国際連合総会における日本代表の発言
(昭和四〇年九月二八日)
一、議長、私は日本代表団の名において、貴下が国際連合第二〇回総会の議長に当選されたことに対し、心からお祝い申し上げます。私は、貴下がその卓越せる識見と国際外交の分野における豊富な経験により、重要な今次総会を成功に導かれ、輝かしい成果を収められることを確信するものであります。
この機会に、私は、前議長ケイソン・サッケイ、ガーナ外相に対し、深甚なる感謝の意を表したいと思います。前議長は、国際連合が大きな危機に直面した第一九回総会において、よくその重責を全うされました。前総会の直面した問題がその解決に向って大きく前進したことは、同議長の献身的な努力によるところ大なるものがあると考えます。
同時に、私は、ウ・タン事務総長が国際連合の最も困難な時期にあって、優れた指導力と手腕をもって国際連合の権威の高揚に努められ、幾多の業績をあげておられることに対し、深く敬意を表するものであります。アジアの平和が攪乱されている今日、私は、アジア出身のウ・タン事務総長に大きな期待をよせております。
私は、ガンビア、シンガポールおよびモルディヴの各代表団に対し、その加盟をお祝いし、心からの歓迎の意を表したいと思います。私は、これらの国が、国際連合憲章の目的と原則に従って、世界平和の維持に寄与されることを確信するものであります。
二、議長、国際連合は、言語に絶する戦争の惨害の中から、正義と平和を求める人類の念願を土台として、その上に築き上げられた世界の殿堂であります。第二〇回国際連合総会の劈頭にあたり、われわれはまず、この世界平和の殿堂をあらゆる風雨から護りぬく覚悟を新たにしてかかりたいと思います。
第一九回国際連合総会は、憲章第一九条の適用問題をめぐる対立のため行きづまり、多数の重要議題を討議することなく散会しましたことは、誠に遺憾なことでありました。また、昨年以来一部の国が、国際連合に向って強い非難の声を浴びせ続けている事実も、われわれの関心事であります。しかしながら、総会が行きづまったからといって、そのために国際連合諸機関の機能と活動が全面的にまひしたのではありません。総会以外の国際連合機関は、いずれもよくそれぞれの任務を遂行しつづけてきたのであります。また、ただいま言及いたしました「国際連合非難」にしましても、非離を唱える国は、ごく少数に限られており、また、その内容は当を失しているきらいがあるといわざるをえません。
私は、国際連合加盟諸国が、いずれも、国際連合に対して深い信頼をよせ、厚い期待をかけつづけていると信ずるものであります。もし、このような信頼と期待が消え失せてしまったのであれば、どうして憲章第一九条の適用問題についての対立が、各国の基本的態度の相異にかかわらず、大乗的見地から解消され、かくして総会の正常復帰が実現しえたでありましょうか。また、どうして安全保障理事会と経済社会理事会の議席を拡大する憲章改正が、加盟国多数の批准を得て、短時日の間に発効の運びに至ることができたでしょうか。
日本国政府は、日本国民を含む全加盟諸国民が国際連合によせるこのような信頼と期待に鼓舞され、われわれの平和の殿堂を維持し、これを強化すべく最善の努力をつくす決意を新たにしております。とりわけ、安全保障理事会と経済社会理事会の議席拡大が、アジア・アフリカ諸国の年来の希望であった事実にかんがみ、この希望が達成されるに至った今日、わが国は、これら諸国と同様に、その責任に重きを加えたしだいでありますので、国際運合の使命達成のため、今後一層の協力を惜しまない覚悟をかためております。
三、議長、今般加盟国は、昨年来その解決をせまられていた国際連合の財政問題を、加盟国による自発的拠金により解決することに合意しました。この合意の背後には、国際の平和と安全を扱う最も権威ある世界機構を、その本来の使命を充分果しえない状態に置いてはならないとの加盟国の強い自覚が、存在したものと考えます。私は、このような国際連合の財政的困難は、全加盟国の共同の努力により克服されるべきであると信ずるものであります。わが国は、国際連合機能の強化に対する熱意の証左として、応分の自発的拠出を行なう用意のあることをここに声明いたします。
四、議長、われわれは、昨年来、国際連合の平和維持活動について討議を行なってまいりましたが、私は、この討議を通じて、一つの共通点を見出しうると思います。それは、ほとんどすべての加盟国がいずれも、過去において世界の危機および局地的紛争に際し、国際連合が果した業績を評価すると同時に、将来においても国際連合が世界の平和維持のために有効な機能を果すことを希望し、このため今後も真剣な努力を行なう決意がみられたことであります。私は、かかる各加盟国の決意と努力こそ、国際連合の将来への途を切開く原動力であると確信し、わが国といたしましても、国際連合の平和維持活動に対し、さらに多くの分野において一層大きな貢献を行なう覚悟であります。
今や国際連合は、創立二〇周年を迎え、新しい時期に入ったものと言えましょう。かかる重要な時期において、われわれが国際連合の将来を論ずることは誠に有意義と考えます。われわれに課せられた責務は、将来国際連合が健全な財政的裏付けをもった効果的な平和維持活動を行ないうるよう努力することであります。私は、この点に関し、わが代表団の基本的見解を述べると同時に、若干の示唆をいたしたいと思います。
まず、国際の平和と安全の維持について第一義的責任を有しているのは、いうまでもなく安全保障理事会であります。過去において安全保障理事会が、五大国の不一致のため、所期の目的を充分果しえなかったことは遺憾でありますが、国際連合の平和維持活動の強化が最大の急務であるこの時期において、新たに拡大された安全保障理事会は、その任務を充分果しうるよう真剣な努力を傾ける必要があります。
次に、安全保障理事会が以上の任務を果しえない場合、国際連合が単に事態を傍観しているのみでは、世界平和維持機構としての国際連合の責務は果しえないのであります。従来、このような場合には、総会を中心とする平和維持活動が行なわれてきておりますが、今後も総会は、憲章によって与えられている機能と権限に基づいて、問題を直ちに審議し、適当と考えられる平和維持活動について勧告を行なうべきであります。
また、将来の平和維持活動経費については、自発的拠金、当事国負担等の特殊方式による場合を除き、全加盟国の共同責任の原則が堅持されるべきであり、かつ、総会の経費割当権限も維持されるべきであります。
なお、私は、平和維持活動特別委員会が総会の正常化について果した業績を高く評価するものでありますが、今次総会は、この特別委員会をして、経費支弁の問題を含め、将来の平和維持活動のあり方を早急に検討せしめ、その結果を総会に報告せしめるべきであると考えます。
議長、私は、国際連合の平和維持活動の問題と密接に関連する紛争の平和的解決の問題についても、この際、あらためて検討を加えることを希望します。このような紛争の平和的解決の方途の一つとして、世界の各地域になんらかの形の国際連合の代表を設けることを示唆したいと思います。
経済分野においては、国際連合の各地域経済委員会の事務局が、各地域の経済情勢を把握し、経済問題について各地域と国際連合との連絡を行なうに当って有用な役割を果しています。しかし、政治の分野においては、国際連合は、臨時的なものを除いては、各地域にそのような役割を果しうるような触手を持っておりません。
したがって、政治の面においても、国際連合の代表、例えば事務総長の代表が、各地域に配置されることが有益と考えられます。この代表は、各地域に常駐することが望ましいのでありますが、それが困難であれば、移動国際連合使節の形でこれを実現することも検討されるべきでありましょう。申すまでもなく、これらの国際連合の代表の活動は、国際連合事務局が、憲章の下で活動を許されている範囲に限られるべきであります。しかし、平和維持活動に関連する諸活動、例えば、事態または紛争の実情調査などを、安全保障理事会または総会の勧告によって、この国際連合の代表に委ねることも可能でありましょう。
また、紛争発生の際に、調査団や調停委員会等の構成および派遣を容易かつ迅速ならしめるための方法として、私は、第三総会の決議が、各国よりの通報に基づいて、事務総長が、このような調査団または調停委員会の構成員になりうるような有資格者の名簿を常に整備して置くよう勧告していることについて注意を喚起したいと思います。その後この制度はあまり活用されていないようでありますが、各加盟国がその活用につき充分な検討を行なうことが望ましいと考えます。
五、議長、今日の世界の情勢を見まするに、幸にして、米ソ両国の間に、緊張緩和のための話合いと相互理解が相当進められ、平和共存のための努力が漸次結実しつつあることは誠に喜ばしいことであり、私は、これらの努力に対して敬意を表するものであります。
しかしながら、世界的規模における大戦争の脅威が薄れるにしたがって、世界の各地に局地紛争が勃発する傾向が顕著になりつつあります。とくにアジア地域においては、ヴィエトナム紛争、カシミール紛争、マレイシア紛争等、幾多の紛争がみられ、今なお戦火が交えられております。アジアの建設のために捧げられるべき貴い人命と富が、同胞の戦いやアジア諸国間の紛争のために消耗されていることは、誠に遺憾であります。
私は、各国が国際連合憲章の原則に従って、その国際紛争を平和的手段によって解決し、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を慎しむならば、世界の平和は確立しうるものと確信するものであります。
わが国は、国際連合に加盟して以来、一貫して国際連合への協力と支持を誓い、国際連合を強化することを、わが国の外交方針としてきており、アジアの一国として、アジアの平和ひいては世界の平和にできる限り貢献することを願うものであります。わが国が、今次総会において、国際の平和と安全の維持に主要な責任を負っている安全保障理事会の理事国選挙に立候補いたしましたのは、わが国のかかる積極的熱意のあらわれであります。
六、議長、ヴィエトナムの紛争が最近益々深刻化してまいりましたが、わが国はあくまで問題の平和的解決を希求するものであります。問題は複雑であり、双方当事者の主張に大幅な差異のあるまま激しい戦闘が続けられている今日、問題の平和的解決には多大の困難がありますが、たとえそれがいかに困難であっても、わが国はアジアの平和と世界の緊張緩和のため、問題が話合いによって解決されることを願ってやみません。
しかるに、なんらの前提条件なしの交渉開始を求めた非同盟諸国の呼びかけも、米国による無条件討議の提案も、また、英連邦使節団の派遣の提案も、北ヴィエトナム側の応ずるところとなっておりません。
いま、和平の条件に関する双方の態度を顧るに、米国は、北ヴィエトナムの四条件を討議の内容とすることにも反対しておらず、また、ヴィエトナム国民が自由選挙を通じて民族の将来を決定することに異存なく、しかも、究極においては、ヴィエトナム防衛の支援にあたっている米国軍隊をヴィエトナムから撤収する意図をも表明しています。しかるに、北ヴィエトナム側においては、全然歩み寄りの誠意なく、軍事行動の成功により、一方的に自己の条件を押しつけうるとの判断に立ち、米軍の即時撤退要求のみに終始しているやにうかがわれることは、極めて遺憾であります。
私は、共産側がかかる態度を改め、無条件話合い開始の提案に対し、歩み寄りの態度をもって臨むならば、不幸な戦禍を速やかに終熄せしめ、ヴィエトナムの平和の実現する契機が生まれてくると信ずるものであります。この意味において、わが国は、何よりもまず、すべての紛争当事者が話合いによって、問題を解決する態度にふみ切り、早急に話合いに入ることによって、平和的解決をはかるよう、強く要請いたします。同時に、この目的実現のため、全国際連合加盟国が援助と協力を行なうよう呼びかけるものであります。
今日、ヴィエトナム紛争の平和的解決を求める声は、世界に充ち満ちております。わが代表団は、今次総会が、ヴィエトナム紛争解決のため、国際連合加盟国が新たな努力に着手する機縁となることを強く願うと同時に、そのためできる限りの協力を惜しまないことをここに強く表明いたします。
七、議長、最近カシミール問題をめぐって、いずれもわが国の友好国であるインド、パキスタン両国の間に大規模な武力衝突が勃発したことは、誠に遺憾なことでありました。わが国といたしましても、アジアの一国として、この事態を深く心痛し、佐藤総理大臣より、両国首脳にあてて、すみやかに停戦をもたらされるよう強く訴えた次第であります。
幸いにして、両国首脳は、安全保障理事会の決議に結集された世界の世論に耳を傾けられて、賢明にして、かつ勇気ある政治的決断をもって、停戦の訴えに応じられました。
私は、両国首脳に対してのみならず、ここに至るまでの安全保障理事会および事務総長のたゆまざる献身的努力に対して、深甚の敬意を表するとともに、このような努力と成果が、世界の平和維持の責任をもつ国際連合の権威と機能を高めるために、大きく寄与したことを高く評価するものであります。
しかしながら、事務総長報告によれば、ここ数日来再び現地情勢に不安のきざしが見え、いまだ停戦が完全に実施されていないことは、誠に遺憾であります。
この紛争は、長くかつ複雑な経緯を有し、両国の主張には、それぞれ理由がありましょうが、私は、両国が勇気と善意をもって、まず停戦を実現し、今般採択された安全保障理事会の諸決議の忠実な履行に協力するとともに、国際連合がこのために尽してきた従来の努力を正当に評価して、国際連合とともに本問題の最終的な平和的解決に努力されることを強く訴えるものであります。同時に、私は、この際、他のすべての諸国は、現在の機微な状況に留意し、いやしくも事態の悪化をもたらすがごとき行動は、厳に慎しむべきであると痛感するものであります。
八、議長、インドネシアとマレイシアの紛争も依然として平和的解決の気運に立ち至っておらず、また、本年初頭インドネシアの国際連合脱退をみるに至りましたことは遺憾であります。わが国は、いずれもわが国の友好国である両国間の紛争を平和的に解決するため、累次、側面的にできる限りの協力を行なってまいりましたが、今後、関係諸国の平和的解決への努力がたゆまず続けられることを期待するとともに、わが国としても、本問題の公正、妥当な解決のために努力を惜しまない所存であります。
九、議長、昨年の総会においても私が指摘いたしましたごとく、アジア情勢のなかで、中国問題が極めて重要な地位を占めることは、あらためて多言を要しません。わが国は、中国と地理的、歴史的、文化的に極めて密接な関係をもっており、中国問題の帰趨に重大な関心をもたざるを得ない立場にあります。
わが国が従来、この問題の審議は、関連するすべての要素の現実的かつ均衡のとれた評価の上に立って、慎重に行なう必要があると主張してきたのも、中国問題が困難かつ複雑な性格を有し、アジアの平和に重大な関係をもつものと信ずるがためであります。中国代表権問題は、中国問題の本質に関係する重要問題でありますので、今次総会はこの問題の審議に当って引続き慎重な態度をとることが必要であると、私は考えます。
一〇、議長、世界に安定した平和と繁栄をもたらすためには、低開発国経済の停滞を克服し、その開発を促進することが、不可欠の要件であります。いわゆる南北問題の解決は、今日世界平和の観点からみましても重要な課題であります。
国際連合は、六〇年代を「国際連合開発の一〇年」と名付け、世界的規模におけるこの問題の解決に、全加盟国が協力することを決定し、すでに、工業開発、国際貿易等の分野において、種々の施策を実行していることは慶賀にたえません。とくに、昨年の総会の決定に基づき設けられた国際連合貿易開発会議の諸機構が、すでに着実な歩みを開始したことは、南北問題の解決に曙光をもたらしつつあるものといえましょう。「国際連合開発の一〇年」の後半を迎えるに際し、国際連合が、今後とも、国際連合傘下の諸機関および加盟国の一致した活動の中心となり、その目的達成のために積極的役割を果すことを期待してやみません。
過去一世紀にわたり、経済開発への多難の途を歩んできたわが国は、低開発国の当面する種々の困難と願望に充分な理解と同情をもつものであります。わが国は、低開発国の輸出の拡大および多様化のために、できる限り協力すると同時に、これらの国に対する援助の充実についても、国際連合貿易開発会議における援助強化の国際的要請を充分勘案し、国民所得の一パーセントを援助目標としつつ、一層の拡充を図り、もって、南北問題の解決のために建設的な役割を果したい考えであります。
私は、アジアにおける国際連合アジア極東経済委員会の従来の業績を高く評価するものでありますが、わが国は、同委員会が推進しているアジア開発銀行設立計画には、当初より積極的に協力してきており、この銀行に二億ドルの出資を行なう予定であります。わが国は、アジアの一国として、この銀行が速やかに活動を開始し、アジア地域の経済協力の推進に貢献する日の早からんことを心から希望する次第であります。
一一、議長、次に、世界の関心事である軍縮問題について、わが代表団の意見を述べたいと思います。
本年四月、ソ連のイニシアティヴにより、国際連合軍縮委員会が五年振りに開催され、同委員会の勧告に基づき、昨年来休会していた一八カ国軍縮委員会が再開されるに至りましたことは、誠に時宜を得たものとして、歓迎するものであります。
国際連合軍縮委員会で指摘されましたとおり、今や核実験全面禁止の実現と核兵器拡散防止の実施は、世界にとり焦眉の急を要する問題となっています。このときに当り、中共が本年五月核兵器開発のための第二回核爆発実験を行ないましたことは、誠に遺憾にたえません。中共は、この実験は世界平和を守る上で収めた一つの大きな成果であると述べておりますが、私は、世界が全面的核実験禁止および核兵器拡散防止のために真剣な努力を行なっているさなかに行なわれたかかる実験は、決して世界の平和と安全の確保に貢献するものではないと考えます。私は、中共およびフランスが世界の要望に応え、部分的核兵器実験禁止条約に速やかに参加することを熱望します。
核実験禁止と核兵器拡散防止は、ともに核能力を制限する意味において共通点をもっています。非核保有国が新たに核兵器の開発を行なうに際し、核実験を必要とする点を考慮するとき、核実験禁止は核兵器拡散防止の有効な手段であるといえましよう。
現在、全面的核実験禁止条約妥結の障害となっている地下核実験に関する査察および検証につきましては、技術的進歩により、査察の回数を極度に縮小することが可能となったといわれておりますが、関係国が速やかにその見解を調整し、この条約が一日も早く締結されることを希望します。なお、私は、地下核実験の探知および査察の方法につき、核保有国のみならず、地震研究等の進んでいる非核保有国が共に協議、研究することが望ましいと考えます。わが国も、この面においてできる限り協力したいと思います。
核兵器拡散防止問題につきましては、一八カ国軍縮委員会において核兵器拡散防止条約の米国案および貴議長の発意による期限付核兵器非保有宣言に関するイタリア案が提出されるに至りましたことは、この問題の解決の緒をつくったものとして、関係国の努力を高く評価するものであります。
ただ、核兵器の拡散防止措置については、各国の安全保障について充分な配慮が払われるべきであり、また、核保有国および非核保有国の双方がいずれも犠牲を払うとの立場から検討されなければならないと考えます。なお、この問題については、核兵器製造能力を有する非核保有国の自覚と自粛が要望される次第でありますが、私は、これと同時に、これらの国の発言権は尊重されなければならないと思います。また、われわれは、核保有国および核兵器製造能力を有する非核保有国がすべてこの問題について締結される取極に参加するようあらゆる努力を行なうべきであると考えます。
なお、今般国際原子力機関は、東京において総会を開催いたしましたが、わが国は、法律をもって、原子力の研究開発は平和目的のためにのみこれを行なうとの基本方針を確立しており、この立場から、同機関の保障措置制度に積極的な協力を行なっています。私は、この種の国際保障措置が広く各国によって受け入れられることを強く希望いたします。
また、今次総会の議題となっております世界軍縮会議開催問題につきましては、わが代表団は、この会議の開催に原則的に賛成いたします。この会議が実質的成果を収めるためには、参加国の範囲、開催の時期、優先的に審議すべき議題を決定するなど慎重な検討と準備を要すると考えられますので、私は、今次総会がこれら諸点につき充分な審議を行なうよう希望いたします。
一二、議長、以上私は、国際連合の平和維持活動、アジア情勢、南北問題、軍縮問題等、現在国際連合が直面している重要問題について、わが代表団の基本的立場ならびに希望を申し述べました。
多極化の傾向のみられる今日の世界情勢のなかにあって、国際連合こそ世界を一つに結び付ける有効な組織であると確信いたします。人間による月世界旅行ももはや夢でない今日、われわれは国籍、人種、言語、宗教の差別を超越して、一体となって、全人類の平和のため、またその繁栄と福祉のために努力すべきであると考えます。現在の国際連合が、国際連合憲章の掲げる人類の理想を十二分に実現するための有効な機構となるためには、今後なお幾多の試練を経なければならないでありましょう。しかし、この国際連合を護り、これを理想通りの機構として育て上げる責任は、各加盟国にあります。各加盟国は、国際連合の強化のため、今後益々協力し努力することが緊要であります。
議長、私は、今回の総会が、貴議長の指導のもとに、多大の成果を収め、国際連合の権威を高めるとともに、世界の平和と安全と繁栄のために貢献しうることを切に希望するものであります。わが代表団としても、そのために、あらゆる努力と協力を惜しまないことをここに誓うものであります。