アジア諸国(共産圏を除く)と日本

1 アジア諸国との貿易の現状

一九六六年のわが国の対アジア(共産圏を除く)貿易は輸出二六億一、九四七万ドル、輸入一六億一、二四九万ドル(通関統計)で、前年に比し、輸出一九・三%、輸入一四・六%と著しい増加を示している。輸出面では、南ヴィエトナム(二七六・七%)、ラオス(一二五・四%)、韓国(八五・九%)、タイ(三七・三%)、香港(二八・五%)、マレイシア(一九.九%)、フィリピン(一五・八%)等への輸出は著しい伸びを示している。アジア諸国は従来よりわが国の有力輸出市場としての重要性を占めていたが、六六年には香港、韓国、タイヘの輸出は三億ドルの大台に乗り、これら三国は、米国、オーストラリアに次ぐわが国の輸出相手国となっている。また、中華民国、フィリピン、琉球への輸出は二億ドルを超え、シンガポール、インド、南ヴィエトナム、インドネシアは一億ドルを上まわっている。

輸出品は従来と同様、機械、化学製品、繊維製品が大宗を占め、いわゆる重化学工業品が全体の六〇%近くに達している。

他方、輸入面では、香港(三三・七%)、フィリピン(二八・一%)、インドネシア(一八・○%)、タイ(一七・二%)、パキスタン(一五.○%)、インド(一二%)等からの輸入が増大した反面、ラオス(五〇・○%減)、ビルマ(四二・六%減)、南ヴィエトナム(一七・七%減)、カンボディア(四・八%減)からの輸入が減少している。輸入額ではフィリピン、マレイシアが三億ドルを超え、インド、インドネシア、タイからの輸入がこれに次いでいる。輸入品では、原材料(鉄鉱石、木材、ゴム、コプラ等)、食料品(砂糖、とうもろこし、米等)、燃料などが重要品目となっている。

昨年のわが国貿易に占めるアジア貿易の比重をみると、輸出は総輸出の二六・八%、輸入は総輸入の一六・九%となっている。輸出面での比重は一九六五年の数字(二五・九%)を僅かに上まわっているが、他方輸入面ではアジアからの輸入増加が総輸入の伸びを下まわった結果、一九六五年における対アジア輸入の比重一七・二%は一九六六年には二八・九%に低下している。

アジア貿易は従来からわが国の大幅な輸出超過が基調となっている。この貿易の特色は一九六六年においても例外でなく、輸出超過の幅は近年むしろ拡大傾向を示している。一九六四年に四億ドル、一九六五年に七億八、一〇〇万ドルであった貿易の黒字幅は、一九六六年には実に一〇億ドルに達している。このうち韓国への輸出超過が二・六億ドルに達し、タイ、中華民国、南ヴィエトナムヘの輸出超過がそれぞれ一億ドルを越しているほか、ビルマ、カンボディア、パキスタン、ラオス、セイロン等に対しても大幅な輸出超過が続いており、これら各国はいずれもわが国に対し貿易不均衡の是正を強く求めている。このうち韓国は貿易不均衡を強く不満とし対日機械の輸入制限の動きを示し、またカンボディアも片貿易が改善されていないことを理由に日本との貿易取決め延長に難色を示し、混合委員会の開催を提唱している(本号二〇四ぺージ参照)。資本財を中心としたわが国の対アジア輸出が年々増大しているのに反し、アジア諸国からの輸入が伸び悩んでいることが貿易不均衡拡大の根本的原因であるが、これはアジア諸国の輸出産品が多様性を欠くほか、品質、価格等で他地域、殊に先進国の同種産品に比し競争力に乏しいこと等に因るものである。

目次へ

2 アジア諸国からの米の輸入問題

(1) 一九六六米穀年度(一九六五年一一月~六六年一〇月)中には準内地米七四万トン、普通外米一一万トンの輸入が行なわれた。このうち準内地米、普通外米のアジア諸国よりの輸入状況は次のとおりであった。

一九六六米穀年度外米輸入実績(単位万トン)

準内地米

台  湾     一五

韓  国      六

中  共     三〇

 合計      五一

(その他米国、スペインより二三万トン)

普通外米

タ  イ 砕米   八

ビルマ  丸米   三

 合計      一一

なお、カンボディアに対しても砕米一万トンの買付を希望する旨申入れたが、同国の供給事情から買付けは行なわれなかった。

(2) 一九六七年度の国内産米の生産量は一、二七五万トンと前年度を三四万トン上まわったため、政府買入れは八○○万トン程度(前年度は七二〇万トン)に伸び、政府需給はかなり緩み、これに伴い準内地米の輸入必要量は前年実績の七四万トンを四〇%方下まわる四四万トンで十分と推定されている。

他方、普通外米の輸入必要量は国内需要が概ね固定しているため、大体前年と同様丸米三万トン、砕米一〇万トンとみられている。

現在までのところ、準内地米買付予定量は四四万トンのうち、中共二〇万トン、台湾五万トン(米国九・五万トン、スペィン二・二万トン)の成約をみ、不足分は台湾からの追加買付けが予定されている。普通外米については、タイから砕米八万トンないし一〇万トン、もち米一・五万トンの買付けが成約済となっている。

目次へ

3 日韓経済関係

(1) 在韓本邦商社のステータス問題

従来韓国政府は本邦商社に対し、韓国内で継続的に商活動を行なうことを認めておらず、在韓本邦商社員の法的ステータスは不安定であった。このためわが方は累次の貿易会議、経済閣僚懇談会等において本邦商社の法的地位安定方を繰返し韓国側に要請してきたところ、一九六七年初頭に至り韓国政府は在韓本邦商社に対し貿易法上の物品売渡確約業(オファー商)の登録を認める方針を決定し、既に十数社の登録申請が韓国政府当局(窓口は商工部)の審査を受けつつあり、さらに十数社が申請準備中である。

(2) 在韓本邦商社に対する課税問題

韓国国税庁は、一九六六年末在韓本邦商社(二八社)に対し一九六五年及び一九六六年一-九月分の法人税及び営業税として総計約一〇億ウォン(一四億円)の課税通告を行なった。在韓本邦商社に対してはその対韓国調達庁取引について一九六二、六三年分として七社に対し六、四〇〇万ウォン、一九六四年分として一〇社に対し一、五〇〇万ウォンがそれぞれ課税された経緯があるが、今般は対象商社数の増加とともに対韓輸出一般が対象とされ、これに高率の卸売業営業税率(取引高の○・七%)が適用されたこと、法人税につき認定課税を受けるとともに高率の各種加算税が賦課されたこと等により上記のごとき膨大な額となったものである。

各社は今回の課税に対し何れも不満をもち、全額納税したが、それぞれ異議の申し立てを行ない、また政府としても事態の円満解決をはかるため、韓国側当局に対し、本邦商社の商活動の実態を説明し、実情に即した課税となるよう善処方要望している。

(3) 第三次日韓貿易会議

第三次日韓貿易会議は、第二次日韓貿易会議(一九六五年一二月ソウルで開催)の合意に基づき、一九六六年四月二一日から二六日まで東京において開催された。

なお、同会議に先立ち、韓国のりの輸入問題に関する予備的討議が四月一八日から二〇日まで行なわれた。

会議は韓国の一次産品の対日輸出増大問題、保税加工輸出問題、開発輸出問題、その他の諸問題について討議を行なった。一次産品問題について韓国側は特に対日片貿易是正の見地から韓国一次産品の買付け増加を強く要望、具体的にはのり、魚介類、畜産物等の輸入問題が討議された。わが方は韓国一次産品の輸入増大への努力の意を表明するとともに、個々の品目の輸入量については両国の需給事情等を勘案して決定すべきであるとの態度を宣明した。保税加工貿易、開発輸出等については双方より種々の問題点の指摘、解明が行なわれ、それぞれ今後官民合同会議、実務者会議を開催して討議を進めることとなった。その他の諸問題中では特にわが方より日韓経済関係正常化のため在韓本邦商社のステータス安定化を強く要望、韓国側はそのとりつつある国内措置の現状を説明した。また工業所有権、海運等の問題についても討議が重ねられ、次回の貿易会議を一九六七年春ソウルで行なうことに合意して閉会した。

(4) 日韓経済閣僚懇談会

日韓国交正常化後の両国経済貿易関係の円滑な発展をはかるため、特定の案件についての交渉ではなく、両国の経済関係閣僚が一堂に会し、自由で率直な意見交換を行ない、両国経済の現状、問題点についての認識を深め、相互理解に資することが有意義であるとの見地から、両国総理大臣間の合意に基づき、一九六六年九月八日から一〇日までの三日間ソウルにおいて日韓経済閣僚懇談会が開催された。

同懇談会には、日本側からは藤山経済企画庁長官、福田大蔵大臣、松野農林大臣、三木通商産業大臣、荒舩運輸大臣および木村駐韓国大使が出席し、韓国側からは張副総理兼経済企画院長官、金財務部長官、朴商工部長官、朴農林部長官、安交通部長官および命駐日韓国大使が出席した。

同懇談会は、全体会議と各カウンターパート閣僚間の個別会談が開かれ、両国経済の現状についてのそれぞれの説明、経済協力問題、貿易問題、農林水産問題、海運、航空問題等につき忌憚ない意見の交換が行なわれた。特に韓国側は一九六六年をもって終了する第一次五カ年計画の実績とともに、一九六七年より開始される第二次五カ年計画について詳細な説明を行ない、同計画に対する日本側の支援を要望し、日本側も協力の意を示す等、具体的懸案の交渉を目的としない本懇談会の性格にふさわしい基本的問題についての意見交換が行なわれ、次回会合を一九六七年の適当な機会に東京で開催することに合意をみた。

(5) 日韓保税加工民間合同会議

第三次日韓貿易会議(前掲)における合意に従い、一九六六年一〇月二八、二九の両日ソウルにおいて「日韓保税加工民間合同会議」が開催された。本会議には、日本側から神戸商工会議所副会頭沖豊治氏を団長とする民間人一三名とオブザーバーとして政府側から外務、通産両省関係官及び在韓大使館担当官が出席し、韓国側からは韓国保税加工品輸出協会金沢クァン氏を団長とする民間人二七名と同じくオブザーバーとして商工部、外務部、財務部等の政府関係官が参加した。

同会議は、両国の政策制度面の改善問題を討議する第一分科会と両国民間協議体の構成、技術協力等貿易面を討議する第二分科会に分かれて行なわれ、特に加工品の本邦への再輸入に際しての関税減免措置の必要性を韓国側が強調し、わが方より実情の説明がなされる等本件に関連する種々の問題点についての両国関係民間当事者間の率直な意見交換がみられた。

(6) 農産物開発輸出に関する日韓両国政府実務者会議

第三次日韓貿易会議(前掲)における合意に従い、一九六六年一二月一六日から一九日まで東京において韓国の農産物開発輸出に関する日韓両国政府実務者会議が開催された。

本会議では、韓国側より提示のあった、とうもろこし、大豆、緑豆、ビール麦、韓牛の五品目についての開発輸出の可能性につき討議が行なわれ、とうもろこし、大豆(油脂用)、韓牛(牛肉)の三品目については、品質の改善と輸出価格が適正な水準に達するならば、将来日本に輸入され得る可能性があるが、緑豆についてはわが国の需要が将来増加する見込みがないこと、ビール麦についてはわが国の自給体制が確立されつつあることもあり可能性は見出されないこと、とくに韓牛については、わが国の需要状況等もあり、品質、価格等が適正な水準に達するならば、開発輸出の可能性が大きく、韓国側の希望によっては、わが方より専門家を派遣する用意があること等が明らかにされた。

(7) 日韓海運会談

日韓両国間にはわが国が占領下にあった一九五〇年締結された日韓暫定海運協定が現在事実上適用されている状況にあり、日韓双方とも新協定締結の必要性を認め一九六五年日韓双方案文が交換されたが正式交渉を開始しないままに推移していたところ、一九六六年末交渉開始についての合意をみ、一九六七年一月一六日から一八日までソウルにおいて、日韓海運会談が開催された。本会議においては新海運協定の締結問題のほか民間海運会談の開催、両国間の船舶輸出入等の諸問題が討議され、わが方より海運自由の原則に基づいたわが方案文の基本的な考え方を説明したのに対し、韓国側は海運自由の原則が将来到達すべき目標であり、この実現のためともに努力を続けたい旨表明し、更に自国船優先主義政策の背景となっている韓国海運の現状を説明、双方とも今後両国海運関係の改善のためには民間海運界の協調が必要であることを認め、また今後とも船舶輸出入の円滑化のため努力することとし、再び一九六七年五月に会談を再開することに合意をみた。

目次へ

4 カンボディアとの貿易取決めの延長

一九六〇年二月一〇日に締結された日本とカンボディアとの間の貿易取決め(同年二月一五日発効)は、一カ年の有効期間満了後、毎年交換公文により一年ずつ延長されてきた。

一九六六年二月の更新期においては、とりあえず六カ月間の延長が合意され(「わが外交の近況」第十号二一一頁参照)、その後八月一七日田村駐カンボディア大使とカントール・カンボディア外務大臣との間の書簡交換により再び六カ月間の延長を行なった。一九六七年二月の更新期に至りわが方は一年間の取決め延長を申入れたが、カンボディア側は同国の統計上対日貿易逆調が増大していることを理由に同取決め第五条に規定する混合委員会の開催を提案越し、併せて同委員会での検討期間は取決めを有効とする旨通報越した。これに対しわが方は、混合委員会の開催に同意するとともに、その間取決めの規定を事実上適用する旨通報し、近くプノンペンにおいて同混合委員会が開催される予定である。

目次へ

5 ビルマとの新貿易取決め交渉

ビルマとの貿易取決めは一九六五年一二月三一日に有効期間満了となり、その後六カ月間(その間に新取決めが成立すればその時まで)同取決めを事実上適用することに両国間で合意したが(「わが外交の近況」第十号二一一頁参照)、一九六六年三月二一日ビルマ側から新貿易取決めの案文が提示され、これに対し五月二七日わが方より対案を提示するとともに交渉を開始した。しかしビルマ側が相手国全てと同一形式による取決めを締結するとの態度で自らの案文に固執しているので、交渉は順調に進んでいない。また、旧取決めの事実上適用の期限が同年六月末に到来したため、わが方より再度旧取決めの事実上適用期間の延長方申し入れたのに対し、ビルマ側から検討するとの回答があったまま現在に至っている。

目次へ

6 フィリピンとの貿易関係

(1) フィリピンとの友好通商航海条約の未発効問題

マルコス新大統領は既に一九六五年末の選挙後本問題(「わが外交の近況」第十号二一〇頁参照)につき、条約批准のためには必要な国内法整備を行なうことが先決であり、これを促進した上で条約批准に努力する旨語り、その後一九六六年の通常議会に国内産業保護を目的とした外国人事業活動法案、移民法改正案などいわゆる六法案が提出されたが審議されるに至らず、その同国議会においては上記法案審議及び条約批准問題はともに別段の進展をみていない。

(2) フィリピンにおける本邦人の事業活動許可問題

マルコス大統領は一九六六年五月一七日付の指令をもって、フィリピンにおける外国人の事業活動に課せられている法令規則の範囲内において日本人(法人を含む)が同国内で合法的な貿易及び商業活動に従事することを認め、本件主管庁たる証券取引委員会に対しこの具体化措置をとるよう命令した。

その後フィリピン政府部内においては本件に関して関係当局間の協議調整が行なわれていたごとくであるが、一九六七年三月に至り既に同国政府に対し事業活動許可申請を提出していた若干の本邦商社が個別的に許可を取得し、三月末現在で五社が輸出入業を始め販売、製造等それぞれの申請内容に応じた事業活動許可を得るに至っている。

目次へ

7 インドとの貿易関係

わが国のインドとの間の貿易は、従来わが国の出超であつたところ、一九六六年の対インド輸出は一億六、六〇〇万ドルに対し、輸入は二億五〇〇万ドルで、わが国の三、九〇〇万ドルの入超に転じた。これはわが国の鉄鋼及び機械類の輸出が減少したのに反し、わが国が開発輸入するインドからの鉄鉱石の積出しが本格化したことによるものである。

インドは一九六六年六月、ルピー平価を三六・五%切下げ、対米ドル平価を四・七五ルピーから七・五ルピーに切下げた。しかし、インド政府の期待に反して切下げ後も輸出は伸びず、また、農業生産及び工業生産の不振、物価の上昇、食糧不足等のためインド経済は困難に直面しており、外国からの大量の経済援助によって、その経済を運営しているという現状にある。従って、わが国の対印輸出は、インドの外貨事情、輸入制限等のため今後とも伸び悩む可能性が強い。

若戸丸の積荷接収問題(「わが外交の近況」第十号二一五頁参照)については、わが国は若戸丸の滞船料等損害賠償を要求中である。なお、インド政府は一九六六年七月、印ハ紛争当時の接収貨物のうち、軍需品を除き全部返還することに決定した。

目次へ

8 マレイシアとの貿易関係

わが国のマレイシアとの間の貿易は、わが国の入超となっている。一九六六年のわが国の輸出は八、九〇〇万ドルに対し、輸入は三億七〇〇万ドルでわが国の二億一、八○○万ドルの入超を示している。

わが国輸出の主要品目は、機械機器、金属製品で、輸入は木材、鉄鉱石、錫、ゴムとなっている。

マレイシア政府は一九六六年八月、シンガポールとの共通通貨たるマラヤドルを廃止し、一九六七年六月を期し、別個に独自の新通貨を発行することとなった旨発表した。

通貨の分離発行に伴い、今後シ・マ両国の通貨が同じように安定した、一定の価値を維持して行けるかどうかが一番の問題であり、今後のマレイシア新通貨の動きについては、わが国との貿易に及ぼす影響からも注視する必要がある。

また、マレイシア政府は、八月一八日、第一次五カ年計画の財源補充のため、砂糖、繊維等一部特定品目に対する英連邦特恵関税を撤廃し、即日実施する旨発表し、これにより約二、七〇〇万マラヤドルの歳入増を見込んでいることを明らかにした。

主要品目は、自動車、砂糖、繊維、衣服、アルコール飲料、テレビ、ラジオ、タイヤ、チューブ等であり、このほか自動車登録税の英連邦特恵による一〇%の従価税を廃止し、一般の二五%とすることとした。

右英連邦特恵関税撤廃措置により、わが国のマレイシア向け輸出品百中、輸出増加の期待できるものとしては、自動車、繊維、衣服、テレビ、ラジオ等が考えられる。

マレイシアとの案件は、パイナップル缶詰買付増大要求問題で、一九六六年四月、東南アジア開発閣僚会議に出席のため来日したマレイシア代表から、マラヤ産パイナップル缶詰の輸入促進につき要望越したので、わが国としては、実績べースのグローバル割当なので、特定地域からの輸入を増すことは、現行制度上困難なる旨回答している。

目次へ

9 シンガポールとの貿易関係

わが国とシンガポールとの間の貿易は、従来からわが国の著しい出超である。一九六六年の対シンガポール貿易は、輸出一億四、三〇〇万ドル、輸入三、○○○万ドルでわが国の一億一、三〇〇万ドルの出超になっている。わが国からの主要輸出品は機械機器、繊維品、金属品で、シンガポールからは石油製品、生ゴム等を輸入している。

前述したシンガポールとマレイシアの通貨の分離発行に伴い、今後シ・マ両国の通貨が同じように安定した、一定の価値を維持して行けるかどうかが一番の問題であり、今後のシンガポール新通貨の動きについては、わが国との貿易に及ぼす影響からも注視する必要がある。

シンガポールとの間の案件には、パイナップル缶詰買付増大要求問題がある。シンガポール側はわが国の大幅出超を理由に、わが国がパイナップル缶詰の買付を促進するよう要求越しているが、わが国としては、実績べースのグローバル割当なので、特定地域からの輸入を増すことは現行制度上困難なる旨回答している。

目次へ

10 パキスタンとの貿易関係

わが国とパキスタンとの間の貿易は、一九六四年及び一九六五年においてわが国の綿花、ジュートの輸入が大幅に減少したため、著しい出超を記録することとなった。この出超傾向は一九六六年に入っても続き、輸出額九、九〇〇万ドルに対し、輸入額は三、○○○万ドルでわが国の六、九〇〇万ドルの出超となっている。

わが国のパキスタン向け輸出の中心は機械類で、輸入の主要品目は、綿花、ジュートとなっているが、ジュートの輸入は前年に引続き減少している。

このようなわが国との間の片貿易について、パキスタン側より、片貿易是正のためのパキスタン産品買付調査団の派遣を要請越していたので(「わが外交の近況」第十号二一六頁参照)、わが国は、一九六七年二月、一次産品問題処理対策会議から貿易調査団(団長池田丸紅飯田常務)を派遣し、わが国として買付可能な品目につき調査を行なうとともに、引続いて三月、政府派遣による経済使節団(団長土光東芝社長)をパキスタンに派遣した。同使節団は訪パ中、アユブ大統領をはじめパキスタンの政財界の要人と会談し、また、各種産業施設及び開発計画の実行状況を視察して両国経済に対する相互理解に努めた。

パキスタンとの間の案件は片貿易問題のほかにパキスタナイゼーションの問題がある。これはパキスタン政府が一九六一年八月、在パ外国系商社に対し、一九六六年末までにパキスタン人の雇用比率を一定比率まで引上げることを要請したもので、一九六六年一〇月、パキスタン外務省は、在パ日本大使館に対し口上書をもって、日本政府において日本人商社がパキスタナイゼーションに関するパ政府の規則を遵守するよう尽力方依頼越し、さらにパ政府は同年一〇月一七日付回章でカラチ外国系商工会議所に対し、一九七〇年末を期限とするパキスタナイゼーション強化策を提示してきている。

右に対し、在パ日本大使館は同年一二月、「日本商社等に対してはパキスタナイゼーション政策を弾力的に運用すること及びパキスタナイゼーション政策を強化しないことを強く希望する」旨パ政府に申し入れている。

目次へ