六 海外移住の現状と邦人の海外渡航

 

 

海外移住をめぐる国際情勢

昭和四〇年度において、海外移住の観点からみた国際情勢のうち、第一に特筆すべき事項は、米国が移民国籍法を改正し、従来の国別割当制を廃止して、米国市民と移住希望者との血縁関係及び移住希望者自身の能力と技術を受入れの基準とする新らしい政策を打ち出したことである。

第二には、伝統的な白豪主義をかかげるオーストラリアと、同じくアジア人の受入れを制限していた南米のヴェネズェラにおいて、移住者受入れ政策についての人種観念の後退と、これに代る能力主義の胎頭が見られることである。

一九六二年二月、カナダが移民法の規則を改正して、国籍の如何を問わず、技術と能力を備えた有為の人材を世界各国から求めるという政策を採用したのに続いて、ブラジルも、一九六四年一月、以降の外務省の諸回章で、自国の開発計画に則った計画移住者又は技術と資本を持った移住者を受入れること明らかにしてきた。要するに、これら一連の現象は能力と技術を有し、自国に貢献することが期待されるもののみを受入れようとするいわゆる撰択主義の現われであって、このような考え方が世界的な傾向になってきたことが注目されるのである。このような政策の背景には、開発途上にある諸国の場合は、自国の発展を計るために資本と並んで、開発主体となりうるようなマンパワーに対する要求があり、先進国の場合も、そのダイナミックな発展を維持するために絶えず不足してくる人的資源確保の必要性が存在しているのである。

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