アフリカ諸国(北アフリカを除く)と日本
わが国のサハラ以南のアフリカ諸国向け輸出は、一九六六年は六億五、七〇〇万ドル(わが国総輸出の七%)と前年に比し一二%の減少を見た。他方、輸入は、六六年三億七、九〇〇万ドル(前年比二三%増、総輸入の四%)とこれまでの最高を記録した。
輸出は、スターリング、非スターリング両地域向けとも減少しており、前者は六五年の三億九〇〇万ドルから、六六年は二億六、二〇〇万ドルへ、後者は四億三、七〇〇万ドルから三億九、五〇〇万ドルに減少した。輸出の減退は、前者においてはガーナの政変および対外債務遅滞、ナイジェリア、ケニア等の対日輸入制限ならびに南アフリカ、ローデシア問題の影響によるこれら諸国への輸出減退に基因し、後者では主としてリベリア向け船舶の輸出が、約五、二〇〇万ドル減少したことに基因する。
一方、輸入面では、スターリング地域においては、ローデシアからの輸入が半減した反面、ガーナ、ナイジェリア、東アフリカ三国からの輸入が増加しており、また、非スターリング地域については、旧仏領諸国からの伸びが顕著であった。
わが国としては、東アフリカ三国、ナイジェリア等、片貿易を理由に対日輸入制限を行なっている国に対しては、相手国の産品買付けに努力するとともに、経済協力、技術協力等の施策とあわせ、対日輸入制限解除に努力している。また、旧仏領西部、中部アフリカ諸国は大部分旧宗主国フランスの地位を継承して、ガット三五条の対日援用を行なっており、かつ実際に対日三倍関税等、関税面、数量割当面で厳しい対日差別を行なっており、これらの国に対する輸出の大きな障害となっている、他方、これら諸国の中には、対日出超を続けている国も少なくないので、わが方としては、対日差別の撤廃を目指して不断の折衝を続けている。
わが国とエティオピアとの間の一九六六年の貿易額は、輸出一、七八六万ドル、輸入五三五万ドル(前年比輸出一七%減、輸入二四%増)であって、わが方の出超幅は、一九六五年と比べ、約五〇〇万ドル狭まったが、依然わが国の出超となっている。エティオピア側は、かかる現状に対し、常に不満を抱いており、綿紡、レーヨン、亜鉛鉄板等わが国の対エティオピア進出企業が業績をあげていることや、最近PVC(塩化ビニール)工場の設立並びに、雑豆買付促進についての調査団が、同国を訪問したことについて好感を持ちつつも、わが方買付の増大及び、経済、技術協力の拡大方絶えず要望越している。
わが方としては、六七年八月頃アベベ・レッタ商工大臣の来日の機に、これらの問題につき話合うこととなっている。
わが国の対コンゴー貿易額は一九六六年往復約一、二〇〇万ドルと比較的低水準にとどまっているが、コンゴーは世界で屈指の鉱物資源供給国であり、その鉱産物(コバルト、銅、工業用ダイヤモンド等)に対するわが国の需要は今後ますます増大することが予想され、また、わが国からコンゴーへの輸出も今後相当の伸びが期待される。わが国はこうした両国間の貿易発展の基盤固めを行なう意味で、同国と目下貿易取決めの締結を目指して交渉を行なっている。
わが国の対マダガスカル貿易は、輸出入とも順調な伸びを示したが、依然として、わが国の出超による片貿易問題が存在している(一九六六年、輸出三四〇万ドル、前年比三五%増、輸入一四〇万ドル、前年比二五%増)。
マ側は、これに対し、累次にわたり、同国産一次産品(牛肉、いんげん豆等)の買付増大を要求しており、これに対しわが国は、国内の牛肉需要の増大にもかんがみ、一九六六年一〇月に、「マダガスカル産牛肉衛生事情調査団」を、六七年三月には、「アフリカ食肉事情調査団」を派遣したのを初め、同国産一次産品買付増大につき積極的に検討中である。
わが国の象牙海岸からの輸入は、コーヒー豆、カカオ豆の輸入を中心に、急増している。特に、一九六六年の同国からのコーヒー豆の輸入は、一万八、○○○トン、七七〇万ドルと前年に比べ、数量、金額ともに一一倍強の増加を示し、一躍わが国のコーヒー豆輸入先として、世界第一位を占めるに至った。
他方、わが国の同国向け輸出は、繊維製品を中心に順調な伸びを示しているものの、依然として僅少に止まり、貿易バランスはわが国の大幅な入超となっている(一九六六年わが国からの輸出一〇四万ドル、前年比二七%増、輸入一、一〇〇万ドル、前年比四一九%増)。
従来から、象牙海岸は、独立時の旧宗主国(フランス)の輸入制度を受け継ぎ、わが国の商品に対し、一部の例外を除き、関税面、数量割当面において、厳しい対日差別政策をとっているが、わが国は、貿易取決め締結交渉を初め、両国間の貿易関係の正常化を図るべく鋭意努力中である。
わが国とセネガルとの貿易は、わが国からの繊維製品の輸出、セネガルからのりん鉱石の輸入を中心に行なわれており、近年、輸出入とも順調な伸びを示している。しかしながら、貿易量は未だ僅少にとどまり、例年わが国の一方的な入超となっている(一九六六年のわが国からの輸出七七万ドル、前年比三一%増、輸入四九七万ドル、前年比三一%増)。
これは、象牙海岸等、他の旧仏領西アフリカ諸国と同様、わが国の商品に対し、一部の例外を除き、関税面、数量割当面において、厳しい対日差別をとっているためと思われるが、更に、同国は一九六六年一二月一〇日繊維製品の輸出入に対し、従量関税を設定(グローバル適用)した。このため、従来から欧米諸国に比し三倍関税を課せられているわが国産品に対する輸入関税は、極端に引上げられることとなり、わが国の同国向け輸出の大宗をなす繊維製品の輸出は、相当の悪影響を受けることとなったので、目下、事態を改善し、両国間の貿易関係を正常化すべく折衝中である。
7 東アフリカ三国(ケニア・ウガンダ・タンザニア)との貿易関係
わが国と東アフリカ三国との貿易は、過去数年間わが国の一方的な出超となっていたため、三国政府は、これを不満として、一九六五年四月一斉に対日輸入制限を実施した。
わが方は、輸入制限の撤廃ないし緩和をはかるため、従来より推進してきた一次産品買付増進のための各種調査団を東アフリカ三国に重点的に派遣し、さらに三国それぞれに円借款の供与を決定するなどの施策を講じている。
その結果六六年の三国に対するわが方の輸出は二、六七〇万ドルで、前年の四、一七四万ドルに比べ三六%減少したのに対し、輸入は二、八八○万ドルで前年の一、六四一万ドルに比し、七五・五%と大幅な増加を示し、前年において二・五対一とわが方の出超であったものが、反対に一対一・一とわが方の入超に転じた。
わが国の対ナイジェリア貿易は、わが国の極端な出超となっていたため、ナイジェリア政府は一九六五年八月、全品目の対日輸入をライセンス制におき、とりあえずの措置としてライセンスの発給を停止した。
わが方としては従来からナイジェリア産品買付促進や円借款の供与など種々の努力を重ねてきたが、六六年には相当額の輸入が行なわれる見とおしがついたので、同年四月、ナ側の対日輸入制限強化措置にもかかわらず、わが方の輸入が増加し、その結果バランスが著しく改善されていること、及びわが方は引きつづき買付努力を継続する旨を東京及びラゴスにおいて強調するとともに、対日輸入制限緩和ないし撤廃方をナ側に申し入れた。ナ側も前記わが方努力をみとめ、同年七月六日付情報省発表をもって対日輸入制限の一部緩和を発表し、現在はクォーターのわく内で対日ライセンスが発給されているが、一九六七年の発給額は前年を上廻って発出されるものと期待されている。
その結果六六年の対ナイジェリア輸入は一、三六七万ドルで前年に比し、四三八万ドル増加し、反対に輸出は三、九五七万ドルで、前年に比し一、九四一万ドル減少し、片貿易幅は前年の六・四対一から二・九対一と大幅に改善された。
一九六四年までのわが国とガーナとの貿易関係は輸出入とも順調に拡大傾向にあって、輸出入もほぼ均衡していたが、六五年にはココア豆の国際価格の暴落によって、わが国の買付額が半減したため、三対一の片貿易関係となった。六六年はココア豆の国際価格の上昇にともなう買付額の増加と、ガーナの経済再建のための輸入抑制策によって、わが方の輸出が減少した結果、わが方の輸出一、七七五万ドルに対し、輸入一、六六三万ドルで、輸出入はほぼ均衡している。
なお、現在両国間には一九六三年三月に締結された日本・ガーナ貿易協定があり、ガーナ側による対日差別は何もない。
ローデシアに対する経済制裁に関しては、わが国も国連尊重、国際協力の観点からこれに参加し、一九六五年一二月三日以降相次いで輸入停止措置を強化し、更に一九六六年一二月の安保理決議に従って輸入停止措置をとった結果、対南ローデシア輸入は現在殆んど全面的にストップしている。また、輸出面では、石油、石油製品におよび武器、弾薬等の外、自動車、航空機およびそれらの部品ならびに製造設備の輸出が停止されている。なお、わが国と同国との間には以前旧ローデシア・ニアサランド連邦当時の貿易取決めが適用されていたが、上記取決めは一九六五年末に失効し、現在に及んでいる。
ザンビアとわが国の間には、一九六五年五月、両国間の貿易関係が、それぞれの国の法令の範囲内で無差別の原則により律せられるべきことを内容とする貿易協定が締結され、その後、対日差別品目の撤廃、更に一九六六年二月に、従来の英連邦特恵税率を含む四段階の関税制度の一本化が行なわれ、相対的にわが国の輸出は有利になった。同国は独立以後、特に南ローデシア問題が起こってからは南ローデシアとの従来の経済的紐帯を断つべく努めており、その意味からもわが国の協力を期待する気持が強い。一九六六年二月、一九六七年五月の二回にわたり貿易使節団が来日し、また、一九六六年八月には、同国の輸送力拡充のための貨車買付を目的として同国高官が来日するなどの一連の動きは、右事情によるものと思われるが、わが国としてもこれらザンビア側の動きに対し積極的な姿勢で臨んできている。同国との間には、わが国が毎年大量の銅を輸入している関係上、他の多くのアフリカ諸国に共通な片貿易問題もなく、前記諸事情と相まって、両国間の貿易量は最近急速に増大しており、特にわが国の輸出の伸びには著しいものがある。
マラウイとわが国との間には、旧ローデシア・ニアサランド連邦当時の貿易取決めが事実上適用されている。両国の経済関係は従来、余り深くないが、今後は、次第に緊密化するものと思われる。
これら三国との貿易量をみると、経済制裁下にある南ローデシアの場合は別として、ザンビアについては輸入八、四〇〇万ドル、輸出一、四〇〇万ドルと実に、対前年比三七%、及び七六%とそれぞれ大幅な増加を示し、また、マラウイについては、輸入は、僅少であるが、輸出は三六〇万ドルと対前年比七%増であった。