原子力の平和利用及び南極に関する国際協力
国際原子力機関(IAEA)第一〇回総会は、一九六六年九月二一日より一週間ウィーンで開催された。加盟国のうち七七カ国が参加し、わが国からは朝海大使を代表とする六名が出席した。
開会式では、六五年の東京総会の時、議長をつとめた朝海大使が仮議長となって開会を宣言し、国際原子力機関創設一〇周年を記念してオーストリアのヨナス大統領が挨拶を行なった後、タイのサラシン代表が議長に選出された。会議は、一九六七-八年度事業計画、一九六七年度予算、低開発国に対する技術援助問題等を審議して二八日閉会した。
今次総会では、核拡散防止問題との関連でIAEA保障措置制度が最近注目を集めつつある傾向を反映して、ポーランド、チェコスロヴァキアの東欧諸国によるドイツ(西)の受入れを条件としたIAEA保障措置の受諾提案、ラテン・アメリカ非核武装地帯に関する発言、加工施設に対する保障措置手続設定に関する米・スイス提案等、同制度の整備、適用拡大に関する幾つかの重要な示唆ないし提案が行なわれた。
保障措置以外の面でのIAEAの活動については、自国原子力発電計画に対するIAEA援助の要請が各国によって行なわれたほか、放射性物質の海洋投棄の問題にも関心がよせられ、また、低開発諸国の提案によりIAEA技術援助を理事会が再検討するよう要請する決議が採択された。
その他、総額一一、八九九、五〇〇ドルの一九六七年度予算(前年比六%増)が可決され、ウガンダ、シンガポール、シエラ・レオーネの新加盟が認められた(加盟国は九九カ国となる)。
政府は、米国政府及び国際原子力機関(IAEA)事務局との間で日加原子力協定に対するIAEA保障措置の適用に関する協定の締結のため交渉していたが、一九六六年六月二〇日ウィーンにおいて在オーストリア法眼大使が、カナダのマー大使及びIAEAのエクランド事務局長とともに同協定に署名した。従来、日加原子力協定に基づき、カナダが日本に提供した核物質の平和的利用を確保するための保障措置の適用はカナダにより実施されていたが、この協定により、今後はIAEAが行なうことになった。
一九六六年一一月三日、サンチャゴにおいて、南極条約第九条に基づく第四回協議会議が開催され、わが国も条約原署名国として同会議に参加した。この協議会議は、一九六一年の第一回会議以来、既に三回開かれているが、今次会議は、南極における生物資源の保護保存の問題を中心に審議した結果、二八の勧告を採択して、一八日閉会した。わが国は同会議で、一九六八年六月東京において、設営専門家会議を開催することを提案し、満場一致で支持された。