わが国の中南米移住の動向
開発途上にある中南米諸国への移住は、米国、カナダ等の先進国への移住と異なり、その定着発展のためには、日本側による補完的援助の必要なことは当然であり、このために、海外移住事業国が国の内外を一貫し各種の援助措置を講じている。この意味で、これまで貸付制度で運用されていた渡航費を昭和四一年度から全額支給に切換えることに決定をみたことは、それだけ移住者の負担を軽減し、定着当初の資金的余裕を生み出すことによって、早期発展をより容易ならしめる点で劃期的な事項と言えよう。
また、現地においては、移住者に対する営農指導にとどまらず、生産物の市場性の拡大という事業にまで取組むことの必要性がかねてから痛感されていたが、その意味でパラグァイの油桐搾油工場の建設に予算措置が講ぜられ、生産物の販路拡大のための具体的方針が打ち出されたことは注目に値する。
さらに、パラグァイの海外移住事業団直営イグアス移住地内に牧畜を主体として、東北六県による集団移住地の建設計画が進められ、このために同移住地に畜産センターの設置が決まったことも新らしい移住型態として特記される。
このように、中南米移住には、政府援助が重要な役割を演じているが、それが移住者個人個人の発展のために必要な措置であると同時に、受入国の開発の一助としても大いに役立っていることは見逃し得ないことである。
なお、中南米諸国への移住者数は、昭和四〇年度一、一四八名であるが、このうち政府資金による渡航費の貸付を受けたものは八一八名で、その内訳は別表の通りである。