対中南米移住の動向

開発途上にある中南米諸国への移住は、米国、カナダ等の先進国への移住と異なり、その定着発展のためには、日本側による、より多くの補完的援助が必要であることは当然であり、このために、海外移住事業団が国の内外を通じ一貫して各種の援助措置を講じているが、このうち最近おこなった具体的主要施策は次の通りである。

1 これまで貸付制度で運用されていた渡航費を一九六六年四月から全額支給に切り替えた。

2 現地においては、移住者に対する営農指導にとどまらず、生産物の市場性の拡大という事業まで援助を及ぼす必要性がかねてから痛感されていたが、その最初の具体化例としてパラグアイの油桐搾油工場の建設に予算措置が講ぜられ、生産物の販路拡大のための具体的方針が打ち出されこれに基づき工場設置の準備がすすめられている。

3 パラグァイの海外移住事業団直営イグアス移住地内に牧畜を主体として、東北六県による集団移住地の建設計画が進められつつあり、またこれがため、海外移住事業団は同移住地に畜産センターを既に設置し、これが整備をはかりつつある。

4 近年技術者移住が増加傾向にあり、特にブラジルのサンパウロ市周辺では技術移住者が漸次独立して企業を営むケースがふえてきているため、これら独立企業の健全育成を計ることを目的とし、一九六六年度から同市内外で独立企業を営む技術移住者を対象とした小規模の融資を試行的に開始した。

5 アルゼンティンのブエノスアイレス市近郊で花き栽培に従事する雇傭移住者は、地価が高いため独立が容易でない事情にあることにかんがみ、一九六六年より同市近郊に小移住地を設定、土地を長期割賦払いで分譲する方法により雇傭移住者の独立を援助することとした。

右のように、対中南米移住には、特に政府が重要役割を演じているが、それが移住者個人個人の発展のために必要な措置であると同時に受入国の開発の一助としても大いに役立っていることは見逃し得ないことである。

なお、中南米諸国への移住者数は、一九六六年度一、一八八名であるが、このうち政府資金による渡航費の支給を受けたものは一、〇五九名で、その内訳は別表の通りである。

渡航費貸付及び支給移住者送出実績表

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