三 わが国と各国との間の諸問題

 

 

公海の漁業などに関する諸問題

 

1 国際捕鯨問題

(1) 国際捕鯨委員会第一九回会合

国際捕鯨委員会第一九回会合は、国際捕鯨取締条約加盟国より一五カ国が、また、オブザーヴァー三カ国、六国際機関参加の下に、一九六七年六月二六日より同月三〇日までロンドンで開催され、わが国からは藤田捕鯨委員以下の代表が出席した。主要な討議点等は次のとおりである。

(イ) 南氷洋における捕獲総頭数

一九六七/六八年漁期の南氷洋における母船式ひげ鯨の捕獲総頭数を三、二〇〇頭(白ながす鯨換算)とすることが決定された。

(ロ) 国際監視員制度

国際捕鯨委員会第一八回会合の決定に基づき設置された作業部会において本問題を討議の結果、新取決めは包括的な制度とせず、地域的な制度とすること、基地式は母船式とは別個に取扱われるべきこと等につき一般的合意をみ、右に関する報告書を採択するとともに、委員会においては、右報告書に基づき関係国により地域別取決めを作成すべき旨の勧告が行なわれた。

(ハ) 次回会合の東京招請

近年加盟国間において現在世界最大の捕鯨操業国である日本が会議を主催することが望ましいとの要望が高まって来ていたので、委員会が次回会合を東京において開催することを希望するならば、わが国は右会合を招請する用意ある旨を表明したところ、委員会は全会一致で東京開催を決定し、一九六八年六月二四日より開催されることとなった。

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(2) 南氷洋国別割当会議

(イ) 前記国際捕鯨委員会第一九回会合において決定をみた一九六七/六八年漁期の総捕獲頭数の国別割当につき討議のため、南氷洋捕鯨操業三カ国(日本、ソ連及びノールウェー)参加の下に、本件会議は七月四日および五日の両日、ロンドンで開催されたが、各国とも割当比率につき自説を主張し、交渉は進展せず、改めてオスローにて継続会議を開催することを決定し、散会した。

(ロ) 右国別割当会議の継続会議は一九六七年八月二九日より九月二日までオスローにおいて開催された。関係各国とも捕鯨委員会の決定した総捕獲枠については不満足ながら、捕鯨産業の長期的安定、資源保護等の観点から右捕獲枠を基礎とすることとし、配分比についても種々論議されたが、結局わが方主張どおり、昨年度の配分比により行なうこととなり、ノールウェー七三一頭、日本一、四九三頭、ソ連九七六頭が合意され、同年九月一九日南氷洋捕鯨規制取決めに署名が行なわれ、同取決めは即日発効した。

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(3) 北太平洋捕鯨会議

(イ) 右会議は、一九六七年二月ワシントンにおいて開催の北太平洋捕鯨会議における合意に基づき北太平洋捕鯨操業四カ国(日本,ソ連、米国およびカナダ)参加の下に前記国際捕鯨委員会第一九回会合と並行し、ロンドンにおいて開催されたが、新たな結論をみず、来漁期前に再会合することを合意し、散会した。

(ロ) 前記会議における合意に基づき、一九六七年一一月二〇日より二四日までホノルルにおいて、一九六八年における北太平洋捕鯨規制につき討議のため本会議が開催されたが、母船式および基地式捕鯨の取扱いをめぐる日ソ間の従来の原則的立場につき調整に至らず、一九六八年においても各国の自主規制によることとなった。

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2 ソ連との漁業交渉

(1) 日ソ漁業委員会第一一回会議

北西太平洋日ソ漁業委員会第一一回会議は、一九六七年三月一日より東京で開催され、四月一八日日ソ双方の委員による合意議事録の署名をもって終了した。

(イ) 今回の会議においては、さけ・ます漁業については本年のさけ・ますの年間総漁獲量をA区域五二、五〇〇トン、B区域五五、五〇〇トン(但し、B区域については一〇%の増減があり得る)とすることに決定された。

なお、会期中、両国国別委員の間に、今後数年間におけるさけ・ます年間総漁獲量の決定の方法について有意義な意見の交換が行なわれたが、今回の会議においては、この問題について何らの決定も行なわれることなく、この問題については、今後改めて審議することが適切である旨了解された。

(ロ) カムチャツカ半島西海岸のかに漁業については、次のとおり、長期的な取決めが行なわれた。

 日本側     船団数    罐詰製造箱数

一九六七年      四    二三・二万箱

一九六八年      四    二二・四〃〃

一九六九年      四    二一・六〃〃

 ソ連側

一九六七年      七    四〇・六万箱

一九六八年      八    四三・二〃〃

一九六九年      八    四三・二〃〃

なお、一九六九年度以降の年においては、双方の船団数および罐詰製造箱数は一九六九年と同様とすることに合意された。

(ハ) 本年度の会議においては、初めて議題として底魚に関する問題が取上げられ、カムチャツカ半島南西沖合水域におけるかれいの資源状態を明らかにするため、科学的共同調査を行ならようにその両締約国に対する勧告が採択された。

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3 その他各国との公海漁業問題

(1) 日韓漁業共同委員会第二回定例年次会議

日韓漁業共同委員会の第二回定例年次会議は、一九六七年六月七日より一三日まで東京において開催された。会議においては、漁業資源の科学的調査、漁船間の事故に関する一般的取扱いの問題等、委員会の円滑な運営とその任務遂行に関する事項について広範な討議が行なわれた。

漁業資源の科学的調査については、調査方法の統一のための調査指針作成ならびにこの指針による両国資源調査の実施に関する勧告が採択され、また、漁船間の海上事故の問題については、両国漁民の操業の安全を確保するため、現行の民間協定を効果的に活用するとともに、事故の発生を未然に防止するため、また発生した事故の早期解決を一層促進するため、両国政府が漁業関係者に対し、適切な指導を行ないかつ相互に密接な連絡をとる旨の勧告が採択された。なお調査指針作成のための会議は六七年九月ソウルで開催され、指針が作成された。

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(2) 視察乗船連携巡視の実施

日韓漁業協定の規定に従い一九六六年一〇月、日韓両国政府間で監視船の活動に関する交換公文が交され、これに基づき両国は、共同規制水域内における暫定的漁業規制措置の実施を監視するため、相互に公務員を相手側監視船に乗船せしめ、また両国監視船を共同で巡航させることとなった。六七年四月より六八年三月までの間に視察乗船は双方でそれぞれ九回実施し、連携巡視も六回行なわれた。さらに六八年四月からは両国漁業取締責任者も視察乗船に参加し、その機会に漁業規制に関し意見交換を行なうことになった。

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(3) 日韓漁業水域における安全操業等

韓国海軍は従来から対馬海峡附近の公海上で射撃演習を行なっているが、この水域はわが国漁場に近接しており、操業中の日本漁船も多いので、安全操業確保の見地より、韓国政府に対し、演習については相当の予告期間をもって通報する等、万全の措置をとるよう要望した結果、これに基づく事前通報が行なわれている。

また六八年一月、米国海軍のプエブロ号が元山沖において北朝鮮政府の警備艇によりだ捕される事件が発生するや、米ソ海軍艦艇をはじめ韓国海軍艇も対馬、日本海海域を巡航し、わが国漁船の安全操業に不安が生じたので、この点につき米ソ両国とともに韓国政府に対しても善処方を要望する措置をとった。

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(4) 韓国の北洋漁業進出

韓国水産界は一九六六年夏から秋にかけて北太平洋において、さけます漁業等の試験操業を行なったが、六七年には底曳漁船団がアラスカ湾コディアク島附近にまで出漁して、かれい、ひらめ、たらばがに漁業を行なった。

わが国としては、韓国水産界が北洋漁業に進出すること自体は「公海自由の原則」にもかんがみ、これをとやかくいえる立場にはないが、北太平洋には永年にわたる関係国の努力により築かれた漁業秩序があり、日米加漁業条約および日ソ漁業条約の締約国としてわが国はこの秩序維持に努めるべき義務があることにかんがみ、六七年二月農林省令を公布し日本国民が外国漁船に乗り組んできけますを採捕することを禁止するとともに、さらに同年七月「外国人漁業の規制に関する法律」を制定し、外国漁船の本邦寄港には農林大臣の許可を要することとし、外国漁船がわが国の水域の漁獲物を陸揚げ転載することを禁止する措置をとった。現在までのところ韓国水産界の北洋漁業は底魚類に限られ、さけます漁業に進出する意図はないといわれているが、わが国としては韓国北洋漁業の将来の動向に対しては、他の関係国と同様にその成行きを注目している。

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(5) 日本インドネシア漁業交渉

六七年一〇月佐藤総理のインドネシア訪問の際、スハルト大統領代理に対し、インドネシア諸島水域にはいる日本および沖繩漁船の安全操業について善処方申し入れ、この結果、本問題を検討するための「特別委員会」が設置され、同年末日イ間の交渉がジャカルタにおいて開始された。双方は、内水および領海問題に関する国際法上の主張を一応棚上げとし、本問題の現実的な解決をはかるべく現在まで交渉を続けているところ、これまでの交渉を通し、問題点も煮つまって来ているので、近い将来において交渉妥結にいたることが期待される。

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(6) 第一回日豪漁業交渉

一九六七年一一月豪州議会において、領海三海里の外側九海里に亘って漁水域を設定するとともに、この水域内における漁船の操業には同国政府の発給するライセンスが必要であることを規定した改正漁業法が成立し、同法は、一九六八年一月三〇日施行された。

わが国は古くから豪州近海でまぐろ漁業を行なっている実績があり、かかる漁業水域の設定はわが国漁業に対し少なからぬ影響を与えるので、この水域でのわが国漁船の操業に関する日豪漁業交渉を同年一月三〇日から二月九日までキャンベラで行なった。

交渉では、日豪双方の基本的立場がそれぞれ述べられるとともに、この水域でのわが国漁業の操業に関連する諸問題について詳細な討議が行なわれたが、完全な合意に達するに至らず、双方が合意する近い将来に再び交渉を続行することとなった。また、次回交渉まで、豪州側は、漁業改正法の規定を、豪州沿岸一二海里までの水域内で日本のまぐろはえなわ操業が多年に亘って行なって来た特定水域では、日本漁船に適用しないとの意向を表明した。

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(7) 日本・ニュー・ジーランド漁業協定の成立

ニー・ジーランドは一九六六年一月一日より国内法により漁業水域を設定したが(「わが外交の近況」第十一号参照)、ニュー・ジーランド側よりの取決め締結による問題解決の申し出に基づき、一九六七年五月二二日より六月七日までウエリントンにおいて交渉を行なった結果、妥結に達し、七月一二日、日本側駐ニュー・ジーランド竹内大使とニュー・ジーランド側ホリオーク首相兼外相との間で「日本国とニュー・ジーランドとの間の漁業に関する協定」および関連文書の署名が行なわれた。

同協定は、最高一七隻の日本漁船が主としてニュー・ジーランド北島周辺の距岸六海里から一二海里までの水域で一九七〇年一二月三一日まで、従来の実績(年間漁獲量たい約六千トン)による規模の操業を引き続き行ないうることを骨子としている。

なお、同協定は批准書交換後三〇日目に発効することとなっているが、協定締結の際の合意に基づき、同年一〇月一一日書簡の交換を行ない、翌一〇月一二日より行政府の権限内で同協定の暫定実施を行なっている。

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(8) 米国の漁業水域設定問題

一九六六年一〇月に成立発効した米国の漁業水域設定法は、距岸三海里の米国の領海の外側に隣接して、九海里の幅の漁業水域を設定し、米国政府はこの水域内においては、漁業に関し領海におけると同様の排他的権利を行使する、ただし、米国が認める外国の伝統的漁業は同水域内で継続されることを内容としており、この法律に違反する外国の国民および漁船は、一九六四年五月に制定された「外国漁船の米領海等内操業禁止法」に基づき処罰されることとなった。

わが国は従来からこの法律の対象とされる水域において各種の漁業を相当の規模で行なっており、このようなものには、アリューシャン列島をはじめとするアラスカ州の沿岸における底引き、はえなわ漁業、捕鯨業、「たらばがに」漁業および「さけ」漁業ならびに、主として一二海里以遠の公海で行なわれているが、その操業が一部米国沿岸一二海里内にも及んでいる「まぐろ」漁業がある。

政府としては、沿岸国が三海里の領海を越える漁業水域を一方的な国内措置により設定することは国際法上認められないとの基本的立場に立ちつつも、同法が米国政府により一方的に実施されると、日米両国間に漁業をめぐり紛争が発生するおそれがあるので、日米両国政府間の取決めにより、わが国の従来の漁業実績を確保しつつ、問題を事前に解決するため、一九六六年一二月末から翌六七年四月までに三次にわたり米国政府と協議を行なった。その結果、日米両国の法律的立場はそのままとして、問題の現実的解決をはかることで日米間に合意が成立し、同年五月九日その合意の内容を確認する書簡が東京で、三木外務大臣とジョンソン駐日米国大使との間で交換され、同時に上記書簡の交換に際し合意された議事録が両国代表者間で署名された。これらの書簡および議事録の主たる内容はつぎのとおりである。

(一) アメリカ合衆国の地先沖合におけるある種の漁業に関する交換公文

(イ) 日本国政府は、日本国の国民および船舶が、プリビロフ諸島沖の「かに」漁業、アリューシャン列島沖の一部の底引き、はえなわ漁業、米国本土沖及びハワイ諸島主要七島沖等を除く「まぐろ」漁業、アラスカ沖の大部分の捕鯨業およびアラスカ湾の二カ所における転載作業を除いては、米国の距岸一二海里内において漁業(「さけ」漁業を除く)に従事しないよう措置を執る。

(ロ) この取決めは、沿岸国の漁業管轄権に関するいずれの政府の主張をも害するものではない。

(ハ) この取決めは、一九六八年一二月三一日まで効力を存続する(ただし一部の底引き、はえなわ漁業については一九六九年五月三一日まで)。両国政府は、一九六八年一二月三一日までに、将来の取決めについて決定するため会合する。

(二) 「さけ」漁業に関する交換公文

西経一七五度以西のアリューシャン列島沖の距岸一二海里以内の水域における「さけ」漁業に関し、各政府は、日米加漁業条約の解釈および実施に関する他方の政府の立場に妥当な考慮を払う。

(三) 特定の水域における底引きおよびはえなわ漁業に関する日本側書簡

日本国政府は、前記(一)および(二)の取決めが存続する限り、漁具が高度に集中する期間における漁具の競合を防止するため、米国の距岸一二海里の外側において、それぞれ次のとおり、日本国の国民および船舶が底引きおよびはえなわ漁業に従事しないよう措置を執る。

(イ) コディアック島沖合の六区域およびユニマック島沖台の区域において、九月から翌年の二月までの間。

(ロ) アラスカ半島南側の沖合の二区域において、五月九日から同月二三日までの間(同区域における「おひょう」の漁期が変更されたときは、これに従って期間は変更される)。

(四) 合 意 議 事 録

(イ) 交換公文に掲げる取決めにいうアメリカ合衆国には、太平洋信託統治地域は含まれないことが合意された。

(ロ) 日本側代表は、米国距岸一二海里内における日本漁業の漁獲努力は現在の水準をこえないであろうと述べた。

(ハ) 漁具紛争が起こったときは、当事者間ですみやかに協議を行なうことが適当と認められた。

(ニ) 両国政府は、両国漁業の集中区域に関し、漁具破損防止のための措置を執ることが合意された。

(ホ) 「まぐろ」漁業のはえなわの一部が偶然一二海里内に入った場合は、取決めの違反とはみなされない。

(ヘ) 日本側代表は、日本の「まぐろ」漁業者は、「かじき」類の群を特に追い求めることはしないであろうと述べた。

(ト) 米国側代表は、オレゴン州及びワシントン州沖の日本漁業の資源保存に及ぼす影響と漁具競合の可能性に対して懸念を表明し、日本側代表は、日本国政府は、資源保存及び漁具競合の問題に関し、米国政府の協議の要請に応ずるであろうと述べた。

(チ) 転載区域については、必要ならば、追加的区域を設定すべきことが合意された。

(リ) 日本側代表は、一二海里内の日本の「さけ」漁業は、ブリストル系「さけ」の来遊状態に妥当な考慮を払う旨を述べ、この問題に関して両国政府は必要に応じ協議すべきことが合意された。

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(9) 「たらばがに」漁業に関する取決めの更新

一九六四年一一月日米両国間に締結された東部べーリング海の「たらばがに」漁業に関する取決めは、一九六五年および一九六六年のわが国の「たらばがに」漁獲量を半ポンド罐詰四八個入りの箱数に換算して年間一八万五千箱としていたが、同取決めは二年間の暫定取決めであり、その後の取決めについては両国政府が一九六六年末までに会合して決定することが規定されていた(同取決めの詳細については「わが外交の近況」第九号七七-七九頁参照)。

一九六六年二月ヴァンクーヴァーで開催された北太平洋漁業国際委員会第一三回年次会議における生物学調査小委員会の報告書は日米両国の科学者の検討の結果として、東部べーリング海において商業的に捕獲されるおすの「たらばがに」の平均甲長は近年次第に小型化した事実について指摘したが、それが資源の減少を示すものかどうかは必らずしも明らかでないので、さらに調査研究を強化すべきであるとした。

日米両国科学者によるこの資源評価の結果等に基づき、同年一一月一四日から一週間にわたりワシントンで行なわれた日米間協議において、米側は資源の回復がどの位みられるかを知る意味から日本の漁獲量を前回の取決めのそれより約一二%削減し、一九六七年および一九六八年につきそれぞれ年間一六万三千箱とすることを提案し、わが国も甲長の小さくなったことは一つの警戒信号であるので予防的措置としてこの米提案を受諾した。かくて前回取決めの漁獲量を上述のごとく修正する書簡が一一月二九日ワシントンにおいて武内駐米大使とラスク国務長官との間で交換された。また新取決めは、将来の取決めにつき両国政府は一九六八年末までに会合することを規定している。

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(10) 全米熱帯まぐろ委員会の動向

同委員会は一九四九年五月締結された「全米熱帯まぐろ委員会の設置のためのアメリカ合衆国とコスタ・リカ共和国との間の条約」によって設置され、その後パナマ、エクアドル及びメキシコが同条約に加盟し、現在は五カ国によって運営されている(但し、エクアドルは一九六七年脱退を通告し、前記条約規定により、一九六八年八月二四日に加盟国としての資格を失うことになっている)。

条約によれば、委員会は「東太平洋水域で漁獲するきはだ、かつお及びこれらを漁獲するために通常餌として用いられる魚類の最大漁獲を継続的に可能にするための科学的調査を行ない、随時勧告する」ことになっている。

日本政府としては、資源を保存するという同委員会の趣旨には原則的には賛成であり、一九六二年以来毎年同委員会年次会議にはオブザーヴァーを、政府間会議には代表を派遣するとともに、委員会の漁獲制限に関する勧告を遵守する等、非加盟国でありながらも委員会の活動に出来る限り協力する態度を持してきている。

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(11) 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約

一九六六年五月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで採択された「大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約」(詳細は第十一号一三二頁参照)は、七カ国の政府が批准書、承認書または加入書を寄託した時に効力を生じることになっているが、一九六八年三月現在、米国、日本の二カ国が批准書を、南アフリカ共和国が加入書を寄託したのみで、未発効のままになっている。

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(12) メキシコの漁業水域設定問題

(イ) メキシコは、一九六七年、国内法により、沿岸から十二海里にまで及ぶ漁業水域をあらたに設定した。これに対し、わが国は、沿岸国による一方的な漁業水域の設定は、国際法上認められないとの基本的立場をメキシコ政府に直ちに申し入れたが、日墨両国間の漁業をめぐる紛争の発生を防止するため、日墨漁業協定締結交渉を行ならこととし、一九六七年一一月および一九六八年一月の二回にわたり交渉を行なった結果、協定草案につき六八年二月三日合意に達したので、同年三月七日、メキシコ市において、在メキシコ石黒大使と外務大臣臨時代理ガビーノ・フラガ外務次官との間で、協定および附属の了解覚書に署名し、暫定実施に関する書簡の交換を行なった。

(ロ) この協定および附属文書は、日本国政府から正当に許可を受けた日本国の船舶が、太平洋のメキシコ周辺の距岸九海里から十二海里までの水域のうち、特定の水域を除いた部分(操業区域という)において、一九七二年一二月三一日までの五年の期間に、はえなわ漁法により、主としてめばち、きはだ、ばしょうかじき、まかじきおよびめかじきを一五、五〇〇トンを超えない範囲内で漁獲することなどを規定している。また、暫定実施に関する交換公文は、協定発効までの間、それぞれの国が憲法上の規定の範囲内で、暫定的に同協定を実施することを定めている。

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(13) フランスの漁業水域設定問題

フランス政府は一九六七年六月七日付政令をもって、フランス領海の基線から一二海里(従来三海里)まで漁業水域を拡張する措置をとった。ただ、本政令の発効は二段階に分れており、フランス本国沿海については直ちに発効されたが、海外県および海外領土については、未だ発効されていない。

わが国は、その海外県および海外領土については過去漁業実績を有しており、これら区域に政令が適用される際は少なからぬ影響を蒙ることになるので、外交経路を通じ、わが方の関心をフランス側に表明している。

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(14) スペインの漁業水域設定問題

スペイン政府は一九六七年四月一一日、その沿岸沖一二海里に及ぶ漁業水域を設定する法律を制定、五月二日施行した。右法律によれば、一九五三年より一九六二年までの一〇年間、継続して漁業に従事してきた外国に対してのみ、事前の取決めにより関係水域内での漁業が許されることになっている。

本法律の適用の及ぶスペイン領サハラ沖はわが国の最大のたこ、いか、たいの遠洋漁場であるが、その漁業実績は一九五九年からであるため、このままではわが国は事実上、関係水域から閉め出されることになるので、事態を重視し、外交経路を通じ、わが方の大なる関心をスペイン側に表明するとともに、なんらかの両国間取決めにより同水域におけるわが国漁業の操業継続をはかるため、繰返しスペイン側に漁業交渉の申入れを行なっているが、現在までのところスペイン側は右交渉に応ずる用意を見せていない。

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