国際連合第十九回総会における椎名外務大臣一般討論演説

(昭和三十九年十二月四日)

一、議長、私は、日本代表団の名において、貴下が国際連合第十九回総会の議長に当選されたことに対し、心からお祝い申し上げたいと思います。私は、貴下が、豊かな識見と国際連合における数々の経験によって、今回の総会を成功に導かれることを確信するものであります。特に、私は、貴下が、わが国もその一員であるアジア・アフリカ諸国の与望を荷って選ばれたことに深いよろこびを感ずるとともに、アジア・アフリカ諸国としては、この総会を円滑に運営するため、一層協力する責任があると感ぜざるを得ません。

この機会に、私は、前議長ソーサ・ロドリゲス大使に対し、深い感謝の意を表したいと思います。前議長は、その広い視野と公正な識見をもって、第十八回総会をみごとに導かれ、国際連合の威信を保持し、それを向上させる上に大きい貢献をされました。

同時に、私は、ウ・タン事務総長が、優れた指導力と手腕をもって数々の輝やかしい業績をあげられたことに対し、あらためて、深く敬意を表するものであります。私は、同事務総長が今後とも、国際連合のため、ひいては世界の平和維持のために、ますます寄与されることを信じて疑いません。

私は、ここで、マラウイ、マルタおよびザンビアの各代表団に対し、心からお祝いの言葉を申し述べ、歓迎の意を表したいと思います。私は、この三国が、等しく世界平和達成のため大いに寄与されることを確信するものであります。

議長、今回の総会の開催に際し、財政問題をめぐって危惧されていた対決が、各加盟国の協調の精神によって、当面回避されましたことは御同慶の至りであります。あらゆる事態に対処して平和維持活動を効果的に行なうことが、国際連合の最も重要な使命の一つであり、国際連合がこのための財政能力を備えるようにすることが、われわれすべてに課せられた共同の責任であることは、あらためて申すまでもありません。国際連合の直面するこの困難な問題の根本的かつ建設的な解決を計ることこそ、われわれの目下の急務であると信ずるものであります。

わが国としても、わが国のとっている基本的立場を害さない限り、問題解決のためにあらゆる協力を惜しまない考えであります。私は、特にこの際、関係諸国をはじめ、すベての加盟国が、英知とステーツマンシップをもって、国際連合を危機から救うために更に一段の努力を払うよう強く訴えてやまないものであります。

二、議長、われわれは今や、希望を抱いて、また同時に固い決意をもって、真実の平和体制の建設に取り組むべきときに際会しているといえましよう。昨年は、米、ソ両国の間に直通通信線の設置について合意が成立したのをはじめ、八月には、地下実験を除外している点でまだ不十分であるとはいえ、米、英、ソ三国の間に、核兵器実験禁止のための条約が調印され、その後、世界のほとんどの国がこれに参加しました。次いで、前回の第十八回総会では、米、ソ両国の間の合意に基づいて、大量破壊兵器の宇宙軌道打揚げ禁止に関する決議が満場一致で採択され、また、今年に入って、米、英、ソ三国が、歩調を合わせて、戦争目的のための核分裂物質の生産を削減する措置をとりました。これらは、まだ真の軍縮措置とはいえないにしても、われわれを鼓舞し、われわれの将来に明るい希望を抱かせるものであります。加盟国、特に米、ソ両国の首脳が、機会ある毎に繰返し、平和への固い決意を強調していること、これがわれわれに勇気を与え、将来に対するわれわれの希望を支えるものであることはいうまでもありません。

もちろん、東西間の基本的対立が、これらの措置によって終止符を打たれたわけではありません。しかし、それにもかかわらず、われわれが真の世界平和を実現するために、より積極的、より建設的に努力を傾け得る素地が生れつつあることは否定できません。私は、今日世界がこのような趨勢にあることを歓迎するものでありまして、先般来起ったもろもろの事件によっても、この趨勢が根本的に変化することはないと確信いたします。この意味において、私は、今やわれわれは戦後の過渡的時代を脱して、真実の平和体制の建設に取組むべき時代に入りつつあると考えるのであります。

三、最近のこのような国際環境の変化の背景には、特に、核の威力が恐るべく増大したという事実があることは、あらためて指摘するまでもありません。われわれは、戦争を選ぶ限り、世界、全人類を一瞬のうちに破滅に陥れる核戦争の脅威からのがれられない運命にあります。今や、戦争を選ぶべきか、平和を選ぶべきか、問うまでもなく、われわれは断乎として平和を選ぶべきであり、平和を選ばざるを得ないのであります。この点において、すべての核保有国が現在ならびに未来の世界、全人類に対して負っている責任は極めて重大であり、われわれは、これを如何に強調しても強調しすぎることはありません。さきに述べた昨年来の一連の事実が、主要な核保有国である米、英、ソの、この責任の自覚に基づくものであるならば、全人類のため、誠に慶賀に堪えないところであります。

われわれは、すべての核保有国が真にこの自覚に徹し、地下を含む全面的な核兵器実験禁止について、さらには全面完全軍縮を目標とするその他各種の部分措置について、できるだけ早く合意に達するために一層の努力を続けることを切望してやみません。たとえ、ごく小さな分野においてでも、真の意味での軍縮措置が実現するならば、国際緊張の緩和を著るしく促進することはいうまでもありません。そのためには、有力な軍備を保持しているすべての国の間で、効果的な国際管理の原則について、速やかに合意の成立することが緊要であります。われわれは、これらの諸国が、過去の経緯にとらわれることなく、勇気と決断をもって問題の解決に当ることを強く訴えたいと思います。

四、これに関連して、われわれの遺憾に堪えないのは、中共が去る十月、核戦力の保持を目指して大気圏内における第一回の核爆発実験を行なったことであります。もともと、わが国は核兵器実験に対しては、いかなる国の実験であろうとも、大気圏内、地下の別を問わず、すべて核戦争の危険を増大するものとして、反対してきました。しかも、中国大陸に隣接するわが国としては、中共のかかる行為が、恐るべき放射能害を、あらたにわが国民にもたらすので、同様の影響を蒙むる他の諸国民とともに、重大な関心を払わざる得ません。同時に、われわれとして重視したい点は、中共が既に成立している部分的核兵器実験禁止条約の存在を全く無視し、それに挑戦して、敢えて大気圏内における実験を開始した事実であります。これは、同条約を支持する世界の大多数の国民の、平和への切なる願い、祈りを裏切るものであります。中共が真に核兵器の使用禁止、全面的廃棄を望むならば、現状において選ぶべき途は、部分的核兵器実験禁止条約に参加し、これをより完全なものとすることによって、核軍縮の実現を容易にするよう協力することであって、決してあらたに核戦力の保持を企てることではないというべきでありましょう。この意味において、自ら大気圏内における核爆発実験を開始し、核戦力の保持を企てながら、核兵器使用禁止のための世界首脳会議の開催を主張する中共の意図については、多分に疑問をさしはさまざるを得ません。私は、中共が今日の世界の趨勢を見誤ることなく、今後の実験を停止することはもちろん、一日も速やかに同条約に参加することを強く希望するものであります。また私は、ウ・タン事務総長が提案した米、英、ソ、仏および中共の間の話合いは、十八カ国軍縮委員会等における交渉の促進、特に核兵器実験の全面的禁止実現に多少なりとも実質的に寄与することが期待できるならば、慎重に検討するに値いすると考えます。

五、議長、私は、ここで、最近における科学技術の偉大な進歩について触れたいと思います。先頃、盛会裡に幕を閉じた東京での第十八回オリンピック大会の模様が、数千キロを距てた家庭で、テレヴィジョンによって、同時に、まのあたり再現されたことは御承知のとおりであります。これを可能にしたのは、太平洋上はるかに高く打揚げられている通信衛星シンコム三号であり、それを完成した科学の力であります。衛星船ウォスホートおよびレンジャー七号の壮挙が示すごとく、今や、人類の月旅行さえ夢ではなくなろうとしています。われわれは、このような科学技術の著るしい発達、進歩によって、軍事面でも産業面でも、また個人生活の上でも社会生活の上でも、驚くべき程の急激な変化を体験しつつあるのであります。私が指摘したいのは、このような科学技術の発達が、最近の国際環境の変化と密接な関係をもっているということであります。それは、科学技術の発達が、全人類、全文明を絶滅できるまでに核の威力を恐るべく増大させたという消極的な面のためだけではありません。ほとんど無限ともいうべき経済的、社会的進歩の可能性を約束するものでもあるからであります。

この点でわれわれは今や、引返すことのできない運命的な時点に到達したといえましょう。科学、技術は進歩するのみで、退歩することを知りません。これをどのように用いるかは、全くわれわれの決断如何にかかっています。われわれは、科学の力が、世界の運命を左右する重要な要素となっている事実に深く思いをいたし、これを真の平和建設、就中、開発途上にある諸国の経済開発および社会福祉の増進に積極的に利用するため、国際間の協力を一層促進するよう努めなければなりません。

六、議長、今やわれわれは、一日も空費することなく速やかに、真の世界平和を実現するため、あらゆる努力を尽さねばなりません。しかし、それは決して容易ではないどころか、障害と困難に満ちた大事業というべきでありましょう。国際環境は変化しつつあるとはいえ、各地に地域的紛争や、不安定が存在し、ときに武力の行使さえ見られるのであります。また現状では、国際環境の変化が、かえって局部的な対立、緊張をもたらしている面さえあります。そして、場合によっては、これらが、いつ世界、全人類にとっての脅威に発展するか予断を許さないのであります。

われわれが当面しているのは、先ず第一に、このような現状に対処して、軍縮ならびに全面的な核兵器実験禁止を実現するために益々努力するとともに、国際連合の目的と精神に沿って真に効果的な平和維持、安全確保のための体制を確立することであります。

そして同時に、平和を単に形の上だけでなく、豊かな充実した具体的内容をもったものとして実現することであります。このため、われわれは経済的進歩、就中いわゆる南北問題の解決はもちろん、人権の尊重、人種差別の撤廃、まだ残存している植民地、非自治地域の円満な独立達成等のため、より一層の努力を傾注しなければなりません。

このような広汎、多岐にわたり、かつ、相互に密接な関連のある諸問題に対処するために、われわれは世界歴史の大きな流れの中において、未来を展望しつつ総合的な視野に立って、国際間の協力を益々積極的に推進しなければなりません。そして、東西間の緊張緩和にも伴って、自主的立場の主張、自由、独立への動きが強くみられる今日、特に強調したいのは、各国が偏狭な民族主義、国家主義に陥ることなく、政治理念、社会制度、経済的な発展段階等を異にしても、互いに他の諸国の自由と独立を尊重しつつ、相互の協力に努めなければならないということであります。

このような大事業は、もとより、一朝一夕にしてなるものではありません。そして、国際連合こそ、この困難な、しかし、回避することのできない大事業の遂行に主導的な役割を果すべきものであります。国際連合は今や、その真価を発揮すべきときであります。われわれすべての加盟国は、何よりも先ず、現在、世界が進むべき方向を見誤ることなく、真の世界平和実現への決意を新たにして、着実な第一歩を踏出さねばなりません。今やこの歴史的な時点を迎えて、すべての加盟国は、いよいよ重大な責任と義務を負っているというべきでありましょう。

七、議長、現在われわれに課せられている問題は極めて多岐かつ複雑であります。しかし、最大緊急の課題は、国際連合の平和維持機能をいかにして強化するか、の問題でありましょう。同時に、いわゆる南北問題も、今日、世界の重要な関心事であります。私は、これらの問題について、わが代表団の見解を明らかにしたいと思います。

八、議長、国際連合の平和維持機能をいかにして強化するかは、すでに久しい以前からの重要な課題であります。しかし、今こそ、われわれは、この問題は真剣に再検討しなければなりません。この点で、ソ連が憲章第四十三条に基づき国際連合軍を常設すべしとの提案を行なったことは、極めて注目すべきものがあると考えます。ただ、この提案において、国際連合軍の設置、派遣、使用ならびにその経費調達等に関するあらゆる問題は安全保障理事会が専ら決定すべきであるとされている点は極めて問題であり、拒否権を有する安全保障理事会常任理事国間に真の協調が確保されない限り、非現実的といわざるを得ません。特に経費調達の問題については、憲章の規定上も問題があり、また国際連合軍の指揮にいわゆるトロイカ方式を適用すること、五大国の参加を排除すること等も問題であります。

私は、就中国際連合の平和維持機能については、憲章の目的と精神に沿って、現実に即した組織と機構のもとに、強化を図るべきであると信ずるものであります。この意味において、憲章第四十三条に基づき国際連合軍の常設が実現するまでの間においても、国際連合は、責任ある機構として、あらゆる事態に有効に対処できる平和維持機能をもつべきであります。また安全保障理事会が平和の維持について第一義的責任を有するとの原則を尊重しつつ、安全保障理事会が大国の拒否権の行使によってその任務を果し得ないときには、総会がこれを代行できるとの従来の方式も維持されるべきであります。

さらに、同様の見地から、最近カナダ、北欧諸国、オランダ等に見られる国際連合待機部隊設置の動きは、誠に時宜を得たものというべきであり、私は、世界の平和維持のための、これら諸国の積極的な熱意と献身的な努力に対して、深い敬意を表するものであります。

憲章第四十三条に基づき国際連合軍を常設すべしとのソ連の提案ならびに国際連合待機部隊設置の動き等により、今や国際連合軍の常設問題が漸く真剣に討議されるようになったことは、国際連合の平和維持機能強化のため、誠によろこばしいことであります。私は、できるだけ速やかに国際連合軍が常設されること、更には、将来この国際連合軍が、全面完全軍縮が実現する過程において設置されると思われる国際連合平和軍へと進化することを強く希望するものであります。このために、わが国を含むすべての加盟国が、関連する諸問題の解決方法の検討に一層協力すべきであると考えるものであります。

九、議長、平和維持の問題に関連して、現在サイプラス、コンゴーその他世界の各地に、地域的な紛争や緊張が少なからず存在していることは極めて遺憾であります。特にわが国としては、アジアの諸地域において緊張、不安定、さらには武力の行使までがみられる現状に対して、多大の憂慮と危惧を禁じ得ません。このようなアジアの情勢が、アジアだけでなく世界の平和にとっても好ましくないことはいうまでもありません。特に、すべての国が、提携し、協力して真の世界平和実現のため最大の努力を尽すべきときに、アジアが混乱と不安のなかに停滞を続けることは、われわれのともに考え、反省しなければならないところであります。私は、すべての関係諸国が、相互理解と協力の精神をもって、速やかな平和的解決に努めるよう衷心より希望するものであります。わが国としても、このため、できる限りの貢献をしたい考えであります。

このようなアジアの情勢において、中国問題が極めて重要な地位を占めていることは、あらためて多言を要しません。中国と、地理的、歴史的、文化的に極めて密接な関係をもつわが国が、従来、本問題の審議は、関連するすべての要素の現実的かつ均衡のとれた評価の上に立って、慎重に行なう必要があると主張してきたのはこのためであります。今回の総会でも中国代表権問題の審議に当っては、第十六回総会で採択された、中国の代表権を変更しようとする如何なる提案も憲章第十八条にいう重要問題であるとの決議を想起し、引続き慎重な態度が必要であると考えます。

十、議長、私は、ここで、あらためて、すべての紛争は平和的に解決されるべきであることを強調したいと思います。紛争の平和的解決は、平和維持の目的を達成するため憲章が最も重視しているところであり、加盟国の最大の義務であります。それにも拘らず、現実には、規模の大小はあるにしても、アジアをはじめ各地に、武力による威嚇、または武力の行使がみられるのであります。もちろん、その原因は区々であり、必ずしも単純ではありません。しかし、真に自衛のためやむを得ない場合のほかは、理由の如何を問わず、すべての国が一切の武力行使を非とする態度に徹して、平和的手段による解決に努力を集中すべきであり、それこそ憲章の目的と原則に沿うゆえんであると考えます。ただ、特に指摘したいのは、この場合、直接的な武力行使だけでなく間接的な侵略行動も、同様に一切非とされるべきであるということであります。また、武力の行使を非としても、現実に紛争の平和的解決が促進されないようでは意味がありません。そのために、われわれは紛争の生ずる原因を除去することに、一層努力すべきであり、更には、紛争が生ずる前に、その原因となる問題を解決するため、建設的態度と相互理解の精神をもってより積極的に協力すべきであります。この点で、わが国の北方領土の問題も、できるだけ速やかに、円満かつ公正に解決されることを強く希望せざるを得ません。重要なことは、すべての加盟国が、憲章の目的と原則を尊重し、真の平和実現への熱意を有することであり、そして、これを事実の上で具体的に示すことであります。

十一、議長、平和を真に充実した、永続的なものとして確保するためには、世界経済全般の進歩と繁栄を図らなければならないことはいうまでもありません。特に、いわゆる南北問題の解決、すなわち開発途上にある諸国の経済的進歩と開発を促進するためにこれら諸国と先進国との協力を推進する問題は、われわれが新たな時代を建設するために避けることのできない緊急の課題であります。この意味において、本年三月から六月にかけて、史上最大の国際会議ともいうべき貿易開発会議が、国際連合の主催のもとに開催されたことは、意義が極めて大きいと考えます。

この会議を通じて、南北問題のもつ重要性が広く認識されるとともに、数々の問題点が明らかにされ、その国際的な解決への方向について少なからざる示唆が得られたことは、この会議の重要な成果であります。

特に、過去一世紀近くにわたり経済開発への多難な途を歩んできたわが国としては、この会議で表明された開発途上にある諸国の一致した願望と要請には大きな同情を寄せるものであり、十分、これに耳を傾け、これら諸国に対する対策を決めてゆく上のよりどころとしたい考えであることを明らかにしたいと思います。

今一つの重要な会議の成果は、申すまでもなく今後南北問題をひきつづき検討してゆくための機構設置の問題であります。わが国は今回の総会で、貿易開発に関する国際連合の常設機構を設立する勧告が一日も早く承認され、貿易開発理事会を中心とする新しい諸機関が国際連合経済機関の一部として発足することを心から希望するものであります。そして発足の上は、わが国は、これらの機関が貿易開発問題の中枢として果すべき重要な役割を十分に認識し、建設的にその活動に参画する所存であります。

なお、この点に関連して、強調したいのは、低開発国たると先進国たるとを問わず、すべての国が、協調の精神をもって、南北問題の解決を探求するための場としてこの新機構を発展させることがきわめて望ましいということであります。新機構が、たんに議論の場と化することなく、建設的な効果を挙げるよう、重要な問題については、すべての国がともに相互信頼の精神をもって、広く受諾可能な解決策を見出す慣行を確立することが望ましいと思います。こうした慣行が確立してゆくに従って、新機構が採択する勧告、決議に、現実性と実効性が与えられることになると確信するものであります。

十二、開発途上にある諸国からの輸出を拡大し、これを多様化するためには、わが国もできるだけの協力を惜しまないものでありますが、本来、貿易の拡大には輸出国と輸入国双方における努力と相互理解が必要であることはいうまでもありません。

貿易拡大とならんで、開発途上にある国に対する援助の充実も新しい時代の要請であります。

低開発国側の真剣な経済成長への努力に対応して国連貿易開発会議で援助の規模をできるだけ早く国民所得の一%に近づけるよう努力することを一致して支持した先進諸国としても、経済技術協力の拡充と改善に努める必要があることはいうまでもありません。わが国としても、低開発諸国の努力を一層支援するため、今後とも援助強化の努力を積み重ねて行く決意であります。

十三、議長、世界の平和維持、ならびにその基盤となる経済的、社会的進歩のため、国際連合が過去約二十年の間に果してきた役割は、まことに偉大なものがあります。それは、憲章の掲げる目的と原則が、時の流れとともに消え去ることのない不変の価値を蔵していることを証拠だてるものでもあります。しかし、今や、われわれが真実の平和体制の建設に取組むべきときに、この目的と原則に沿って国際連合を更に強化するため過去の経験を生かし、現実に則して、憲章を全面的に再検討することも、われわれの重要な課題であるといわねばなりません。第十八回総会で、安全保障理事会ならびに経済社会理事会の議席拡大のための憲章改正に関する決議が成立したことは、部分的にせよ、憲章の改正が現実の問題となり得ることを示したものであります。国際連合創設二十周年を明年に控えた今こそ、憲章の再審議を真剣に考慮すべき好機といえましよう。また、このためにも、安全保障理事会ならびに経済社会理事会の議席拡大のための憲章改正は、是非とも実現させなければなりません。わが国としてもなるべく速やかに批准の手続をとる意向であり、できるだけ多くの国、特に憲章改正に不可欠な安全保障理事会常任理事国である大国が、速やかに批准することを強く期待するものであります。

十四、議長、今や国際環境は変化しつつあり、世界は真実の平和体制を求めて動こうとしています。われわれの任務は、この時点を正しく捉え、法と正義に基づく新たな秩序を作りあげ、そして、その上に、真の永続的な世界平和を実現することであります。われわれの行くべき道が平坦なものでないことはいうまでもありません。一歩誤れば、とり返しのつかない混乱と無秩序を招く虞れがあることも忘れてはなりません。

しかし、われわれは、もはや、この任務を回避できません。世界のすべての国は、今や、国際連合の崇高な目的を自らの目的として、この重大な任務達成のため、最大の努力を尽し、是非とも成功しなければならないのであります。

議長、このときに当り、私は、今回の総会が一日も早く正常な状態をとりもどし、貴議長の指導のもとに、多大の成果を収め、真の世界平和実現のために、貴重な貢献をなし得ることを切に希望します。わが代表団としても、あらゆる努力、協力を惜しまないことをここに誓うものであります。

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