米国移住の登場とカナダ移住の進展

 

1 米国移住の登場

ジョンソン大統領が一九六五年一月議会に特別教書を送り、その早急な審議を要請した移民国籍法改正法案は、九月三〇日両院で可決され、一〇月三日大統領が署名し、一二月一日から施行された。

改正法の狙いは、先に触れたように、人種差別の現われとして内外の非難を浴びた旧法の国別割当制を廃止し、これに代え、人道主義に基づき米国市民および米国永住者と血縁関係にある移住希望者の家族結合を容易にし、更に、自国の経済繁栄に寄与する技術、技能者を各国から平等に受入れ、もって自国の発展ならびに各国との友好関係を増進せしめることにある。

その骨子は、

(1) 一九六八年六月三〇日をもって、従来の出身国別割当制度を廃止し、東半球諸国からの年間受入れ数を一七万名とする。

(2) 特定の一国からの年間移住者総数は二万名を越えないものとする

(3) 技術、技能関係者に対しては年間三万四、〇〇〇名を割当て、有資格者であれば各国より平等に受入れることとする

(4) 法律施行後、技能及び血縁関係を基準とした新優先順位および割当比率を適用する。

などである。

右改正に伴い、在京米国大使館は、旧法に基づく待機者を新優先順位に再格付する作業を完了し、新事態に対処すべき実務体制を着々と整えている。

現在わが国に対する年間割当は一八五名に過ぎぬが、新制度移行までの過渡期間は、割当数以上に移住希望者を有する国に対し未使用割当を配布することとなっているので、新制度移行を待たず、わが国の科学者、技術者等の高度マンパワーと呼ばれる者の米国移住がかなり増加するものと予想される。

なお、在京米国大使館の調べによれば、一九六五年一一月一六日現在、改正法により優先資格を与えられた日本国内からの米国移住申請者は次のとおりである。

第一優先(米国市民の未婚の子女)        一五

第二優先(永住権を有する外国人の配偶者)    八九

第三優先(技能専門家)            一〇七

第四優先(米国市民の既婚の子女)        四二

第五優先(米国市民の兄弟姉妹)        三六四

第六優先(熟練および低熟練労働者)        七

第七優先(難民)                 〇

             計   六二四

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2 カナダ移住の進展

一九六四年に移民大臣が来日し、新らしい移住者受入れ政策に対し特にわが国の協力を仰ぎたい旨を要望したが、更に一九六五年六月にカナダはメイラス移民担当官を東京に派遣した。同移民官は、わが方関係機関と接触しつつ、日本の海外移住事情を中心に諸般の情勢を調査し、本国政府に対し移民官事務所の早期設置を進言した。その後ヤレムコ・オンタリオ州移民大臣はじめ中央政府関係者が訪日し、わが方と移住問題につき意見の交換を行なった。移民官事務所については、一九六五年秋のカナダの総選挙、一九六六年一月のピアソン内閣改造等により、その設置決定が遅れていたが、三月九日カナダ政府は正式に東京移民官事務所の設置を決定した旨発表した。

現在カナダ側において需要ある職種は、雇用の場合約五〇〇種、自営業約一二〇種という広汎なものであり、かつ、カナダ側による移住者定着のためのあっせん援助も行届いており、カナダの高水準の生活という魅力と相俟ち、わが国内の関心は高まりつつある。しかし、移住者の選考は、現在すべて本国において書類審査を行なうため、期間もかなりかかるところから、一九六五年は移住者数も少なかったが、移民官事務所が設置されれば、その手続も迅速となるので、今後のカナダ移住は着実に伸びるものと期待される。

なお、戦後のカナダへの移住者数は次のとおりである。

年度(歴年)      実績数

一九四六~一九五五    二六七

一九五六~一九六一    二五六

一九六二         一四一

一九六三         一七一

一九六四         一四〇

一九六五         一八八

総 計       一、八五四

国別、業種別、渡航費貸付移住者送出数

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