アジア諸国(共産圏を除く)と日本

 

1 アジア諸国との貿易経済関係

一九六七年のわが国の対アジア(共産圏を除く)貿易は、輸出二九億二、〇五一万ドル、輸入一七億九、四五七万ドル(それぞれ通関統計べ-ス)で前年に比し、輸出一一・五%、輸入一一・三%の増加を示している。これは一九六六年において対アジア輸出および輸入の対前年伸び率がそれぞれ一九・八%、及び一四・七%であったことに比し、輸出入ともに若干の鈍化を示したわけである。

しかしながら、輸出面についてみれば、韓国(前年比二一・四%)、台湾(二八・五%)、南ヴィエトナム(二六・四%)、フィリピン(三〇・四%)、インドネシア(三〇・八%)、カンボディア(二七・八%)をはじめ、タイ、シンガポール、ラオス等に対する輸出は着実に伸び、この結果、一九六七年のわが国の対アジア輸出の伸びは依然としてわが国の総輸出の伸び率を大きく超え、その結果、対アジア輸出は総輸出の二八・二%(前年は二六・八%)に達し、アジア諸国はわが国の有力輸出市場として、ますますその地位を高めつつある。なかでも、韓国への輸出が四億ドルを超えて、わが国にとり米国に次ぐ第二の輸出相手国となっているほか、さらにフィリピン、タイ、香港、中華民国への輸出が三億ドル台、琉球が二億ドル台、南ヴィエトナム、シンガポール、インドネシアおよびインドが一億ドル台の実績を収めており、その重要性は極めて高い。輸出品目は従来と同様、機械、金属、化学製品、繊維製品が大宗を占めている。

他方、輸入面では、韓国(前年比二八・九%)、インド(二五・七%)、パキスタン(二三・三%)、シンガポール(一八・九%)、フィリピン(一五・二%)、はじめセイロン、香港等からの輸入が増大したが、南ヴィエトナム及びビルマからの輸入は減少した。輸入額ではフィリピン、マレイシアが三億ドルを超え、インド、インドネシア、タイ、台湾がこれに次いでいる。しかし全体として対アジア諸国輸入貿易の伸びは、わが国総輸入の伸び(一九六七年は二二・五%に達した)にははるかに及ばなかったため、対アジア輸入が総輸入に占める比重は、前年の一七%からさらに一五・四%へと低下することになった。輸入品では、原材料(鉄鉱石、木材、ゴム、コプラ等)、食料品(砂糖、とうもろこし、米、バナナ等)、燃料などが重要品目となっている。

このような輸出の増大と輸入の伸びなやみの結果、わが国の対アジア貿易に従来からみられる輸出超過の傾向は一九六七年にも顕著にあらわれている。わが国の対アジア貿易の黒字は、一九六四年に四億ドル、一九六五年に八億ドル弱、一九六六年には一〇億ドルと急速に拡大して来たが、一九六七年にはこれが一一億三千万ドル程度にまで達した。アジア諸国の中にはマレイシア(二億五千万ドル)、インド(一億二千万ドル)、インドネシア(四千万ドル)のようにわが方にとって入超になっている国もあるが、他の多くの国に対しては恒常的出超である。すなわち、対韓国三億一、四五七万ドルを筆頭に、南ヴィエトナム(一億七千万ドル)、タイ(一億八千万ドル)、中華民国(一億五千万ドル)、きらにパキスタン、ビルマ、セイロン、カンボディア等がつづいている。これらの諸国はいずれもわが国に対し、貿易不均衡の是正を強く求めて来ており、このことが、一九六七年におけるこれら諸国との諸懸案事項の底流をなしているといえよう。(なお、香港に対してもわが方の大幅出超-一九六七年において約三億ドル-となっているが、貿易不均衡問題は提起されていない。)

このような不均衡は、資本財を中心としたわが国製品に対するアジアの発展途上国の需要が年々増大しているのに対し、これらの国の産品が多様性を欠き、品質、価格面で必ずしも競争力が強くないことに原因があるものと思われる。また、ヴィエトナム紛争の拡大は、南ヴィエトナム及びアジアのいわゆるヴィエトナム周辺諸国に対するわが国の輸出の増大にある程度の影響を与えたものと見られている。いずれにせよ、わが国としてはアジア諸国の多くが求めている貿易不均衡是正の声に留意しつつ、経済活動の拡大をはかって行くことが肝要である。

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2 アジア諸国からの米の輸入問題

(1) 一九六七年度分

わが国は一九六七米穀年度(一九六六年一一月~六七年一〇月)中に準内地米三七万トン、普通外米一二万トンの買付を行なったが、このうちアジア諸国からの輸入状況は次のとおりである。

一九六七米穀年度外米買付実績(単位万トン)

準内地米

中華民国          五

中  共         二〇

  合計         二五

(その他米国、スペインより一二万トン)

普通外米

タ  イ(砕米)      一〇

    (もち丸米)     二

  合計         一二

なお、ビルマに対し普通外米三万トン、またカンボディアに対し、砕米一万トンの買付を希望する旨それぞれ申し入れたが、両国の供給事情から買付は行なわれなかった。

(2) 一九六八年度分

一九六八年度の国内産米の生産量は、一、四四五万トンと前年度を約一七〇万トン上廻ったため、政府買入れは九八○万トン程度(前年度は約八○○万トン)に伸び、米の需給事情は大いに緩和された。これに伴ない準内地米の輸入必要量は前年実績の三七万トンを大幅に下廻る二〇万トンで十分と堆定されている。

他方、普通外米は、国内需要が概ね固定しているため、大体前年と同量の輸入需要があるものと予測されているが、外来の国際価格の値上り、輸出国の供給事情等を考え合せれば、実際の輸入量は前年度のそれをかなり下廻るのではないかとみられる。

現在までのところ、契約済みないし買付が予定されている準内地米は、中共産のもの一〇万トン、中華民国産のもの五・五万トンであり、普通外米については、タイから砕米六万トン、ビルマからとりあえず丸米一・五万トンの輸入が予定されている。

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3 韓国との貿易経済関係

(1) 日韓間における貿易経済問題の討議

一九六五年一二月の国交正常化後二年半の間に、日韓両国間においては、貿易会議を中心とし、いわばその分科会的性格をもつ個別問題に関する会議、さらには閣僚レベルにおける経済閣僚懇談会(一九六六年九月)および定期閣僚会議(一九六七年八月)を加え、貿易及び経済問題(経済協力問題を除く)に関する政府レベルの会議が実に一六回の多きにわたり開催された(注)。

これは両国間の貿易経済関係の急速な拡大緊密化を反映すると同時に、他面、両国間の貿易経済関係をめぐる問題がいかに複雑であるかをもの語るものと思われ、今後の両国貿易経済問題のあり方について検討を加える上での一つの指標ともなると考えられる。

(注)例えば一九六七年一月以降の諸会議を列挙すれば次のとおりである。

一九六七年 一月 第一次海運会談(ソウル)

一九六七年 四月 水産物貿易会議(東京)

      六月 租税交渉予備会談(ソウル)

      七月 第四次貿易会議(ソウル)

      七月 第二次海運会談(東京)

      八月 第一回定期閣僚会議(東京)

      十月 第一回租税条約交渉(ソウル)

     十二月 第一回貿易合同委員会(ソウル)

一九六八年 一月 第二回租税条約交渉(東京)

      三月 のり貿易に関する会談(東京)

      五月 第五次貿易会議(東京)

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(2) 第四次日韓貿易会議

第四次日韓貿易会議は、第三次貿易会議における合意に基づき、一九六七年七月一二日より一五日までソウルにおいて開催された。

会議において韓国側は、日韓貿易がわが方の著しい出超となっていることを指摘して、不均衡是正のために韓国一次産品の買付増加を求め、日本側が輸入自由化、関税引下げ等積極的措置を執るよう強く要望したのに対し、日本側は韓国側の要望に留意するとともに、両国間貿易の均衡問題は、長期的には貿易規模拡大の過程において解決を計って行くべきものであるが、可能な点については、今後とも引き続きその解決のため、必要な措置をとるよう努力する旨述べた。また韓国側は、韓国の輸出増大のため保税加工貿易の振興が重要な意味をもつことを強調し、日本側が加工貿易促進のため積極的な協力を行なうことを求め、日本側は、その増進のため引き続き出来得る限りの協力をする旨約した。さらに韓国側は、開発輸出についてもできるだけ進捗をはかるよう問題点の具体的検討を更に進めることにつき日本側の配慮を求め、日本側は、今後とも協力の可能性を検討する意向を表明した。その他韓国における商社課税問題、日本人の入国、滞在、事業活動、特に日本商社のステータス問題について検討された。

なお、この会議に関連し、一九六七年四月一四日から同一八日まで東京において水産物の貿易に関する会議が行なわれた。

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(3) 商社課税問題

在韓本邦商社に対する課税問題が両国間の大きな問題となったのは、国交正常化前後の両国間経済交流の飛躍的増大を背景として一九六六年末ごろ二八社に対して一九六五年一月~一九六六年九月の期間分の法人税および営業税総額九億四千万ウオンの課税告知が行なわれて以来のことである。さらに、一九六七年三月期については法人税および営業税総額約二億七千万ウオンの課税が行なわれているが、これらの課税については額も大きく、かつ、認定課税であること、高率の加算税が賦課されたこと、特に営業税について業種の認定がわが方とまったく異り、その結果高い税率が適用されていること、課税対象取引の範囲についてわが方見解と大幅な喰い違いがあることなどいろいろな問題点があるため、商社側の不満は強く、一応全額納税する一方、最終的には訴訟に持ち込む用意をしつつ韓国税務当局に異議申立を行なっている。

さらに、最近においては日本の商社、メーカーの韓国駐在員に対する所得課税問題、プラント輸出に対する巨額の更生決定等新しい問題も引き続き発生している。

これらの問題については、政府としてもあまりに過重な税負担は両国貿易の円滑な進展を妨げるものであり、かつ、本件については韓国の現行税制が、日本商社の営業活動の実態に即した規定を欠いていること等の特殊事情が考慮さるべきであるとの趣旨から、本件円満解決のため、累次にわたり韓国政府と折衝を続けてきている。

他方、わが方は将来における課税問題を根本的に解決するため、租税協定の早期締結方を強く要望している。

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(4) 商社の地位と商社員の入国滞在

従来、韓国政府は、本邦商社に対し、韓国内で継続的に商活動を行なうことを認めておらず、在韓本邦商社の法的ステータスは不安定であった。このため、わが方は累次の貿易会議等において本邦商社の法的地位を安定せしめるよう韓国側にくり返し要請してきたが、韓国政府は一九六七年四月に至り、在韓本邦商社一四社に対し、また同年一二月にはさらに一〇社に対し、韓国貿易法上の物品売渡確約書発行業(オファー商)としての登録を許可し、本問題は一応落着した。

このような商社の地位に関する話合いの進展に伴い商社員の入国、滞在および家族同伴の問題も次第に好転して来ている。

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(5) 工業所有権保護に関する問題

従来わが国の工業所有権は、韓国側の事務処理等国内体制の未整備、国内世論の反発等を理由に、韓国における登録を認められておらず、従って同国内ではなんら保護を受けていないが、最近における両国経済関係の緊密化に伴い、今後の経済交流の活発化の前提条件の一つとして、相互に工業所有権の保護を行なう必要性が増大してきたので、わが方は第二次日韓貿易会議以来累次にわたり本件解決方要請するとともに、特許庁長官が訪韓(六八年一月)して先方の当局者と会談を行ない、また、関係資料の寄贈、研修生の受入れ等を通じて韓国側の体制整備に協力してきている。しかしながら韓国側には、国内的にその機運が熟していないこと、事務処理体制の不備等の理由がある由で、具体的な進展はみていない。

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(6) 日韓海運会談

日韓両国間には今日に至るも、わが国が占領下にあった時代に締結された暫定協定が事実上適用され続けている。わが方は六五年六月貨客積取権の最恵国待遇を骨子とする新協定案文を提示(現行協定では横取権が明確でない)、韓国側と交渉に入っているが、韓国側は自国海運業保護育成政策の一環として自国船優先主義をとっているため、本件交渉は難航を続けている。

第二回海運会談は一九六七年七月三一日および八月一日東京において開催され、わが方は、韓国の自国船優先主義は両国間で合意されている海運自由の原則に著しく反する旨主張したが、韓国側は、同国の政策は韓国海運の現状を反映したものであり、また海運における自由主義と保護主義の問題は先進国と発展途上国の立場の相違から来る根本的な問題であると主張しており、かかる原則問題をめぐる両国間の見解の相違は依然調整されないままとなっている。

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4 中華民国との貿易会議の開催

日華経済貿易関係は近年拡大を続けてきているが、一九六七年三月、三木外相と李国鼎中華民国経済部長の間で両国間経済関係の一層の緊密化を計るため、事務レベルの会議を開催することが合意され、その第一回会議が同年六月台北において開催された。

同会議では、日華貿易アンバランス問題、農産物の輸出入問題、鉱工業製品輸出入問題等につき討議が行なわれ、その結果、リンゴの対華輸出量の大幅増大、日本産薬用人参の輸入停止措置解除、台湾産ポンカンに関する専門家会議の開催、日華租税協定交渉の開催等につき、原則的合意がみられた。

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5 フィリピンとの貿易経済関係

(1) フィリピンとの友好通商航海条約の未発効問題

一九六〇年一二月九日署名された本条約は、翌一九六一年一〇月わが国会の承認を了したが、比側においてはその後の政権交替および日本の経済進出に対する国民感情の問題等複雑な国内事情があり、今日に至るも条約の批准に必要な上院の承認を受けていない結果、同条約は未発効の状態にある。マルコス大統領は同条約の上院承認手続を進める前提条件として国内産業保護立法措置(六法案)が必要であるとしているが、これら諸法案は前年に引続き一九六七年の通常議会および特別議会に上程され、そのうち移民法改正案、外国人の自由職業従事法案、および政府関係機関との契約締結資格法案が各々特別議会を通過成立したので、本件批准問題についても今後の進展が期待される。

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(2) フィリピンにおける本邦人の事業活動許可問題

フィリピンにおける本邦商社の事業活動については、わが国が旧敵国であるという事情や、わが国経済進出に対する同国内の根強い警戒心もあり、フィリピン政府は本邦商社の支店設置および事業活動を許可しないとの方針をとっていたところ、マルコス大統領は一九六六年五月一七日に至り本邦人に在比事業活動を認めるよう措置すべき旨フィリピン政府当局に指令を発した。本指令に基づき証券取引委員会は、一九六七年三月以降事業活動許可申請を提出していた本邦商社に個別的に許可を与え、許可取得本邦商社は一九六八年二月には一七社に及んでいる。

その後フィリピン国内では、在比日本商社に対する営業許可の手続きの正当性をめぐって与野党間に論議が生じ、野党所属のマニラ市長が在マニラ本邦商社の営業許可(比国政府証券取引委員会による許可を前提として、半自動的に発給される市長の許可)を取り消すという態が発生したが、マルコス大統領の要請もあって問題は一応落着し、本邦商社は営業を再開した。

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6 カンボディアとの貿易取決め締結交渉

一九六〇年二月一〇日に締結され、同一五日効力が発生した日本とカンボディアとの間の貿易取決めは、一カ年の有効期間満了後、毎年交換公文により一年ずつ延長されてきた。しかしながら、カンボディア側は対日貿易が同国にとって大幅な逆調を示していることを理由に、一九六六年二月の更新期以後一カ年の延長に難色を示し、結局同月および同年八月の二回にわたりそれぞれ六カ月間の延長を見るにとどまった。

一九六七年二月の更新期に至り、わが方は再び一年間の取決め延長を申し入れたが、カンボディア側は入超幅の拡大を理由に同取決め第五条に規定する混合委員会の開催を提案し、併せて同委員会の検討の結果がでるまでは取決めの効力を維持する旨通報越した。これに対しわが方は混合委員会の開催に同意するとともに、その間取決めの規定を事実上適用する旨回答した。しかし、その後諸般の事情により混合委員会の開催は実現されないまま今日に至っており、一九六〇年の取決めは形式上失効したまま事実上適用されていることになる。

現在、両国間において、新しい貿易取決めを締結することを目途として混合委員会の開催準備が進められている。

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7 タイとの貿易経済関係

わが国とタイとの間の貿易は、米の輸入が激減した一九五六年以来、わが国の大幅な出超に転じている。その後、米に代わり、とうもろこし、生ゴム、黄麻等の買付増大により、タイからの輸入額は年々増加しているが、他方輸出の伸びはこれを上廻り、わが国出超の絶対額はますます増大する傾向にある(一九六七年の貿易バランスは一億八、○○○万ドルのわが方出超)。

このようなわが国との間の片貿易関係にかんがみ、タイ側はわが国に対し機会あるごとにタイ一次産品の買付増大を強く要請越しており、一九六七年九月、佐藤総理のタイ訪問の際にも、この問題が大きくとりあげられ、共同声明にも「両首相は、両国間の貿易不均衡に留意し、現状を改善するための努力を奨励することに合意した」旨うたわれたが、その後も、タイ側のわが国に対する貿易不均衡是正の要望は強い。

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8 インドネシアに対する輸出保険免責措置

近年インドネシアの外貨事情は極度に悪化していたが、一九六五年の九月三〇日事件以降、対日決済が著しく遅滞し、同年一二月二九日に至り輸出手形保険事故発生の届出が通産省になされたので、同省は同日以降インドネシア向け輸出保険につき政府免責の措置をとるに至った。

インドネシア側は、機会あるごとにわが国に対し、免責措置を速やかに解除するよう要請越しているが、この免責措置を解除し、日イ両国間貿易の正常化を図るためには、インドネシアが対日債務、なかんずく、標準決済分の債務を返済し、かつ将来の決済送金について不安がなくなることが前提であり、しかも、これらの条件が未だ充たされていない事情から、現在まで解除していない。

なお、インドネシア側は、一九六六年五月末において、約二、七〇〇万米ドルに達していた標準決済ものの債務の返済を徐々に行なっており、一九六八年三月二七日現在の同残額は約九五〇万米ドルに減少している。

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9 ビルマとの新貿易取決め締結交渉

ビルマとの貿易取決めは一九六五年一二月三一日に有効期間が満了し、引続き六カ月間、事実上の適用状態にあったが、この期限が一九六六年六月末に到来したため、わが方より再度旧取決めの事実上適用期間の延長方申し入れたのに対し、ビルマ側から検討するとの回答があったまま現在に至っている。

このため両国の間では新しい貿易取決めの締結のための交渉が行なわれているが、ビルマ側は各国との貿易取決めを同形式、同文のものに統一するとの方針のもとに、わが国との交渉においても自らの案文に固執しており、この点をめぐる調整が続けられている。

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10 マレイシアとの貿易関係

わが国とマレイシアとの貿易は、毎年わが国の大幅入超となっている。一九六七年にはわが国の輸出が、八、八〇〇万ドルと対前年比九八%にとどまったのに対し、輸入は三億三、四〇〇万ドルで、対前年比一〇九%と伸びを示したため、入超額は二億四、六〇〇万ドルに達した。これは、わが国が木材をはじめとして鉄鉱石、天然ゴム等の原材料の輸入をマレイシアに依存しているのに対し、わが国の輸出品目中、綿織物等が同国の国産化等の影響をうけ減少し、かつ重化学工業品も伸び悩んでいるためである。

このようにわが国が大幅な入超となっているにもかかわらず、マレイシア側は、錫及びゴムに依存している同国輸出の多様化を計るため、わが国に対してパイナップル罐詰および鉄鉱石の買付増大を強く要望して来ており、現に一九六七年九月、佐藤総理がマレイシアを訪問した際にも、先方からこれら産品の買付増大の希望が表明されている。

なお、一九六七年一一月、一次産品問題処理対策会議より、マングローブおよびゴムの廃材の開発輸入についての調査を行なうため、パルプ用材調査団がマレイシア等へ巡遣された。

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11 インドとの貿易関係

わが国とインドとの貿易は、一九六六年以来わが国の入超であるが、一九六七年には対インド輸出一億三、八〇〇万ドルに対し、輸入は二億五、九〇〇万ドルで、一億二、一〇〇万ドルの入超となっている。

これはわが国の主要輸出品である機械機器の輸出が大幅に減少したのに対し、鉄鉱石、銑鉄、クローム鉱等の輸入が増加したことによるものである。

なお一九六七年六月、ケネディ・ラウンド交渉の過程における日印間の話合いにおいて、わが国は、インド産品に対する関税の引下げに関する先方の要望に応えて、スィリアムシード、カシューナットおよびレモングラス油につき五〇%以上の引下げ、ベチベル油、敷物類、羊革、山羊革等につき、五〇%の引下げを行なっている。

また一九六六年一月、足立日本商工会議所会頭を団長とする民間経済使節団が訪印した際、(「わが外交の近況」第十号二一五頁参照)日印両国にそれぞれ経済委員会を設立し、その合同会議を日本で開くことが合意されていたが、一九六七年九月、第一回合同委員会が、ビルラ日印経済委員会会長を団長とするインド側代表団を迎えて東京で開催された。第二回合同委員会はインドにおいて、一九六八年末に開かれる予定である。

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12 パキスタンとの貿易関係

わが国とパキスタンとの間の貿易は、従来わが国の出超となっている。一九六七年には輸出八、二〇〇万ドルに対し、輸入は、わが国の綿糸市況の高騰を反映して綿糸の輸入が急増したこともあって、対前年比二五%増の三、八〇〇万ドルとなったため、出超幅が縮小したとはいうものの、依然四、四〇〇万ドルの出超となっている。なお、わが国からの主要輸出品は機械機器で、パキスタンからは綿花、ジュート等を輸入している。

わが国としては、このような片貿易関係の是正のため、従来種々努力を行なってきており、一九六七年二月にはパキスタンより買付けるべき品目につき調査を行なうため、一次産品問題処理対策会議から貿易調査団を派遣し、また、同年三月、政府派遣経済使節団を派遣したが(「わが外交の近況」第十一号参照)、その後も、一九六七年一〇月、日本水産物輸入協会から冷凍えび買付促進調査団をパキスタン等に派遣し、調査を行なう等、貿易バランスの改善のための努力を続けている。

パキスタンとの間の案件としては、片貿易問題のほかにいわゆるパキスタナイゼーシヨンの問題がある。これはパキスタン政府が、同国にある外国系商社に対し、一定比率のパキスタン人の雇用を要請したもので、同国外務省より在パキスタン日本大使館に対し右政策に対する協力方を依頼越した経緯がある。これに対し政府は、一九六六年一二月、現地の大使館を通じてパキスタン政府に対し、「日本商社に対しては、パキスタナイゼーシヨン政策を弾力的に運用すること、およびパキスタナイゼーション政策を強化しないことを強く希望する」旨申し入れていたが、その後一九六七年五月パキスタン外務省は、口上書をもってわが方申入れに対する回答を寄せ、パ政府関係機関における検討の結果として、「日パ両国間の経済、貿易関係の増大にかんがみ、パ政府は、パキスタナイゼーシヨンの規定を厳格に適用することにより、日本商社をして困難な立場に陥らしめんとする意図は全く有しておらず、本邦商社に対しては、本政策を弾力的に適用するつもりである。」と通報してきた。

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