大洋州諸国と日本
大洋州地域との貿易は、近年、ますます拡大の傾向を示し、一九六六年には往復一二億ドルを越える重要な貿易相手となった。わが国の同地域からの輸入は、わが国にとって不可欠な工業用原料および食糧等からなり、輸出面においては鉄鋼、自動車、化学品等の重化学工業品が、従来の主要輸出品たる繊維品とともに重要な地位を占めている。本地域に対するわが国の貿易は常にわが方の大幅な入超であるが、一九六六年にはわが国の輸出が前年比一・三%減の三億九、九〇〇万ドルとなったのに対し、輸入は二七・六%増加して八億三、二〇〇万ドルとなり入超幅は拡大した。輸出減少の主なものは鉄鋼類であり、輸入が増大したのは、羊毛、鉄鉱石の買付増大によるところが大きい。
オーストラリアについては、一九六六年において、わが国の輸入が鉄鉱石の買付増大を中心として大幅に増大した一方、わが国の輸出が一九五七年の日豪通商協定締結以来わずかではあるが、初めて減少を示したことが注目される。わが国からの輸出が減少したのは、主として、鉄鋼類の輸出が、オーストラリア国内の景気停滞とわが国における国内需要の増大とが原因となって大きく減少したためであるが、同時に、わが国からの輸出の伸びの大きい各種品目に対して、豪州側が国内産業の保護を目的として、暫定関税賦課、関税引上げ、ダンピング税賦課等の関税上の措置を頻繁に適用したこともその一因である点を見逃し得ない。
ニュー・ジーランドについては、同国の国際収支の悪化から一九六六-六七輸入ライセンス年度についてライセンス枠の大幅な削減が行なわれ、また豪州の場合と同様の理由からわが国からの鉄鋼輸出が減少したこともあって、わが国の輸出は多少の減少をみた。一方、わが国の輸入は、羊毛、羊肉、牛肉、酪農品、木材、パルプ等の大幅な輸入増加により、対前年八五%の増加をみた。
両国間の政府及び民間レベルでの人物交流も頻繁に行なわれた。一九六六年五月の牛場外務審議官の訪豪、同年六月のシェルトン、ニュー・ジーランド関税大臣の来日、同年九月のウェスタマン豪貿易産業省次官の来日を始めとして、経済関係の政府要人の往来は多く、また民間においても一九六六年四月のキャンベラにおける第四回日豪経済合同委員会、一九六七年四月の東京における第五回日豪経済合同委員会の開催を中心としてわが国と大洋州の人物交流が進められている。
牛場外務審議官は、一九六六年五月中旬オーストラリアを訪問し、マッキュアン豪貿易産業大臣、ウェスタマン同次官、カーモディ関税省次官等、豪政府首脳部と数次にわたり会談し、関税上の諸問題をはじめとして、海運その他、その当時における日豪貿易経済関係に横たわる多くの問題について、率直な意見の交換を行なった。右会談は、双方がそれぞれの立場や考え方を理解し合い、両国の通商関係を円滑化するうえに有意義であったとみとめられる。
オーストラリアにおける関税改正の動きは次の通りである。
(1) 基本関税の改訂
オーストラリア政府は一九六六年八月一日、自動車に対する関税を三五%から四五%に引上げた。これについては、わが国は、オーストラリア政府より代償を得べく交渉中である。
またオーストラリア政府は、一九六六年一〇月二六日工業用化学品及び合成樹脂に関する関税改正を実施したが、この改正措置において、サポート・ヴァリュー制度という保護的色彩の強い制度が新たに導入された点に対し、わが国は強い反対の意思を機会あるごとに表明してきている。
(2) 暫定関税の賦課
一九六六年においても暫定関税の賦課を要求する件数は依然多数に登っており、相当数のわが国の関心品目がその対象となっている。問題となったものとしては、PVC(塩化ビニール)コーテッド・ファブリックス、PVC波板、エチレン・オキサイド、タイヤ及びチューブ、コンベア・ベルト、ステンレス・スティール、ベアリングその他がある。
(3) 反ダンピング関税賦課
問題となったものとしては、普通鋼板類、ブチルアルコール、X線フィルム等がある。
太平洋地域の経済協力ならびに開発のための何らかの機構を設立しようとの構想は、日本及びオーストラリアの民間経済人により構成されている日豪経済合同委員会において一九六三年以来検討されてきたが、一九六七年四月の第五回日豪経済合同委員会開催に際して、米国、ニュー・ジーランドのオブザーバーの参加を得て、太平洋経済委員会設立準備会議が開催され、同委員会の設立が正式に決議された。なお、同委員会は、日本、米国、カナダ、豪州、ニュー・ジーランドの五カ国代表により構成されることとなっているが、米国、カナダの正式参加を見るまでは、暫定的に日本、豪州、ニュー・ジーランドの三国の代表により構成されることとなっている。いずれにせよ、この太平洋経済委員会の発足により、民間レベルでの太平洋地域における経済協力構想が、具体化してきたといえる。
オーストラリアにおいては最近、海運問題につき積極的な動きがみられ、オーストラリア国内におけるコンテナー基地建設計画、日豪合弁海運会社設立計画等が検討されているほか、オーストラリア政府はその独占禁止法に海運条項を設けて、オーストラリアをめぐる海運同盟の規制に乗り出さんとしている。これらの問題については、日豪両国の政府間及び民間の接触を通じて、両国間の利害関係を調整するとともに、双方の協力関係を樹立すべく努力が重ねられている。