貿易・経済関係の使節団及び要人の交流
1 政府派遣貿易経済使節団の海外訪問
一九六五年二月二十八日から約五週間にわたり、水上達三三井物産社長を団長、原吉平ニチボー社長および島村哲夫八幡製鉄専務取締役を副団長とし、財界人八人、言論人一人からなる経済使節団が南米六カ国、トリニダッド・トバゴ・ヴェネズェラ・ブラジル・ウルグァイ・パラグァイおよびアルゼンティンを訪問した。
使節団はこれら各国において政府首脳、公団幹部の外、財界人とも会談し、各国経済の現状および見通しの把握につとめ、各国政府の経済開発計画の実体を調査するとともに、これら諸国との貿易の拡大および経済協力の促進の可能性について綜合的な検討を行なった。今回の訪問では使節団は従来わが国財界と比較的直接の接触の少なかったこれら諸国財界の代表的人物と懇談する機会が多く、これらの懇談からわが国とこれら各国との貿易および投資の拡大につき具体的な成果が生れることが期待されている。
なお南米訪問に先立ち、ワシントンで米州機構事務局、進歩のための同盟全米委員会および全米開発銀行の各幹部と会談して意見の交換を行なったほか、ウルグァイ滞在中LAFTA(ラテン・アメリカ自由貿易連合)の常設執行委員会および事務局の幹部とも会談し、広くラ・米の政治、経済全般について認識を深めたが、これはわが国が今後対ラ・米経済政策を綜合的に検討する上に極めて貴重な経験であった。
政府は一九六五年三月十三日より約一カ月にわたり、石坂祿朗東芝機械専務取締役を団長とする経済調査団をオーストラリア及びニュー・ジーランドに派遣した。一行の調査目的は両国の経済開発と工業化推進の現状と見通しについての調査、大洋州地域との貿易拡大方法の調査等である。
政府は、一九六四年十月四日から十一月二十九日にかけて、カナダ西部及び平原三州を中心に(ヴァンクーヴァー、ヴィクトリア、レスブリッジ、カルガリー、レジャイナ、ウィニペッグ、エドモントン、トロント、オタワ、モントリオール、ケベックの一一都市)、稲山嘉寛八幡製鉄社長を団長とし、牧田与一郎三菱重工業専務を副団長とする訪加経済使節団を派遣した。この使節団は、カナダのみを対象として派遣された最初の使節団であり、今後の日加間協力の可能性が強い重工業品の分野を中心に、カナダ中央政府・州政府当局者をはじめ有力経済人等と幅広い接触を行なって帰国した。
一九六四年十月六日から約三週間にわたり、丸紅飯田会長市川忍氏を団長とし、一四名からなる政府派遣経済使節団が、フィリピン、マレイシア、タイ、インドネシア、中華民国の東南アジア五カ国を訪問した。
これら五カ国は、いずれもアジアの友邦としてわが国と密接な関係にあり、わが国にとり輸出市場、企業進出の対象地域、また一次産品の買付市場として重要な地域である。
使節団一行は右各国において、政府、経済関係要人等と意見交換を行うとともに、現地経済状勢を視察したが、東南アジア諸国に対する最初の大型経済使節団として、友好関係および経済交流の促進に大きな成果を収めた。
政府は、昨年度に引続き、欧州における経済統合の進展状況調査のほか、特に低開発国からの一次産品買付問題調査を対象として、一九六四年十月十八日から十一月十六日までの三十日間にわたり、EEC加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ)および英国、スペイン、スウェーデン、スイス、ギリシャ、オーストリアの一二カ国に経済評論家福良俊之氏を団長として、五名の専門家からなる第二回欧州経済統合調査チームを派遣した。同チームは、欧州各地において、官民経済関係者および調査機関と懇談を重ね、欧州における経済統合の進展状況調査を通じて、双互の理解を深めたほか、帰朝後詳細な報告書を発表し、大きな成果をあげた。
政府は、ポーランド、チェッコ及びハンガリーの東欧北部三カ国に対し、これら各国との経済、貿易関係の発展を図るため、一九六四年十一月一日から三週間にわたり、信越化学社長小坂徳三郎氏を団長とし、二一名から成る東欧経済使節団を派遣した。一行は右各国において、政府、経済関係首脳等と意見交換を行うとともに、産業事情を視察したが、これら諸国に対する初の政府使節団として相互理解を深めるのに大いに有益であった。
(1) エル・サルヴァドル経済・文化使節団およびグァテマラ経済使節団の来日
一九六五年二月二十四日より三月十六日まで、エル・サルヴァドル商工会議所会頭ロベルト・セリス氏を団長とするエル・サルヴァドル経済、文化使節団およびグァテマラ工業会議所会頭ラミロ・カスティリョ氏を団長とするグァテマラ経済使節団一行計一四七名が来日し、各種の産業、文化施設を視察したほか、関係業界とわが国との間の貿易促進につき意見の交換を行なった。
イラク経済次官ジャミル氏を団長とする貿易使節団は一九六四年四月十八日来日し、同年五月一日まで滞在したが、その間工場見学、関西旅行を行なった。また同使節団は四月三十日わが国との貿易協定にイニシァルを行なった。
クイント・クィンチェリ氏(元下院議員、伊産業総連盟副会長)を団長とする伊経済使節団は、第一回日伊民間経済委員会出席のため、四月二十日来日し、東京及び大阪において、日伊両国間の貿易経済問題に関し、わが国各業界代表と種々討議を行った。
その間、同使節団は大平外務大臣及び福田通産大臣と夫々懇談し、四月三十日離日した。
インド食糧農業省シャンカー事務次官を団長とし、一九六四年五月一日来日し、約十日間滞在し、日本政府および民間業界関係者との会談を行なった。
(5) ロンドン・バーミンガム両商業会議所派遣訪日ワーキング・グループの来日
両商業会議所の代表十三名からなる訪日ワーキング・グループは一九六五年二月二十二日来日し、三月七日まで滞在した。
一行は滞日中、民間業界との会談を行った。
中央アフリカ共和国の経済社会評議会議長フェルディナン・バサムングー氏を団長とする親善使節団は一九六四年九月一日来日し、同月八日まで滞在したが、九月七日貿易取決めにイニシァルを行なった。
マリ共和国財政・経済大臣ジャン・マリ・コネ氏を団長とする貿易使節団はIMF世銀総会に出席を兼ねて一九六四年九月七日に来日し、九月十六日わが国との貿旨取極に署名を了し、同月十九日離日した。
ウォルフラム・ランガー独経済省次官は東京国立科学博物館において開催のドイツ科学技術展覧会開会式出席のため、六月九日来日、約五日間滞在した。
ロペス・ブラボ・スペイン工業大臣夫妻は日本政府の招待により、七月二十七日から八月七日まで来日した。
同工業大臣夫妻は、滞日中、天皇、皇后両陛下より謁見をたまわったほか、椎名外務大臣及び桜内通産大臣と夫々会談を行い、更にわが国の代表的企業の視察並びに業界代表との懇談を行なった。その結果、今後相互に理解を深め、両国間貿易を拡大するため、差し当って、協定締結に最善の努力を行う旨意見の一致をみた。
一九六四年九月二十九日ニュー・ジーランドのマックアルパイン交通大臣及びガンデル国鉄総裁が来日し、十月十五日まで滞在し、わが方運輸大臣及び国鉄総裁と会談したほか、工場見学及び国内各地の視察を行った。
フィリピンのヘナレス経済審議庁長官と同庁経済顧問一名は、外務省の招客として、一九六四年十月九日来日し、同月十四日まで滞在した。一行は、この間椎名外務大臣、桜内通産大臣、高橋経済企画庁長官、石野大蔵次官に表敬懇談した。
(5) コンゴー(レオポルドヴィル)首相特別顧問コードロン氏の来日
コンゴー(レオポルドヴィル)チョンベ首相特別顧問コードロン氏は一九六四年十二月六日来日し、同月二十五日まで滞日したが、その間、工場見学、業界との懇談、関西旅行を行なった。
一九六五年一月十日から十五日まで、英国のメイソン造船・海運担当国務大臣は補佐官三名を滞同来日し、黄田外務次官、桜内通産大臣及び松浦運輸大臣と会談したほか、造船所を見学した。
ベルナルド・マッタレラ伊貿易大臣は、香港において、開催されたイタリア外務省アジア地域経済担当官会議に出席後、本年一月十七日非公式に来日し工場等を視察し、同月二十日離日した。
一九六五年一月二十八日から三十一日まで、ウガンダのヌゴビ農業・協同組合大臣(事務次官随行)は外務省招客として来日し、滞日中黄田外務次官、通産政務次官、農林政務次官及びわが国の農業協同組合の代表等と会談したほか、工場等を視察した。
(イ) クリステンセン事務総長の来日
わが国の加盟を機に、クリステンセン事務総長は、政府の賓客として、一九六四年六月一日来日し、同七日まで滞在した。同総長は、滞在中天皇陛下に謁見を賜った他、政府、民間の代表と協議するとともに各種工場を見学し、又関西視察を行った。
(ロ) その他の要人の来日
(i) クリステンセン事務総長は、一九六四年九月IMF東京総会に出席のため再度来日したが、同じく同総会出席のため、コティエ事務次長、カイザー貿易支払局長、ドウ経済統計局長及びソープDAC議長が来日し、OECDに関する諸問題についても政府関係者と懇談した。
(ii) イエーガー統計部長他一名が一九六四年十二月来日し、当面のわが国の経済情勢及び統計問題等につき関係当局と懇談した。
(iii) わが国のENEA準加盟実現を機会に、同機関のセーラン事務局長が一九六五年二月十八日から約二週間来日し、関係方面と懇談及び原子力関係施設の視察を行った。