日本政府と各国政府との共同コミュニケ

 

日華共同コミュニケ

(昭和四〇年八月一八日)

沈昌煥中華民国外交部長は、夫人及び数名の随員を帯同し、日本政府の賓客として一九六五年八月一二日から一九日まで、日本国を訪問した。本訪問は、一九六四年七月の大平前外務大臣の中華民国訪問に対する答礼として行なわれたものである。日本政府及び国民は沈外交部長の訪問に対し熱烈なる歓迎を行い、沈部長は日本朝野の厚誼に対し心からなる感謝の意を表明した。

沈外交部長夫婦は、天皇及び皇后両陛下から謁見を賜わった。また、沈外交部長は、船田衆議院議長及び重宗参議院議長を表敬訪問した。

佐藤総理大臣及び椎名外務大臣は、それぞれ沈外交部長と極めて友好的なふん囲気のうちに会談を行ない、現下の国際情勢、特にアジア情勢、日華両国間の問題および両国がともに関心をもつ諸問題について忌憚のない意見を交換した。沈外交部長は、また、福田大蔵大臣、三木通商産業大臣および藤山国務大臣その他の日本の指導的な人物と会見し相互に関心をもつ諸問題について話し合った。

椎名外務大臣と沈外交部長は、一九五二年日華両国が平和条約を締結して以来、同条約に基づき両国が現在まで維持してきた友好関係が、両国間の相互理解を深め、両国の福祉を増進し、かつアジアにおける平和と安定を確立する上に、大きな意義があったことに満足の意を表明した。また椎名外務大臣と沈外交部長は、客年の吉田元総理大臣および大平前外務大臣の訪華、ならびに中華民国総統府張羣秘書長の訪日が両国間に新たに友好親善関係の基礎を築いたことを認め、今後とも両国間の緊密な関係を維持発展せしめることに意見の一致をみた。

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日ソ共同コミュニケ

(昭和四一年一月二二日於モスクワ)

日本国外務大臣椎名悦三郎は、ソヴィエト連邦政府の招待により一九六六年一月一六日から二二日までソヴィエト連邦を公式訪問した。

椎名外務大臣には福井勇運輸政務次官のほか、外務省及び運輸省の幹部が同行した。椎名外務大臣は、モスクワ及びレニングラードを訪問した。

椎名外務大臣は、ソヴィエト連邦に滞在中、ア・エヌ・コスイギン ソ連邦大臣会議議長、エヌ・ヴェ・ポドゴルヌイ ソ連邦最高会議幹部会議長及びア・イ・ミコヤン ソ連邦最高会議幹部会員並びにその他のソ連邦の指導者と会見した。

日本国外務大臣椎名悦三郎はソヴィエト連邦外務大臣ア・ア・グロムイコと会談し、同会談には日本側より在ソ連邦特命全権大使中川融、外務審議官牛場信彦、外務省欧亜局長北原秀雄その他が、ソ連側より第一外務次官ベ・べ・クズネツオフ、在日本国特命全権大使ベ・エム・ヴィノグラードフ、外務省参与エヌ・ゲ・スダリコフその他が参加した。

これらの会談を通じて、日ソ両国間の関係を一層発展させるための諸問題及び両国が関心を有する主要国際問題について有益な意見の交換が行なわれた。

近年日ソ両国間においては、各種使節団の相互派遣、人の往来、貿易の伸長、文化その他の交流が盛んとなり、両国民の信頼と相互理解に資するところが多かった。

双方は両国間において逐次善隣関係が発展し諸懸案が解決されていることに満足の意を表明した。

成功裡に終了した交渉の結果、一月二一日、モスクワにおいて日・ソ航空協定の署名が行なわれた。協定には、日本側から椎名外務大臣、ソ連邦側からロギノフ民間航空大臣が署名した。双方の利益を考慮して締結されたこの協定は、疑いもなく、日ソ関係の増進に貢献するものである。

双方は、日ソ間の貿易、経済関係が順調に進展していることを満足をもって指摘した。一月二一日に椎名外務大臣とパトリチェフ貿易大臣は、一九六六年から一九七〇年までの期間における貿易及び支払に関する協定に署名した。同協定は、日・ソ両国間の貿易が着実に伸びる良い見通しを与えるものである。双方は、経済の分野における両国間の協力が単に日・ソ両国の利益に合致するのみならず両国間の善隣関係の維持及び発展の基礎となるものであることを認めた。

双方は、両国の経済協力の一層の発展の見通しに関する諸問題が、本年春に東京において開催される予定の日・ソ及び、ソ・日経済委員会の合同会議において検討されることは有意義であると認めた。

双方は、目下交渉中の日・ソ領事条約を早期に締結し、領事館の相互開設問題を検討することが望ましいと認めた。

北西太平洋の公海における漁業を初め、漁業の分野における日・ソ両国間の協力が近年その実を上げていることについて満足の意が表明された。

双方は、今後とも漁業の諸分野における協力を発展させ、すべての問題の解決に努めることに合意した。

双方は、東南アジアにおける情勢に関し、意見を交換した際に、ヴィエトナムの情勢は平和にとって危険であることを強調し、この問題に関するそれぞれの立場を述べた。

双方は、インドとパキスタンの関係正常化及びインド・パキスタン地域における恒久平和の樹立の一歩を画するタシケント宣言が採択されたことに満足の意を表明した。

双方は、国際連合憲章を遵守し、国際連合の強化を助長することが必要であると認め、この目的達成のためにそれぞれ必要な努力をすることに合意した。

日ソ両国政府は、核兵器戦争のもたらす惨害を回避し、全世界の平和を確立するためには、核兵器の全廃を含む全面完全軍縮の実現が必要であると認める。

双方は、国際連合第二〇回総会の決議にのっとり、効果的な核兵器不拡散条約の締結が重要であることについて意見が一致した。

日本国外務大臣とソ連邦代表者との会見及び会談は、友好と相互理解の精神のもとに行なわれた。

双方は、両国の政府当局者の間で今後とも接触を発展させることに賛意を表した。双方はまた、相互に関心のある国際問題について随時協議を行なうことに賛意を表した。

日ソ両国政府は、日ソ両国がその社会体制を異にするにかかわらず、互恵平等と内政不干渉の原則に基づきあらゆる分野における両国間の善隣関係を一層促進することは、アジアの平和と安全の維持、ひいては世界の平和に貢献するところ大であることを認めた。

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第四回日米貿易経済合同委員会共同コミュニケ

(昭和四〇年七月一四日)

一、第四回日米貿易経済合同委員会はラスク国務長官の司会の下に昭和四〇年七月一二日、一三日、一四日ワシントンで開催された。会議では日米両国の二国間関係の観点からのみならず、世界的な視野から日米両国の貿易経済関係が全般的に検討された。委員会は、日米両国の経済が引き続き強力である結果、両国がより緊密かつ一層効果的に協力して、世界経済の分野で一層広範な責任を果すことが可能となったことを認めた。委員会は、低開発国、特にアジアにおける諸国の経済の発展を促進し、その福祉の向上を図ることが重要であることを確認した。委員会は、日米両国の貿易経済関係との関連における国際情勢の重要性の認識に基づき、まず国際情勢一般を概観した。

二、討議は貿易、経済の諸問題について広範囲にわたって行なわれ、次の諸点を含む多くの分野で相互理解に達した。

(一) 委員会は、米国経済が長期間にわたって拡大を続け、今後ともこの拡大が維持されると見通されることに満足の意を表明した。委員会はまた、日本の驚異的な経済成長の記録をあらためて確認し、日本経済が再調整期をたどりつつあることを認めつつも、日本経済の着実な成長についての確信を表明した。従来の会議におけると同様、日米両国政府の間で、それぞれの主要経済問題と経済政策に関してより一層緊密な情報交換の必要があることが強調された。

(二) 委員会は、日米両国における国際収支の着実な好転を歓迎しつつも、両国が未だその国際収支において問題をかかえていることを認めた。米国側委員は、利子平衡税の一部免除にふれ、米国が引き続き日本の財政金融上の問題に出来得る限りの考慮を払うべきことを約した。日本側委員は、米国の国際収支均衡回復の努力を可能な範囲内で支持したい考えである旨を明らかにした。

(三) 委員会は、日米両国間の貿易が増加しつつあり、一九六五年には四〇億ドルを越えると予想されることに満足の意を表明した。委員会は、貿易量の増大と貿易の多様化に伴なって日米双方に種々の問題が当然起り得ることを認めた。日米両国委員は繊維品貿易問題のごときこの分野での諸懸案について率直な意見の交換を行なった。委員会は、貿易の一層の拡大、経済活動の発展、生活水準の向上が、また、日米両国の政府産業界、および労働界の間の相互理解の増進が、貿易をめぐる諸問題の解決に貢献するとの見解を表明した。

(四) 米国側委員は、米国政府が、より効果的な資本と技術の利用を通じて貿易の拡大、経済の成長および生活水準の向上に貢献する日本の民間投資の自由な流れを助長する政策をとっていることにふれ、米国の企業が日本で企業を設立し、またはこれを拡張するにあたって当面している種々の困難に言及した。日本側委員は、健全な外資を歓迎するとの日本の基本的態度を述べるとともに、大規模かつ急激な外資の流入がもたらすことのあるべき日本経済に対する悪影響を指摘した。委員会は、日米両国間での健全な直接投資を秩序ある、そして相互に利益となる形で促進することが望ましいことに意見の一致をみた。

(五) 日米両国代表は、民間航空協定に関し、最近行なわれた非公式会談の進展に留意し、八月一〇日東京で開始される正式交渉に期待する。

(六) 委員会はまた、北太平洋漁業条約に関連した諸問題についても討議を行なった。委員会は、両国政府が東べーリング海でのタラバガニ問題に関する一九六四年一一月の暫定取極を締結し、これにより両国間の諸懸案の解決においてさらに一歩前進したことを満足の念をもって想起した。現在休会中の交渉を早い時期に再開するため、日米両国が、米国、日本、カナダの正当な利益に基づいた合意が達成されうるような雰囲気をつくりだす上で必要な準備を行なうようそれぞれ努力すべきことに合意をみた。

三、国際経済関係の分野における日米両国間の緊密な協力の重要性が強調された。

(一) 委員会はジュネーヴにおいて関税の引き下げと関税以外の貿易障壁の撤廃を目的として行なわれているケネディ・ラウンド交渉の成功が、日米両国にとって極めて重要であることを認めた。日米両国委員はケネディ・ラウンドにおける今までの交渉の進展を歓迎するとともに、交渉がスケジュール通りに進行することによって早期かつ成功裡に終了し、世界貿易の拡大がもたらされることを期待する旨を表明した。

(二) 日米同国委員は各々の共産圏貿易に関する基本的な政策を説明した。日本の政策は共産圏諸国との関係において政経分離の原則に立っている。米国側委員は中共、北朝鮮、あるいは北越と経済関係を持たない理由、米国のキューバに対する禁輸の理由、また米国の共産圏向け長期信用供与への反対理由を説明した。米国側委員は米国は東欧諸国およびソ連との非戦略物資に関する貿易は、これら諸国との意思の疎通ならびに接触を増加させる一つの方法として真剣に検討中であることを指摘した。

(三) 委員会は、低開発国の貿易問題についての組織だった討議の場として国連貿易開発会議が重要であることを認めた。日米両国委員は、低開発国のかかえている問題に関して、建設的解決を求めるべく今後も協力するとの両国政府の意図を確認した。

(四) 委員会は、日本がOECD加盟後今日までの一年間にますます活発にかつ重要な役割を果して来たことに満足の意を表明した。

(五) 委員会は、増大する世界貿易と投資活動をまかなうに足る国際流動性を長期にわたって確保することの重要性について意見の一致をみた。委員会は、米国の国際収支が均衡に近づくにつれて、流動性の供給が必要に応じて行なわれることを確保するため、国際通貨制度を改善することを検討し準備することが世界各国にとり必要となるであろうことを認めた。

四、委員会は、低開発国に対する経済援助の分野で、日米両国間の協力がますます緊密になってきたことに満足の意を表した。また委員会は、低開発国の開発のために必要な方途を生みだし利用するという問題を討議した。委員会は、ジョンソン大統領によってこの四月に提案され、佐藤総理により直ちに支持された東南アジア援助提案が実施されれば、これは東南アジア諸国の社会的、経済的発展に大きく寄与するであろうことに意見の一致をみた。両国委員はアジア開発銀行の創設が進捗しつつあることを歓迎し、同銀行の事業の将来性の大なることを認めた。委員会は、同地域の経済成長と開発のために供与される資金の効果を最大限とするのに必要な仕組みを策定するため、日米両国がその援助計画について他の国々とも密接に協力する必要があることに意見の一致をみた。委員会は、アジア各国の一層のイニシアティヴによりアジア地域諸国民の福祉の向上が可能となり、経済成長が刺激され、もって経済事情と経済の発展段階とが異なる同地域の数多くの国々がともに平和裡に生活しうるような環境が醸成されるよう希望を表明した。

五、(一) 日米両国委員は、日米両国間における労働関係者および職業訓練専門家の両交流計画が友好と相互理解におよぼす重要な寄与にかんがみ、これら両計画に満足の意を表明した。

(二) 委員会は、天然資源の開発、利用に関する日米合同会議の報告を聴取した。委員会は、天然資源に関する日米両国の専門家および関係部局間における理解を促進する上において、この交流活動が大いに役立ったこと、またおおむね現在程度の交流を継続することが有意義であるとの結論に賛成の意を表した。

六、委員会は、合同委員会の第四回の会合が日米両国関係の強化に大きく寄与したことに意見の一致をみた。両国委員とも東京における次回会合での意見交換を期待している。

七、この委員会の米国側委員は、ラスク国務長官、ファウラー財務長官、ユードール内務長官、フリーマン農務長官、コナー商務長官、ワーツ労働長官およびアクリー大統領府経済諮問委員会委員長で、ライシャワー駐日大使、ロス通商交渉特別代表臨時代理、ベルAID長官ほか関係各省庁の随員が同席した。

日本側委員は、椎名外務大臣、福田大蔵大臣、坂田農林大臣、三木通産大臣、小平労働大臣、中村運輸大臣、藤山経済企画庁長官で、武内駐米大使と牛場外務審議官ほか関係各省の随員が同席した。

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文化および教育の交流に関する第三回日米会議最終コミュニケ

(昭和四一年三月七日)

一九六六年三月二日から七日まで、東京において開催された文化および教育の交流に関する第三回日米会議は、両国間の相互理解の増進のための大学の役割を議題とした。

本会議は、まず、前二回の会議を、その理想主義と積極的な支持によって成功に導いた三人の人々-故ジョン・F・ケネディ大統領、故池田勇人総理大臣および前回代表の故岸本英夫教授-の死去に深い哀悼の意を表明した。これらの人々を心から追憶し、その不慮の死に対して、黙とうが捧げられた。

日本国文部大臣の開会のあいさつに始まった本会議は、近年日米両国間で行なわれてきた文化交流が成長し拡大していることを認めた。しかしながら、これまでの諸会議を通じて、相互理解の増進のためにきわめて枢要な要素、すなわち大学の問題に関心を限定したのは、今回が初めてである。

大学、大学教員および大学の学生は、政治の直接的な圧力から独立し、問題を実質的に分析する能力を持ち、将来の指導者を育成強化する役割を担っている点において、独特の可能性を有している。世界の希望は、大学の上に大きく集中されている。日米両国においても、大学は、われわれがそれぞれの歴史と文化を保持し、豊かにし、新しい世代へ伝えていく仕事を付託している機関である。しかしながら大学は、自国民だけに奉仕するものであってはならず、同時にそれは、国際的な協力と理解へのかぎでもある。大学は、人類という一つの共同社会において、ひじょうに大きな共通の使命を持っている。人類の理解と調和のために大学の相互連携の能力を強化するとともに、行動様式を制約し相互関係に影響を与えうるよう大学の巨大な可能性を賢明に活用し、また、異質の文化を持つ人々が共存共栄する道を探究することに、あらゆる努力が集中されなければならない。

本会議は、このような責務について大胆かつ率直に分析を行なった。そして、学界の側において日米の文化を充分かつ正確に理解することを妨げているいくつかの障害、たとえば、大学の伝統の相違、学問的方法論および学習方法の相違、さらには共同して学術的目的を追及しようとするときに、それに制約を加え、色づけをし、その成就に影響を与え、ときには抑制さえもする政治的見解の微妙な点において相違のあることを認め、それらについてある程度までくわしくかつ深く討議した。

しかし、大学の責務は、真理に奉仕するために研究と努力を重ね、その成果を人類全体に提供することにあるという点については、つねに完全に意見は一致していた。

本会議は、深い学術研究が、問題の注意深い分析に役立ち、討議を単なる討議や論争以上のものにまで高めるものであることを考え、その重要性を強調した。この種の研究は、必ずしも実際的な問題の解決についての合意に到達する必要はないが、それにもかかわらず、相互理解の増進を助長するものである。

このような考え方に立った一般的合意と目的をもって、本会議は討議題目に注目し、それに討議を集中した。

I 教育を通じての相互理解の増進

最初に、重大な見解の相違、とくに政治問題、国際問題に関する見解の相違が、相互理解と大学間の協力にとって障害となっていることが認められた。しかし、相互理解への努力が要請されていること、およびたとえ政治的見解の相違がある場合でも、大学間の協力は客観性のある学問を基礎として可能であるということについて、意見の一致をみた。両国における大学の重大な責務の一つは、より客観的・現実的な考え方を増進することである。

本会議は、フルブライト交換計画およびハワイのイースト・ウェスト・センターが、日米間の文化関係の発展に重要な役割を果してきたことを認めた。日本側代表は、これらが日本に利益をもたらしている点にかんがみ、日本国政府が将来これらに対して財政的援助の一端を担うようになることを希望した。このような両国共同の援助があれば、これらの活動は末長く継続し発展することになるであろう。アメリカ側代表団は、このような希望の表明に賛意を表した。

II 大学教育に関する両国間の協力

現在、両国間の学問上の協力を行なうに当っておち入りやすい欠陥は、それが皮相的なものになるということである。その国民のおかれた地理的な諸事情への考慮、その国民の思考方法、歴史的体験など、その国民固有の見地と基本方策を形成するすべての要因をじゅううぶんに理解しないならば、外国の学者が与えられた素材を正しく評価する能力を発揮することはむずかしい。

本会議は、この問題についてかなり長く討議し、現在の交流計画にある種の調整が必要であるとの結論に達した。優秀な米国に関する日本人専門家と日本に関するアメリカ人専門家の中核をつねに育成すべきだとするならば、それぞれの専門家たちが相手国において深い経験をもちうるような措置が講じられなければならない。このような措置としては、両国の学者が、外国でもっと長い期間研究に従事するとか、たびたび新知識吸収のために外国を訪問できるようにすることが考えられる。本会議は、一つの例として、とくに語学および地域研究の分野におけるフルブライト交換計画の奨学期間をより長くすること、およびときには後年その人を再び派遣することも必要であることを指摘した。

III 両国の大学教員および資料の交流促進

日本人のアメリカ研究者、アメリカ人の日本研究者および両国の語学教師に対して海外旅行の機会を増大することの必要性がくりかえし強調された。しかし、それにもまして、優秀な学究を確保し、相手国での経験を長く、しかもたびたび積ませるようにし、そして相手国の国民と文化に緊密に接触できるようにして、これら研究者、語学教師の質と量とを改善することの重要性が強調された。若い学者の外国留学を奨励することについては一般的に意見の一致をみたが、戦争によって留学の機会をうばわれたより年長の世代の学者に対し、特別の考慮が払われるよう要望された。

第三回会議は、前二回の会議において強調された語学教育の大きな重要性を再び確認した。語学教育の助手としてもっと学生を活用すること、日本語教育の方法論に関する研究、教科書と教材の準備および語学教育政策の策定に対して、特に注意を払うことが要請された。

日本の学術文献のほん訳がその量においてじゅうぶんでないことが再び指摘され、ほん訳のためのクリアリング・ハウスの設立が再び勧告された。それに加えて、本会議は、ほん訳技術の研究と有能なほん訳者の研修事業の実施を示唆した。なおほん訳の出版および配布を改善する重要な方法として、日米双方の大学出版会の間の協力も要請された。

日米の図書館専門職員は、相手国から来る図書資料の扱い方について、ともに深刻な困難に当面している。困難な点はそれぞれで異なっているが、図書館職員の交流計画および職員の研修、図書資料の選択と収集についての相互援助が行なわれるならば、両国の図書館組織は利益を受けることになろう。このような協力を推進するためアメリカ図書館協会の援助が得られるならば、それは歓迎されるであろう。

また、アメリカに関する研究資料で日本中の学者に役立つものを中央のコレクションとすることの可能性と、アメリカの学者が日本の資料を容易に利用できるようにするための改善策については、今後さらに検討する必要がある。さらに、アメリカにおける日本の図書資料の収集をできるだけ早く拡充する必要がある。いずれの場合にも、マイクロ・フィルムや複写に関する近代的な技術について配慮すべきである。

IV 留学生と相互理解

日米両国の文化と教育の交流における留学生の役割は明白である。日本に留学するアメリカ人学生、アメリカに留学する日本人学生のいずれを問わず、留学生の相手国における経験は、両国にとってきわめて重要なものである。

本会議は、一般的にみて、日米両国間の学生交換が円滑に行なわれていることに注目した。しかしながら、そこにはなお改善の余地がある。たとえば、アメリカに日本のカウンセリングとガイダンスのセンターを、また、日本にアメリカのカウンセリングとガイダンスのセンターを設けることなどによって、カウンセリングの進め方を拡大強化しなければならない。また、他国で学びたいと希望する学生に正しいカウンセリングを与えられるようにし、また、入学担当者の決定を助けるため、両国の大学について詳細な最新の情報を交換するための連絡の道をひらくことが必要である。さらに、オリエンテーションの事業は、留学前に自国で受けるオリエンテーションが留学先の国に到着した時に受けるものと結びつくような継続性のある事業として行なわれるようにならなければならない。また、留学生を家庭に受け入れる事業を、両国において強力に発展させなければならない。外国で取得した単位の認定を容易にすること、および大学入学の応募手続の基準を設定する可能性についても、注意を払わなければならない。なお、日本側代表団は、日本人留学生の中には、外国における経験と語学力の向上ならびに専門の学問分野における研究のために留学はしているが、学位の取得は目的としていない者が少なくないという事実を、アメリカの教育担当者に認識してもらいたいと要望した。

なによりも、言語上の障壁を打破するため、今後いっそうの努力が払われなければならない。日米両国留学生の語学的準備は、学問上の目的達成のためには不充分な場合が多い。

一九六二年に開催された第一回会議は、この問題を指摘し、その解決のために「絶大な努力」を払うよう要請した。この勧告は、今後、なお充分に実行されなければならないものであり、本会議は、両国に対し、これを緊急の事項として格段の措置を進めるよう要請した。

留学生交換のもうひとつの障壁は、太平洋を横断する旅費が比較的高いことである。本会議は、留学生の交換を容易にするため、承認を受けた両国の交換学生の航空運賃を安くする可能性について検討することを勧告した。

最後に、留学生が言語と文化の伝達者として留学先の国で果たす役割を見のがしてはならない。留学生が、勉学というその本来の目的を不当に妨げられてはならないことはいうまでもないが、留学生は、受入れ大学およびその地域社会に派遣された大使なのであって、多くのものを受けとるとともに、与えることができるのである。

V その他の提案

本会議を通じて、各代表とオブザーバーによって、建設的な活動のための多くの提案が行なわれた。以下は、その事例であって、しかるべき公私の機関によってその検討が進められるよう期待するものである。

(1) 都市化、太平洋地域史、国際機関、児童の発達、教育原理、経済発展などの分野における共同研究活動の展開

(2) ユネスコの提唱する国際理解の目標を達成するため、大学との協力をいっそう効果的に行なうための日米両国の協力

(3) 大学の経営と財政援助(税制との関係を含む)の問題に関する経験の交換

(4) 日米両国の大学制度における一般教育に関する経験と考え方の交換

(5) たとえばヨーロッパ研究、アジア研究のような日米両国以外の文化の共同研究

(6) アメリカにおける現在の日本研究を検討し評価するための日本人チームの派遣

(7) 渡米前に日本人学生に与えられるオリエンテーション実施計画に、アメリカの大学の責任ある者を用いること。とくに、入学担当者ならびに留学生助言担当者の利用が勧告される。

結  論

結論として、本会議は、率直、かつ友好的な数々の発言、討議ならびに検討そのものが、日米両国の連携を深める上に有意義であることを認めた。同時に、本会議の目的は、構想と計画を生み出し、かつ今後の活動を刺激することにあることを認めた。

そこで本会議は、今後二年以内に米国で開催される次回の会議までの間に、とくにつぎのことを行なうよう勧告した。

(イ) 情報の交換と学生・教員の交換に関し、教育上の共通の問題についての緊密な協力に関し、および人文・社会科学の分野における研究に関して、相互協力の諸計画を評価し、検討し、その実施を促進するため、教育文化協力のための日米姉妹委員会をそれぞれに設置すること。

(ロ) 両国双方が必要と認める場合には、特定の研究課題について共同研究を行なうため小規模な研究班を設置することが勧められること。

(ハ) 両国とも、公私の支持によって、両姉妹委員会の事業が適切に行なわれるよう取り計らうこと。

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日亜共同コミュニケ

(昭和四一年三月一五日)

アルゼンティン外務大臣ミゲル・アンヘル・サバラ・オルティス博士は本年三月九日より一五日まで日本を訪問した。

同外務大臣夫妻は滞在中、天皇、皇后両陛下に謁見を賜わり、また佐藤総理大臣、山口衆議院議長、および重宗参議院議長と会見した。

アルゼンティン外務大臣は更に両国に関心ある諸問題について、椎名外務大臣、三木通産大臣、その他の日本政府関係当局と会談した。

アルゼンティン外務大臣は日本の総理大臣および外務大臣に対してアルゼンティン国独立一五〇周年を機会に同国を訪問するよう招請した。

アルゼンティン外務大臣および三木通産大臣は日・ア民間合同委員会の発会式において挨拶し、この民間活動に対する両国政府の支持を表示した。

これらの公式会談は友好的な雰囲気のうちに進められ、日・ア間に従来から存在している伝統的友好関係が確認され、また国際連合との緊密な協力のもとに世界の平和と繁栄の促進を対外政策の基本原則として維持することに合意を見た。

両外務大臣は、核兵器は人類の生存に対し恐るべき壊滅的な力を持っているので有効な国際管理のもとに現在の世界における安全の均衡を維持しつつ漸減され究極的にはこれが廃棄されるべきであるとの願望を表明した。

日本の外務大臣は、日本の国際連合加盟以来アルゼンティンが終始日本の国際連合における活動に協力と支持を与えたことに深謝した。両外務大臣は両国がともに安保理事国としてできる限り速やかにヴィエトナムに平和を回復するために協力する意向があること、またその他の重要問題に関しても安保理事会において密接な協力を保つことを確認した。

両外務大臣は文化交流が両国民の相互理解のための基本的に重要な方策であることを確認し、従来より行なわれている芸術、学術、スポーツ等の諸文化活動を一層活発化し、人的、物的交流を推進することに合意した。同時に日・ア間の著作権に関する問題解決について交渉を開始することに合意した。

日本の外務大臣は日本からの移住者に対するアルゼンティン官民の好意に謝意を表した。これに対して、アルゼンティン外務大臣は、日本からの移住者は、アルゼンティンの国法がアルゼンティンの全ての住民に与える保護を等しく享受し、従って、完全な自由をもってその活動を行ない得るものである旨を述べた。

また、同大臣は、同国の工業化および経済開発計画が企業の進出プログラムに伴い日本よりの技術移住に対し広汎な機会を与えている旨を述べた。同発言に対して、日本の外務大臣は日本としても相手国の経済開発に寄与しうるような国際協力の形であるべき新しい移住理念にもとづいて移住を促進したい旨を述べた。

両国間の経済協力に関して、アルゼンティン外務大臣はアルゼンティンで現在実施中の開発計画について述べ、同計画の主たるプロジェクトと分野を明らかにするとともに、上記のプロジェクト及び分野に対して日本において示された大きな関心及びこれが実現への協力についての好意的態度に対し大きな満足の意を表明した。

アルゼンティン外務大臣はラテン・アメリカ特にアルゼンティンの農牧産品はアジアの慢性的食糧不足の解決に活用されるべきでありこの意味において日本はアジアとラテン・アメリカとの橋渡しの役を果すことができ、このようにして日・ア両国間の経済協力関係の強化に貢献できるであろうと述べたのに対し日本の外務大臣は一般的にはアジアとラ米特に日・アの将来関係の見通しに関する同構想は日本政府もこれを高く評価し検討に値するものである旨を述べた。

更に、アルゼンティン外務大臣はアルゼンティンの国際収支に短期的に強い圧迫を加えている同国対外債務の構造を改善するため日本政府のなした貢献につき感謝の意を表明すると共に、一九六六年分についても同様の配慮を要請したのに対し、日本の外務大臣は債権国会議が開催されて債権繰延べ問題が討議される場合には好意的に検討すべき旨を述べた。

経済関係に関しては、両国の貿易拡大、小麦その他のアルゼンティンの伝統的及び非伝統的産品及び日本の工業製品、食肉衛生協定、日・ア民間合同委員会、友好通商航海条約の諸問題につき両外務大臣は会談した。即ち、

1 両外務大臣は両国は両国の工業製品の輸出の伸長とアルゼンティンの小麦を含む伝統的産品の買付を基礎とし、貿易の拡大を目指して必要な措置を講ずべきであることを明らかにした。

2 日本の外務大臣は、日本政府はアルゼンティン産小麦につき、運賃及び保険料を含む価格が国際的にコンペティティヴであり、かつ日本の実需者の要求する品質であれば、コンスタントな供給の保証のもとに、これを輸入する用意がある旨を述べた。

両外務大臣は両国の関係官庁がアルゼンティン産小麦の品質、価格及び数量に関し、直ちに具体的検討を開始することにつき意見の一致をみた。

3 両外務大臣は動物産品がアルゼンティンの主要輸出品目の一つであること、及び両国間の食肉貿易を円滑化することが両国通商関係を発展せしめる上に望ましいことに意見の一致をみた。この点に関し、両外務大臣は、一九六一年一二月二〇日に署名された両国政府間の動物衛生協定及びその付属交換公文の実施について両国政府の間で討議する用意がある旨を表明するとともに、両国の国内法令の範囲内で、両国政府間の食肉衛生協定を速かに締結することが望ましいことに意見の一致をみた。また、両外務大臣は、日本政府の専門家がアルゼンティン政府の招待により、同国における動物の疾病に対する防疫措置並びに動物衛生及び食肉衛生の状態を視察するため、近い将来に同国を訪問することを確認した。アルゼンティン外務大臣は、特に前記日本の専門家が、アルゼンティン政府によって口蹄疫が存在しない旨宣言されたパタゴニア地方の食肉衛生状態を分析するよう希望した。

四、両外務大臣は、アルゼンティン外務大臣の訪日を契機として、その審議を開始した日・ア民間合同委員会の任務が新たな通商関係を刺激するために必要且つ有益であることを認めた。

五、両外務大臣は、両国間におけるより活発な貿易の諸条件の政善に対する一切の障碍を排除することを欲しつつ、一九六一年一二月二〇日に東京で署名された日本国とアルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約の両国による批准を新たに促進することに意見の一致をみた。また、両外務大臣は、両国政府が同条約の諸規定を適用するに当っては、同条約が他方の締約国を差別的に待遇しないという原則を一般的に基礎として作成されていることを尊重する旨を確認した。さらに、両大臣は、本条約に関連して次のとおり表明することに合意した。

本条約第一二条の適用に際しては、両国が加盟国であるところの一九四八年三月六日にジュネーヴで署名された政府間海事協議機関条約第一条(b)項が、同機関の目的の一つは、海運業務が世界の通商に差別なしに利用されることを促進するため、政府による差別的な措置及び不必要な制限で国際貿易に従事する海運に影響のあるものの除去を奨励することである旨、並びに政府が自国の海運の発展及び安全保障のために行なう援助及び奨励は、その援助及び奨励が、すべての国籍の船舶が国際貿易に自由に参加することを制限するような措置に基づいていない限り、差別的待遇とはならない旨を規定していることを考慮に入れるものとする。

同条約の第一三条第四項に関し、アルゼンティン共和国が、同国の関税及び貿易に関する一般協定への正式加入に際して、同国が隣接国またはペルー共和国に同協定への仮加入前に与えた利益を留保する旨を表明する場合は、日本国政府は、同協定の締約国団の会議において賛成投票を行なう用意がある。

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第一回日印定期協議共同声明

(昭和四一年三月四日)

於ニュー・デリー

一、第一回日印定期協議は、昭和四一年三月三日および四日ニュー・デリーにおいて開催された。

二、この協議には、インド側からジャー外務次官、テイアブジー駐日インド大使、ナラヤナン東アジア局長が、また日本側から牛場外務審議官、板垣駐印大使、後宮審議官がそれぞれ出席した。

三、この協議は広範な国際問題につき意見交換を行なうための場であり、東南アジア情勢、各種国際問題殊にアジアに影響を及ぼす問題をめぐる日印両国の立場、国際経済問題、軍縮拡散防止問題等が討議された。両代表は更に両国の友好関係、特に日印間の文化、科学の交流促進のための方法を討議した。

四、両代表は、率直且つ友好的雰囲気の中に行なわれたこの協議は極めて有益であり、且つ日印両国に関心のある問題をめぐる両国の見解をよりよく理解し、両国間に既在する友好関係を強化することに大いに資するところがあったとの点に同意した。

五、両代表は、次回協議を本年末東京において開催することに同意した。

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