経済に関する諸国際機関との関係

 

OECD(経済協力開発機構)との関係

 

1 0ECD各関係機構への参加状況

わが国のOECD加盟後第二年目に当る一九六五年度においては、わが国は一九六五年一二月に執行委員会の常任メンバーに選出されたほか、一九六六年二月には欧州原子力機関(ENEA)の共同プロジェクトである核データ編集センター及び計算機プログラム・ライブラリーへの参加が決定した。

目次へ

2 0ECD諸活動への参加状況

(1) 主要会議参加状況

(イ) 理事会関係

(i) 閣僚理事会

OECD第五回閣僚理事会は、一九六五年一一月二五、二六日に開催された。わが国からは三木通産大臣が出席し、その他クーヴ・ド・ミュルビル外相およびジスカール・デスタン蔵相(仏)、ジェイ商務相(英)、マン国務次官(米)等が一堂に会した。

会議の議題は、「加盟国の経済成長と安定」および「低開発国との貿易」に絞られ、前者については、英米仏伊およびわが国等の一般発言が行なわれ、後者については、特恵問題を中心に活発な討議が行なわれ、全討議終了ののちコミュニケが採択された。

(ii) 理事会

一九六五年度においては、造船業の現状改善策、輸出信用に関する政策の調整、工業委員会及びエネルギー委員会の付記条項その他の重要問題に関し、検討がなされ、多くの決定、勧告及び報告書が採択された。わが方からは森代表以下が常時出席し、積極的発言を行なった。

(iii) 理事会直属の作業部会

(a) 造船特別部会

一九六五年五月、造船特別部会が設けられ世界的に不況下にある造船業の現状改善策を検討し、その結果をとりまとめたリポートを同年七月末理事会に提出した。

(b) 特恵問題研究グループ

一九六五年一一月の閣僚理事会において低開発国との貿易上最も重要な問題の一である特恵問題の研究のため、スモール・グループの設立が決定され、一九六六年に入って三月までに二回の会合が開かれた。

(iv) 執行委員会

一九六五年一二月一四日の理事会において、わが国は執行委員会の常任メンバーとなることが了承され、一九六六年一月の会議より、森代表以下が常時出席(従来はオブザーバーとして出席)し、討議に積極的に参加した。

(ロ) 経済政策、加盟国経済の年次審査関係

(i) 経済政策委員会

経済政策委員会は、一九六五年七月、一一月及び一九六六年三月の三回開催され、主要議題は米、英、独、仏、伊、日本など主要加盟国の経済情勢の検討であった。なお、一一月の委員会で在OECDコーヘン英国常駐代表が議長に選出された。わが国からは、上記会議のすべてに関係省係官が出席した。

(ii) 経済政策委員会作業部会

経済政策委員会作業部会の活動状況は、第二作業部会が一〇月と三月の二回開かれ、OECD諸国の一九六一年-一九七〇年間五〇%成長問題の中間検討を行ない、第三作業部会は、一、二カ月に一回の割で開催、主要加盟国の国際収支情勢及び国際収支調整過程についての詳細な検討を行なった。第四作業部会は、一一月に一回開催、各国の賃金、物価の動向及び一部の国の所得政策の実施状況の検討を行なった。わが方は上記のすべての会議に関係省係官又はOECD代表部担当官が出席した。

(iii) 経済及び開発の検討に関する委員会

本委員会は、加盟各国の経済の年次審査を行なっており、一九六五年一一月にわが国の審査が行なわれたほか、一九六六年三月にはわが国はイタリヤ経済の年次審査の審査国をつとめた。

(ハ) 貿易、貿易外取引関係

(i) 貿易委員会

貿易委員会は一九六五年六月、一〇月および一九六六年三月の三回開催されたほか、多くの作業部会と特別グループの会合が行なわれた。

本委員会の主たる活動は、低開発国貿易問題、加盟諸国の行政的技術的な輸入制限の除去、及び輸出信用に関する政策調整のための意見交換であった。

低開発国との貿易関係については、国連貿易開発会議(UNCTAD)貿易開発理事会の結果について意見を交換し、西側の歩調を揃える上に有効であった。UNCTADの原則問題およびその将来の活動については特別グループを設けて検討している。

加盟国間の貿易問題としては、行政的技術的輸入制限除去のために、輸入手続及び政府調達とその国際貿易に及ぼす影響の検討が行なわれた他、アイルランドの輸入課徴金、トルコ産葉たばこの輸出減少等の諸問題が討議された。

輸出信用問題については、特別の作業部会を三回にわたり開催し、信用及び信用保証の供与に関する加盟国間の過当競争防止のための方策を検討した。

わが国は、貿易委員会及びその作業部会の主要会議には関係各省の係官を派遣し、討議に積極的に参加した。

(ii) 貿易外取引委員会、支払委員会

(a) 貿易外取引委員会

貿易外取引委員会は一、二カ月に一回の割で九回開催された。討議案件は、主として経常的貿易外取引及び資本移動に関する二つの自由化規約に関連した問題であるが、特に保険自由化に関する新規規程の挿入、資本移動自由化規約留保国に対する定期審査等が注目された。なお、一九六四年末理事会から委託された資本市場の機能改善に関する検討について、一九六五年五月に専門家グループ(わが国も参加)が設置され、目下研究が進められている(同グループの報告書は一九六六年七月頃委員会に提出される予定)わが国は本委員会の正式メンバーではないが、関心のある問題の検討には随時オブザーバーとして参加した。

(b) 支払委員会

本委員会は、貿易外取引委員会で討議された事項について全加盟国参加の下にコメントを加えるもので、六回開かれているが、わが国はそのいずれにも参加した。

(iii) 財政委員会、保険委員会

(a) 財政委員会

本委員会は、一九六五年五月、九月-一〇月、及び一一月-一二月の三回にわたり開かれ、遺産及び相続税モデル条約案の検討並びに税制に関する意見の交換を行なったが、わが国はそのすべてに参加した。

(b) 保険委員会

保険委員会は一九六五年四月、九月及び一九六六年一月の三回開かれ、主として「経常的貿易外取引の自由化に関する規約」に新たに保険取引の自由化の規定を挿入する問題について検討した。わが国は上記会議のすべてに参加した。

(iv) 制限的商慣行に関する専門家委員会

本委員会は、一九六五年五月および一一月の二回開催され、各作業部会で、制限的商慣行が国際貿易に及ぼす悪影響に関する予備報告を審議し、OECDの枠内での協力の可能性を討議した。前記一一月の会議には、わが国から佐久間公正取引委員が出席した。

(v) 海運委員会

海運委員会では、主として、UNCTADをめぐる海運問題、中南米諸国等に顕著に見られる自国船優先主義がとり上げられた。わが国は、先進海運国側の有力メンバーであり、かつ、対低開発国貿易の比重が高いという特殊な立場にあるため、UNCTAD関係の問題には関心が深く、本会議のみならず関係作業部会等にも専門家を派遣して、積極的な活動を行なった。

(vi) 観光委員会

観光委員会は、かねてより国際観光振興の見地から通関上の便宜供与と出入国手続きの簡素化について検討してきたが、一九六五年四月の会議においてその案をまとめ理事会に提出した。本案には、従前からの同種の決定及び勧告のみならず、一九六三年のローマにおける観光に関する国連会議勧告の内容も盛込まれており、観光客の携行品についての免税措置及び旅券、査証制度等に関す制限緩和などの点でかなりの前進が見られる。本案は、七月の理事会で採択され、決定及び勧告の二本立てで公布された。わが国は、わが国の特殊事情を説明しつつ、本案の採択に協力した。

(ニ) 工業・エネルギー関係

(i) 工業委員会

本委員会は、工業一般に関する諸問題を討議対象としているが、その下部機構たる鉄鋼、非鉄、木材、紙・パルプ、繊維、化学製品、機械、皮革、セメントの九つの特別委員会は、OEEC時代の体制をそのままOECDに受け継いだものであり、その存続期限が一九六五年七月二四日となっていた。かねてより、これら特別委員会を更に存続せしめるか否かにつき、加盟国間に鋭い意見の対立があったが、一九六五年七月二四日の理事会における審議の結果、存続すべき特別委員会は、鉄鋼、繊維、化学製品、機械、紙・パルプの五つとし存続期限は一応五年、同期限満了の時期に存続問題をあらためて検討することになった。

改組前には、わが国は、一九六五年四月の鉄鋼、機械の両特別委員会、五月の非鉄金属、木材、紙・パルプの各特別委員会、七月のセメント、皮革、化学製品の各特別委員会に夫々参加した。改組後は、一九六五年九月に鉄鋼特別委員会、一二月に紙・パルプ特別委員会ならびに一九六六年三月に化学製品、繊維、機械の各特別委員会および工業委員会本会議が開催されたが、わが国はそのいずれにも積極的に参加した。

(ii) エネルギー委員会

本委員会関係では、わが国は一九六五年六月と一九六六年一月の本会議に出席したが、六月の第八回本会議では、本委員会の重要課題の一つである各国エネルギー総合政策のコンフロンテーシヨンの一環として、対日コンフロンテーシヨンが行なわれた。また、エネルギー委員会傘下の特別委員会のうち、石炭、電力、ガスの三特別委員会が一九六五年七月二四日をもって廃止された結果、石油特別委員会だけが存続することになった。

(ホ) 農業水産関係

(i) 農業委員会

OECDの農業関係の活動は、四つの作業部会および各種専門家会議を統轄する農業委員会により行なわれている。

農業委員会は、一九六五年四月、六月、一〇月、一九六六年一月、二月と計五回開催されたが、わが国はそのいずれにも積極的に参加した。一九六五年六月の農業大臣会議においては、「農業所得と農産物供給の相互関係」および「農業と経済成長」の両報告書が主要議題として取り上げられたが、本会議にはわが方より斉藤農林次官他が出席した。

(ii) 水産委員会

水産委員会は、一九六五年五月に第一二回会議、同一〇月に第一三回会議、そして一九六六年三月に第一四回会議を開催したが、わが国はそのいずれにも参加した。

(ヘ) 科学関係

(i) 科学閣僚会議

第二回科学閣僚会議が一九六六年一月に開催され、中間委員会が二年間にわたる検討の末準備した資料をもとに、技術革新に果す政府の役割及び科学研究に対する資源の配分などの問題を中心として科学政策についての経験と意見の交換を行なった。わが国からは科学技術庁黒沢審議官が出席した。

(ii) 科学研究委員会、科学者技術者委員会

これらの委員会はそれぞれ年に二乃至三回程度開催され、技術革新、教育投資などの実際的な問題をとり上げ、その現状及び今後の活動の進め方などについて検討を行なっているが、わが国は、高い科学的水準を保持しておること及びこれらの諸事項は経済成長にいずれも大きな役割を果たすものであること等に鑑み、専門家を派遣するなどして積極的に活動に参加した。

(iii) ENEA

わが国は一九六五年二月にこの機関に準加盟したのであるが、国内における原子力開発の進展に伴なってその協力関係は益々深まった。一九六六年二月には、ENEAの幾つかある共同プロジェクトのうち、核データ編集センター及び計算機プログラム・ライブラリーへの参加が決定した。

(ト) 労働関係

労働力社会問題委員会は、労働力不足対策及び関連問題の処理に積極的に取り組み、きめ細かい活動を行なっており、特に経済成長を促進する手段としての積極的労働力政策を如何に行なうかに重点を置いた討議を昨年に引続き進めて来た。

わが国は、一九六五年四月、同年九月及び一九六六年二月の三回の本委員会会議に参加した。

(チ) 開発援助関係

OECDの開発援助関係の事業へのわが国の参劃については、「四、わが国の経済協力の現状と問題点」をあわせて参照いただきたいが、わが国は、OECD加盟前の一九六一年九月以来開発援助委員会(DAC)のメンバーとして、発足当初からその活動に積極的に参加してきており、また、OECD加盟以後一九六二年一一月OECD開発センターの活動に参加した。

(i) 開発援助委員会(DAC)

わが国は、経済協力の実施にあたって、援助供与国の間の政策の調整が重要であると考えており、とくに、一九六四年に開催された国連貿易開発会議以降その必要がとくに大きくなったと認識している。DACは、同様の考え方にもとづき、一九六四年秋以降、資金援助重要作業部会、資金援助問題作業部会、国連貿易開発会議問題作業部会を設置し、国連貿易開発会議で提起された諸問題の検討、実施ぶりについての意見の交換、政策の調整などを中心にその活動を行なっている。

一九六五年のDACの活動で特筆すべきことは、七月に開催された上級会議において

「開発努力、援助努力勧告」および「援助条件勧告」が採択されたことである。前者は、国連貿易開発会議が勧告した国連所得の一パーセントという援助努力目標を達成するよう努力することを確認するとともに、可能ならばそれ以上の努力を行ない、また、援助をできる限り開発途上国の開発努力に結びつけることを加盟国に勧告するものである。後者は、国連貿易開発会議においても、開発途上国の側の強い要請が出された援助条件緩和の問題について、DAC加盟国は政府援助の八割を贈与もしくは返済期間二五年以上、金利三%以下のソフト・ローンをもって供与することに努力し、三年以内にその目標を達成することを加盟国に勧告するものである。一九六五年の上級会議は、両勧告の持つ政治的重要性から、わが国の椎名外務大臣、英国のカースル海外開発大臣、ドイツのシェール経済協力大臣、フランスのジスカール・デスタン大蔵大臣、オランダのポット援助担当大臣、米国のベルAID長官など、援助問題担当の最高責任者が出席した。

(ii) 開発センター

OECD開発センターは、一九六二年一〇月、先進国が有する経済開発に関する知識と経験を開発途上の国の利用に供することを目的として設立され、一九六四年ごろよりとくに活発にその活動を開始している。センターの一九六五年における活動は、ラ米諸国(エクアドル、ペルー、チリ)中近東(イラン)諸国における巡回セミナーの開催のほか、工業生産性問題に関する国際会議の開催等、かなり拡大され、また一九六四年より始められた開発途上国からの質問に対する回答サービス活動も本格的となった。

目次へ

(2) 自由化規約に関する問題

(イ) 経常的貿易外取引の自由化に関する規約

わが国の関係では次の二点に変更があった。一つは観光渡航(規約項目G/1)に関するわが国の留保について、従来の「一人年間一回五〇〇計算単位以上の外貨持出を制限する」としていたものを、「一人一回五〇〇計算単位以上の・・・・」として留保範囲を縮小したこと、もう一つはわが国のOECD加入の際の了解覚書きのラインに従い一九六五年一一月石油及び石油製品のタンカー輸送に関する二年間の自由化過渡期間を終了することを決定した。

(ロ) 資本移動の自由化に関する規約

一九六六年二月と三月の二回に亘り、貿易外取引委員会において、すべての規約留保国について定期審査が実施された。

目次へ

(3) 主要な対日コンフロンテーション

(イ) 通商政策に関するコンフロンテーシヨン

わが国の通商政策に関するコンフロンテーシヨンは、貿易委員会によって一九六六年三月二三、二四および二五日に行なわれ、他の加盟各国よりわが国の通商政策について質問が行なわれたと同時に、他方わが国としても各国の対日通商政策について特に対日差別輸入制限に重点を置いて種々の問題点を提起した。

(ロ) 対日年次経済審査

経済及び開発検討に関する委員会による一九六五-六六年度の日本経済の年次審査は、昨年度と同様、英国及びフランスを審査国として、一九六五年一一月二日に行なわれ、わが方より経済企画庁中野次官以下の代表が出席した。今回の審査においては、日本経済が現在経験しつつある景気後退の特色とそれに対する経済政策の分析に焦点がしぼられた。審査の結果を取り入れたOECD事務局のリポートは一九六五年一二月末に公表された。

(ハ) 対日農業コンフロンテーション

農業委員会第一作業部会は、一九六五年度の作業計画の一環として、加盟国別に農業政策のレビューおよびコンフロンテーションを行なって来たが、わが国農業政策に関するコンフロンテーションは一九六五年一二月七日及び八日に行なわれた。わが国は、日本農業の主要な問題点として、(イ)急速な農業労働力の流出と農業総生産の停滞傾向、(ロ)経営規模拡大の遅れと兼業化の進行の二点を特に強調した。

(ニ) 資本移動の自由化に関する審査

資本移動の自由化に関する対日審査は、一九六六年二月二三及び二四日貿易外取引委員会において行なわれた。わが方からは大蔵省村井財務調査官他が出席し、国際収支及び産業政策上の理由を挙げて、早急な自由化が困難なることを説明した。

(ホ) 資本取引の規制に関する実情調査

一九六五年一〇月事務局ハネマン次長補、シユレペグレル資本移動課長の二人が来日し、わが国の資本取引規制の実情に関し詳細な調査を行なった。これは、貿易外取引委員会が加盟国の自由化審査を行なう際の資料を提供する目的で、各加盟国について順次行なわれてきたものである。上記実情調査の結果をとりまとめた報告書は未だ完成していない。

(ヘ) 科学政策に関するコンフロンテーシヨン

わが国の科学政策についてのコンフロンテーシヨンが一九六六年六月乃至九月に予定されているため、その準備として、一九六五年二月にOECDより調査員が来日し、下調べを行なっていたが、同年一〇月には、三名のエグザミナーが来日し、関係省庁との懇談を行なった。

目次へ

(4) その他の協力関係

(イ) セミナーへの参加

労働力社会問題委員会、工業および科学関係の諸委員会等主催の各種セミナーには前年に引続き政府、民間の関係者が積極的に参加した。

(ロ) 広報担当官会議

一九六五年一一月、OECDの広報担当官会議が開催され、わが方からも係官が出席した。

(ハ) 分担金の支払

一九六五年(暦年)におけるわが国の分担金は、第一部予算(一般経費)関係は六、〇七九、五二一フラン(四四三、三一九、〇〇〇円)、第二部予算関係でわが国が参加している開発センター経費に対する分担額は三〇五、一〇五フラン(二二、二四九、〇〇〇円)であった。

目次へ

ガット(関税及び貿易に関する一般協定)との関係

 

1 ケネディ・ラウンド交渉

(1) 背  景

ケネディ・ラウンドは、その名の示すとおり、故ケネディ大統領が六二年通商拡大法の成立を契機に、ガットの場を通じて一律大幅の関税引下げを提唱したことにはじまる。

その背景には、二国間のかけひきに限定された従来の交渉方式が行き詰まり、また戦後久しく各国が用いてきた輸入制限の自由化がほぼ完成に近づくにつれ、関税面でも大幅な自由化の必要が痛感されるに至った事情がある。が、さらに重要なことは、EECやEFTA、LAFTA等に代表される世界経済ブロック化の動きが近年とくに目立ち、ガットの標榜するグローバル自由化の原則が脅かされつつある現況に対して、米、英など主要国の間に深い反省があったことは、とくに注目さるべきである。

わが国を含め世界の主要貿易国が一致してこの構想を支持し、熱心に交渉を推進してきたのもこのためであった。ただ、経済統合の過渡期にあるEECが、その域内統合の遅れにより、ケネディ・ラウンドの進行テンポを下げる要因となったことは否めない。にも拘らず、この一年間に幾つかの貴重な前進がみられたことは、(3)以下に示すとおりである。

(2) ケネディ・ラウンドの原則

交渉の基本原則は、六三年五月及び六四年五月のガット大臣会議で決定された。鉱工業品については、原則として全ての関税率を五年間に五〇%引下げることとし、これに対する例外は、重大な国家利益にかかわる最小限の品目に限るとされ、さらに関税以外の貿易障害についてもその軽減・撤廃を交渉することになっている。他方、農産物の分野では、輸入増大をもたらすような条件をつくり出すことが交渉の目的とされているだけで、工業品の場合のような画一的な交渉規則はできなかったが、農産物の中で穀物、肉、酪農品については、右の目的実現のための方法として、世界商品協定を結ぶことが一応合意されている。なお、低開発国はケネディ・ラウンドに参加しても相互主義(等価値の代償提供)を要求されないことが認められ、先進国は低開発国の輸出に対する障害の除去にあらゆる努力を払うことになった。

(3) 鉱工業品の交渉

鉱工業品の関税交渉は、六四年一一月にわが国をはじめ米、EEC、英、EFTA諸国など主要先進一〇カ国が「例外品目リスト」を交換して開始され、同年一二月及び六五年一~二月にかけて、右各国の例外リストについて多国間審査が行なわれた。

つづいて、六五年五、六月頃から、右一〇カ国のほかカナダ、豪、ニュー・ジーランド等も加えて、予備的な二国間交渉に入り、わが国も六五年末までに、米、EEC、英との予備交渉を一応終了したほか、カナダ、ニュー・ジーランド、スウェーデン、デンマーク、ノールウェー、チェコ等の諸国とも数次の交渉を重ねてきた。

右二国間交渉と併行して、特定の商品部門では多数国間交渉のアプローチをとることになっている。即ち、特定の品目ないし商品部門について二国間交渉だけでは解決のつかない問題が生じ、かつそれを放置することがケネディ・ラウンドの成果を著しく減殺するような場合には、その問題に関係する国の間で最大限の関税引下げを実現すべく交渉することになっている。現在は綿製品、鉄鋼、化学品等の部門別にまず問題点の究明と、その多角的な解決策につき検討が進められており、本格交渉は六六年春以降とみられている。

さらに、関税引下げの効果を最大限に確保するために、関税以外の貿易障害についても多角的な交渉が行なわれている。現在までに、関税評価方式(ASPなど)、政府調達政策、内国税、輸入制限などが交渉の対象とされているほか、各国のアンチ・ダンピング政策の運用の調和をはかるため、国際コードの作成が提案され、六五年一〇月から予備的なグループ討議がつづけられている。

(4) 農産物の交渉

農産物うち、穀物については、前記(2)の大臣会議の合意により、世界穀物協定の締結を目標に、六五年五月にわが国のほか米、カナダ、EEC、英、豪、アルゼンチン、スイスの八カ国が、それぞれ具体的な協定案を提出し、穀物グループを設けて討議をつづけている。

穀物以外の農産物については、六五年九月までに各国が品目ごとに関税その他の保護的要素の軽減を内容とする具体的な譲許を提出することとされ、わが国をはじめ米、英、カナダ、豪、ニュー・ジーランド、オーストリア、スウェーデンなど一三カ国は、右「オファー・リスト」(譲許予定品目リスト)を提出した。しかし、主要参加国たるEECは、六五年六月末に農業指導保証基金の問題で閣僚理事会が決裂して以来、フランスがEEC諸機関をボイコットしてEECの活動は事実上凍結状態に入ったため、結局、オファー・リストを提出できなかった。

EECのオファー未提出は、その後の農産物交渉の進展を制約することになったが、それでも各国は、EECが内紛を解決して近々に交渉に復帰することを強く期待して、農産物についても六五年秋から二国間の予備交渉を進めてきた。その後、六六年一月のEEC特別理事会でフランスのEEC復帰が合意され、さらに四月上旬のEEC理事会ではEECの農産物オファーなどケネディ・ラウンド問題が討議される予定であり、交渉全体の見通しは従来よりも明るくなってきている。

(5) 低開発国との交渉

六五年四月にケネディ・ラウンドヘの参加意思を明らかにした低開発国は二三カ国にのぼり、このうち現在までに、ブラジル、インド、インドネシア、チリ、ペルーなど一三カ国が「譲許予定表」を出して交渉に参加しているが、今後さらに参加国がふえるものと考えられる。

わが国も六五年から現在までに、ブラジル、インド、ペルー、セイロン、アラブ連合などの諸国と二国間の予備的な話合いを行なっている。

目次へ

2 低開発国貿易問題

(1) 一九六五年二月ガット特別総会で採択されたガット新章は、一九六六年三月一日現在、わが国初め三八カ国が受諾しているが、まだガット締約国の三分の二が受諾していないので発効していない。

新章を事実上実施する宣言の期間は新章の発効又は一九六五年一二月末日までのいずれか早い日までとなっていたところ、一二月の理事会で右宣言を新章発効又はガット第二四回総会最終日のいずれか早い日まで延長する宣言が採択された。

(2) 新章運営機関として設置された貿易開発委員会は、二月及び三月の会合で同委員会で取り上げるべき問題について検討した上、新章実施報告手続を定め、八つの下部機構を設置してそれぞれの問題を検討するとの報告を、ガット第二二回総会に提出した。右報告は右総会で採択され、各下部機構は直ちに作業に着手した。同委員会は、七月、一二月及び一九六六年三月の会合で新章実施報告及び各下部機構の作業報告を検討し、三月末から四月初めにかけて開催されるガット第二三回総会に報告を提出することとなっている。各下部機構及びその作業状況は次のとおりである。

(イ) 低開発国輸出関心産品検討アド・ホック・グループは、低開発国が輸出関心産品として通告した米、砂糖、植物油、熱帯香辛料、ゴム製品、皮革、合板等三八品目(BTN四桁にして八一品目)について検討し、右品目リストは締約国がガット新章の下での作業を遂行するにあたりガイダンスを与えるものであるという勧告を委員会に提出した。

(ロ) 残存輸入制限作業グループは、低開発国が輸出関心を有する産品の残存輸入制限の撤廃について検討している。わが国は、自由化率九三パーセント強に達していること、低開発国からの輸入が増加していることを指摘しつつ対処しているが、わが国の残存輸入制限品目には低開発国輸出関心産品が多く含まれており、国別討議において低開発国側から制限撤廃について強い要求が出されている。

(ハ) 国際商品問題作業グループは、低開発国が輸出関心を有する一次産品について、価格引上げの妥当性(市場組織化)、貿易障害の軽減撤廃及び合成品との競合問題を検討している。ココア、棉花及び熱帯木材について専門家の報告を検討したが、更に資料を整備して検討することとなっている。

(ニ) 低開発国間貿易拡大アド・ホック・グループは、低開発国間貿易拡大問題の検討にあたっている。主として低開発国間特恵問題を検討しており、全地域を対象とするアラブ連合案と隣接地域国間の経済協力を基礎とする米国案について検討し、低開発国側は一般的無差別特恵を支持している。また、低開発国間貿易拡大に資するため低開発国の貿易拡大のターゲット(実行計画)を作成することとし、各国の輸出関心品目、輸出の潜在力、各国の輸入レベルを示す資料を作成することとなった。

(ホ) 特恵作業グループは、先進国が低開発国に与える特恵について検討することとなっているが、同グループの会合においても、従来の特恵グループにおけると同様、特恵に対する各国の意見が依然対立したままで、結局なんら具体的な討議に入らなかった。

(ヘ) 規定改正アド・ホック・グループは、新章策定の際審議未了となった問題の検討にあたっている。主として、低開発国が国際収支困難の際、輸入課徴金の賦課を認めるようガット一八条を改正すること及び先進国が低開発国の貿易に損害を与えた場合、先進国が低開発国に代償を提供し、または右低開発国は適当な措置を執るために、ガットの義務を免除されるようガット二三条に関する議決を行なうことの二問題が検討されている。

(ト) 貿易・援助専門家グループは、低開発国の開発計画の分析を行ない、計画中の貿易と援助との関係及び輸出産業部門の役割り(市場見通し及び開発の可能性を含む)を検討している。まず、ウガンダ及びナイジェリアの開発計画につき、ウガンダの(i)農産物多様化、(ii)主要農産物及び(iii)加工製品、ナイジェリアの(i)木材及び木材加工産業、(ii)落花生、(iii)パーム生産、(iv)ココア、(v)加工製品及び(vi)低開発国産品の輸出促進について検討した。

(チ) 調整援助措置専門家グループは、先進国が低開発国の貿易を拡大するために執っている産業構造調整措置(被調整産業に対する免税、戻税、特別融資、労働者再教育等)について提出された報告(米国の通商拡大法の調整援助条項、英国の綿業調整、わが国の繊維産業及び中小企業に対する措置等)について検討を行なった。調整援助措置の必要については一応合意されたが、先進国の共同行動として勧告するには至っていない。

(リ) 貿易情報及び助言専門家グループは国際貿易センターの活動について検討する。国際貿易センターは、国際貿易フォーラムを季刊として刊行し、一九六五年一二月には第五号まで刊行した。このうちわが国については、第三号に巡航見本市船(さくら丸)及び第五号に低開発国の輸出市場としての日本が掲載されている。わが国は右専門家グループの第三回会合(一九六六年三月)から正式メンバーとなった。

(3) 豪州は、一九六五年五月一九日新章を受諾するに際し、(i)豪州は開発助長のため引き続き独自の政策に基づき関税を使用する権利を全面的に留保しつつガット新章を受諾する、(ii)低開発国関心産品に特恵を与える旨発表した。

豪州の特恵提案の概要は、(i)一四三の低開発国及び地域から輸入されるポートランド・セメント、石けん、革、新聞紙、ジュート、工作機械等BTN四桁約六〇品目につき特恵税率を与える。ただし、国際競争力のあるものを除き、対象品目でも国際競争力がつき次第撤回する、(ii)豪州産業保護のため、また、既存貿易パターンを攪乱しないため、特恵税率で輸入される数量に制限を設ける、(iii)特恵税率については関係供給国と協議し、また、総会に年次報告を提出し、ウェイバー供与後の事態の発展につき総会が検討する機会を与えるというものである。

本特恵が実施された場合、わが国の対豪輸出にどれほどの影響があるかについては詳細には判明しないが、本特恵対象品目の豪州の総輸入額中に占めるわが国からの輸入額の比率は四パーセントであり、また、この額は豪州のわが国からの総輸入額中二・五パーセントに達しないので、全体としては大した影響はないものと考えられる。ただし、個々の品目についてはポートランド・セメント及び雑繊維製品等若干品目については影響を受けることもありうると考えられる。

ガットにおいては、豪州の対低開発国特恵供与のウェイバー申請に対し、作業部会を設置して問題を検討することとなり、右作業部会は三回(六月、九-一〇月及び一一-一二月)会合を開いて問題を検討した。低開発国側は、必ずしも本特恵に全面的には満足してはいないけれども、これを歓迎するとの態度をとったのに対し、先進国側は、最初まだ特恵の原則問題について充分検討が行なわれていない現在、木特恵が各国の先例となるおそれがあり、本件討議は延期すべしとの態度をとったが、結局ウェイバー案の検討に応じた結果、豪州の受諾できるウェイバー案をとりまとめ、右を付属とし、各国の意見を述べた報告を採択した。右報告は三月のガット理事会で検討されたのち、ガット第二三回総会に提出され、最終決定が行なわれるものと予想される。

目次へ

3 対日ガット三五条援用問題

わが国は、ガット加盟以来、ガットの場において総会その他あらゆる機会をとらえて対日三五条援用の早期撤回を強く要請するとともに、二国間の場を通じても正常なガット関係に入る必要を訴え、その早期実現に努めてきた。この結果、六四年中にフランス(一月)、豪(五月)、ベネルックス三国(一〇月)がそれぞれ対日三五条援用を撤回するに至り、主要貿易国の対日援用問題はおおかた解決をみるに至った。

他方において、新たにガットに加入する新興独立国が、独立時における旧宗主国のガット上の権利義務をそのまま継承してわが国に三五条を援用する傾向が一般化しており、このため対日援用国の数は依然としてかなりの数にのぼっているが、今や援用国の大部分は低開発国であり、本問題は対低開発国関係を中心とする新しい段階に入ったといえる。

わが国としては、なお多数の対日援用国が存在する現状は、ひとり日本だけの問題にとどまらず、ガット自体にとっても好ましくないとの観点から、総会及びケネディ・ラウンドの場において本問題の早期解決を強く要請し、援用を撤回しない国に対しては、ケネディ・ラウンドやガット新章を通ずる自由化、関税引下げの利益に均霑せしめることは困難であるとの立場をくり返し明らかにしてきている。

目次へ

IMF(国際通貨基金)との関係

 

IMFの内外における国際流動性論議は、近年ますます盛んになってきているが、この問題をめぐる一つの具体的現われとして、一九六五年二月二六日、IMF理事会は、一九六四年秋のIMF東京総会におけるクォータ調整に関する決議に基づき、クォータ増額に関する報告書を採択した。この報告書は、二つの決議からなり、第一決議は、加盟国全部につき一律二五%の一般増資を、また、第二決議は、日本を含む一六カ国につき特別増資を提案したもので、この報告書は、直ちに各国総務の投票に付された結果、IMFの決議として正式に決定された。さらに、この決議に基づく増資は、必要な手続きを経て、一九六六年二月二三日効力を生ずることとなった。今回の増資により、IMFのクォータ総額は、従来約一六〇億ドルであったものから約二一〇億ドルに、またわが国のクォータは、五億ドルから七億二、五〇〇万ドルに増額されることとなった。

他方、右の増資措置とは別に、一九六四年八月のパリ・クラブ参加一〇カ国蔵相会議の承認に基づき設立された「準備資産創出に関する研究グループ」は、イタリア銀行国際金融調査局長であるオッソラ氏を議長に、わが国を含むパリ・クラブ一〇カ国ならびにIMF、OECDおよびBIS(国際決済銀行)等から国際金融問題の専門家を集め、準備資産創出に関する各種の提案につき検討していたが、技術的段階における一応の結論に到達したので、一九六五年八月一〇日、右一〇カ国政府は、その報告書を一斉に発表した。議長の名をとってオッソラ報告と呼ばれる右報告書は、現行のIMF体制を前提に、その機能の拡大を通じて準備資産をふやして行こうとする米国の考え方、集合準備単位(CRU)の創設構想を中心とするフランスの提案、英国の相互通貨勘定(MCA)案その他につき、いろいろな角度から技術的検討を加え、それらの問題点を明らかにしているが、右報告書は、国際流動性の今後のあり方につき結論を出しているものではなく、今後のより高い次元における検討のためのより所を与えたものである。

国際流動性をめぐる論議は、右のオツソラ報告の発表により新しい局面に入ったということができるが、一九六五年九月二七日から同一〇月一日までの五日間にわたり、ワシントンにおいて開催された第二〇回IMF総会においても、国際流動性問題は、大きな論議をよび、流動性をめぐる米英対仏の対立が一層明確にされたこととともに、流動性問題の検討を先進一〇カ国に限ろうとする傾向に対し、アウトサイダーの諸国から強い反感が示されたことが、とくに注目された。

また一方、総会と並行して、九月二七日パリ・クラブ参加の先進一〇カ国は蔵相会議を開き、一九六六年一〇月に失効するGAB(IMF資金強化のための一般借入れ取極めで、一九六二年一〇月有効期間四年の予定をもって締結された)の延長問題ならびに国際流動性問題の今後の取扱い方法につき検討を加えたが、その結果、次の通り決定を行なった。

(1) 流動性問題をめぐる英米対仏の対立から、成り行きの注目されていたGABの延長問題については、現在の取極めを一九六六年一〇月からさらに四年間延長すること。ただし、一九六八年一〇月またはそれ以後に、なんらかの調整が必要であるか否かにつきいずれ検討を行なうこと。

(2) 国際流動性問題の今後の取扱い方針については、まず、第一段階として、一〇カ国蔵相代理が国際通貨制度の改善について検討を行ない、その審議結果を一九六六年春に各国蔵相に報告すること。そして、次の段階としては、重要な諸点につき一〇カ国間に合意の基礎固めができたら、世界経済の全体に影響を及ぼす問題についての検討を、さらに広範囲の審議の場に移すこと。また、蔵相代理会議における検討にあたってはIMFと密接な協調を維持すること。

右(2)の決定に基づき一〇カ国の蔵相代理はすでに数回にわたりパリにおいて会合を開催したが、いまだ結論を出すには至っていない。

目次へ

商品問題に関する国際協調の動き

 

1 第三次国際すず(錫)協定

現行の第二次国際すず協定(一九六一年七月一日に発効)は、五カ年の有効期間をもって一九六六年六月末に失効するところ、六五年三月二二日より四月一四日まで国連主催のもとにニューヨーク国連本部で前記第二次協定を更新し第三次国際すず協定を作成するための会議が開かれ成文を得た。

第三次国際すず協定は、六五年末までの署名開放期間(署名開放期間は六五年六月一日より一二月末日まで)に七の生産国政府、一六の消費国政府により署名された。この協定は、各署名政府のため、その憲法上の手続に従って批准、承認、又は受諾され且つ六月末までに右批准書、承認書又は受諾書寄託が所要の条件をみたす場合は同年七月一日より発効することとなっている。

わが国は六五年一二月二三日、消費国として第三次協定に署名し、次いで第五一通常国会に受諾の承認を求める手続を行なった。

この協定の目的は、すずの国際的需給関係を調整することによりすずの国際価格を安定させることにあり、そのため、緩衝在庫の売買操作、加盟生産国による輸出割当などの方法がとられることとなっている。

目次へ

2 国際小麦協定

わが国は「一九六二年の国際小麦協定の有効期間の延長に関する議定書」に対し、六五年四月二一日署名を行なうとともに、同議定書第三条(1)の規定に従って、できる限りすみやかに受諾の手続をとる旨の通告を行なった。議定書は六五年八月一日、所要の条件を満たして発効した。現在加盟国数は四八(輸出国一〇、輸入国三八)である。わが国の受諾について第五一通常国会において承認を求める予定である。

なお、六六年七月三一日議定書失効後の取扱いについては小麦貿易をめぐる国際的環境、とくに穀物問題に関するガットのケネディ・ラウンドの状況が固まっていないので、とりあえずさらに一年間再延長することに合意を見ている。再延長議定書は四月四日から二九日までワシントンで署名のため開放される。

目次へ

3 国際砂糖協定

新国際砂糖協定交渉のための会議が国連事務総長によって招集され、一九六五年九月二一日から一〇月一四日までジュネーブの国連欧州本部で開催された。新協定草案は国際砂糖理事会の準備委員会及び執行委員長の手によって作成された。その内容は従来の輸出割当を主とするものと異なり、価格帯内での一定数量の買付保証、輸入国をも対象とする生産調整、低開発国の優遇などを規定している。これらは砂糖の過剰生産による価格の低迷振りやこれに対する国連貿易開発会議における低開発国の要望を勘案したものである。会議には八〇カ国(オブザーバー一三を含む)の代表が参加したが、右のように極めて新しい概念に基づく規定内容について多くの異論が唱えられ、協定作成が成功する目途がつかないため、一〇月一四日いつたん散会した。会議の最終決議によれば、六六年春又は成功の可能性がある際に会議を再開することとしている。

なお、六五年一二月三一日に失効する砂糖協定延長議定書についてはさらにこれを一年間延長することとなり、六六年一月一日から発効している。

目次へ

4 国際鉛、亜鉛研究会第九回総会

国際鉛、亜鉛研究会は一九六〇年一月、世界の鉛、亜鉛の生産、消費および貿易事情の研究を目的として設立され、わが国は同年四月に加盟した。

第九回総会は一九六五年一〇月二五日より一一月五日まで東京において開催され、わが国の他、米、英、仏、濠、ソ連、メキシコ等二五カ国及びオブザーバーとしてOECDが参加した。

主要討議事項は次のとおり。

(1) 鉛、亜鉛に関する国際協定問題

(2) 生産、需給の現状分析および短期見とおし

(3) 価格機構に関する問題

(4) 長期消費予測

目次へ

5 国際綿花諮問委員会第二四回総会

国際綿花諮問委員会は、一九三九年、主要綿花輸出国が世界綿花事情を検討するため設立したものであるが、その後輸入国も参加し、わが国も一九五一年に加盟した。

第二四回総会は、一九六五年五月二四日より六月三日までワシントンにおいて開催され、わが国のほか米、英、独、仏、ソ連、メキシコ、ペルー、アラブ連合、インド等四〇カ国が参加した。

主要討議事項次のとおり。

(1) 綿花消費プロモーションのための国際綿花協会(International Cotton Institute)の設立

(2) 国際綿花協定の研究

(3) 合成繊維との競争に関するシンポジウム

(4) 米国綿花政策問題

目次へ

ECSCとの定期的意見交換会議

 

日・ECSC間には、既に一九五四年より在ベルギーわが方大使館を通じ正規の外交ルートがあり、又わが国の対欧鉄鋼輸出急増問題(一九六三年初頭)或いはECSC側の関税引上げ問題(一九六三年末)等については右ルート以外でも随時協議を行なってきた。その後、一九六五年四月、ECSCの鉄鋼総局長が来日した機会に、ECSC側より今後(イ)世界鉄鋼市況 (ロ)鉄鋼の消費及び生産の予測調査 (ハ)原材料の供給(鉄鉱石、くづ鉄、石炭) (ニ)技術の発展と科学的研究の四議題に関し、日本政府及びECSC最高機関の担当局長レベルで定期的な意見交換会議を行ないたいとの申入れがあった。これに対し、わが方政府としては、慎重検討の結果、鉄鋼の如き重要な産業分野につき日欧間の相互理解を更に一層深めることは有益であるとの見地から、年二回の頻度で本件会議を行なうことに同意し、一九六五年九月二三、二四日の両日その第一回の会議をルクセンブルグで開催し成功を収めた。

目次へ