アフリカ諸国(北アフリカ諸国を除く)と日本

 

1 アフリカ諸国との貿易の現状

一九六三年以後増大を続けているわが国のサハラ以南のアフリカ諸国との貿易は、一九六五年に更に増大し、往復一〇億五、三〇〇万ドル(輸出七億四、五〇〇万ドル、輸入三億〇、九〇〇万ドル)に達したが、その内容についてみると次のような新らしい特色がみられる。

第一に、わが国の輸出は前年比三四%の増大をみせたが、輸入はここ数年来、大幅な上昇をたどって来たにもかかわらず、一九六五年に至って、八・四%の減少をみせるに至った。第二に、アフリカ諸国向け輸出増加分(一億八、九〇〇万ドル)は、ほぼリベリア向け便宜置籍船輸出増加分と見合っており、東アフリカ三国、ナイジェリア等、対日輸入制限を行なっている諸国に対する輸出減少分が、旧仏領アフリカ諸国等その他の国々に対する輸出増加分と見合っている。第三に、ナイジェリア、ウガンダからの輸入を除き、殆どすべての大手の輸入相手国からの輸入が減少した。ナイジェリアについては、わが方がコンペ(補償輸入)制度を導入したことが影響したと思われ、ウガンダについては、先方政府が日本からの輸入ライセンスは、原則としてウガンダからの対日輸出を行なったものに対してのみ発給するという方針をとったことが影響していると思われる。このような特殊な要因があった国を除く他の主要国からの輸入が減少したことについては、世界的な一次産品価格の下落という現象の他に、南アフリカ、ケニヤ等における天候不順がとうもろこし等の主要輸出産品の不作を招いたという事情によるところが大きい。

若干の国々に対する輸出が減少した理由は、以上にも述べたとおり、東アフリカ三国、ナイジェリア等の諸国がわが国との片貿易を理由に日本品に対する輸入制限を行なったことが大きく影響しているが、これに対して、わが国としては、相手国の主要輸出産品買付に努力すると共に、経済協力、技術協力等の施策を合わせ、対日輸入制限解除方に努力している。

このほか、片貿易が問題となっている国としては、エチオピア、ソマリア等があげられるが、わが方の貿易交渉における努力もあって、対日輸入制限が行なわれるまでに至っておらず、かえってわが国のこれら諸国向け輸出増大している。

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2 ナイジェリアとの貿易関係

わが国の対ナイジェリア貿易は、わが国の極端な出超となっているため、一九六三年以来ナイジェリア政府は、再三にわたり対日輸入制限の強化措置を実施してきた。六五年八月二五日には、従来からライセンス制におかれていた繊維品にかえその他の全品目の対日輸入をライセンス制におくこととし、その実施に至るまで繊維品以外の全品目の輸入を停止するにいたった。これ以来、進出企業の原材料を除き新たなライセンスは発給されていない。

わが方としては、従来からナイジェリア産品買付促進について努力を重ねてきたが、六五年九月一六日から二二日までの間、伊藤忠越後社長を団長とする経済使節団をナイジェリアに派遣せしめたほか、従来繊維品に対してのみ行なってきたコンペ制度をナイジェリアへの全輸出品目に拡大することとし、コマーシャル・べースにのらない綿花、落花生を含むナイジェリア産品の輸入促進につとめている。

その結果、一九六五年の対ナイジェリア輸入は九二五万ドルで、前年に比し一九四万ドル増加し、反対に輸出は、五、八九八万ドルで、前年に比し二、〇五七万ドル減少し、輸出入比率は前年の一〇・八対一から六・四対一と大幅に縮小した。

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3 ガーナとの貿易関係

一九六〇年頃のわが国とガーナとの貿易には、わが国の出超によるかなりの片貿易関係が存在していた。しかしその後輸入についてはわが方のココア買付量の増大と共に順調に拡大しているが、輸出はガーナの国際収支の悪化に伴う輸入制限措置によりのびなやみの状態にある。このため、一九六四年の対ガーナ貿易は輸出二、二〇八万ドルに対し、輸入一、三九一万ドルで、一・六対一とほぼ均衡に近い状態にまで回復した。しかし、一九六五年にはココア豆の生産過剰による国際価格の暴落により、ココア豆の買付額が半減し、輸出二、三五六万ドル、輸入七九四万ドルと三対一のわが方の出超となっている。

なお現在両国間には一九六三年三月に締結された日本・ガーナ貿易協定があり、ガーナ側による対日差別は何もない。

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4 シェラ・レオーネとの貿易関係

わが国は、本年一月七日シェラ・レオーネとの間で、アフリカとしてははじめての米綿委託加工取極を締結した。この取極は、わが国が米国から五、〇〇〇俵の委託加工用の綿花(約六五万ドル)を輸入し、わが国からシェラ・レオーネへ綿糸または綿織物を輸出し、シェラ・レオーネはわが国に加工賃を支払うことを内容としている。

わが国のシェラ・レオーネとの貿易は輸出八八〇万ドル、輸入一二万ドル程度であるが、今後の貿易拡大が期待されている。

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5 南ローデシア、ザンビア、マラウイとの貿易関係

わが国と旧ローデシア・ニアサランド連邦との間には、一九六三年八月新貿易取極めが締結され、同時に連邦の対日ガット三五条援用も撤回され、これを基礎として両国間の貿易は安定的に増大してきた。

その後同連邦は一九六三年一二月末解体したが、その際わが国と南ローデシアの間では、前記旧ロ・ニ連邦との貿易取極めの効力をそのまま引続き存続させることを両国政府間で確認し、一九六四年一二月末には、当初の有効期間一九六四年末までを一九六五年末まで延長することととし、それまでに新しい貿易取極めができた場合にはその発効日まで延長することに意見の一致をみた。

しかし一九六五年は、南ローデシアの国内的政情不安から新貿易取極めのための交渉をすべき状態になく、遂に一一月一一日には白人小数支配体制下での一方的独立宣言をするにいたった。わが国は、右一方的独立宣言を承認し得ざるものとの基本的立場からも、また、国連尊重、国際協調の観点から対南ローデシア制裁に参加した関係上、貿易取極の交渉は行なわず、従って、前記取極めは一九六五年末に失効し、現在に及んでいる。

一方、わが国とザンビアとの間には、旧連邦の解体後、前記取極めが効力を失うに伴ない両国間の貿易を律する取極めは存在していなかった。ザンビアは、独立以来わが国に対し旧ロ・ニ連邦当時の貿易取極めが南ローデシアとの特殊関係に起因する不都合な点が多いので、自国に最も適した形の新貿易取極めを締結すべく提案していたが、一九六五年五月ザンビアより経済使節団が来日し、両国間で協議の結果、両国間の貿易関係が、それぞれの国の法令の範囲内で無差別の原則により律せられるべきことが合意され、新貿易協定は正式に締結された。また交渉の過程において、ザンビアのガット加盟の際には両国間に正常なガット関係が樹立されることが確認された。

この協定により、わが国に対するザンビア産銅の安定した供給が確保され、また、わが国の輸出増大の基礎も確立されることとなり、一九六六年二月には、南ローデシア問題ともからみ、ザンビア政府は南ローデシア依存を脱却すべくわが国の協力を要請する貿易使節団を派遣するなど、両国間の通商関係は更に一層密接となり、今後とも貿易量の拡大が期待される。

他方、わが国とマラウイ政府との間には、一九六四年一一月書簡をもって、両国は旧ロ・ニ連邦が締結した貿易取極めを事実上適用する旨確認されている。

右三国との貿易量は、輸出二八、二四二ドル対前年比六七・三%増、輸入八七、七〇五ドルは対前年比一六・六%増と一九六五年も着実に増加した。国別にみると南ローデシア・ザンビアはわが国の入超で、他の大部分のアフリカ諸国と好対照を示している。特にザンビアとの輸出、輸入の比率は一対七であり、これはザンビアの銅がわが国にとり不可決のものであるからで、総輸入の九五%を占めている。またマラウィとの貿易量は、三国全体に対する比率において、輸出については一〇%強、輸入については一%にも満たない小規模のものであるが、これは同国の市場の狭さに基づくものである。

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6 東アフリカ三国(ケニア・ウガンダ・タンザニア)との貿易関係

わが国と東アフリカ三国との貿易は、一九六四年までは輸出入とも順調に増加していたが、六五年の三国向け輸出は四、一〇〇万ドル、輸入一、五五〇万ドルで輸出入とも前年に比し一三%減少しているが、依然として二・六対一とわが方の出超となっている。輸出が減少した最大の理由は、六五年四月、三国が一斉に実施した対日輸入制限措置の結果である。

わが方としては、輸入制限の撤廃ないし緩和を図るため、従来より推進してきた一次産品買付努力のほか、経済・技術協力をも加えた対策を進めることとし、次のような施策を講じた。

まず、六五年七月にはウガンダのオボテ首相一行を招待したが、会談の席上、両国代表より両国間貿易を一層安定した基礎の上において発を展図るべき希望が表明され、ウガンダ側は対日輸入制限の撤廃を約束した。また、八月にはタンザニア、バブー商務協同組合大臣一行を招待し、六月には久保田日本工営社長を団長とする東アフリカ・コンサルティング・チームを、七月にはコーヒー、ミッションを更に六六年三月には、一次産品処理対策会議による綿花調査団を派遣するなどの努力をつづけて来ている。その結果、ウガンダについては、六五年はわが方の輸出六二五万ドル、輸入五四六万ドルと、貿易尻は大幅に改善されてきている。

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7 エティオピアとの片貿易問題

わが国の対エティオピア貿易は、一九六四年において輸出は一、七九三万ドル、輸入は四二九万ドルであったが、一九六五年においては、輸出は前年に比し二〇%増加の二、一五〇万ドルであったのに対し、輸入は中心をなすコーヒー豆輸入が増大しなかったため、前年と殆んど変らない四三一万ドルにとどまった。

この貿易アンバランスに対しては、エティオピア側では、従来から不満は潜在していたが、わが国の各種の企業(綿紡、レーヨン、亜鉛鉄板)進出を多分にアプリシェートし、特に片貿易問題として取上げてこなかった。しかし、最近はわが国のアフリカの一部諸国に対する片貿易問題の処理振りに刺激され、わが国に対し可なり強硬に片貿易是正を求めてきている。

一九六四年八月わが国で開催した国際YMCA総会に出席のため来日したマッコーネン商工大臣とも、片貿易問題を中心に懇談し、続いて九月アフリカ経済使節団の同国訪問に際しても、両国間の貿易不均衡の是正について具体的な懇談が行なわれた。

片貿易是正のために、同国よりは、コーヒー豆、塩、皮革、食肉、ポタッシュ等の買付増大、特にコーヒー豆の買付増大が要求されており、九月初旬コーヒー調査団が同国を訪問した。

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8 ソマリアとの貿易関係

わが国とソマリアとの貿易は、輸入は殆んど皆無の状態であり、輸出は金額的には僅少であるが、近年は自動車、繊維品を中心に年々増大してきており、一九六五年、九二万ドルで、わが国の一方的出超である。

しかも、これ以外に本邦製品がアデンその他を経由して相当量(二~三〇〇万ドル)流入していると見られている。

ソマリア側は、この事態に対して累次にわたりわが国との直接貿易を要望すると同時にソマリア産品の買付、併せてわが国の経済技術協力と企業進出に大いに期待している旨申し入れて来ている。

また、ソマリア国内においても対日片貿易問題が漸次表面化する傾向にあることがうかがわれる。

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9 トーゴーとの片貿易問題

トーゴーは、国連の信託統治領であった関係上、通商については無差別政策をとっているため、わが国のトーゴー向け輸出は、綿織物、衣類を中心に近年著しく伸びている。わが国は、同国からりん鉱石を輸入し、その額は年々増大しているが、わが国の出超が続いている(一九六四年のわが国の対トーゴー輸出六〇〇万ドル、輸入一九〇万ドル)。

このためトーゴーは、対日片貿易是正のため一九六五年九月に対日輸入ライセンスの発給を停止したが、四カ月後の一九六六年一月に織物を除き対日輸入ライセンスの発給を再開した。織物については、割当制がとられることになっており、従来のわが国のトーゴー向け輸出の四割が織物であっただけに、今後のわが国の輸出には相当の影響があるとみられる。

一九六五年のわが国の対トーゴー輸出は、対日輸入ライセンス発給停止により若干抑えられ五三〇万ドルであったが、輸入は二四〇万ドルとこれまでの最高を示し、一九六四年に比し片貿易は多少改善されているが、トーゴー側は、りん鉱石の買付増大を望んでおり、問題は今後に残されている。

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10 わが国と西アフリカ関税同盟諸国との貿易関係

わが国と西アフリカ関税同盟諸国(モーリタニア、セネガル、マリ、上ヴォルタ、ニジェール、象牙海岸及びダホメの七カ国)との貿易は、輸出入共年々伸びているが(一九六一年のわが国の対西アフリカ関税同盟諸国輸出は、六七万ドル、輸入二三〇万ドルであったのが、一九六五年には、輸出一八〇万ドル、輸入六七〇万ドルとなった)、これら諸国は、何れも独立前の旧宗主国の輸入制度を受け継いで、わが国の商品に対し、一部例外を除き、関税面では最低税率の三倍の一般税率を適用し、また一部産品については数量制限を行なっているので、繊維品、雑貨を中心とするわが国からの輸出が伸び悩んでいる反面、これら諸国からのりん鉱石(セネガル)、コーヒー豆、ココア豆(象牙海岸)、採油用種子類等(その他諸国)の輸入が年々増えている。

わが国は、これら諸国との貿易において、貿易関係の正常化を最大の目的としており、これまでニジェール、ダホメ及びマリと貿易取極を締結したが、このほかにも招待外交の強化、経済使節団の派遣等を行ない貿易関係正常化のための積極的な努力を行なっている。

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