六 海外移住の現状と邦人の海外渡航
一九六六年度のわが国の海外移住は、海外移住事業団を通じ渡航費援助による中南米諸国に対する移住者については一九六五年度の八一八名から一、〇五九名に増加し、在京カナダ大使館査証部の開設によって本格的に進展をみせ始めた対カナダ移住については一九六六年(暦年)において前年の二倍を上回る五〇〇名に達した。
移住者受入国の政策として、近年、技能、教育程度等を基準として受入国の産業開発及び経済発展に寄与する人材を選択して受入れようとする、いわゆる「選択主義」が世界的傾向としてみられることはこれまでもしばしば指摘されて来たところであるが、今後もこの傾向はますます顕著となることが予想される。カナダでは移住省が一九六六年作成した移住白書がカナダ議会に提出され、自国の経済発展に必要な高度技能者の選択的受入を中核とする移住政策が明確に示され、米国では、近親者の結合と専門技能者の受入れ促進を目的とした移住・国籍改正法が一九六八年七月から実施される予定であるが、それまでの過渡的措置として現在既にこの方向に沿った政策が実施されている。このように人種によってではなく、技能如何によって移住者が選ばれるようになってきた結果、わが国からの移住者数も増加の傾向を示している。また、ブラジル、アルゼンティンにおいても、単身青年の技術移住の増加が目立っている。豪州では、自国の必要とする技能を備えておれば非ヨーロッパ地域からも移住者を受入れる政策がとられている。
一方、国内情勢は、年々労働力人口は増大しているにもかかわらず、若年労働者の不足は深刻化しつつあり、移住が伸長するためには必ずしも有利な国内環境であるとはいえない。しかしながら、一九六六年一〇月に外務省が実施した移住に関する世論調査の結果をみると、移住希望者数は一九六五年度調査における二・六%から六%へと飛躍的に増加しており、移住希望者の内容をみると、高等教育を受け、専門技術を身につけた青少年男子が多数を占めている。
これは、わが国で現在高度経済成長により雇用機会が増大し、生活水準も向上しているにもかかわらず、青年層を中心として多くの人々が、自己の技術、能力によって、より有利な雇用機会と、より高い生活水準を求め、或いは新天地を開発しようとする意欲を持っていることを示すものであるといえよう。