国際文化交流の現状

1 概  観

国際文化交流の目的は、文化を通じ各国民相互の理解と親善を深め、もって世界の平和と文化の向上に貢献することにある。第二次大戦後、各国政府は、文化外交を重視し、強力な機構、スタッフと尨大な予算をもって、文化交流事業を活発に展開しているが、これは世界諸国民が戦争の惨禍を再びくりかえさないためには、諸国民間の相互理解がいかに重要であるかを痛感したためであろう。

わが国と各国との文化交流も経済的発展による国力の充実、国際的地位の向上に伴ない益々活発となってきているo

かような文化交流事業には、政府によるものと、民間によるものとがあるが、元来、文化交流は、その性質上、まず、広く民間の自主と創意とによって行なわれるべきものであり、したがって政府としては、まず第一に、民間の創意によるこれら事業を奨励し、できるかぎりこれに便宜を与えてその拡大をはかることを方針としている。

他方、日本文化の紹介には、極めて有意義であっても民間の事業としては実施困難な事業もあり、これについては、あるいは政府の事業として、あるいは関係補助団体の事業として実施することとしている。

現在、世界の主要国は、いずれも外務省に文化局ないしそれに準ずる尨大な機構をもって対外文化活動を強力に進めているが、わが国においても、各国との文化交流の活発化に鑑み、一九六四年五月、文化交流関係の部局として、外務省に文化事業部が設置され、わが国文化外交をより積極的に推進することとなった。

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2 文化協定の締結

戦前、日本はハンガリー、ドイツ、イタリア、ブラジル、タイ、ブルガリアとの間に文化協定を結んでいたが、これらの協定はいずれも第二次大戦の勃発によってその効力を失ったか、または効力が停止された。

戦後、日本は次の一一カ国と文化協定を締結した。

(1) フランス (一九五三年十年三日発効)

(2) イタリア (一九五四年十一月二十二日発効)

(3) タ  イ (一九五五年九月六日発効)

(4) メキシコ (一九五五年十月五日発効)

(5) インド  (一九五七年五月二十四日発効)

(6) エジプト (一九五七年七月十五日発効)

(7) 西ドイツ (一九五七年十月十日発効)

(8) パキスタン(一九五八年十月二十一日発効)

(9) イラン  (一九五八年十一月二十日発効)

(10) イギリス (一九六一年七月八日発効)

(11) ブラジル (一九六四年十一月十七日発効)

これらの文化協定は、締結国政府が両国間に行なわれる各種文化交流事業に対して便宜を与え、また、これを奨励することを規定したもので、協定により多少相違はあるが、その概要はつぎのとおりである。

(1) 書籍、講演、演劇、展覧会、映画、ラジオなどによる文化の相互理解の増進に対し、便宜を与える。

(2) 学者、学生、その他文化活動に従事する者の交換を奨励する。

(3) 相手国国民の修学・研究・技術修得に対し、奨学金その他の便宜を与える方法を研究する。

(4) 大学などで、相手国の文化に関する講義の拡充および創設を奨励する。

(5) 相手国の学位および資格をたがいに認めるように、その方法および条件を研究する。

(6) 相手国の文化機関の設立および運営に便宜を与える。

(7) 相手国国民の博物館、図書館の施設の利用に対して便宜を与える。

(8) その他、協定によっては、文学および美術の著作物の翻訳または複製の奨励、文化団体の間の協力の奨励、国際的運動競技の奨励などを規定したものもある。

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3 文化協定に基づく混合委員会の開催

文化協定の規定の円滑な履行をはかるため、日仏、日伊、日本・メキシコ(附属交換文による)、日印、日独、日英、日本・ブラジルの各文化協定は、それぞれの国の首府に町国の代表五、六名によって構成される混合委員会の設置を規定している。なお、その他の諸国との文化協定は、単に、両締約国代表が必要に応じて協議することを規定している。

一九六四年においては、正月二十六日、第二回在東京日英混合委員会が、また、十一月二十六日、第三回在ロンドン日英混合委員会がそれぞれ、東京とロンドンにおいて開催され、日英両国間の文化交流事業について意見の交換が行なわれた。

また、六四年十一月、日本とブラジルとの間の文化協定の発効に伴ない、日本・ブラジル混合委員会が近く設置される予定である。

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4 日米文化教育会議

一九六一年六月訪米した池田総理はケネディ大統領との間で文化および教育の交流に関する日米合同会議を設置することに合意した。この会議は、日米両国の代表的学識経験者が一堂に会し、両国間の文化および教育の交流に関するあらゆる問題を自由に討議するとともに、その拡大方法について勧告を行なうことを目的としたものである。

(1) 第一回会議、第二回会議

第一回会議は、一九六二年一月二十五日から同三十一日まで東京で開かれ、日米両国の文化および教育の当面する諸問題について討議が行なわれた。また。第二回会議は、一九六三年十月十六日から二十二日までワシントンで開催され、(イ)第一回会議以降の実績検討、(ロ)文化教育テレビ番組の交換、(ハ)翻訳および抄訳、(ニ)地域研究、(ホ)舞台芸術の交流の各議題につき討議が行なわれ、夫々勧告がなされた。

(2) 会議の成果とその後の発展

(イ) 日米文化教育テレビ番組交流協会の発足

第二回会議は日米間の文化教育テレビ番組の交流を促進させるため日米両国に交換センターを設立することおよびこのため準備会議を開くことを勧告した。この勧告に基づき、六四年四月、東京において両国の専門家が集まり交換センター設立のための会議が開かれ、日本側においてはすべての放送局の協力による財団法人を設立し、米国側にはこれに対応する組織をニューヨークのNET内に設けることおよびこの二つのセンターが協力し、文化教育テレビ番組の交換を促進することに合意をみた。

日本側では、これに基づき六四年十二月「日米文化教育テレビ番組交流協会」(略称、日米教育テレビセンター"The Japan-U.S. ETV Center"理事長松方三郎氏)が設立された。このセンターは、(1)文化教育テレビ番組交換のための調査研究、(2)交流番組のリスト、カタログの作成と頒布、(3)番組の吹替え、サブタイトルの挿入、(4)通関手続、著作権問題の処理などの事業を行なう。

(ロ) 文献翻訳事務所の設立準備

第二回会議は、日本の思想の翻訳、抄訳を促進するため、日本にクリアリングハウスを設立することを勧告した。この勧告に基づき、国際文化振興会が主となって「文献翻訳事務所」(仮称)の構成、運営、事業等につき検討することとなった。

(3) 第三回会議

第三回会議は、六六年三月東京で開催される予定で、目下その準備が進められている。第三回会議の議題としては、人物交流、視覚芸術の交流、言語教育および日米諸団体・姉妹都市・姉妹大学等の提携が考えられている。

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5 国際文化団体の活動

(1) 国内の国際文化団体

 (イ) 国際文化振興会(KBS)

国際文化交流事業は、政府が直接行なうよりも、政府から独立した機関に委託して行なう方が適当であり、効果があがる場合が多い。現に英国では、英国文化振興会(ブリティッシュ・カウンシル)が公の機関として設立され、政府から一〇〇億円(一九六四年)の補助金を受け、職員三、〇二〇名を擁して、強力な対外文化活動を行なっており、フランスでは、政令により設立された公の機関であるフランス芸術振興会が、六億六、〇〇〇万円(一九六一年)の政府補助金を受けて芸術的催物の国際的交流を行なっている。

わが国の国際文化振興会(略称KBS)は、国際間の文化交流、特に日本文化の海外紹介をはかることを目的として、一九三四年(昭和九年)四月創設された団体であるが、戦前は現在の価格で約三億円の政府補助金の多額の民間寄附金により活発な文化活動を展開し、KBSの名は、海外の文化団体、学界、日本研究家などの間に広く知られていた。戦後になってからも、政府は、一九五三年度から補助金を交付して同会の国際文化活動の拡大をはかってきた。しかし、政府補助金は、戦前の水準に比べてはるかに少額だったので、同会の活動も活発とはいえなかった。

近年、諸外国、とくに欧米諸国の文化活動が極めて盛んになり、わが国としても、国際文化振興会を通ずる国際文化交流事業の強化拡充の必要が痛感されてきたので、外務省は、関係者と協力して政府補助金の増大、民間からの積極的協力の確保ならびにこれにともなう機構の整備と事業の拡大に努力している。

一九六四年度に国際文化振興会が行なった主な事業は、各種催物としては、欧州における"日本伝統工芸展"(ロッテルダム、ミュンヘン)、第三二回ベニスビエンナーレ展参加、東南アジアにおける"日本学童生活紹介展"、豪州ニュー・ジーランドにおける"書道展"(シドニー、メルボルン、ダニーデン)、"日本現代工芸展"(クライスト、チャーチ)、アフリカの"日本国情紹介写真展"(ケニア、ナイロビ)、中南米における"日本建築写真展"(コルドバ、ブエノスアイレス)と"日本学童版画展"(ヴァルパライソ、ワンカーヨ、トルヒーリョ、アレチッパ、リマ)、"メキシコ日本現代工芸展"そしてアメリカ合衆国で催された"日本現代絵画展"(ワシントシ、デイモイネ、サンフランシスコ、ニーュオルリンズ、デトロイト)、"桐朋学園オーケストラ公演"(スタンフォード、ダルグルフッド、サンフランシスコ、ホノルル)"日本現代書道展""日本学童生活紹介展"等がある。

また同会が出版したものとして日本研究基本書目解題(英文)の「思想(上)と、「歴史(中)」、「思想(下)」、「歴史(下)」、日本文化叢書(英文)の「仏教」、「林業」、「教育」、「建築」、外人日本研究書分類目録(英文)、日本文化の手引(英文)、日本美術入門(英文及び西文)、国際文化(邦文月刊)およびKBSブレティン(英文隔月刊)がある。

 (ロ) 国際学友会

日本に来る外国人留学生は日本語を解さず、また、日本人と風俗習慣、宗教、食生活などをいちじるしく異にしていることから、学業、生活などの点で、とくに来日当初は困難を感ずる者が多い。国際学友会は、これら留学生に宿舎と大学進学前の準備教育を与えることを目的として、一九三五年十二月、財団法人として創立されたものである。

政府は、同会の発足当初から補助金を与えこれを援助してきた。戦後も、平和条約の発効とともに諸外国から留学生の来日が急増したので、一九五二年以来国際学友会の事務所および運営組織の充実ならびに宿泊施設および東京本部日本語学校施設の整備、拡充に重点を置いて、補助金を与えてきた。

戦後、同会は、国費留学生(日本政府が招致し、奨学金を給与しているもの)、私費留学生を問わずすべての留学生を前述の宿舎に受入れて世話をしてきた。しかし、一九五七年、文部省の外郭団体として日本国際教育協会が発足し、国費留学生の受入団体となったので、学友会本部の国費留学生は同協会の宿舎に転宿し、現在、学友会本部は専ら私費留学生を収容している。

宿舎は、現在、東京本部だけで収容能力一六五名に達しているが、一九五六年には収容能力六〇名の関西支部が大阪市北区に、また、一九五八年には収容能力一三名の福岡支部が福岡県粕屋郡古賀町に、それぞれ開設され、さらに六五年四月京都に収容能力約五〇名の京都支部が開設されることになっている。

国際学友会東京本部は、宿舎、食堂を設けているほか、日本語学校も運営している。日本語学校は、日本で高等教育または技術研修を受けようとする外国人留学生(学友会在泊者には限らない)に対し、一年乃至一年六カ月を期間として日本語を教授し、併せて基礎的な日本事情を知らせることを目標としており、毎年四月、十月、一月の三回新規学生を受入れている。そのほか、大学進学希望者に対しては、数学、理科、社会などの基礎学科も教授しており、これら課程の修了者には進学を斡旋している。同校の学生定員は二九五名である。

 (ハ) 出版文化国際交流会

昭和二十七年、日本と外国との相互理解を深め、かつ親善を増進するに役立つ出版物の交流を計る目的で発足した団体で、特に、この数年は極めて活発な活動をつずけている。一九六四年度に同会が行なった主な事業としては、フランクフルト国際図書展参加(三十九年九月)、オリンピック記念日本文化紹介図書展(三十九年十月)、トルコにおける児童図書展示会(三十九年十一月)、ロンドン国際児童図書展参加(三十九年十二月)等がある。

(ニ) 以上のほか、国際知的交流を目的とする「国際文化会館」、日本映画の海外紹介を目的とする「日本映画海外普及協会」(略称 Uni Japan)、文筆にたずさわる人々の国際交流を行なう「日本ペンクラブ」等の国際文化団体があり、また六四年に新たに設立されたものとして「吉田国際教育基金」、「日本ジョン・Fケネディ記念基金」がある。

(2) 海外の日本関係文化団体の現状

 (イ) 在ローマ日本文化会館

在ローマ日本文化会館(通称ローマ日本アカデミア)は、日伊文化交流促進のため日本文化の紹介を行ない、かつ、イタりアの学術文化の研究に資することを目的として、外務省が一九五九年から建設、一九六二年十一月完成し、同年十二月開館式が行なわれた。

同会館の運営は国際文化振興会があたり、会館の総長には前国際文化振興会会長岡部長景氏、館長には元東京大学教授でギリシャ・ラテン文学の権威者である呉茂一氏が就任した。総長は、日本で会館運営委員会の委員長として運営方針の決定を行ない、館長は、ローマでの館務を統轄する。会館の職員は、国際文化振興会から派遣される職員二名、現地採用職員五名で構成されている。

同文化会館が一九六四年度に行なった主な事業としては、日本陶磁の変遷(加藤土師萌氏)、日本の起源とその文化の発展(ISMEO・タンブレッコ氏)(東大教授吉川逸治)・能の世界(ロマーノ・ウルビッタ)、日本の絵巻物(東大講師秋山光和)、日本美術について(グリッリ夫人)等の講演会およびその他座談会、ゼミナール、日本映画会、音楽会、展覧会等がある。

 (ロ) パリ大学都市日本館

パリ大学都市日本館は、通称薩摩会館ともいわれ、一九二七年薩摩治郎八氏によってパリ大学に寄贈されたものであるが、フランス留学中の日本人学生に対する宿舎の提供を主たる任務とし、また、構内に日本関係の図書を蒐集して日本研究に便宜を与えている。外務省は、従来から民間有識者の中から館長を推せんして派遣しており(現館長は、羽出明教授)、また同館建物の内部修理費などに対し、援助を行なっている。

 (ハ) その他の海外の文化団体

右に挙げたような団体のほか、諸外国には、わが国との文化交流を主な目的とし、主として現地の国民を中心とする団体が多く設立されている。これら団体は、各種の文化展、映画会、講演会あるいは機関誌の発行などの方法により、日本文化の紹介を行なっており、わが国との友好親善関係の増進に貢献している。このような団体の育成強化は文化交流の促進上きわめて有効なので、外務省は、在外公館を通じてできるかぎりの援助を行なっている。

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6 芸術の交流

(1) 美術・工芸の交流

国際文化交流事業のうち、美術工芸関係の展覧会は、最も頻繁に行なわれており、美術工芸を通じての国際間の理解と親善に貢献している。

(イ) 日本で開催される外国美術展は、新聞社、美術館の主催するものが多く、一九六四年度においては、「ロシア秘宝展」、「ミロのヴィナス展」、「先インカ・コトシュ神殿秘宝展」、「ピカソ展」、「ダリ展」等数多くの美術展が開催されており、外務省もその開催には、側面より協力している。

(ロ) 海外における日本の美術・工芸展は、各国において多大の反響を呼んでおり、日本の美術工芸の紹介に貢献している。

一九六四年度においては、中華民国、香港、ニュー・ジーランド、米国、メキシコにおける「日本現代工芸展」、豪州、ニュー・ジーランドにおける「日本現代書道展」、イタリア、フランス、英国、デンマークにおける「日本の城写真展」、米国における「日本現代絵画展」、米国、チリ、ペルーにおける「日本学童版画展」、アルゼンティンにおける「日本建築写真展」等が開催された。これら展覧会の多くは、国際文化振興会の主催、現地の美術館、文化団体および日本大使館の協力の下に行なわれている。

(2) 映画による日本文化の紹介

優秀な日本映画の海外における上映が、日本の文化、国情等に対する諸国民の正しい理解と認識に役立つことはいうまでもない。かような観点から、外務省では、日本文化紹介に適当と認められる映画をあるいは購入しあるいは借用してこれを地域による特殊性を考慮しつつ諸外国にまわして日本大使館主催で映画会を開催している。

現在、外務省が購入して、海外で上映している映画は、「名もなく貧しく美しく」、「古都」、「われらサラリーマン」、「こんにちは赤ちゃん」等三三本、また、文化映画として「巨船ネスワブリン」、「チョゴリグ」、「現代日本の美術工芸」等二十一本がある。

また、権威ある国際映画祭(カンヌ・ベニス等)に対する日本映画の参加、日本における外国映画祭の開催などに対しても、種々の支援をしている。

(3) 歌舞伎のヨーロッパ派遣

歌舞伎の海外派遣については、各国から強い要請があるが、特に一九六五年秋、ベルリンで開催されるベルリン市主催日本芸術祭に歌舞伎を参加せしめることとなり、この機会にベルリンのほかパリ、リスボンでも公演する予定である。

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7 人物の交流

(1) 学者・文化人の交流

学者・文化人等の交流は、わが国文化についての理解と認識を深めるとともに、諸外国との友好関係促進に貢献するところ大であるので、外務省では、文化人等の派遣・招へいに努めている。昭和三十九年度には左記のとおりの事業を実施したが、更に外国政府・大学・民間団体等の実施する交流事業、或いは日本文化の海外普及事業に対しても、可能な限りの便宜を供与している

(イ) 文化人派遣

早稲田大学政経学部松本馨教授のヨーロッパ五カ国における講演、建築評論家浜口隆一氏の中南米六カ国における講演、国立文化財研究所第一室長兼東京大学文学部講師秋山光和氏のモロッコ及びヨーロッパ六カ国における講演のほか、世界各地域に華道使節を派遣し、生花のデモンストレーション・講習会を開催した。

(ロ) 文化人招へい

ドイツ日独協会理事長パンコー博士、セイロン大学文学部長ウィジェセケラ教授、キール日独協会長ケルスト博士、インド・ビハール州日印友好協会理事長シンハ氏、ニュージーランド国立博物館考古学部長バロー博士、ベルギー・ルーベン大学物理学主任教授ドリスラーゲル博士、フィリッピン・サント・トマス大学法学部オーベン教授、ボン大学日本学主任教授ツァッヘルト博士、デンマーク・ジュトランド半島日丁協会創立者ジュポン氏。

(2) 青少年団体の交流

近来青少年・学生団体等の国際的交流が増加しつつあり、外務省では、これらの団体に対し、必要な助言と指導を与えてきているが、特に総理府が実施している日本青年海外派遣団に対しては、関係在外公館を通じ日程作成等につき協力している。

(3) スポーツ・探検隊・登山隊

昭和三十九年十月開催のオリンピック東京大会に対しては、外務省もこれに全面的に協力したが、その他各種スポーツ大会への参加、海外遠征、スポーツコーチの派遣等に対しても、できるだけ協力している。又昭和三十九年度には、外務省は講道館五段松下三郎氏を中近東・アフリカ地域へ柔道使節として派遣したほか、カンボディアヘの水泳コーチ派遣、日本サッカーチームの東南アジア遠征のための経費を一部負担した。

更にアジア・中近東・アフリカ・大洋洲・中南米諸地域への学術探検隊、登山隊の派遣に対しても、便宜を供与している。

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8 留学生の交流

(1) 日本政府の外国人留学生招致

若い外国人留学生を国費をもって、わが国の大学に留学せしめることは、わが国の学術水準のみならず、わが国の文化と生活を身をもって体験せしめ、わが国に対する理解と認識を深める上で多大の効果を収めうるものである。

外務省では、この観点にたち、政府予算による外国人留学生招致に対しては全面的に協力している。

(イ) 文部省予算による文部省奨学金留学生招致制度

この制度により、昭和三十八年度九四名、昭和三十九年度二〇〇名の外国人留学生が招れた。昭和四十年度には二〇〇名の留学生が招かれる予定である。この制度による留学生は、学部留学生(アジア、中近東、アフリカ地域諸国からの留学生のみを対象とし、期間五ヵ年、ただし、医科および歯科は、七カ年)と研究留学生(全地域、期間二カ年)の二種類がある。奨学生に対しては、往復旅費(ツーリストクラス)、奨学金月額三〇、○○○円、国内研究旅費(研究留学生および最終学年の学部留学生に対してのみ)年額二五、○○○円、および新しく来日する留学生に対し着後手当一〇、○○○円等が支給される。招致留学生の国別内訳はつぎのとおりである。

(a) アジア諸国、昭和三十八年七〇名、昭和三十九年一三〇名、昭和四十年一三二名(予定)

 

(b) 中近東諸国、昭和三十八年九名、昭和三十九年一四名、昭和四十年一六名(予定)

 

(c) アフリカ諸国、昭和三十八年なし、昭和三十九年二名、昭和四十年四名(予定)

 

(d) 西欧諸国、昭和三十八年六名、昭和三十九年一八名、昭和四十年二〇名、(予定)

 

(e) 東欧諸国、昭和三十八年二名、昭和三十九年四名、昭和四十年四名、(予定)

 

(f) 北米諸国、昭和三十八年二名、昭和三十九年五名、昭和四十年七名(予定)

 

(g) 中南米諸国、昭和三十八年六名、昭和三十九年十四名、昭和四十年一四名(予定)

 

(h) 大洋州諸国、昭和三十八年なし、昭和三十九年二名、昭和四十年三名(予定)

 

(ロ) 科学技術庁予算による外国人研究者招致制度

この制度は昭和三十七年度より始められ、奨学金支給額は住復旅費のほか、月額六万円ないし七万円である。招致実績は次のとおりである。

(2) 日米教育交換計画による米国人の来日

この計画により、一九六三年度および一九六十四年度にはつぎのとおり米国人学者および学生などが招かれた。

一九六三年

訪問教授 一二、研究学者 八、英語教師 八、大学院学生 六、合計三四

一九六四年

訪問教授 一三、研究学者 一二、英語教師 六、大学院学生 一四、合計四五

(3) 外国政府などの日本人留学生招致

一九六三年度および一九六四年度に外国政府または準政府機関の給費生として海外に留学したわが国の学者、学生はつぎのとおりである。かっこ内の数字は一九六三年度留学生数である。

(イ) アジア地域 三(五)

インド二(二)、パキスタン 〇(二)、タイ一(一)

(ロ) 中近東地域 五(一〇)

イラン 〇(二)、イラク〇(二)、イスラエル 二(一)、トルコ 一(〇)、アラブ連合 二(五)

(ハ) 西欧地域

オーストリア 五(八)、ベルギー 六(四)、デンマーク 二(二)、フランス 九〇(予定数七四)、ドイツ七〇(九一)、イタリア 二二(一五)、オランダ 一二(一二)、スペイン 五(二)、スウェーデン 一(一)、スイス 三(三)、イギリス 一五(一二)

(ニ) 東欧地域

チェッコスロヴァキア 一(一)、ソ連 九(一四)、ユーゴースラヴィア 一(二)

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9 文化交流事業実績一覧(一九六四年一月から一九六五年三月まで)

(1) 美術関係その他展覧会

(イ) 国内で開催されたもの

(ロ) 海外における日本関係展覧会

(2) 映画祭の開催

(イ) 国内で開催されたもの

(ロ) 海外における映画祭に対する参加

 

(3) 日本大使館主催による海外での日本映画上映(一九六四年一月から一九六五年三月まで)

(イ) 劇映画

(ロ) 文化映画

(4) 図書の交流

(イ) 外務省から外国への図書寄贈

(ロ) 国内における図書展

(ハ) 海外図書展示会の参加

(5) 音楽の交流

(イ) 国内開催

(ロ) 海外公演

 

(6) 学者・文化人の交流

(イ) 海外訪問

(a) アジア地域

一九六四年

二 月 京都大学東南アジア研究センターバンコク連絡事務所開所式参加のため奥田総長および岩村忍教授のタイ訪問

三 月 外務省派遣文化人として、国際基督教大学長鵜飼信成教授の東南アジア講演旅行

十一月 パキスタン医学会議に大阪大学水野教授出席

一九六五年

二 月 インド「建築と人間社会」ゼミナールに建築家二名参加

三 月 インド政府招へいによる国際基督教大学鵜飼学長のインド訪問

(b) 中近東地域

一九六五年

一 月 外務省派遣柔道師範として講道館五段松下三郎氏の中近東訪問

一 月 外務省派遣講師として美術評論家秋山光和氏のモロッコ訪問

(c) アフリカ地域

一九六五年

二 月 外務省派遣柔道師範として講道館五段松下三郎氏のアフリカ訪問

(d) 西欧地域

一九六四年

一 月 外務省派遣による陶芸家加藤土師萌氏(芸大教授)の欧州八カ国における講演および製陶実演

六 月 ノールウェーにおける第三二回国際ペン大会に川端康成氏他一一名参加

七 月 英国およびドイツの大学招へいにより早稲田大学松本馨教授の欧州六カ国訪問(経費一部本省負担)

一九六五年

一 月 外務省派遣講師として美術評論家秋山光和氏の欧州訪問

(e) 北米地域

一九六四年

八 月 山口県立医科大学長森茂樹氏の米国訪問

(f) 中南米地域

一九六四年

九 月 外務省派遣講師として建築評論家浜口隆一氏の中南米(六カ国)巡回講演

(ロ) 日本への招へい・訪問

(a) アジア地域

一九六四年

二 月 外務省招客、インド国立登山学校教官テンジン・ノルゲイ氏の来日

三 月 外務省招客、日本ネパール文化友好協会長P・M・シン氏の来日

五 月 セイロン大学文学部長0・H・ウイジェセケラ教授の来日

六 月 インドネシア文化使節団(約七五名)の来日公演

七 月 フィリピン大統領令息A・マカドガル氏の来日

八 月 外務省招客、ビハール州日印文化協会事務局長A・N・シンハ氏の来日

九 月 外務省招客、インド、カンプール日印協会事務局長S・R・アガルワル氏の来日

一九六五年

三 月 外務省招客、フィリピンサント・トーマス大学法学部R・T・オーベン教授の来日

三 月 ヴィエトナム青年スポーツ総局長N・ディニッツ氏他二名の来日

(b) 西欧地域

一九六四年

三 月 外務省招客、ベルリン日独協会事務局長マックス・パンコウ博士の来日

四 月 元在本邦英国大使文化参事官V・レッドマン卿の来日

五 月 外務省招客、キール日独協会々長G・ケルスト博士の来日

八 月 フランスパリ大学仏文化講座主任教授マトレ氏他二名の来日

一九六五年

三 月 外務省招客、ベルギールーベン大学物理学主任教授J・F・Aドリスラーゲル夫妻の来日

三 月 外務省招容、デンマークジュトランド半島日丁協会創立者E・Hデュポン氏の来日

三 月 外務省招客、ドイツボン大学日本学主任教授H・ツアヘルト氏の来日

(c) 北米地域

一九六四年

二 月 米国、ライオンズ国際課長オーグレー・グリーシ氏の来日

十 月 米国有名映画人(約一〇〇名)の来日

(d) 中・南米地域

一九六四年

十一月 外務省招客、ペルー外務省研修所長J・パレハ大使夫妻の来日

十二月 アルゼンティン演劇監督ハイメ・ハイメス氏の来日

一九六五年

三 月 チリカトリック大学建築学部教授カルロル・クルックラロ氏の来日

(e) 大洋州地域

一九六四年

一 月 豪州南オーストラリア州キングストン・カレッヂ体育教師L・P・セヴック氏の来日

四 月 豪州メルボルン市文化雑誌編集長C・Bクリステンセン氏の来日

五 月 オーストラリア国立大学大平洋研究部員R・クワンベ氏の来日

八 月 外務省招客、ニュージーランド国立博物館パロー博士の来日

(7) 青少年・学生団体

(イ) 海外訪問

(a) アジア地域

一九六四年

十二月 総理府派遣第六回日本青年海外派遣団東南アジア第一班(団長間宮武横浜国立大学教授以下一七名)(期間十二月-二月)

一九六五年

一 月 総理府派遣第六回日本青年海外派遣団東南アジア第二班(団長徳山正人総理府中央青少年問題協議会事務局連絡課長以下一八名)(期間一月-三月)

三 月 拓殖大学世界一周親善視察団(団長佐々木弘吉以下八名)

(b) 中近東地域

一九六四年

八 月 総理府派遣第六回日本青年海外派遣国中近東班(団長武藤中部経同会幹事以下一二名)(期間七月-九月)

(c) 西欧地域

一九六四年

七 月 派遣中学生欧州見学団(七名)の訪欧

八 月 総理府派遣第六回日本青年海外派遣団欧州班(団長福田立教大学教授以下一五名)(期間七月-九月)

八 月 小学館懸賞作文受賞者(三名)のヨーロッパ親善旅行

八 月 イタリアモンタニヤーナ市国際大学祭に学生二名参加

九 月 神奈川県青少年指導者海外派遣団(団長長野実以下四名)(期間九月-十一月)

十 月 北海道青少年指導者海外派遣(団長守屋北海道民生部青少年対策室主幹以下四名)(期間十月-十一月)

一九六五年

三 月 本邦理工科学生訪仏団(団長高橋裕東京大学工学部助教授以下七一名)(期間三月-四月)

二 月 慶応義塾大学欧州旅行団(団長宗宮知行同大学教授ほか学生一六〇名)(期間二月-三月)

(d) 北米地域

一九六四年

七 月 総理府派遣第六回日本青年海外派遣団北米班(団長山吉長府立大阪女子大学教授以下二二名)(期間七月-九月)

(e) 中南米地域

一九六四年

二 月 慶応義塾大学中米親善訪問団

四 月 北海道大学アマゾン河源流域学衝調査隊

一九六五年

二 月 早稲田大学中米親善見学団(引率者横田同大学講師他二名、外に学生八五名)(期間二月-三月)

(f) 大洋州地域

一九六四年

七 月 日豪交換学生一行(三六名)の豪州訪問

一九六五年

一 月 総理府派遣第六回日本青年海外派遣団東南アジア、オーストラリア、ニュー・ジーランド班(団長小林芳夫ボーイスカウト日本連盟国際コミショナー以下一八名)(期間一月-三月)

(ロ) 日本訪問

一九六四年

一 月 ユニヴァシティ・オブ・セブンシーズ見学団(二七五名)の来日

七 月 ブラジルサンパウロ大学工学部卒業生(六名)の本邦工場実習のため来日

八 月 シンガポール人民協会副会長O・コック氏の本邦青年運動の実情視察

八 月 フランス理工系大学学生団(一四〇名)の日本工業視察

(8) 各種視察団等の海外訪問

(イ) 海外訪問

(a) アジア地域

一九六四年

一 月 日本ユニセフ協会代表二名のバンコクにおけるユニセフ執行委員会出席

一 月 山口県教育委員会派遣教員のアジア教育事情観察

一 月 吉江参議院議員を団長とする留学生事情調査団の東南アジア訪問

九 月 京都大学奥田学長三大学長のインドおよびパキスタン教育事情視察

(b) 中近東地域

一九六四年

九 月 京都大学奥田学長他三大学長のイラン教育事情視察

(c) 西欧地域

一九六四年

二 月 文部省派遣の欧米諸国大学実地調査団(佐藤知雄名古屋工業大学長以下五名)(期間二月-三月)

三 月 大牟田市教育委員会の教員海外派遣(二名)(期間二月-五月)

三 月 文部省派遣の欧米諸国大学図書館実地調査団(加藤竜太郎名古屋大学教授以下二名)(期間三月-六月)

四 月 日本青年団協議会派遣視察代表団(菊地日本青年団協議会副会長以下五二名デンマーク外国青年受入組織委員会招待による)

四 月 英国文化振興会招へいによる文部省体育局体育課長の英国派遣(期間四月-五月)

六 月 文部省天城調査局長の教育計画に関する専門家会議出席のためフランスおよびイタリア訪問

七 月 NHK派遣中学生欧州見学団(中学生代表五名、付添二名)(期間七月-八月)

八 月 日本私立幼稚園連合会派遣第一〇回幼年教育国際会議代表団(佐藤団長以下二五名)

九 月 文部省派遣学校長等海外教育事情視察団ヨーロッパ班(臼井文部省留学生課長以下二七名)(期間九月-十一月)

八 月 英国政府招へいによる大学行政視察団(奥田京都大学総長ほか三大学学長)(期間八月-九月)

八 月 山口県立医科大学森学長の訪欧

十一月 文部省派遣海外婦人教育視察団(ヨーロッパA班四名、ヨーロッパB班四名)の欧州諸国訪問(期間十月-十一月)

十二月 毎日放送開局十五周年記念に際し高校生七名の研修旅行

(d) 東欧地域

一九六四年

五 月 中央教育審議会長森戸辰男氏のモスコーにおける国際大学協会理事会出席

七 月 第一回訪ソ釣視察団(作家壇一雄氏他一九名)の訪ソ

(e) 北米地域

一九六四年

一 月 全日本健康優良児童の訪米

二 月 山口県教育委員会派遣教員二名の米国訪問

二 月 文部省派遣欧米諸国大学実地調査団の米国訪問

三 月 欧米諸国大学図書館実地調査団(二名)の米国訪問

九 月 文部省派遣学校長等海外教育事情視察団アメリカ班(林部文部省特殊教育課長以下二七名)(期間九月-十月)

十 月 文部省派遣海外婦人教育視察団(アメリカ班三名、カナダ班三名)のアメリカ合衆国及びカナダ訪問(期間十月-十一月)

一九六五年

一 月 全日本健康優良児童表彰関係者の訪米

三 月 ミス日加親善のカナダ訪問

(f) 大洋州地域

一九六四年

一 月 吉江参議院議員を団長とする留学生事情調査団の大洋州訪問

二 月 山口県教育委員会派遣教員の大洋州訪問

(ロ) 日本訪問

一九六四年

四 月 ニュー・ジーランド高校教師二名の本邦教育事情視察

九 月 フィリピン文部省私立学校局長ペルピナン氏の本邦教育事情視察

十 月 ウルグァイ、オリンピック国内委員会副委員長の本邦教育事情視察

十二月 オーストラリア聾学校長の本邦聾教育事情視察

一九六五年

三 月 フランス花屋協会々員(一三五名)の来日

三 月 インド文部省P・D・ジュークラ局長の本邦教育事情視察

(9) スポーツ

(イ) 国内開催

(ロ) 海外への日本選手派遣

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