国連の財政状況及び国連人事問題

1 概  観

(1) 第一九回総会再開会期における合意に基づき、事務総長は一九六五年九月一日国連財政救済のための自発的拠出を各加盟国に対し強く要請したが、これと相前後して英国をはじめとする二二カ国は総額約二、〇〇〇万ドルの自発的拠出を行ない、わが国も、椎名外務大臣の総会一般討論演説(同年九月二八日)において、国連機能の強化に対する熱意の証左として応分の自発的拠出を行なう用意がある旨を宣明した。

(2) 国連第二〇回総会においては、フランスの提案に基づき「国連財政再検討のための特別専門家委員会」が設置され(決議二〇四九(XX))、一九六五年九月三〇日現在の国連財政の実状を分析して報告することとなったため、前述のごとき自発的拠出の気運は同委員会が結論をだすまでは低調とならざるをえなかった。同委員会はわが国を含む一四カ国により構成され、一九六六年二月初句より二七回にわたって審議を行なったが、平和維持活動に関する政治的見解及び財政上の利害関係の相違のため、特に英米とソ仏との間で見解が対立し、結局赤字は上限・下限として併記され、最小五二・〇百万ドル、最大七三・四百万ドルの赤字幅に合意された報告書が一九六六年三月二六日総会議長を通じて事務総長に送付された。

(3) わが国としては、以上の背景にかんがみ、財政検討特別専門家委員会が明らかにした国連の財政状況を基礎として、国連第二一回総会の椎名外相の一般演説(一九六六年九月二三日)において二五〇万ドルを拠出する旨誓約した。その後、同総会の第五委員会における一九六七年度予算審議の冒頭(一九六六年一〇月一〇日)、事務総長は、国連の財政状況が一九六五年末から改善されていない点を指摘し、今後相当額の分担命支払い又は自発的拠出金の追加拠出がないかぎり一九六七年には再び深刻な財政危機に見舞われる旨国連財政の窮状を訴えるステートメントを発表した。

わが国としては、この事務総長の訴えに呼応し、かたがたわが国の支払いが未拠出国(特にソ連及び仏)の拠出を促進することを期待して、本件の早期支払いが適当であると判断し、一二月二日支払いを了した。

なおその後の発展として、一九六七年四月一二日平和維持活動委員会において、ソ連が一九六五年の了解及び第二〇回総会の決議に従って国連財政上の困難克服のため自発的拠出を行なう用意があると発言したことは注目される。

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2 一九六七年度国連予算額等の決定及び本邦分担金

第二一回総会は一九六六年度国連通常経費改訂見積並びに一九六七年度通常経費及びスエズ国連軍経費予算を次の通り決定した。

(1) 通常予算

一九六六年度通常予算については、支出一二一、五六七、四二〇ドル、収入一九、九七〇、七〇〇ドルが第二〇回総会において承認されていたが、事務総長は支出一二一、三四一、五三〇ドル(対承認予算題二二五、八九〇ドル減)、収入二〇、四〇五、二〇〇ドルの改訂見積を第二一回総会に提出し、総会は行政予算諮問委員会(ACABQ)勧告の通り、(イ)支出につき更に一八八、五〇〇ドルの減額、(ロ)一九六五年度国連インド・パキスタン監視団経費を剰余金の流用により補塡することを了承した上、支出総額一二一、○八○、五三○ドルを承認した。一九六七年度通常予算支出総額として、事務総長は当初一二八、二二七、八○○ドルを見積っていたが、その後、国連工業開発機構(UNIDO)新設に伴う行政運営費増額(一、九四八、四〇〇ドル)、ECAFE工業開発関係を含むECOSOC決定に伴う追加経費、パレ・デ・ナシオン会議場拡張関係、宇宙平和利用国際会議開催等に係わる追加見積を考慮した結果、総額一三○、三一四、二三〇ドル(対前年度七・二パーセント増)が承認された。

(2) スエズ国連軍(UNEF)経費

分担方式としては第二〇回総会採択の決議二一一五(XX)を踏襲し、支出見積総額一、四〇〇万ドルのうち、七四〇千ドルを低開発国の間で通常分担率に応じて割当て、残余の一三、二六〇千ドルを先進二六カ国に通常分担率に応じて割てるとともに、予備的要請に対処するため先進国おのおのの分担額の二五パーセント相当の追加割当てを行なう趣旨の決議を採択した。

なお、一九六七年度のわが国の分担率は二・七七パーセント、分担額は、通常経費については二、九〇八、二六四ドル、スエズ経費は五五四、二三四ドルである。

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3 国連・専門機関財政専門家特別委員会報告書の採択

第二〇回総会において設置された国連・専門機関財政専門家特別委員会(わが国を含む十四カ国より構成)は国連財政赤字の現状を解明した第一報告書(前述国連の財政状況とわが国の自発的拠出の(ニ)参照)と国連及び専門機関の財政手続の改善を勧告した第二報告書を提出したが、第二一回総会においては後者の諸勧告を全面的に承認し、その早期実施を求める決議案が米国、ソ連、仏、わが国を含む七一カ国の共同提案により全会一致で採択された(決議二一五〇(xxi))。

右勧告の主要点は次の通りである。

(イ) 予算年度

現在一年予算方式を有している専門機関は二年予算方式を採用すべきであり、また、事務総長は、二年予算力式を国連自体に適用することの是非について詳細な検討を進め、その報告書を行政予算諮問委貝合(ACABQ)の見解とともに第二二回総回に提出するよう勧告する。

(ロ) 会計検査制度

事務総長は国連の行政面の最高責任者及び行政調整委員会(ACC)議長としての権限において各専門機関の事務局長と協議の上、順ぐりに国連及び専門機関の外部会計検査を行なう共通会計検査団を設置することにつき検討を行ない、その結果を第二二回総会に報告すべきである。

また、国連ファミリイ(国連及び専門機関、IAEA)各機構岡の協定により少数の専門家よりなる監査団を設置すべきである。

(ハ) 調  整

調整面におけるECOSOCの機能の改善強化のため、既存の特別調整委員会(SCC)を再構成すべきである。

そのため、SCCは地理的公平配分の原則に基づき、ECOSOCが国連加盟国により指名された者のなかから選出する任期三年の一二人の専門家より構成されることとする。

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4 国連人事問題

(1) 従来より国連総会における事務局職員構成に関する「人事問題」は各加盟国、各地域の微妙な利害対立をはらむ恒常的難問であったが、第二一回総会において本件は久し振りに(第一七回総会以来)表面化し、第五委員会において審議された議題中最も時間を費やし、かつ紛糾を呼ぶこととなった。

(2) 本邦職員数(専門職職員及び次官クラスまでの幹部職員)は一九六六年八月三一日現在三〇名で絶対数においては一応「望ましい範囲」(三六-二七)に入ってはいるが、その内訳をみると、特に高級職員レベルの任用状況が悪い。

(3) 事務局は職員の地域的配分が近年改善されつつあることを説明する報告書を提出したが、これに対し、イラン、カメルーン等の諸国は、事務局専門職員のおおむね七五パーセントは恒久任用契約によるべしとする事務局の方針が、実際上低開発国国民の任用を困難にしているとして、当面期限付任用契約による任用を増加して地理的配分の均衡を図るべしとの趣旨の決議案を提出し、かねてから恒久任用契約の廃止を強く主張している共産圏諸国はこれに同調した。またパキスタン、日本、トルコ、シリア等は地域的均衡もさることながら、同一地域においても特に高級ポストにつき任用状況に優劣の差が著しく、これを是正する努力が続けられるべきであるとして、まず各国別の「望ましい範囲」を改訂する研究を事務局に求める趣旨の修正策を提出した。

この間にあって米国、英国等は事務総長の手を不当に拘束すべきではないとの主張をもって、これらの決議案に難色を示したが、結局前者の決議案に後者の決議案の修正をほどこしたものがほぼ原案通り採択された。

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