五 わが国の経済協力の現状と問題点

わが国の経済協力の近況

わが国はUNCTADの「成長と援助勧告」にある国民所得の一%を援助にあてるとの目標をなるべく早い機会に達成するよう努めており、また一九六五年のDAC「援助条件勧告」の趣旨を実現するため援助条件の緩和にもできる限り努力を行なっている。

わが国の一九六六年(暦年)の援助実績は五三九百万ドルであって、前年度の四八六百万ドルに比して五三百万ドル増である。このうち特に政府べース援助額は前年度に比して一七%増と大幅に拡大した。しかしながら、一九六五年から六六年にかけてはわが国の経済成長率が高かった結果、援助総額の対国民所得比は六五年の○・七一%から○・六九%と減少している。

援助条件緩和の面でも更に改善が見られ韓国及び中華民国に対する長期低利借款の供与(金利三・五%、返済期間二〇年)に加え、一九六六年にはマレイシアに対して一部分、金利四・五%、期間二〇年の借款を橋梁、港湾などのインフラストラクチュア拡充のために供与した。技術協力の分野についても、一部の地域ではその欠如が資金の欠如にもまして経済開発の障害になっていることにかんがみ、一九六六年において約七六〇万ドルを技術協力のために支出したが、研修員の受入れ、専門家の派遣、海外青年協力隊の派遣、医療協力の推進など諸分野にわたり技術協力が拡充された。しかしわが国の技術協力の規模はなお先進諸国に比して非常に小さい。

わが国の援助の地理的配分について見ると、従来から援助総額の約三分の二がアジアに向けられていたが、六六年に至りこの傾向は更に強まり、政府べースの援助の約七五%、民間べースの援助の約七〇%がアジア地域に向けられている。

アジア、特に事態が流動的な東南アジアの経済開発を援助し、この地域に安定した平和と繁栄をもたらすべく努力することは、アジア唯一の先進国たるわが国の責務であり、かつ、この地域の平和と繁栄の実現自体わが国の将来の繁栄と密接に結びついているとの認識に立って、わが国は、六六年四月、東南アジア開発閣僚会議を主催したが、各国の経済開発関係閣僚より活発な意見の交換が行なわれ、この会議を機に、経済開発と域内協力の気運は大いに高まった。また、六六年一二月には四月の東南アジア開発閣僚会議の際の合意に基づき、経済開発を促進する際のカギとなる農業開発の諸問題について討論を行なうため、東南アジア農業開発会議を東京で開催したが、農業開発基金の設置、東南アジア漁業開発センターの設立について合意を見る等極めて意義深い会議であった。さらに、同年一一月にはアジア開発銀行の設立創会を開催したが、わが国は当初よりその設立のために積極的に協力し、米国とならんで二億ドルの最大の出資を行なうなどして東南アジアの地域開発に尽力してきた。また二国間べースでは、六六年中わが国は、前記の通りマレイシア、タイ等に対し従来の例よりも緩和された条件の直接借款をオファーし、マレイシアについては既に交渉が妥結した。インドネシアに対しては六六年七月、三〇百万ドルの緊急援助の供与を決定し、九月には同国に対する債務に関する多数国間会議を東京において主催する等、同国の経済再建に積極的に協力している。この他ラオスのナムグム・ダム建設に対する出資、同国の為替安定基金に対する追加出資、カンボディアのプレクトノット・ダム建設計画の積極的協力の表明等、わが国の東南アジア向け経済協力は著しく活発化した。

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