大洋州諸国と日本

 

1 大洋州地域との経済関係概観

大洋州地域との貿易は、近年、ますます拡大の傾向を示し、一九六五年には往復一一億ドルを越える重要な貿易相手となった。わが国の同地域からの輸入は、わが国にとって不可欠な工業用原材料および食糧等からなり、輸出面においては鉄鋼、自動車等の工業製品が、頭打ちの傾向にある従来の主要輸出品の繊維品に代わって増大している。本地域に対するわが国の貿易は常にわが方の大幅な入超であるが、一九六五年にはわが国の輸出が前年比二五%増の四億四百万ドルとなったのに対し、輸入は四%減少して六億五、二〇〇万ドルとなり入超幅は減少した。

輸出増大の主なものは鉄鋼、機械類であり、輸入が減少したのは主に砂糖、羊毛等の一次産品の値下りによるところが大きい。

オーストラリアについては、前年に引続き鉄鋼および自動車を中心とする機械類の輸出が著るしい伸びを示したが、他方、国外における一次産品の値下り、国内における大干ばつから一次産品を主体とする主要産業は大きな影響を受け、国内経済が停滞を示していることもあって、上記のわが国からの輸出の伸びの大きい品目に対する暫定関税賦課乃至輸入制限、関税引上げ、ダンピング税賦課の要請件数は多くなって来ている。

ニュー・ジーランドは、一九六五年七月一日より、全輸入量の三分の一にあたる品目につき自由化を行なったが、その後ニュー・ジーランドの総輸入が増大する傾向にあり、従来から余り良くなかった国際収支が、最近、以前より一層悪化しつつあることもあって、本措置についての再検討が行なわれている。

一九六五年における主な問題を列記すれば次のとおりである。

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2 マッキュアン副総理の来日

マッキュアン、オーストラリア総理兼貿易産業大臣は、ジュネーブで開かれた国連砂糖会議に出席の帰途、一〇月七日から一二日まで滞日し、その間に佐藤総理、椎名外務、三木通産、坂田農林各大臣と会談、ケネディ・ランド問題を中心に日本の砂糖その他の一次産品輸入問題のほか、オーストラリアの関税政策等につき意見を交換した。その際、同時に来訪したカーモディ貿易産業省副次官らは、中山外務省経済局長司会の下に、日本側関係各省局長との間に同様の問題について意見を交換したが、その席上、ケネディラウンド関税一括引下げ交渉に対する両国オファーについての説明も行なわれた。

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3 オーストラリアの関税改正をめぐる動き

オーストラリアにおける関税改正の動きは次のとおりであった。

(1) 暫定関税および輸入制限措置の実施

オーストラリアの不景気を反映して、一九六五年において暫定関税ないし輸入制限措置の実施を要求する件数は増大し、相当数のわが国の関心品目が、その対象となっている。この中にはブタノール、ステインレススティール、モノフィルロープ、化粧用タイル等があるが、特にモノフィルロープについては、暫定関税ではなく暫定輸入制限措置が課せられるに至った。

(2) 基本関税の改訂

オーストラリアは、従来の関税分類をブラッセル品目分類に改訂するにあたっていくつかの業種の品目につき基本関税の改訂につき関税委員会に付記していたが、一九六五年一〇月、綿織物、化合繊織物につき新関税を発表した。新関税によれば、旧税に比べ、引上げられた品目もあったが、却って引下げられた品目も多く、わが国の輸出関心品目に限って見れば、綿織物、化合繊織物ともに一般的に若干引下げられた結果に終わった。

しかし、完成自動車については、オーストラリア国産自動車保護の見地より、一九六六年七月一日を期して、輪人車の総登録台数に占める比率が、一定限度を越えた場合には、現行三五%を四五%に引上げるという結論が出されており、これについては、ガットの場で交渉すると共に二国間べースでも協議中である。

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4 オーストラリアの通貨切換え措置、ならびに新豪州通貨をわが国の受領指定通貨に追加

オーストラリア政府は、一九六六年二月一四日から十進法による新通貨制度を採用することに決定し、通貨の呼称も従来のポンド、シリング、ペンスの代りに、ドル、セントの呼称を採用することに決定した。

新通貨の従来の通貨との比率は次のとおりである。

旧通貨 新通貨
1豪州ポンド 2豪州ドル
10シリング 1ドル
1シリング 10セント
11ペンス 9セント
10・9 〃 8セント
8 〃 7セント
7 〃 6 〃
6 〃 5 〃
5 〃 4 〃
4ペンス 3セント
3・2 〃 2 〃
1 〃 1 〃

新通貨一オーストラリア・ドルは邦貨約四〇〇円に相当し、従って、一〇セントは邦貨約四〇円に相当する。また、新通貨制度が施行されても、今後二カ年間は旧通貨も併用されることになる。

この切り換えを機に、わが国は、従来からの要望をも勘案して、一九六六年三月一五日新オーストラリア通貨をわが国の指定通貨に追加することに決定した。

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5 ニュー・ジーランド経済親善使節団の来日

ニュー・ジーランド政府は、本年一〇月九日から同月二四日まで、経済親善使節団を日本に派遣した。

同使節団は、主要産業界の代表を含む約一〇名のメンバーから構成され、東京、大阪、名古屋、神戸を訪問し、日本とニュー・ジーランド間の経済、貿易問題全般について日本の政府、業界と意見交換を行なった。

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