西欧諸国と日本

 

1 西欧諸国との貿易経済関係

欧州は政治的にも経済的にも米ソと並んで世界秩序を支える柱となっている。殊に経済的にはEECを中心に個々の構成国を超えた大きな勢力となりつつあり、東西貿易や低開発国貿易を含む世界貿易の問題はもとより、国際金融、技術開発、発展途上国開発、海運、資本といった世界経済の重要問題すべてに関し欧州諸国のもつ発言力は極めて大きい。現に最近の世界経済上最大の問題として注目を浴びているポンド切下げとそれにともなうドル不安、米国のドル防衛措置の成行きとその影響下における世界景気の動向等、すべて欧州自体の問題であるか、或いは欧州と直接関係のある問題なのである。

欧州諸国のかかる地位にも鑑み、わが国は国際経済上の諸問題に対処するに当っては、OECD、ガット、IMF、国連等の国際機関における活動を通じ、あるいは二国間の協議を通じて、欧州諸国との協調を図り、利害を共にする問題については協力関係を深めるとともに、立場の相対立する問題については十分な調整を行なってきた。殊に、米国のドル防衛策をはじめ、技術格差、資本自由化、資源問題、商品問題等については、米国との関係で、欧州と日本とが共通の立場に立つ場合も少なくないので、かかる問題につき緊密な協力関係を保つことは極めて重要であった。

しかるに通商関係に目を転ずると、わが国と欧州諸国との貿易額は未だそれぞれの産業経済の規模を十分反映する水準にまで達していない状況にある。即ち、一九六七年における欧州諸国(東欧諸国は除く)との貿易額は輸出一四億ドル、輸入一二億ドルであり、わが国の総輸出入に占める割合はそれぞれ一四%及び一〇%にとどまっている。このように欧州との通商関係は比較的小規模にとどまっており、その理由としては、制度上の阻害要因たる欧州諸国の対日差別制限の存在が挙げられるが、これについては過去一カ年間においても次に述べるとおり、フランスをはじめ各国との貿易交渉を行ない、差別制限品目数は着々と縮小されてきている。

かくて制度上の阻害要因が軽減されてきた以上、今後の対欧通商関係促進のためには、政府間の努力と並んで、業界同志の交流を進め、業界レベルでの相互認識と相手国市場に対する関心を強めることがますます重要になってきている。かかる観点から、日仏間、日独間、日英間等で双方の民間首脳レベルの経済合同委員会が設けられ、順調に活動していることは極めて有意義なことであると考えられ、政府としてもかかる民間の交流を側面から支援する努力を払っている。

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2 フランスとの貿易交渉

日仏通商協定に基づく第四回日仏貿易年次協議は、一九六七年二月よりパリにおいて開始され、一年余りにわたる困難な交渉の結果、一九六八年三月、通商協議に関する議定書の署名が行なわれた。

今次交渉の妥結にかくも長時日を要したのは、この交渉が向う三カ年にわたる貿易拡大のための措置を内容とし、相互に大幅な譲許を約束するものであったことによる。かくて、仏側は初年度に絹織物、写真機等八品目を自由化し、残る制限品目については輸入枠の増大を行なうこととなり、わが方の譲許とあいまって、今後、日仏貿易が拡大するための素地ができ上った。

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3 ドイツとの貿易交渉

一九六〇年七月一日に署名された日独貿易協定にもとづく貿易交渉は、六七年一〇月三〇日より東京において行なわれ、貿易および海運問題について協議が行なわれた結果、一二月二七日ボンにおいて、一九六八年末までの期間に関する貿易取決めおよびOECD規約に定められた海運の自由に関する原則を確認する合意議事録の署名が行なわれた。

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4 英国との経済関係

(1) 英国との貿易は、年々増加を続けているが、六七年には輸出は前年比三一・二%増、輸入は一九・九%増と、戦後としては記録的な伸びを示した。また英国との間には過去六年間わが国の出超傾向が続いている。

英国のわが国に対する輸入制限は、すべて六八年一月一日より自由化されたが、若干の品目(繊維品と陶磁器)については、わが国は、対英輸出自主規制を行なっている。他方、わが国は、自由化率九三%強とはいえ、一部輸入制限を存続させており、右輸入制限には、英国の関心品目が若干含まれている。

(2) 近年日英経済関係の緊密化に伴ない、六七年九月には、日英エレクトロニクス・シムポジウムが初めて(京都で)開催され、また、一〇月にはわが国より石坂経団連会長を団長とする財界人使節団が訪英し、第二回日英財界人会議が開かれ、他方、同月大規模なスコットランド経済使節団(団長クライズミュアー卿)およびロンドン商業会議所使節団が来日する等、日英両国の財界、業界相互間の交流が活発化している。

政府としても、経済の国際化に伴い、かかる人事交流等を通じて両国官民の相互信頼関係を確立することが今後の日英経済関係増進のため必要かつ望ましいとの判断から、その醸成・強化を積極的に奨励したいと考えている。

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5 日本・ノールウェー貿易取決め

ノールウェーとの貿易関係については、一九六二年の書簡交換以後、毎年交渉が行なわれ、対日待遇は漸次改善されてきた。一九六七年も東京で交渉を行なった結果、同年一一月二五日、一〇月一日より一年間の有効期間を有する取決めを締結した。

この交渉の結果、ノールウェーは繊維製品・旅行用具等六品目の対日輸入を完全自由化することになり、対日輸入差別品目数は六五品目(綿製品取決めによる対日制限品を含む)に減少した。

なお、貿易取決めと同時に、両国間の綿製品取決めも締結され、ノールウェーは、わが国からの綿製品の輸入について向う三年間、従来とほぼ同様の待遇を続けることとなった。

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6 日本・オーストリア貿易取決め

オーストリアとの間には、一九六六年に締結された一九六七年末まで有効の取決めがあるが、現在右取決めは、第九条の規定により一年間自動的に延長されている(「わが外交の近況」第十一号二一二頁参照)。

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7 日本・スペイン貿易取決め

一九六七年一二月二六日、一九六六年の取決めをさらに一年間延長する内容の書簡交換が行なわれた(「わが外交の近況」第十号二一九頁参照)。

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