国際連合専門機関

1 国際労働機関(ILO)

(1) ILOとの関係

わが国は一九五一年にILOに復帰し、一九五四年にはILOの一〇大主要産業国の一員に選出され、以来ILO理事会の常任理事国としてILO活動に対して重要な役割を果してきた。とくに、一九六六年六月ジュネーヴで開催された第一六六回理事会において、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表青木大使が満場一致をもってILO理事会の議長に一年間の任期をもって選出された。

(2) ILO第五〇回総会の開催

ILO第五〇回総会は、一九六六年六月一日から同二二日までジュネーヴにおいて開催された。この会議には当時のILO加盟国一一五カ国のうち一〇六カ国が参加して、その殆んどが政府、使用者及び労働者の各代表よりなる三者構成代表団を送り、参加者総数は一、一八四名に達した。わが国からも、政府、使用者及び労働者の各側代表を含む合計二五名の代表団が派遣された。総会においては、次の四つのILO条約及び勧告が採択された。

漁船員の海技免状に関する条約(第一二五号)

漁船内の船員設備に関する条約(第一二六号)

漁船員の職業訓練に関する勧告(第一二六号)

発展途上にある国の経済的社会的開発における協同組合の役割に関する勧告(第一二七号)

また、同総会は計一八の決議を採択したが、その主要なものは次のとおりである。

発展途上にある諸国の工業化におけるILOの役割に関する決議

一九六八年の国際人権年に対するILOの貢献に関する決議

人的資源の開発に関する決議

労働関係国家行政機関に関する決議

若年者訓練、雇用特別計画に関する決議

企業への労働者の参画に関する決議

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2 国際連合教官科学文化機関(UNESCO)

(1) 一九六六年はユネスコ創立二〇周年(わが国のユネスコ加盟一五周年)に当り、一〇月二五日から一一月三〇日までパリで開催されたユネスコ第一四回総会中、一一月四日に創立記念式典が行なわれた。

本総会は一二〇カ国、一、一四四名の代表等の参加のもとに開かれ、一九六七年および六八年の予算および事業計画を決定したが、わが国に関係ある事業計画の主なものは、(イ)国立教育研究所を中心とするアジア地域教育調査振興事業 (ロ)アジア地域科学技術適用会議の開催(一九六七年末) (ハ)明治百年記念事業(一九六八年)である。

なお、本総会にはわが国は須山大使以下一七名の代表団を送り、須山大使は行政委員会委員長に選出された。

(2) ユネスロ執行委員会は、第七二回(一九六六年五月)、第七三回(同年九月)、第七四回(同年一〇月)および第七五回(総会直後一二月)が開催され、須山執行委員が出席した。

(3) 「教員の地位に関する勧告」採決のための政府間特別会議は、ユネスコ・ILO共催の専門家会議(一九六六年一月、ジュネーヴ)が作成した草案の審議のため、九月二一日から一〇月五日までパリでユネスコ主催により七五加盟国等からの約二五〇名の代表、オブザーバーの参加により開かれ、わが国からは今村文部省初等中等教育局審議官を代表とする四名の代表団が出席した。同会議で採決された勧告について第一四回ユネスコ総会はこれをユネスコ総会採決の勧告と同等の取扱いをするよう加盟国に勧奨する決議を採択した。

(4) なお、一九六六年度中にわが国が招請国となった主な国際会議、セミナー等はつぎのとおりである。

(イ) 「アジア地域出版専門家会議」(五月、東京)

アジア地域の発展途上国に書物の出版と普及のための国家的目標を確立させることを目的とする会議で、そのフォローアップとして一九六七年秋わが国で「グラフィック・アーツに関する研修コース」を開催の予定であり、また、アジア出版業界発展のための研修、調査機関をわが国に設置することも関係方面において検討中である。

(ロ) 黒潮共同調査国際調整グループ第三回会議(八月、東京)

ユネスコに設置されている政府間海洋学委員会(I0C)の公式事業として一九六五年七月発足した黒潮共同調査計画(CSK)には日、米、ソ連、香港、フィリピン、中華民国および韓国が参加している。CSK参加国には国内調整員が置かれ、CSK計画の国内調整に当っているが、わが国の国内調整員和達清夫博士は、国際調整員に選出されている。本件会議は、CSKの第一期の成果を検討し、将来の活動計画を調整するため開催され、前記CSK参加国その他関係機関の代表等五〇名が参加した。

(ハ) 「アジア地域教育内容・教育方法改善研修コース」(一一月、東京)

一九六五年秋バンコックで開催されたアジア地域加盟国文部大臣・経済企画担当大臣会議のフォローアップとして、アジア地域ユネスコ加盟国の教育指導者を対象に、主として初等教育における教育内容、教育方法の改善に関する研修を行ない、あわせてわが国の教育発展の過程と実状を研究する機会を提供することを目的とするもので、アジア地域一〇カ国から一六名が参加し、国立教育研究所等の講師により六週間の研修を行なった。本研修は、一九六七年度も引きつづき行なわれる予定である。

(ニ) 「ユネスコ大学院研修講座」

発展途上国の大学卒業者を先進国の大学、研究機関等で一年間基礎科学の研修を行なわせ、終了後母国の教育、研究の発展に寄与させる目的の国際大学院コースは、一九六一年以来欧州諸国で開かれており、わが国においても一九六五年秋に本講座を創設して以来毎年、主としてアジア、中南米等の諸国から選ばれた十数名の研修生が、東京工業大学において化学および化学工学の研修を受けている。

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3 国際連合食糧農業機関(FAO)

わが国は、一九六五年よりFAOの理事国に選出され、また、その下部機構である商品問題委員会及び水産委員会にもメンバーとして参加することとなった結果、世界の食糧、農業問題の検討に従来よりも積極的な態度で臨むこととなった。

まず一九六六年六月開催された第四七回理事会においては、農業資材をもって後進国を援助せんとの目的の下に新たに「農業資材計画」が事務局側より提案され、その必要性をめぐって種々論議が行なわれたが、未だ結論を見るに至らず作業部会を設立して検討が続けられている。次に水産問題に関しては、一九六五年一二月のFAO第一三回総会の決定により設置された水産委員会第一回会合が一九六六年六月FAO本部において開催され、わが国は六名の代表団を派遣し積極的にその審議に参加した。水産委員会は水産業に関する国際的問題について検討し適当な措置を講ずるようFAO及び他の国際機関に勧告するもので、そのメンバーはわが国を含め三〇カ国である。

本委員会においては、(イ)漁業関係国際機関の協力に関する小委員会、(ロ)インド洋水産資源の合理的利用に関する作業部会を設置すべきことを決議した。これらの委員会及び作業部会は一九六七年一月FAO本部において開催され南東太平洋、南東及び中東大西洋ならびにインド洋漁業資源の合理的利用の問題その他世界の水産に関する重要問題につき審議が行なわれた。さらにまた商品問題委員会は、世界の農産物の需給、生産状況等を検討するとともに、一九七五年及び八五年の世界農産物の見通しを作成し、もって今後の援助政策上の指標として役立てることを目的とする、「世界指標計画」のための作業をその主な審議の対象として、一九六六年六月及び六七年三月FAO本部においてそれぞれ会合が開かれ、わが方もこれに積極的に参加した。なお右のほか、わが方の参加したFAO関係会議は左記の通りである。

(イ) アジア極東地域総会

一九六六年九月に、韓国ソウルにおいて開催され、アジア極東地域における農林水産業の開発、特に食糧生産の増大策について審議を行なった。

(ロ) FAOまぐろ資源調査促進のための第二回専門家パネル

八月一五日-二一日、ナイジェリア、インド、米国、フランス、スペイン、ポルトガル、わが国及びFAOから一五名の専門家が出席。

(ハ) FAO第一回アジア極東地域農業統計委員会

九月二六日-一○月三日、オーストラリア、インド、韓国、マレイシア、ネパール、フィリピン、タイ、米国、ヴィエトナム、わが国およびエカフェから二三名の参加者、三名のオブザーバー、FAO事務局から七名の出席を得て、開発途上国の農業センサス等の実施の問題等を審議した。

(ニ) FAOアジア地域農業普及に関する特別作業部会

一一月七日-一二日、オーストラリア、英国(香港)、インド、韓国、マレイシア、ネパール、パキスタン、タイ、ヴィエトナムおよびわが国から二二名の代表、国連、米国、アジア生産性機構等のオブザーバー八名、わが国で研修中の農業普及研修生一二名、FAO事務局職員二名の参加を得て、農業協同組合等を通じて農業普及を強化する方策等につき審議した。なおこの特別作業部会は第四七回理事会の決議により常設のアジア極東地域農業普及委員会となった。

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4 世界保健機関(WHO)

一九六六年五月三日より同二〇日までWHO本部所在地のジュネーヴにおいて、第一九回世界保健総会が開催され、わが国からは、五名の代表団が出席した。同総会では、一九六七年度の事業予算、痘そう及びマラリア撲滅事業計画等につき活発な討議がなされた。

わが国のWHOの活動に対する協力としては、わが国の専門家が公衆衛生、医療、薬事等の諸分野にわたる専門家諮問部会及び専門家委員会のメンバーとして活躍しているほか、技術援助の一環としてWHOフェローの受入れ、トラホーム、マラリア対策、衛生統計、結核等の分野における専門家の現地派遣、各種講習会開催により技術及び情報の交換を行なっている。また第一九回総会では、WHO本部建設を機会に、日本庭園を寄贈することを発表し、目下準備が進められている。また痘そう撲滅事業計画に関しては、二つの民間会社を通じ、一二〇台のオートバイをWHOに寄贈した。

なお、WHO日比共同エルトール・コレラ研究を前年に引続き行ない、コレラ伝播における保菌者の役割、保菌者の適切な検査法、治療及び予防に関する諸問題の共同研究を進めており、ワクチンの供給、医療器具の補給、専門家の派遣等の医療援助は今後とも継続して行なうこととしている。

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5 国際民間航空機関(ICAO)

一九六五年六月から七月にかけて開催された第一五回総会でBカテゴリー(国際民間航空のための施設の設置に最大の貢献をなす国)の理事国に選出されたわが国は、第五七会期(一九六六年一月二五日-四月四日)、第五八会期(四月二六日-六月二九日)、第五九会期(一一月七日-一二月一六日)、第六〇会期(一九六七年二月二〇日-三月二三日)各理事会の討議に参加したほか、技術的問題に関する諸委員会、部会にも参加した。

国際航空法の分野においては、一九六五年一一月一五日、米国が、国際航空運送に関するワルソー条約に定める運送人の旅客に対する責任限度額が低きに過ぎるとの理由で、同条約の廃棄通告を行なったのに伴って、ICAO特別会議が一九六六年二月一日より一五日まで招集され、わが方もこれに参加した。その後、同条約を改正する方針で問題を検討するため、理事会の下に、専門家パネルが設置され、その第一回会合が、一九六七年一月一九日より三〇日まで開催されたが、わが国も専門家を派遣してその作業に貢献した。

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6 万国郵便連合(UPU)

現在、わが国は執行理事会メンバーではないが、一九六九年の第一六回UPU大会議開催国となるので、一九六六年五月の執行理事会にオブザーバーとして参加するよう招請を受け、四名が出席した。第一六回UPU大会議は、約一三〇カ国から約一〇〇〇名が東京に参集する予定の大きな会議であるが、準備作業は、常時UPU事務局と連絡の上着実に進められている。右準備の一環として一九六六年一〇月には、郵政大臣を委員長として、関係各省庁の次官を委員とするUPU東京大会議準備委員会が発足した。

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7 国際電気通信連合(ITU)

一九六五年のモントルー全権委員会議においてE地域(アジア・大洋州地域)で最高票を得て管理理事国に当選したわが国は、一九六六年正月九日より六月三日までジュネーヴで開催された第二一会期管理理事会に、代表を派遣し、一九六六年度および六七年度予算の審議、ITU条約の憲章化作業計画、技術協力事業等に関する討議に参加した。技術的問題を扱った会合については、一九六六年六月二二日より七月二二日まで、オスローで開かれたCCIR(国際無線通信諮問委員会)の第一一回総会に、わが国より、二七名の代表団が派遣され、宇宙通信等の技術及び運用の問題について研究及び意見の交換等が行なわれた。

同年九月七日から二〇日迄、メルボルンにおいて開催されたアジア・オセアニアのためのCCITT(国際電信電話諮問委員会)/CCIR合同プラン委員会には、わが国から一二名の代表が出席し、アジア・オセアニア地域の電信電話、テレックス回線計画、通信衛星計画、地上局の設置案等について研究、協議を行なった。このほか、CCITTは電信電話の技術的問題に関し、多くの作業部会を開き、わが国もそのいくつかに積極的に参加した。

IFRB(国際周波数登録委員会)はモントルー条約(一九六七年一月一日発効)以降、委員がこれまでの一一人制から五人制となったが、先のモントルー全権委員会議の際の選挙で当選していたわが国の西崎太郎氏(元郵政省電波監理局長)は、一九六七年一月一日付で同委員に就任した。

わが国は、またITUの技術援助プログラムにも積極的に協力し、現在、エカフェ地域、アフリカ地域、タィ、イラン、イラク等で、日本人の軍気通信専門家が活躍している。

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8 政府間海事協議機関(IMCO)

一九六六年一一月一日より三〇日までロンドンにおいて「一九六〇年の海上における人命の安全のための国際条約」に定める旅客船の防火基準に関する規則を改正し、旅客船の火災予防措置を強化するため、第三回臨時総会が開催され、わが国からも代表団がこれに参加した。わが国は、IMCOの常設機関たる理事会及び海上安全委員会のメンバー国として、理事会の第一六回(一九六六年五月一六日から二〇日まで)及び第一七回(一九六六年一一月二九日から一二月二日まで)会合、並びに海上安全委員会の第一三回(一九六六年五月三日から一〇日まで)、第一四回(一九六六年一〇月二四日から二八日まで)及び第一五回(一九六七年二月二七日から三月一〇日まで)の会合に参加したほか、船舶の技術的問題を取扱う海上安全委員会の下部機関たる小委員会及び作業部会等にも出席者を出し、IMCOの事業活動に協力した。

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