次産品が主たるものであるが、一九六七年においては各品目全般にわたり輸入量が増大し、特にとうもろこしの輸入量が一九六三、四年の水準に復活し、対前年比では約四、七〇〇万ドルの増加となっている。
現在、南アフリカは、わが国に対しガット三五条を援用し、日本からの輸入品につき高関税を課しているため、英連邦特恵税率または最恵国税率を適用されている欧州諸国に比べ不利な扱いを受けているが、わが国は、右対日差別の撤廃を目指して努力している。また、南アフリカは、繊維産業、鉄鋼業等について輸入代替、国産品保護政策をとっており、当該品目に対する関税引上げ、輸入制限を実施しているが、わが国輸出品はこれと競合する場合が多く、その輸出は年々減少しつつある。