邦人の海外渡航と外国人の入国査証
(イ) 一九六六年(一月-一二月)において日本国民の海外渡航に対し、外務省が発行した一般・公用両旅券の発行総数は、二一〇、六九一冊(一カ月平均一七、五五七冊)にのぼり、前年の一五四、二四七冊と比較し約三七%の増加となっている。
ちなみに一九五一年一二月に旅券法が施行せられてから一九六六年末までに発行された旅券の累計数は九九七、四七四冊となっている。
(ロ) この間の趨勢についてみると、多少の例外を除き、いずれの年も前年より増加を示しているが、特に一九六三年以降の増加率には著しいものがある。すなわち、一九五四年までの旅券発行数は各年とも二万冊未満であったのが、一九六三年になると九万冊台を数えるに至り、その後一九六四年及び一九六五年とも前年に比較し相当の伸びを示し、一九六六年には遂に二一万冊を突破、これまでの各年別旅券発行数の最高記録を樹立した。
(ハ) このように渡航者が急激に増加した理由としては、先ず一九六三年、翌六四年の業務、観光各渡航の制限緩和措置、ついで一九六六年一月以降の観光渡航回数制限の撤廃により、業務、観光渡航のいかんを問わず、所要滞在費が一回五〇〇ドル(米貨)以内であれば何回でも渡航可能となったことが先ずあげられるが、さらに、国民の生活水準が向上したことにより、時間的、金銭的余裕が生じ、海外旅行への関心が高まってきたことなどの理由もあげられよう。
なお、一九五二年から一九六六年までの一五年間の旅券発行状況及び増加率は次表のとおりである。
(ニ) 旅券発行数についてその時期的傾向をみると、従来、年頭初は少くて、五、六月頃より上昇し夏期を最高に、年末に向って次第に下降するのが、通常の推移であったが、一九六六年は、むしろ年末に向って逐次増加を示し、一二月には、二〇、二一五冊という一、九五二年以来最高の月間発行数を示したことは注目される。
一九六六年の旅券発行状況を渡航目的別に大別すれば次のとおりである。
(イ) 一般旅券
渡航目的 発行冊数 百分率
経済活動 八五、一八八 四二%
文化活動 五、七二九 三%
移(永)住 七、一五三 三%
観 光 八九、〇二二 四四%
その他 一五、八九八 八%
計 二〇二、九九〇 一〇〇%
注 「その他」とは、興行、家族等の同伴、呼寄、知人、近親訪問、病気治療、見舞、休養、米軍用務、墓参等である。
(ロ) 公用旅券
渡航目的 発行冊数 百分率
外 交 二、〇五六 二七%
公 用 五、六四五 七三%
計 七、七〇一 一〇〇%
(ハ) 観光を目的とする旅券
従来観光を目的とする旅券の発行数は、全体の約四四%を占め、例年第一位であった経済活動を目的とする旅券の発行数(一九六六年は全体の四二%)を抑えて第一位に躍進した。この伸び方を年を逐ってみると、観光渡航の制度が緩和された一九六四年四月から同年一二月までの二三、〇二六冊、一九六五年中の五四、一一〇冊に対し、一九六六年には八九、〇二二冊と著しい増加を示した。このような増加は、すでに述べた国民一般の生活水準の向上のほか、各種マス・メデアによる外国旅行ムードの醸成等により国民の海外渡航への関心がさらに高められ、これが東南アジア、殊に香港、中華民国等への買い物を兼ねた旅行の増加となってあらわれたものと思われる。これを渡航先別に見ると、アジア地域が六一%でもっとも多く、ついで北米地域の一五%、欧州の一二%の順である。職業別では会社員が四九%、ついで無職一七%、学生九%の順となっている。年令別では二〇代、三〇代の若い世代が最も多く両者とも各々全体の二三%であるが、年代が高くなるほど減少しており、性別では、女性の渡航者が増加したとはいえ、その数は未だ男性の半分以下である。
(ニ) 長期渡航を目的とする旅券
農業・技術移住者、商社等の赴任者、留学生、国際結婚による移住者等の長期渡航者(一カ国に六カ月以上滞在する渡航者を指し、両親の旅券に併記されている一五才未満の子供も含む)は、一九六六年中に総数二六、一七六人に達するが、これを渡航地域別に見ると、北米地域が依然として圧倒的に多く全体の四六%、アジア地域一九%、欧州地域一四%、中南米地域一三%、中近東アフリカ地域六%で、最下位は太平洋大洋州地域の二%となっている。
このうち主な渡航先国をあげると次のとおりである。
順 位 国 名 人 数
1 米 国 一〇、八七九
2 ブラジル 一、九七六
3 カナダ 一、一〇二
4 スペイン 九九四
5 ドイツ 八五一
注 スペインは、カナリー群島を根拠地とする漁業従事者を主とする。
また、渡航目的別に見ると「勤務」が最も多く、以下主なものは次のとおりである。
順 位 渡航目的 人 数
1 勤 務 七、四四九
2 同 居 六、三一六
3 移 住 五、一五九
4 再永住 二、四七四
5 留 学 二、〇六六
注一 勤務とは、支店、駐在員事務所等に赴任する場合をいう。
注二 同居とは、注一の者の配偶者、子供等が注一の者と同居のため渡航する場合をいう。
注三 移住とは、政府の計画、呼よせ等による移住、又は外国人と結婚し当該外国人の国に移住するため渡航する場合をいう。
注四 再永住とは、すでに外国の永住権を有する者が、その国に再び渡航する場合をいう。
外国人がわが国に入国する場合は、わが国に在留していた外国人で再入国許可書を所持して一時的に出国していた者か、あるいは当該国政府とわが国との間に査証免除協定を結んでいる国の国民のほかは、原則として、わが国の出先在外公館で領事官から、査証を受けた有効な旅券を所持しなければ、わが国へ入国することはできない。
一九六六年中に、わが国の在外公館において、発給した入国査証の種類及び件数は、次のとおりとなっている。
外交、公用査証 二二、三三五
通過査証 一五、八四六
入国査証 一七二、七九四
計 二一〇、九七五
また、最近の一〇カ年間の査証発給状況を、地域別、および年別でみると、次表のとおりとなっている。
右の表により明らかなとおり、外国人の入国者数は年を逐って、増加している。これは、近年わが国と諸外国との関係が緊密化し、ますます人的交流が盛んになりつつあることを示すものと云えよう。
わが国との間に査証相互免除取決めを結んでいる国の旅券所持者が、観光、視察その他の目的により、わが国に短期間滞在しようとするときは、入国査証を必要としないこととなっている。
一九六六年中において、わが国が二国間の旅行手続の簡易化を促進するため、一部査証および査証料の相互免除取決めを結んだ国は、アイルランド及びアイスランドの二カ国でこれにより、わが国との間に取決めを行った国は二十四カ国(注)となった。
注、査証相互免除取決め国
ドイツ、フランス、テュニジア、イタリア、ギリシァ、オランダ、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、ノールウェー、ルクセンブルグ、スイス、ドミニカ、トルコ、オーストリア、フィンランド、パキスタン、アルゼンティン、コロンビア、連合王国、カナダ、スペイン、アイルランド、アイスランド