原子力の平和利用に関する国際協力

 

1 国際原子力機関第一一回総会

国際原子力機関(IAEA)第一一回総会は、一九六七年九月二六日より一週間ウィーンで開催された。IAEA加盟国のうちから七六カ国が参加し、わが国からは、二階堂科学技術庁長官および法眼駐オーストリア大使を代表とする代表団が出席した。

開会式では、前年の総会の際議長をつとめたタイのサラシン代表が仮議長となって開会を宣言した後、議長の選出を行ない、チェッコスロヴァキアのノイマン代表が第一一回総会議長に選出された。会議は、一九六八年度予算、開発途上国に対する技術援助等の審議及び理事国の選出等を行なって一〇月二日閉会した。

今次総会では、ジュネーヴにおける一八カ国軍縮委員会(ENDC)への核兵器不拡散条約(NPT)米ソ案の提出およびその審議を反映して、NPT関係の問題およびIAEA保障措置の問題に先進国および中進国の関心が集中し、特にNPTの下でIAEAが保障措置の面で果すべき広範かつ重大な任務にかんがみ、IAEAの査察員の増強、国際保障措置制度訓練プログラムの促進の必要性および保障措置に関する新方法の開発の必要性についての重要な示唆ないし提案が行なわれた。

保障措置関係以外の面では、開発途上国はIAEAにおける技術援助の拡大を量的、質的に図ろうとの考えをかねてから有しており、技術援助においては、開発途上国の希望するとおり、原子力施設の提供に重点が移行されるべきであるとの決議案が提案され、西欧諸国との間で応酬が行なわれたが、米ソ両国は開発途上国の立場を擁護し、結局、IAEAは専門家派遣と切り離した設備の供給をも行なうという趣旨の決議が採択された。その他、大規模な原子力利用による発電、海水脱塩計画の意義などについての発言があった。

なお、マレイシアの加盟が認められ、加盟国は九八カ国になった。

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2 日英IAEA保障措置移管協定の署名

政府は、英国政府および国際原子力機関(IAEA)事務局との間で日英原子力協定に基づくIAEA保障措置の適用に関する協定の締結のため交渉していたが、一九六七年九月二六日ウィーンにおいて、在オーストリア法眼大使が、英国原子力公社ペニー会長およびIAEAのエクランド事務局長とともに同協定に署名し、同協定は同日発効した。従来、日英原子力協定に基づき、英国がわが国に提供した核物質および設備等の平和的利用を確保するための保障措置は、英国により実施されていたが、この協定により、同日以後はIAEAにより実施されることになった。

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3 日米原子力新協定の署名

わが国政府は、現行日米原子力協定が一九六八年一二月四日で有効期間が満了することにかんがみ、一九六七年一〇月よりワシントンにおいて新協定の締結交渉を行なっていたが、新協定は一九六八年二月二六日ワシントンにおいて、日本側駐米下田大使ならびに米国側ラスク国務長官およびシーボーグ米国原子力委員会委員長によって署名された。新協定は日米両国の国内法に基づく手続を経た上で発効し発効と同時に現行協定を代替することになっている。

新協定は、(1)特殊核物質の民有化に伴い両国の民間が核物質の取引、賃濃縮等(料金を支払って濃縮サービスの授受を行なうこと)の主体となりうることになったこと、(2)U-二三五換算で一六一トンの濃縮ウランおよび三六五キログラムのプルトニウムの供給保証を米国が行なったこと、(3)米国もわが国から移転された資材等を平和的目的のためにのみ利用する義務を負っていること、(4)有効期間が三〇年となっていること等の特徴を有している。

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4 日英原子力新協定の署名

わが国政府は、現行日英原子力協定が一九六八年一二月四日で有効期間が満了することにかんがみ、一九六八年一月よりロンドンおよび東京において新協定の締結交渉を行なっていたが、三月六日東京において、三木外務大臣および在京ピルチャー英大使との間で新協定の署名が行なわれた。新協定はわが国が国内法に基づく発効手続を了した旨英国に書面で通報することにより発効し、発効と同時に現行協定を代替することになっている。

新協定は、(1)内容が双務的であること、(2)保障措置上の義務も平等に負っていること、(3)免責条項のないこと、(4)有効期間が三〇年であること等の特徴を有している。

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