国際連合第二二回総会
国連第二二回総会に対するわが国代表団の主要構成員は次のとおりであった。
政府代表 鶴 岡 千 仭 国際連合日本政府常駐代表
同 板 垣 修 駐カナダ大使
同 卜 部 敏 男 駐ケニア大使
同 安 倍 勲 国連代表部大使
同 山 中 俊 夫 駐サウディ・アラビア大使
顧 問 服 部 五 郎 国際連合局長
同 島 内 敏 郎 在ロス・アンゼルス総領事
同 大 来 佐 武 郎 外務省参与
同 平 沢 和 重 ジャパン・タイムズ取締役
代表代理 滝 川 正 久 国際連合局参事官
同 魚 本 藤 吉 郎 国連代表部公使
同 久 米 愛 日本婦人法律家協会々長
同 大 川 美 雄 国際連合局政治課長
三木外務大臣は六七年九月二二日の総会本会議において一般討論演説を行ない、要旨次のごとく述べた。
(1) 核戦争の勃発を防止するためには、大戦の潜在的原因の除去に努めなければならない。
すなわち(一)核兵器及び通常兵器の双方にわたる全面完全軍縮のための国際協力、(二)局地的紛争の早期平和的解決、(三)貧困、無知、疾病除去のための国際協力の促進、特に国家間の経済格差是正のための努力が必要である。以上の三点は平和の維持、平和の建設のための不可欠の手段である。
(2) わが国は核兵器不拡散条約の精神に賛成である。この条約の真の目的達成のためにはできるだけ多くの国の参加が肝要であり、また核兵器国と非核兵器国がともに、責任と義務を公平に分ち合うという協力の精神が必要である。この条約の成立を契機として、核兵器国においても核軍縮の実現に向かって具体的措置をとる意思を一層明確に打ち出すべきである。核兵器実験の全面的禁止は、核拡散防止のための効果的手段であるので、わが国は核探知クラブの活動等この目的達成のために出来るだけ寄与したいと考えている。中共及びフランスは部分的核実験禁止条約をはじめ核兵器不拡散条約にも協力するとの態度をとることを希望する。
核兵器不拡散条約は原子力の平和利用を阻害するものであってはならない。
わが国は軍縮問題に関する国際的機構に参加することを希望する。
(3) ヴィエトナム問題については
(一)当事者が一九五四年のジュネーヴ協定の精神に基づき、一日も早く話合いを行なうことを希望する。(二)国際保障のもとに南北両ヴィエトナムの共存を計り、外国軍隊の撤退を実現し、安定した環境を作った上で、ヴィエトナムの将来をヴィエトナム人自身の手にゆだねるべきである。(三)かかる平和的解決のラインを見出すために必要な当事者間の非公式接触をつくるために、日本もできるだけ役立ちたい。(四)国連の場において、ヴィエトナム和平のための建設的討議がなされ、話合いの素地が作られることを期待する。(五)核兵器の急速な開発を行なっている中共が力によるアジア政策に出るようなことがあれば、事態は重大である。ヴィエトナム戦争の早期解決の緊急性がここにある。
(4) 中国問題
(一)今日のアジアの問題の中心である中国問題は、世界の平和と安全に関する複雑な性格を帯びた国際問題であり、その重要な一面は大陸の中共と台湾にある中華民国政府との間に争いが続いていることにある。(二)国連の中国代表権問題の完全且つ満足すべき解決は中国問題全体が解決されなければ期待できない。(三)日本政府が従来中国の代表権を変更する提案は重要問題であるとする立場をとっているのは、中共締め出しのためではなく、かかる重要な要素をはらむ提案はすれすれの過半数で決定し得るごとき単なる手続問題ではないと確信しているからである。
(5) 中東問題
(一)わが国は占領という既成事実による領土の拡張は容認し得ない。イスラエル軍隊は速やかに占領地域から撤退すべきである。(二)同時に中東地域における永続的平和が確立されねばならず、またアラブ難民救済のために効果的な対策が講じられるべきである。(三)問題解決のために当事国間の話合い等あらゆる方策が試みられるべきであるが、最終的には国連により承認され、国連がその遂行について引き続き責任を負う解決策が望ましい。
(6) 南部アフリカ問題
(一)南部アフリカ諸問題の根源には人種差別問題がある。南部アフリカを統治する諸国は人種差別の撤廃および植民地独立という歴史の潮流を認識し、従来の政策を改めるべきである。(二)他方、正義の実現のためには力の行使を辞せずとの態度を慎しむべきである。問題解決のため関係当事者の理解と忍耐を要請する。
(7) アジア開発問題
(一)開発途上地域の民生安定および社会福祉は、紛争の潜在的原因を除去する意味で恒久的平和に資する。アジアに平和と安定をもたらすためには、アジアの開発を進めることが最も肝要である。(二)アジアにおいては、経済開発のための地域協力が推進され、新機構も生まれたが、これは自助の努力の現われであり、わが国はこの傾向を歓迎する。(三)開発途上国の開発には、各国自らの努力、地域協力、地域外からの協力の三要素が不可欠である。わが国は開発途上国との貿易促進、援助の強化に努めているが、他方太平洋地域の先進諸国もアジアの開発のため援助を更に拡大するよう希望する。アジアの開発問題は今やアジア・太平洋という広さでとらえるべきであると考える。(四)「国連開発の十年」計画は八年を経過し、実績もあがりつつあるが、いまだ目標は十分に達成されていない。しかし経済開発の事業は「開発の十年」にとどまらず一九七〇年代以降も忍耐強く進めて行くべきである。わが国は第二回国連貿易開発会議の意義を重視し、これに積極的態度をもって臨む方針である。
(8) 国連の使命と日本
(一)国連の現状につきその限界と無力を批判する声が聞かれるが、われわれは国連強化という建設的立場からどう対処すべきかを考えるべきである。国連の仕組みが悪いというのであれば憲章の再審議も可能である。しかし根本的には加盟各国の態度が問題であり、各国代表は国の代表であるのみならず人類全体の代表であることを自覚すべきである。(二)平和を守り繁栄を築くという人類共通の利益に対する自覚を若者たちに植えつけるという観点から、国連がいわゆる平和部隊の構想を推進するための中心的役割を果すことができないものであろうか。(三)わが国は国連への協力その育成強化を外交政策の最大の目標の一つとして挙げ努力してきたが、今後もこの方針を堅持する。
(1) 中国代表権問題は、一一月二〇日から一一月二八日まで本会議において審議された。
これに先立ち、一〇月二七日、アルバニア、カンボディア、ルーマニア等一一カ国は、国府を追放し中共を参加せしめるとのいわゆるアルバニア型決議案を提出し、他方、同じく一〇月二七日、米国、イタリア、オーストラリア、ニュー・ジーランド、日本、タイ、フィリピン等一五カ国は、いわゆる重要問題指定確認決議案を提出した。また、その動向が注目されていたチリ、イタリアは、一一月二〇日、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダとともに前総会と同趣旨のいわゆる委員会設置案を五カ国共同決議案として提出した。
(2) これら三決議案の表決は、一一月二八日行なわれ、重要問題指定確認決議案を賛成六九(わが国を含む)、反対四八、棄権四で採択し、アルバニア等一一カ国決議案を賛成四五、反対五八(わが国を含む)、棄権一七で否決し、イタリア等五カ国決議案を賛成三二(わが国を含む)反対五七、棄権三〇で否決した。
重要問題指定再確認決議案およびアルバニア型決議案の両者において、前総会の表決結果と比較すると若干国府支持の票が増加しており、また、イタリア等五カ国決議案は、賛成、反対とも若干票数が減少している。
(3) わが国の鶴岡代表は、一一月二〇日の一般討論において発言し、中国代表権問題の趨勢は極東ひいては世界の平和と安全に重大な影響を有するものであり、アルバニア型決議案は、一九四九年以来、台湾海峡をはさんで国府と中共が相対立しているという現実を無視するものであると述べ、アルバニア型決議案に反対するとともに、重要問題指定確認決議案の支持を訴えた。
(1) 国連における朝鮮問題は、一九五〇年の第五回総会において設置された国連朝鮮統一復興委員会(UNCURK)の報告の審議という形で取扱われてきたが、数年前よりソ連等東欧諸国より、UNCURKの解体および在韓国連軍の撤退を主張する声が強まり、第二二回総会においても、UNCURK報告とともに、UNCURKの解体および在韓国連軍の撤退が議題として採択された。
(2) 一〇月三一日より、朝鮮問題は第一委員会において審議され、例年どおり、韓国および北鮮の代表を審議に招請する問題が論議された。一〇月二二日、日本、アメリカ、オーストラリア等一二カ国(後に、中央アフリカも参加)より、韓国を招請するとともに、北朝鮮が朝鮮問題に関する国連の権威と権限を認めることを条件として招請するとの趣旨の決議案が提出され、他方、一〇月一八日、カンボディア、モンゴル等一〇カ国より、韓国および北朝鮮を同時にかつ無条件に招請するとの趣旨の決議案が提出された。これら二つの決議案は、一〇月三一日表決に付された結果、後者は否決され、前者の条件付招請決議案が賛成五八(日本を含む)、反対二八、棄権二五で採択された。
北朝鮮は従来より、朝鮮問題を朝鮮の内政事項であるとして国連の介入を拒否して来たが、右表決の結果また北朝鮮の審議参加は実現せず、韓国のみが審議に参加した。
なお、わが国の鶴岡代表は一〇月三一日、第一委員会において発言し、韓国が朝鮮問題に関する国連の権威と権限を明白に受諾している一方、北朝鮮はこれを拒否する態度を維持し続けている以上、北朝鮮がこれまでの態度を変更することを条件として審議への招請を行なうという国連の従来の態度を変更する理由はないとの趣旨を述べて、韓国の招請を支持した。
(3) その後、第一委員会は、実質問題の審議に入り、UNCURK報告、UNCURKの解体及び在韓国連軍の撤退の諸問題をめぐり、米ソ間の応酬を中心として議論が行なわれた。実質問題については、一〇月二〇日、カンボディア、ソ連等一四カ国より、「南鮮」に駐留している米軍等外国軍隊の撤退を要求する決議案、一〇月一五日、カンボディア、ソ連等七カ国より、UNCURKの解体を趣旨とする決議案、また、一〇月二五日アメリカ、日本、オーストラリア等一四カ国(後に、中央アフリカが参加)より、朝鮮統一問題に関する国連の役割を再確認するとともに、UNCURKの任務継続を要請し、在韓国連軍の唯一の駐留目的は朝鮮の平和と安全の維持にあることを明らかにした決議案を提出した。一一月七日、これら三決議案は表決に付され、在韓国連軍の撤退およびUNCURKの解体に関する二決議案はいずれも否決され(わが国反対)、日米等提出の決議案は、賛成六七、反対二三、棄権二三で採択された。
(4) 第一委員会で採択された決議案を含む朝鮮問題に関する第一委員会報告は、一一月一六日の本会議において審議され、賛成六八(わが国を含む)、反対二三、棄権二六をもって採択された。
(1) 平和維持活動特別委員会
平和維持活動特別委員会(以下PKO委員会と略称する)は、第五回特別総会の決議により、第二二回総会へ報告書を提出することとなっていたが、一九六七年九月一四日、会議を開催し、国際情勢の展開のために、委託された任務を遂行することが出来なかった旨の報告書を採択した。
(2) 国連第二二回総会における審議
(一) 国連第二二回総会は、一九六七年一一月二四日から一二月八日まで、「平和維持活動のあらゆる分野におけるすべての問題の包括的検討、平和維持活動特別委員会の報告」の議題を特別政治委員会において審議した。
右特別政治委員会における審議においては、次の諸決議案が提出された。
(イ) アイルランド等九カ国共同決議案(総会はPKO経費の割当を行ない得るとの前提に立ち、年間一億ドル未満の経費につき低開発国五%、五大国を除く先進国二五%、五大国は七〇%の割当方式を決定する。ただし、五大国についてのみ当該PKOの設置に賛成しない場合には、その経費分担を免除するとしている点が特色で、前年の総会に提出された決議と同趣旨)
(ロ) インド等六カ国共同決議案(前文五項で憲章四三条に言及し、主文一項でPKO委員会の継続を決定し、主文二項で軍事参謀委員会をしてPKOに必要な施設、用役、要員等いわゆるPKOの準備の問題を検討させようとする趣旨)
(ハ) スウェーデン等三カ国共同決議案(自発的拠金を訴えるとともにPKO委員会の継続を決定せんとする趣旨)
(ニ) 米国等四カ国共同決議案(事務総長に対しPKOの準備の問題を検討させようとする趣旨)
(ホ) 前記(ロ)インド等六カ国共同決議案に対するオーストリア等七カ国修正案(原案の主文二項に関しPKOの準備の問題の研究が望ましいとし、PKO委員会に対し右の研究を含めた報告書の提出を要請する趣旨)
その後、右(イ)を除く各決議案の共同提案国が協議し、右(ホ)の修正案のライン(インド案の前文五項の削除も追加された)で合意が成立し、右の修正をとり入れたインド等六カ国決議案が一二月八日、特別政治委員会で、賛成七五(わが国を含む)、反対一、棄権八で採択された(アイルランド案は表決に付されなかった)。
(二) ついで一二月一三日、総会本会議はPKOに関する特別政治委員会報告書を審議し、同委員会が採択した決議案を賛成九六、反対一(アルバニア)、棄権五(コンゴー(キンシャサ)、コンゴー(ブラザヴィル)、キューバ、アイルランド、ガーナ)で採択した。
右の結果、PKOの準備の問題を中心に、PKO委員会は審議を継続することとなった。
(三) わが板垣代表は一二月四日、特別政治委員会において要旨次のごとき演説を行なった。
(イ) わが国の二五〇万ドルの拠金をはじめ、二三カ国が国連財政の赤字解消のため、これまでに総額二、三〇〇万ドルの自発的拠金を行なっているが、未だ約三、六〇〇万ドルの赤字が残っており、未だ拠金を行なっていない諸国、特に一部の安保理常任理事国が拠金するよう訴える。
(ロ) PKOのあり方に関する従来のわが国の主張の要点は、第一に、PKOは、憲章第七章にいう行動(action)とは別のものであること、第二に、安保理事会が平和の維持に関する主要な責任を遂行し得ないときは、総会はPKOの設置を勧告し得ること、第三に、総会はPKOの経費を全加盟国に割当てる権限を有することの三点であり、右の立場を確認する。
(ハ) PKOの分野における従来の事務総長の権限は抑止されるべきでない。事務総長に対し国連待機軍の訓練および標準化の問題について研究する権限を与えるべきである。
(ニ) PKOに関連して、紛争の平和的解決の努力を進めるべきで、この分野で、わが国初め他の諸国から有意義な具体的提案が出されていることに注意を喚起したい。
(ホ) 本年のPKO委員会に提出された種々の提案検討のため、PKO委員会は審議を継続すべきである。
(1) 第五回特別総会決議によって設置された南西アフリカ理事会は、一一月一六日、第二二回総会に報告を提出し、南ア政府の国連無視の態度のため、南西アフリカ理事会は、総会によって与えられた任務を遂行することは不可能であるとの結論に達し、理事会としては、安全保障理事会が必要な措置をとるように勧告すると述べた。
(2) 第二二回総会における南西アフリカ問題の審議において、大多数諸国の関心は、南アのテロ禁止法および反共産主義者法により逮捕され南アにおいて裁判中の南西アフリカ人の問題に集中し、一二月一一日、アジア・アフリカ諸国ほか多数の国より、南ア政府による三七人の南西アフリカ人の不当なる逮捕、裁判を非難し、南ア政府が直ちにこれら南西アフリカ人を釈放すべしとの趣旨の決議案が提出され、わが国も共同提案国に参加した。
この決議案は、一二月一六日、賛成一一〇、反対二(南ア、ポルトガル)、棄権一(マラウイ)をもって、決議二三二四として採択された。
(3) 他方、一二月一四日、アジア・アフリカ諸国より、南ア政府の諸総会決議の履行拒否を非難し、南西アフリカ理事会に対し、その任務を継続するよう要請するとの趣旨の決議案が提出され、一二月一六日、賛成九三(わが国を含む)、反対二(南ア、ポルトガル)、棄権一八(オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、キューバ、デンマーク、フィンランド、フランス、アイスランド、イタリア、ルクセンブルグ、マラウイ、オランダ、ニュー・ジーランド、ノールウェー、スウェーデン、英国、米国)をもって、決議二三二五として採択された。
(1) 南アフリカのアパルトヘイト政策問題の審議は、本総会においても、特別政治委員会において審議され、南ア政府に対する非難、弾劾がくり返されたが、南アの主要貿易国たる英米等西欧諸国および日本に対する非難はますます強まりつつあることが注目された。
(2) 一一月一五日、アジア・アフリカの諸国より、南アのアパルトヘイト政策非難を再確認するとともに、憲章第七章にもとづく強制措置をとることが本問題解決のために不可欠であり、かつ、全面的経済制裁が唯一の平和的解決方法であることを確認し、南アと政治的、経済的、軍事的に協力している南アの主要貿易相手国および外国企業を非難するとの趣旨の決議案が提出され、一一月二二日、賛成八九、反対一(ポルトガル)、棄権一三(米国、英国、フランス、イタリア、カナダ、オランダ、オーストリア、オーストラリア、ニュー・ジーランド、メキシコ、アルゼンティン、日本等)をもって採択され、この決議案を含むアパルトヘイト政策に関する特別委員会報告は、一二月一三日の本会議において、賛成八九、反対二(南ア、ポルトガル)、棄権一二(わが国を含む)をもって決議二三〇七として採択された。
(3) わが国板垣代表は、一一月二日の一般討論において発言し、「南アが頑迷にアパルトヘイト政策を推進していることは遺憾であるが、アパルトヘイト政策は必ずや失敗するものと確信する。経済制裁については、安全保障理事会の専管事項であることに留意すべきであるが、安全保障理事会が決定を行なえば日本は忠実に履行する用意がある」旨を述べた。
(1) 植民地独立付与宣言履行特別委員会
植民地独立付与宣言履行特別委員会(以下特別委員会と略称)は、第一五回総会で採択された植民地独立付与宣言の実施状況を検討するために、第一六回総会決議に基づいて設置され、その審議結果を毎総会に報告している。
一九六七年の特別委員会は、二月九日より六月二一日までの第一期をニュー・ヨーク、キンシャサ、キトウェ、ダレサラムにおいて、また八月二二日より一二月五日までの第二期をニュー・ヨークにおいて、それぞれ開催し、ポルトガル施政地域、南西アフリカ、南ローデシア、仏領ソマリランド、ジブラルタル等の地域のほか、植民地独立付与宣言の実施を妨げている外国経済利権の活動および植民地における施政国の軍事活動についても審議を行ない、第二二回総会にその報告を提出した。
(2) 国連第二二回総会
九月二三日、第二二回総会本会議は、一般委員会の勧告に基づき、植民地独立付与宣言履行問題を議題として採択し、これを本会議に割当てたが、特別委員会報告のうち個別地域に関する部分については、これを第四委員会に割当てた。
(一) 植民地独立付与宣言履行に関する一般問題
総会本会議は一二月一二日より一六日まで本問題の審議を行ない、一六日、アジア・アフリカ等三八カ国共同決議案を、賛成八六、反対六、棄権一七で採択した。採択された決議二三二六(XXII)の主文中注目すべき項の要旨は次のとおりである。
「総会は、
(イ) 特別委員会の報告を承認し、施政国に対し、同報告の勧告を実施しかつ植民地独立付与宣言および関連国連決議の実施のために必要なその他のすべての方法を講ずるよう要請する(主文第三項)。
(ロ) 使節団の派遣、植民地独立付与宣言の履行を妨げている施政国による軍事活動および諸取決めの検討並びに植民地独立付与宣言の適用される地域の表の再検討を含む、特別委員会の一九六八年の活動計画を承認する(主文第四項)。
(ハ) すべての国に対し、直接にまたは国際機関を通じて、ポルトガル、南アおよび南ローデシア非合法政権に、その植民地支配、人種差別政策を放棄しない限り、いかなる援助もしないよう要請する(主文第八項)。
(ニ) 南部アフリカにおける南アおよびポルトガルと南ローデシア非合法政権との間の協調関係の発展の重大な結果に対し、すべての国の注意を喚起し、かつ、すべての国特に右協調関係にある国との主要貿易相手国に対し、協調の当事国にいかなる支持ないし援助もしないよう要請する(主文第九項)。
(ホ) 施政国に対し、植民地における軍事基地および施設を撤去し、かつ新たに設置しまた現在あるものを植民地住民の解放を妨害するために使用することを差し控えるよう要請する(主文第一〇項)。
(ヘ) 特別委員会に対し、国際の平和と安全を脅かす惧れのある植民地における発展に関し安保理が国連憲章の下における適当な措置に関する審議を援助する目的をもって具体的示唆を与えるよう要請し、かつ安保理に対し、かかる示唆を十分考慮に入れるよう勧告する(主文第一三項)。
(ト) 特別委員会に対し、適当と認める時はいつでも、住民の希望と植民地独立付与宣言の規定に応じた個々の地域の独立期限を勧告するよう勧奨する(主文第一四項)。
(チ) 特別委員会に対し、国際社会が植民地人民の自決、自由および独立達成の努力に対する援助を増大できる最も有効な方法を審議するために、右人民の代表者の特別会議を一九六九年の早期に開催することにつき審議を行ない、第二三回総会に対し勧告を提出するよう要請する(主文第一九項)。」
わが国は右決議の表決にあたり、決議案全体には賛成したが、分割投票において、主文第三項、第四項、第八項、第九項および第一三項に棄権し、主文第一〇項に反対した。
(二) 南ローデシア問題
総会第四委員会は、一〇月四日南ローデシア問題の審議を開始したところ、一般討論において、英国は「(イ)経済制裁が失敗したとの主張には同意し得ない。安保理決議が成功するか否かはすべて各国の支持と協力に依存しているので、同決議を完全に履行するよう訴える。(ロ)武力の行使は破壊と悲惨をもたらすのみであるので、賛成できない」旨発言し、他方アジア・アフリカ諸国は何れも、現在の選択的経済制裁が南ア、ポルトガルの非協力の故に失敗に終った旨を主張し、経済制裁が効果を発揮するためには全面的な強制措置でなければならないが、これと並行して、武力の行使を行なうことが唯一の解決方法である旨述べた。第四委員会は一〇月二七日、本件に関するアジア・アフリカ共同決議案を表決に付し、賛成九〇、反対二、棄権一八(わが国を含む)で採択し、右決議を含む第四委員会の報告は、一一月三日の本会議において、賛成九二、反対二、棄権一八(わが国を含む)で採択された。採択された決議二二六二(XXII)の要旨は次のとおりである。
「総会は、
(イ) 現在までの経済制裁は南ローデシア非合法政権を崩壊せしめるのに失敗したことを了知し(前文第六項)、
(ロ) 非合法政権を終熄せしめるためには制裁は包括的、強制的で、かつ武力の裏づけを伴なわなければならないとの確信を確認する(主文第五項)。
(ハ) 施政国がとるべき唯一の効果的かつ迅速な方法は武力の行使によるものであることを再確認する(主文第六項)。
(ニ) 英国政府に対し、武力の行使を含むすべての必要な措置を直ちにとるよう要請する(主文第七項)。
(ホ) 総会および安保理の決議に反して南ローデシア非合法政権となお取引きしている諸国の活動を非難し、かつこれら諸国に対し、直ちに同政権とのすべての経済的その他の関係を絶つよう要請する(主文第九項)。
(ヘ) 南ローデシアにおける外国の財政的その他の活動を非難し、また関係国政府に対し、かかる活動を停止せしめるためあらゆる必要な措置をとるよう要請する(主文第一〇項)。」
わが国は、一〇月二七日、投票理由の説明において、(イ)すべての平和的手段が試みられるべきであるが、最終的責任は英国がとるべきである、(ロ)これまでの経済制裁が失敗であると言いうるかどうか疑問であるが、わが国は今後とるべき措置について他の諸国と協議する用意がある、(ハ)この決議は主文において、安保理の決定を遵守していることすらも非難しているが、これは安保理の行動に挑戦し、その権威を脅やかすものである、との発言を行なった。
(三) 総会第四委員会は、特別委員会の報告に基づき、右南ローデシアの他、アデン、赤道ギニア、イフニおよびスペイン領サハラ、ジブラルタル、仏領ソマリランド、群小諸島等の地域についても審議を行ない、それぞれ決議を採択した。
ジブラルタルについては、(イ)一九六七年九月一〇日に行なわれた人民投票は決議二二三一(XXI)および一九六七年九月一日の特別委員会の決議に反するとして、これを非難するラ米決議案、(ロ)一九六七年九月一〇日の人民投票の結果をテーク・ノートする英国決議案、並びに(ハ)英国に対し、スペインと協議の上、また同地域の住民の利益を考慮に入れた上で、ジブラルタルの非植民地化を促進することを求めるノールウェー等北欧諸国案が提出されたが、総会は結局ノールウェー案のラ米案に対する先議要求動議を賛成三〇、反対六二、棄権二四(わが国を含む)で否決した後、ラ米案を賛成七〇(わが国を含む)、反対二一、棄権二五で採択した。わが国はラ米案に賛成した。
わが国山中代表は表決後の投票理由の説明において、右決議案が分割投票に付された場合には、前文第五項(民族的統一、領土保全を損なう植民地の状態は憲章および決議一五一四(XV)第六項に合致しない)および主文第二項(一九六七年九月一〇日の人民投票は決議二二三一(XXI)別および一九六七年九月一日の特別委員会決議に反するとしてこれを非難する)には棄権する所存であった旨の発言を行なった。
また総会は一一月二八および二九の両日、アデン問題につき審議を行ない、「南イエメンの領土保全を再確認し、これに反する行為はすべて決議二一八三(XXI)および一五一四(XV)に違反するものと認める」旨のコンセンサスを採択したところ、右コンセンサスに基づいて、一一月三〇日アデンを含む南アラビア連邦は南イエメン人民共和国として独立し、一二月一四日国連に加盟した。
(四) ポルトガル施政地域問題
総会は、九月二三日、本問題を議題として採択し、第四委員会に割当てた。総会第四委員会は、一一月一日より、特別委員会報告および事務総長報告に基づいて本問題の審議を行ない、一〇日、アジア・アフリカ共同決議案に若干の修正を加えた上、賛成八○(わが国を含む)、反対八、棄権一五で採択し、一七日の本会議も、右決議を含む第四委員会報告を賛成八二(わが国を含む)、反対七、棄権二一で採択した。採択された議決二二七〇(XXII)の要旨は次のとおりである。
「総会は、
(イ) 国際の平和と安全に対する脅威となっているポルトガル政府の植民地支配を強く非難する(主文第四項)。
(ロ) ポルトガル支配地域の外国企業の活動を非難する(主文第六項)。
(ハ) とくにNATO諸国に対し、ポルトガルにいかなる援助(特に軍需物資)をも供与しないよう要請する(主文第八項)。
(ニ) 安保理に対し、これまでの決議の規定を義務づけるよう勧告する(主文第一一項)。
(ホ) すべての専門機関、とくにIBRDおよびIMFに対し、ポルトガルにいかなる財政的、経済的または技術的援助の供与をも差し控えるよう訴える(主文第一三項)。」
なお、わが国山中代表は、投票理由の説明において、(イ)ポルトガル政府の非妥協的態度を遺憾とし、ポルトガル施政地域住民が自決への固有の権利を行使できるよう、国連があらゆる合法的かつ平和的手段によりポルトガルに圧力を続けてかけるべきである、(ロ)アジア・アフリカ決議案について、分割投票の際は、主文四、六、八、一一および一三項に留保を付し、全体に賛成投票したい、(ハ)「非難する」の頻繁な使用は問題の平和的解決に役立たないと考える、との発言を行なった。
軍縮問題のうち、今日最も注目されているものは核兵器不拡散条約締結問題であるが、本件については、国連第一三回総会におけるアイルランド提案以来、国連総会および一八カ国軍縮委員会等において引きつづき審議が行なわれて来た(一九六六年における本件審議の概要は第十一号、七五頁以下参照)。
(一) 一九六七年の一八カ国軍縮委員会における審議
米ソ両国は、一九六六年秋頃から、一八カ国軍縮委員会審議の基礎資料として提出する目的で、核兵器不拡散条約案の作成に努力して来たが、一九六七年に入っても依然として国際的保障措置に関する第三条について合意をみるに至らず、このため同年二月下旬より開催された一八カ国軍縮委員会(第一一会期)は三月末よりいったん休会に入った。
その後、米ソ両国は、共同の条約案作成のため協議を重ねたが、最終的合意に達することが出来ないまま、五月中旬、一八カ国軍縮委員会(第一二会期)が再開された。六月に入り中東紛争が勃発したこともあって条約案の提出は更に遅れたが、八月二四日に至り、米ソ両国は第三条を空白としたまま、同一内容の条約案をそれぞれ別個に一八カ国軍縮委員会に提出した。これに伴い、同委員会は、右米ソ条約案をめぐる審議を引き続き行なったが、第三条について米ソ両国間に合意が出来ないため、審議は行きづまり状態のまま、一二月初旬、簡単な中間報告書を国連総会に提出したのみで休会に入った。
(二) 国連第二二回総会における審議
以上のごとく一八カ国軍縮委員会の報告書の提出が遅れたため、一九六七年九月より開催された国連第二二回総会は、本件の実質的審議を行なうことが出来なかった。一八カ国軍縮委員会の中間報告書の提出後、国連総会において米ソ両国は、一八カ国軍縮委員会に対し、本条約案審議の完全な報告書を一九六八年三月一五日までに提出することを要請し、右報告書提出後適当な協議を経て第二二回総会を再開するとの趣旨の決議案を準備中であったところ、一二月一四日に至り、英国、カナダ、インド等一三カ国とともにこれを総会第一委員会に提出した。他方翌一五日ケニア、パキスタン等非核兵器国会議開催の準備を推進し来った諸国は、右非核兵器国会議を一九六八年三月一一日より四月一〇日まで開催するとの趣旨の二一カ国決議案を提出し、これら二つの決議案において予定されている再開総会および非核兵器国会議の日取りが重複するところより、両決議案表決の成り行きが注目されたが、結局非核兵器国会議開催の日取りを一九六八年八月から九月に繰り下げることにつき関係国間において妥協が成立し、一八カ国軍縮委員会報告に関する米国、ソ連等の決議案は提出期限に変更をみることなく、若干の修正を経た上、総会決議二三四六(XXII)Aとして採択された。右決議の主文要旨は次のとおりである。
(イ) 一八カ国軍縮委員会に対し、緊急に作業を続け、一九六八年三月一五日以前に核兵器不拡散条約案に関する審議の完全な報告を、それに関連する文書および記録とともに、総会に提出するよう要請する。
(ロ) その報告を受理したときに、これを審議する目的で第二二回総会を再開するために一九六八年三月一五日以降の早い期日を決めることについて、総会の手続規則に従い、適切な協議が開始されるよう勧告する。
(三) 一九六八年の一八カ国軍縮委員会における審議
米ソ両国は、当初の条約案において空白となっていた国際的保障措置に関する第三条の案文につき協議を続けるとともに、各国より提出された提案ないしは見解を勘案の上、改訂条約案を準備中であったところ、一九六八年一月一八日、一八カ国軍縮委員会(第一三会期)再開に際し、これを同委員会に提出した。右改訂条約案においては、空白となっていた第三条が埋められたほか、核爆発の平和利用から生ずる潜在的利益の提供に関する第五条、軍縮交渉遂行の義務に関する第六条および地域的非核武装化条約に関する第七条の規定が新たに主文中に設けられ、更に、原子力平和利用に関する主文第四条の規定が整備強化され、わが国等非核兵器国の主張は条約案中にかなりとり入れられた形となった。
右改訂条約案をめぐり、一八カ国軍縮委員会において審議が行なわれていたところ、三月七日、米英ソ三国は、非核兵器国の安全保障に関する国連安全保障理事会の決議案を同委員会に提出し、更に、改訂条約案の提出以降わが国を含め各国から提出された修正提案ないしは見解等を勘案し、再改訂条約案を準備中であった米ソ両国は、三月一一日、これを同委員会に提出した。右の再改訂条約案においては、全面的核兵器実験禁止条約に関する一項が前文に追加され、軍縮交渉に関する主文第六条が改訂されたほか、わが国が従来より強く主張して来たところに従い条約審議のための会議を当事国の過半数の賛成により五年毎に開催するとの趣旨の規定が第八条第三項に追加された。
三月一四日、一八カ国軍縮委員会は三月七日付米ソ条約案および米英ソ三国の国連安全保障理事会決議案を含む報告書を採択し、その後右報告書を国連総会に送付した。
この結果、核兵器不拡散条約の審議は、一九六八年四月下旬より、国連再開総会において行なわれることとなった。国連総会に送付された条約案の構成およびその骨子は次のとおりである。
(イ) 条約の構成
(i) 前文(一一項)
第一項、第二項、第三項・・・・・・条約締結の動機
第四項、第五項・・・・・・原子力の平和利用に対する国際的保障措置
第六項、第七項・・・・・・原子力の平和利用
第八項、第九項、第十項、第一一項・・・・・・核軍縮
(ii) 主文(一一カ条)
第一条・・・・・・核兵器拡散防止に関する核兵器国の義務
第二条・・・・・・核兵器拡散防止に関する非核兵器国の義務
第三条・・・・・・原子力の平和利用に対する国際的保障措置の適用
第四条・・・・・・原子力の平和利用
第五条・・・・・・核爆発の平和的応用
第六条・・・・・・核軍縮交渉
第七条・・・・・・非核武装地帯
第八条・・・・・・条約の改正及びレビュー会議
第九条・・・・・・条約の署名、加入、批准、発効並びに登録
第十条・・・・・・条約からの脱退及び条約の有効期間
第一一条・・・・条約の正文
(ロ) 核兵器の拡散防止
(i) 核兵器の拡散防止に関する核兵器国の義務
核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置及びこれらに対する管理(コントロール)を移転しないこと、並びに、非核兵器国が核兵器その他の核爆発装置を製造、取得することについて援助しないことを約束する(第一条)。
(ii) 核兵器の拡散防止に関する非核兵器国の義務
非核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置及びこれらに対する管理(コントロール)の移転を受けないこと、核兵器その他の核爆発装置を製造・取得しないこと、並びに、製造について援助を受けないことを約束する(第二条)。
(ハ) 核軍縮交渉
当事国は、(i)できる限り早い期日に核軍備競争の停止を達成するとの意図を宣言し、(ii)この目標を達成するためにすべての国の協力を要請し、(iii)核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止を求め、かつ、その目的のために交渉を継続するとの決意を一九六三年の部分核禁条約の当事国が同条約の前文において表明したことを想起し、(iv)全面完全軍縮条約に従って、核兵器の製造を停止し、現存する貯蔵核兵器を廃棄し、並びに自国の軍備から核兵器及びその運搬手段を除去することを容易にするため、国際緊張の緩和と諸国間の信頼の強化を促進することを希望する。(前文第八項、第一一項)
また、当事国は、核軍備競争の速やかな停止及び核軍縮に関する効果的な措置並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面完全軍縮条約のために誠実に交渉を遂行することを約束する。(第六条)
(ニ) 原子力の平和利用
(i) 原子力の平和利用
当事国は、(a)原子力技術の平和利用の利益はすべての当事国に提供されるべきこと、(b)原子力の平和利用を促進するための科学的情報をできる限り交換する権利を有すること、(c)単独に又は他の国と協力して原子力平和利用の一層の発展に貢献する権利を有すること、等の諸原則を確認する。(前文第六項、第七項)
また、この条約は、平和的目的のための原子力の研究、生産及び使用を促進する当事国の固有の権利を害するものではない。(第四条)
(ii) 核爆発の平和的応用
当事国は、核爆発の平和的応用から生ずる潜在的利益が、当事国である非核兵器国に対し、適当な国際的手続を通じ無差別の原則に基づいて提供されることに協力する旨を約束する。また、当事国である非核兵器国は、特別な協定に従って、二国間の合意に基づき若しくは適当な国際機関を通じてこのような利益を享受できる。(第五条)
(iii) 原子力平和利用に対する国際的保障措置
(a) 当事国は、(a)平和的な原子力活動に対する国際原子力機関の保障措置の適用を容易にすることについて協力すべきことを約束するとともに、(b)保障措置の簡素化、機械化を助長するよう努力する。(前文第四項、第五項)
(b) 非核兵器国は、原子力が平和利用から核兵器又は核爆発装置に転用されることを防止するために、国際原子力機関との間に締結される協定に基づく保障措置を受諾することを約束する。かかる保障措置は非核兵器国の原子力平和利用活動におけるすべての原料物質又は特殊核分裂性物質に適用される。(第三条第一項)
(c) 当事国は、原料物質又は特殊核分裂性物質が上記の保障措置の下におかれない限り、このような核物質又は原子力施設等を平和的目的のためにいかなる非核兵器国にも供給しないことを約束する。(第三条第二項)
(d) 保障措置は、当事国の経済的、技術的発展並びに原子力平和利用の分野における国際協力等を妨げないような方法で実施されなければならない。(第三条第三項)
(e) 非核兵器国は、第三条の要件に合致するよう、個別的に又は他の国と共同で、国際原子力機関との間に協定を締結しなければならない。このような協定の交渉は、条約発効後一八○日以内に始めなければならない。また、この協定は交渉開始後一八カ月以内に効力を生じなげればならない。(第三条第四項)
(ホ) 手続事項
(i) 条約からの脱退及び条約の有効期間
当事国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危くしていると認めるときは、一定の手続に従ってこの条約から脱退する権利を有する(第十条第一項)。
条約の発効後二五年を経過した時に、条約の有効期間を無期限とするか又は更に一定期間延長するかを決定するため会議を開催する。この決定は当事国の過半数により行なう。(第十条第二項)
(ii) 条約の改正
いずれの当事国も条約の改正を提案できる。改正は、この条約の当事国であるすべての核兵器国及び国際原子力機関の理事国を含む当事国の過半数がこれを受諾(批准書を寄託)したときに、改正の批准書を寄託した当事国について効力を生ずる。(第八条第一項、第二項)
(iii) 条約のレビュー
条約の発効後五年を経過した時に、条約の前文の目的及び規定が実現されていることを確保する目的をもって条約の運用を審議するために当事国の会議が開催される。
その後五年の間隔を置いて、当事国の過半数が寄託国政府に対して提案を行なうときは、条約の運用を審議するという同一の目的のために新たな会議が開催される。(第八条第三項)
(四) わが国の態度
(イ) 米ソ両国の核兵器不拡散条約案をめぐる協議が進展を見せ、同条約案の一八カ国軍縮委員会提出の機運が高まるとともに、わが国も逐次関係国と協議を行なっていたが、一九六七年四月、わが国の見解を関係諸国に伝え、これを条約中に反映せしめるため、大野勝已および西村熊雄両特使を米国および欧州の主要関係国に派遣した。同年四月一五日、外務省は、核兵器不拡散条約に対するわが国の態度につき、次のとおり発表した。
(i) 条約に対する政府の基本的態度
核兵器の拡散は、核戦争の危険を増大し、世界平和の重大な脅威となると考えるので、政府は核兵器不拡散条約の精神には賛成している。
それと同時に、この条約が真に核兵器拡散防止の目的を達成するためには、できるだけ多くの国、特に核兵器製造能力を有する非核兵器国の参加を確保することが肝要であり、また、核兵器国と非核兵器国がともに責任と義務を公平に分ち合うという精神の下に、お互いの立場を尊重し、協力して、かかる目的達成のために努力すべきであると考える。
今回、外務大臣の特使を関係国に派遣するのも、わが国の見解を明確にこれら諸国に伝え、これが条約中に反映されるよう努力するとともに、できるだけ多くの国が参加しうるような公正な内容の条約の実現に向って積極的に貢献したいと考えるからである。
(ii) 核兵器国の軍縮義務について
この条約は核兵器国と非核兵器国の義務と責任の公平な均衡を図るべきであり、また全面完全軍縮達成に向っての一歩たるべきものである。この観点から、すべての核兵器国は、できる限り速やかに核軍備競争を停止し、軍縮特に核軍縮の実現のためあらゆる努力を払うべきであり、その意図をこの条約中に明確に表明すべきであると考えている。
(iii) 非核兵器国の安全保障について
核兵器不拡散条約がその目的を達成するためには、できるだけ多数の非核兵器国、特に核兵器製造能力を有する非核兵器国が参加しなければ効果的たりえないので、これら諸国の条約参加を確保するためにも非核兵器国の安全保障につき十分なる配慮が払われるべきである。
ただ非核兵器国については、それぞれの置かれた国際環境により安全を保障するための措置も種々異なるというのが実状である。かかる事情にかんがみ、特に非同盟諸国の安全をいかにして確保するかが重要な問題となっている次第である。この点については、たとえば国連決議等の形式によりこれら諸国の安全を保障するとの考えもあるが、わが国としては、この条約が世界平和の確保につながるものであるとの見地から、これら諸国が満足する方式について合意をみることを希望し、そのように努力をして行きたいと考えている。
(iv) 原子力の平和利用について
この条約は、原子力の平和利用とその研究開発を阻害し、あるいは原子力平和利用の分野において核兵器国と非核兵器国との間に差別を設けるものであってはならず、条約の締約国は原子力の平和利用を促進し、科学技術に関する情報の交換を含めその利益を分ち合うべきである。
また、原子力の平和利用については、すべての締約国に国際的保障措置を適用すべきであると考える。
なお、平和目的のための核爆発装置については、これが核兵器と区別し難い今日、わが国はこれを開発する意図を有していないわけであるが、核爆発の平和利用が実用化された場合には、適正な国際機構の管理の下にその利益を平等に利用しうる機会がすべての国に対し保証されなければならないと考える。
(v) 条約の再審議および改正
変転する国際情勢、今後の軍縮の進展状況、科学技術の進歩等を考え、将来における情勢の変転に有効に対処するため、政府はこの条約に関連するあらゆる問題を再審議するための締約国会議を定期的に(たとえば五年毎に)開催することが望ましいと考えている。
又、この条約の改正は締約国の総意により行なわれるべきであって、核兵器国に特権的地位を認めることは適当でないと考えている。
(ロ) 一九六七年八月二四日、米ソ両国より核兵器不拡散条約案が提出されたが、同日、三木外務大臣は、これにつき、要旨次のごとき談話を発表した。
(i) 八月二四日、米ソ両国の核兵器不拡散条約案が一八カ国軍縮委員会に提出されたことは、米ソ両国の長期間にわたる努力が結実したものとしてその努力に敬意を表するとともに、核兵器不拡散に対する大きな前進として歓迎するものである。
(ii) かねてよりわが国が表明していたこの条約に対する態度との関係で、この草案に対するとりあえずの所感を述べれば次のとおりである。
(a) 核軍縮義務について
条約草案は、前文の三項において、核軍備競争を停止するとの意図ならびに全面完全軍縮条約に従い核兵器の製造を停止し、核兵器の貯蔵を除去し、核兵器とその運搬手段を廃棄するとの締約国の意図を述べているが、軍縮特に核軍縮の促進をはかるためには、条約の再審議条項を活用し再審議の会議において核軍縮の進展ぶりについても検討が行なわるべきことを明確にすることが望ましいと考えている。
(b) 非核兵器国の安全保障について
条約草案はこの点について何らの規定も設けていない。ただ核兵器不拡散条約がその目的を達成するためにはできるだけ多数の非核兵器国が参加しなければ効果的たり得ないので、これら諸国の条約参加を確保するためにも非核兵器国特に非同盟諸国の安全保障につき十分なる配慮が払われるべきである。
しかしこの問題をこの条約中において画一的に解決することには種々困難があるので、例えば、国連決議等の形式によりこれら諸国の安全を保障するための措置を講ずることが検討されているが、わが国としては、今後一八カ国軍縮委員会の審議も見守りつつ、これら諸国の満足する方式について合意をみることを希望している。
(c) 原子力の平和利用について
条約草案は前文の三項において、原子力平和利用の利益をすべての締約国に提供すべきこと、原子力に関する科学的情報をできるだけ交換すべきことおよび核爆発平和利用に関する役務を適正な国際手続を通じて無差別に提供すべきこと等を述べるとともに、主文第四条において、この条約は各国における原子力平和利用を阻害するものではなく、各国は相互に原子力平和利用を促進するために協力すべき旨を明記しており、これら諸規定は、原子力平和利用の確保に関するわが国等の要望を反映したものと考えられる。
(d) 原子力平和利用に対する保障措置の適用について
条約草案は、前文第四項において、国際原子力機関の保障措置の適用を促進すべき旨を述べるとともに、第五項において、わが国のごとき原子力産業の発達している非核兵器国の要望を考慮し、国際原子力機関の保障措置制度を簡素化するため、査察の機械化等技術の研究・開発を行なうことに言及しているが、保障措置の適用に関する主文第三条の規定は空白となっている。
現在まで米ソ間にこの点について合意をみない主たる理由は、国際原子力機関の保障措置制度とユーラトムの保障措置制度をいかにして調整するかということであり、今後さらに米ソ間の交渉および一八カ国軍縮委員会の審議を通じてこれが打開の努力が行なわれることとなろう。
なお、保障措置に関して、わが国および多数の非核兵器国は、平和的目的の施設に関する限り、これを核兵器国を含むすべての国に適用すべきであり、又、このような保障措置が各国の経済的・技術的発展を阻害することがあってはならないとの立場をとっているが、わが国としては、今後においてもこの立場が認められるよう努力したいと考える。
(e) 条約の再審議および改正
条約草案は、条約の目的と規定が実現されていることを確保するため、条約発効の五年後、条約再審議の会議を開催することとしている。しかしながらわが国は、その後においても加盟国多数の意志により定期的に再審議が行なわるべきこと、および、再審議の目的を十分達成するため会議開催の準備手続に関する規定を設けることが望ましいと考えるので、今後はこの考え方が条約中にとり入れられるよう努力してゆきたい。
改正について、条約草案は、核兵器国および他の国際原子力機関の理事国を含む過半数の国の批准書が寄託されたときに、すべての締約国に対して改正の効力が生じるとの趣旨の規定を設けている。
この規定は、改正についての拒否権を核兵器国だけでなく、一部の非核兵器国にも与えようとの趣旨に出たものである。条約改正の手続をいかにするかについては各国の主張が対立しており、今後一八カ国軍縮委員会において審議がつづけられることとなるので、わが国としては右の審議を見守りつつ、公正、妥当な解決が計られるよう努力してゆきたいと考えている。
(iii) 政府は、従来より一貫してこの条約の精神に賛成する立場をとるものであり、目下この条約草案の内容を慎重に検討中である。この草案はわが国の見解をある程度とり入れているが、政府としては、今後さらに一八カ国軍縮委員会の各委員国とも密接に連絡をとりつつ、わが国の見解が最終的にとりまとめられる条約中にできるだけ反映されるよう所要の措置をとってゆきたいと考えている。
(ハ) 米ソ条約案の審議が一八カ国軍縮委員会において行なわれている間、政府は、田中弘人大使をジュネーヴに派遣する等、関係国と密接な協議を行ない、わが国の見解が条約中に反映されるよう努力を続けて来た。
(ニ) 一九六八年に入り、米ソ条約案は二度にわたり改訂されたが(前述(b)および(c)参照)、その結果、国連総会に送付された米ソ条約案には、わが国の従来の主張がかなりとり入れられていると認められる。
(一) 一九六六年の国連第二一回総会において、核兵器不拡散問題が審議の焦点となり、核兵器不拡散条約作成につき非核兵器国の立場を反映せしめるべきであるとの意見が高まった事情を背景として、パキスタンを中心とした諸国は、核兵器不拡散問題との関連において非核兵器国会議の開催を提唱し、関係国に働きかけた結果、右会議を遅くとも一九六八年七月までに開催するとの決議二一五三(XXI)Bを採択せしめたが、その要旨は次のとおりである。
(イ) 非核兵器国の安全保障、非核兵器国相互の間における核兵器不拡散のための協力および核爆発装置の平和利用の方法等につき審議するため遅くとも一九六八年七月までに非核兵器国会議を開催する。
(ロ) 総会議長に対し、上記会議召集に関する準備を行なうための委員会を設立するよう要請する。
(二) 非核兵器国会議準備委員会の活動
第二一回総会決議二一五三(XXI)Bに従い、国連事務総長は、非核兵器国会議開催のための準備委員会の委員国として、チリ、ダホメ、ケニア、クウェイト、マレイシア、マルタ、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、スペイン、タンザニアの一一カ国を指名した。
右準備委員会は、非核兵器国会議の議題、中共を含む核兵器国の招請問題、議事規則、会議開催の場所および時期等を討議した後、八月末に至り、報告書を採択し、その後これを国連総会に送付した。同報告書の内容は、非核兵器国会議の議題を、(i)非核兵器国の安全を確保する方法、(ii)非核兵器国による核兵器の生産および取得が安全保障あるいは経済に及ぼす影響、(iii)非核兵器国の協力による核兵器拡散の防止、(iv)核エネルギー平和利用のための計画の四点とし、また、中共を含む全核兵器国を投票権なしで招請することを定めるとともに、本件会議を一九六八年三月一一日より四月十日まで開催することとした。
(三) 国連第二二回総会における審議
国連第二二回総会は、核兵器不拡散問題の審議を実質的に棚上げすることになったが(前述(1)の(ニ)参照)、パキスタン、ケニア等二一カ国は、準備委員会の勧告どおり、一九六八年三月一一日から四月一〇日までジュネーヴで開催するとの趣旨の決議案を提出した。その後米国およびソ連等の、核兵器不拡散条約審議のため、三月一五日以降に第二二回総会を再開することを含みとする決議案とのかねあいから調整が行なわれた結果、右決議案は会議開催時期を一九六八年八月二九日より九月二八日までとすることに改訂の上、決議二一五三(XXI)Bとして採択された。その要旨は次のとおりである。
(イ) 非核兵器国会議準備委員会の報告を承認する。
(ロ) 右会議を一九六八年八月二九日から九月二八日までジュネーヴにおいて開催するよう決定する。
(ハ) 非核兵器国を右会議に招請する。
(ニ) 右会議に核兵器国および関連専門機関を参加させる手続をとるよう事務総長に対し要請する。
近時米国をはじめとする海洋国において、海底資源の採査開発が進捗しつつあるところ、第二二回国連総会において、マルタより海底の利用に関する原則を定める条約の制定方提案がなされ、右に基づき審議の結果、全会一致により海底平和利用に関するアド・ホック(特別)委員会の設立を決議し今後の海底利用問題に関する国際協力が検討されることとなった。
右決議においては、
(1) 技術の進歩が海底を科学、経済、軍事その他の目的のために開発可能なものとしつつあること(2)地球表面の大部分を占める海底は、現在の国家管轄権の範囲外においては人類共通の関心の対象であり、(3)その探査利用は全人類の利益のため、かつ、国際平和確保の見地からなされなければならないこと、(4)このため国際協力を強化することが望ましいこと等を認めている。
アド・ホック委員会はわが国を含む三五カ国によって構成され、現在国家管轄権の範囲外にある海底の平和利用に関し、(1)国連、専門機関等における諸活動の調査、(2)この問題の科学、技術、経済、法律、その他の面の検討、及び(3)海底の探査、開発、保存に関する国際協力を推進する実際的方法についての示唆、の三点を含む報告を第二三回国連総会に提出することとなっている。
六八年三月、この委員会の第一回会合が国連本部で開かれ、各国の一般発言を行なうとともに、同委員会の下に法律ワーキング・グループ及び経済技術ワーキング・グループを設けることを決めた。
委員会は六八年六月及び八月に第二回及び第三回会合を開き、検討を進めることとなっている。
国連科学委員会は、一九六七年八月ジュネーヴにおいて第一七回会議を開催し、実験データの解析、放射性降下物に関する最近のデータ、神経系に対する電離放射線の作用、人類における生物学的線量測定としての染色体異常の生産量の利用及び人類における悪性新生物の発生と放射線誘発染色体異常の演ずる役割等について討議したが、染色体異状及び神経系に関する放射線の作用は人類に対する放射線の影響を評価する上で極めて重要であるので、これらの報告は一九六九年の国連総会に提出することとなった。
この委員会はわが国を含む一五カ国代表から構成され、本会議にはわが国から塚本憲甫博士(放射線医学総合研究所長)及び田島英三博士(立教大学教授)が参加した。
(1) 宇宙空間の平和利用における科学技術的国際協力
一九六六年国連第二一回総会決議によって、一九六七年九月に宇宙空間の探査と平和利用に関する国連会議がウィーンで開催されることとなっていたが、ソ連の提案により一年延期されることとなり、一九六七年五月国連第五回特別総会において、一九六八年八月ウィーンで開催することが決議された(総会決議二二五〇(S-V)。一九六七年一一月第二二回国連総会はこの国連会議を成功させるため各国の協力を要請する決議を全会一致で採択した(総会決議二二六一(XXII)。
情報の交換、国際計画の奨励などの一般的な科学技術協力問題は、一九六七年九月の宇宙空間平和利用委員会において審議された。
国連第二二回総会は、宇宙空間の科学技術面および法律面における国際協力を要請する決議を全会一致で採択した(総会決議二二六〇(XXII))。
(2) 宇宙空間の平和利用における法律問題の検討
国家の宇宙活動を律する法的原則の法典化の問題とともに、宇宙空間へ発射された物件によって起った損害の賠償、および宇宙飛行士の救助と送還および宇宙空間へ発射された物体の返還に関する協定の審議は、一九六二年に宇宙空間平和利用委員会の第一会期が開かれて以来続けられてきた。国家の宇宙活動を律する法的原則は、一九六六年国連第二一回総会決議において宇宙条約として推奨された。この条約は一九六七年一〇月に発効し、わが国はじめ米国、ソ連、英国など、一九六八年三月現在約二〇カ国がこの条約を批准している。
一方、救助返還および損害賠償に関する両協定は、一九六七年六月法律問題を検討するための宇宙空間平和利用委員会法律小委員会で審議されたが、各国の意見がまとまらず、協定案文は作成できなかった。
その後米ソ間の交渉により、救助返還に関する協定について米ソが合意に到達し、一九六七年一二月協定案文が宇宙平和利用委員会に提出された。わが国をはじめ多数の国は、宇宙へ人および物体を打上げる国にとって、利益の多い救助返還に関する協定のみを単独に成立させるのではなく、宇宙空間へ発射された物体の落下によって損害をこうむるおそれのある国を保護する損害賠償に関する協定をも成立させねばならないことを主張した。結局わが国はじめ各国とも、救助返還に関する協定に対する今後の自国の態度を留保すると述べ、一九六七年一二月国連第二二回総会は、この協定を推奨し、署名のために開放するよう決議した(総会決議二三四五(XXII)。(一九六八年三月現在ではまだ署名のために開放されていない。)この決議はまた、一九六八年九月の国連第二三回総会までに、損害賠償に関する協定案を作成し、同総会にこれを提出するよう要請している。
第二二回国連総会は、六七年二月七日、「婦人に対する差別撤廃宣言」をわが国を含め満場一致で採択した。
同宣言は、「人種、性、言語または宗教による差別なく、すべての者のために人権および基本的自由を尊重することを助長する」との国連の目的を実現するため、一九六三年の第一八回国連総会決議一九二一にもとづき、婦人の地位委員会における三年間の審議を経て、このほど採択されたものである。
同宣言は、前文および一一条からなり、性別による差別は廃止すべきであるとの一般原則、政治的権利の平等、国籍法上の平等、民法上の権利の平等、刑法上の平等、婦人の人身売買と売春禁止、教育の機会の平等、経済的社会的権利の平等、政府、民間団体、個人に対し本宣言の原則実施につきアピールすること等を規定している。本宣言の中で従来問題の多かった民法上の権利の平等については、すべての社会の基礎である家庭の調和、統一の保護を侵害せず、婦人の保護のために、行政措置を含むあらゆる措置をとることを保障する形に修正された。
宗教または信仰に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する国際条約案の審議では、問題が多くまた時間不足のため、前文および第一条を採択したに止まり、第二三回総会で本条約案の審議に優先順位を与えることを決定する旨の決議(二二九五)を採択し、審議を打切った。次いで戦争犯罪人および人道に反する罪を犯した者の処罰の問題について事務総長案を基礎に審議を開始したが、問題が多く、結局第三および第六委員会の共同作業部会を設置し、同部会が作成した案について、各国のコメントを要請し、改めて第二三回総会で優先的に審議する趣旨の決議二三三八を採択した。
第三委員会は、このほか、報道の自由、国連高等弁務官設置問題、死刑に関する問題等を審議したが、いずれも時間不足のため十分な審議を行なうことが出来ず、いずれも第二三回総会で優先審議する旨の諸決議を採択した。