今後における海外移住政策の基調

以上のような考慮から、政府は、まず第一に部内調整を行ったが、その結果、提出された結論及び問題点は、次の如きものであった。

(1) 海外移住は憲法に保障された国民の基本的人権の一つであって、何人もこれを阻止することはできないこと及び、国は国政の上で、この権利を最大限尊重すべきこと、特に日本人移住に実際上随伴する幾多の心理的、経済的障害の存在する事実に鑑み、これを除去し、移住を容易にし円滑にする責務を政府は負っており、このために移住の諸施策を講ずる必要があること、そしてそれと同時に、これらの施策に要する財政支出は、海外移住のもたらす長期的な国家利益によって十分に償いうること、などの諸点を再確認すべきこと。

(2) 海外移住は民族の国際性につながる独自の政策目標と分野をもつものであるが、同時にその実際の遂行に当っては、国内諸政策(特に労働力需給政策、文教政策、農業政策等)と調和を保持する必要があること。

このため、これら諸政策と移住政策との間の問題点を調整するため、今後、政府部内において、引続き、検討を進めること。

(3) 今後の移住政策の最大の目標は、対外的には今日の日本の国際的地位にふさわしく、受入国の多様化に努めること、国内においては、移住のもつ歴史的、国民的意義を充分国民に周知せしめるため、広範囲の移住教育或はもっと広く海外教育を学校その他の場を通じて行うよう努めること、及び移住者への直接的施策として、インフォメーションサービス、能力の補完その他の援助措置を実施するが、その際受入国の先進性、後進性、各国別の特殊性を充分に考慮に入れて最も適切で、かつ効果の大であるような方針を打ち出すこと、そしてこれらの点につき政府の政策要綱を定め、これについて海外移住審議会の承認ないしは意見を求めること。

その結果、本年三月十五日、政府は海外移住審議会を開催したが、審議会委員大多数の意見は、以上の如き政府の基本方向を了承し、今後その方向でより具体的な課題と取り組むことを要望した。

(別表1) わが国海外移住行政及び実務機構一覧表

(別表2) 海外移住事業団地方事務所一覧表

☆海外移住事業団鹿児島県事務所 鹿児島市山下町六八(鹿児島県庁内)

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