経済に関する諸国際機関との関係

OECD(経済協力開発機構)との関係

1 わが国加盟後の主要な動き

(1) OECD各関係機構への参加状況

わが国は一九六四年四月二十八日にOECDに正式加盟し、加盟と同時にOECDのほとんどすべての諸活動に参加することになったが、その後、さらに左記の各機構へ参加した。

(イ) 同年六月には、経済政策委員会の第三作業部会(国際収支の均衡維持に関する作業部会で参加国は従来特に国際収支に責任をもっている主要九カ国に限られていた。)に参加を認められた。

(ロ) 一九六五年二月には、OECDの下部機構たる欧州原子力機関(ENEA)に準加盟を認められた。

(ハ) 他方OECDの二つの民間の諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC)及び労働組合諮問委員会(TUAC)へのわが国の加盟状況は次の通りである。

(i) BIACに対しては、一九六四年五月のBIAC総会で、さきに経団連等経済五団体で設立されたBIAC日本委員会が正式会員として承認された。

(ii) 一九六四年十二月全日本労働総同盟はTUACに正式加盟した。

(2) 政府代表部の設置

政府はOECD加盟に伴い、常設代表部を新らたにパリに設置することを決め、必要な手続を終え、一九六四年六月一日経済協力開発機構日本政府代表部が発足した。

(3) 分担金の決定、支払

わが国はOECDに正式加盟したので、分担金を支払うことになったが、一九六四年は日割計算でOECD第一部予算(一般経費)に対するわが国の分担額は、四、三六七、〇七〇フラン(三一八、四四七、〇〇〇円)、第二部予算関係でわが国の加盟している開発センター経費に対する分担額は、四三七、七五二フラン(三一、九二〇、八七五円)であった。

(4) 経済政策委員会第三作業部会の東京開催

OECDの諸会議は原則的にはパサで開催されるが、一九六四年九月IMF総会が東京で開催され、OECDの首脳部及び各国の財政、金融関係者が参集した機会に、経済政策委員会第三作業部会が九月十一日東京で開催された。

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2 0ECD諸活動への参加状況

(1) 閣僚理事会

OECD第四回閣僚理事会は一九六四年十二月二、三日に開催された。これはわが国が正式メンバーとなってから初の閣僚理事会で、わが国から桜内通産大臣が出席した。その他カラハン蔵相(英)ボール国務次官(米)、クーヴ・ド・ミュルビル外相およびジスカール・デスタン蔵相(仏)等が一堂に会した。

会議の議題は、「経済の成長と安定」と「貿易と開発」に絞られ、前者については英米仏伊およびわが国の一般発言の他、英国の国際収支問題、対ギリシャ・トルコ・コンソシアム問題、後者については国連貿易開発会議問題等が議論され、討議終了ののち理事会決定およびコミュニケが採択された。

(2) 主要会議参加状況

(イ) 理事会関係

(i) 理 事 会

OECDの最高意思決定機関たる理事会は毎週又は隔週に開催され、わが方からも森代表以下が常時出席、積極的な発言を行なった。一九六四年度においては資本及び経常的貿易外の両取引の自由化をはじめ各般に亘る重要問題に関し、討議、検討が継続され、多数の決定勧告を採択した。

(ii) 執行委員会

わが国は現在のところ執行委員会のメンバー(米、英等十ヵ国)ではないが、わが国の利益に関係のある問題が討議される際には、わが代表がオブザーバーとして出席した。

(ロ) 経済政策関係

(i) 経済政策委員会

経済政策委員会は、加盟国の経済情勢を検討し、各国の経済政策の調整を行なうことを任務としている。わが国の加入後最初の委員会は一九六四年六月行なわれ、わが国代表は日本経済の高度成長、当面する問題点などを説明し、日本経済についての紹介を行なった。その後本委員会は十一月及び一九六五年二月に開催され、主として米国、英国、西ドイツ、イタリア、フランス等の経済政策の検討及び欧州の資本市場改善の問題などが討議されたが、ポンド不安と英国経済の問題は特に活発に論議された。

経済政策委員会の主要下部組織の活動振りは次の通りで、わが国はこれらの全てに参加した。

(a) 第二作業部会(経済成長促進政策に関する作業部会)一九六四年十一月に開催され、OECDが十ヵ年間に五〇%の共同成長目標を達成する問題についての中間報告の作成を検討した。

(b) 第三作業部会(国際収支の均衡促進政策に関する作業部会)国際収支と資本移動の問題、英国、米国の国際収支の検討などを中心に一ないし二ヵ月に一回の割で開催された。

(c) 第四作業部会(生産コストと物価に関する作業部会)一九六四年十一月に開催され、賃金格差と労働移動、所得政策の問題等について論議した。

(d) 短期経済見通しに関する専門家グループ。一九六四年五月、十一月の二回各国の報告を審議した。

(ii) 経済及び開発の検討に関する委員会この委員会は各加盟国(ユーゴスラヴィアを含む)の経済情勢の審査を任務とし、各加盟国につき他の二つの加盟国が審査担当国となって毎年一回綜合的な検討を行ない、その結果は公表されている。わが国は一九六四年六月審査をうけた、(詳細後述)。またわが国は一九六五年二月には審査担当国としてイタリアの審査に当った。わが国が審査担当国となっていないその他の国の審査に際してもわが国は常時討議に参加した。

(ハ) 貿易、貿易外取引関係

(i) 貿易委員会。貿易委員会は、経済政策委員会および開発援助委員会と並んでOECDの三大委員会の一つであり、多角的かつ無差別な世界貿易の拡大に寄与することを目標としている。一九六四年度においては、本委員会が三回開催されたほか(六四年七月、十月および六五年三月)、作業部会および特別グループの会合はひんぱんに行われた。

貿易委員会の最大の活動は低開発国貿易問題、行政的技術的な輸入制限の除去および輸出信用に関する政策調整のための意見交換であった。

低開発国貿易問題については、国連貿易開発会議の勧告を中心に近く開催を予定される一次産品、製品等の各常設委員会の構成、付託事項等主として機構問題につき意見の交換が行われた。今後OECDでの検討は、特恵、市場組織化等実質的な問題について行われるものと予想される。

行政的な輸入制限の除去については、まず各国の輸入手続、政府調達手続等の実態調査が行われ、それに基いて貿易障害となっている諸点が指摘された。

なお、この委員会においては一九六四年秋の英国の輸入課徴金導入その他一連の措置について、特に活発な批判が英国に対して行われた。

輸出信用問題については、このために特別の作業部会が設けられ、加盟各国間の信用及び信用保証供与の過当競争を除去すべく、なんらかの原則を設けることが検討されてきた。

(ii) 貿易外取引委員会、支払委員会

(a) 貿易外取引委員会。本委員会では、わが国は正式メンバーに加わっていないが、資本取引、経常的貿易外取引の各自由化に関する討議等に随時オブザーバーとして参加した。

(b) 支払委員会。貿易外取引委員会で討議された問題につき最終的検討を加えることを主たる任務としており、二カ月に一度程度開催される。一九六四年の最大の問題は資本取引自由化規約の改訂で、各国の留保状況が審議された。

(iii) 財政委員会、保険委員会

(a) 財政委員会。わが国は一九六四年六月、九月、十二月及び一九六五年三月の四回開かれた本委員会に参加し、直接税及び間接税の分野における二重課税の問題、相続税モデル条約案等の検討並びに税制及び税務行政に関する意見交換を行なった。

(b) 保険委員会。主要討議事項は後進国における保険事業運営についての調査、加盟国の保険監督法規の調整に関する問題で、これらと併せて保険の分野における自由化の可能性について検討された。わが国は九月の委員会から正式に参加した。

(iv) 制限的商慣行に関する専門家委員会

一九六四年において本委員会の各作業部会において、国際通商に影響を及ぼす制限的商慣行の実態調査および、この分野における用語の統一化を中心に討議が行われた。

また一九六四年十月に開かれた委員会にはわが国より渡辺公正取引委員会委員長が出席し、わが国の独禁法制度についての説明を行なった。

(v) 海運委員会

海運委員会は各国の国旗差別等の海運政策に関する情報の収集と交換、加盟国の海運政策に関するコンフロンティション、国家貿易国及び被援助国の海運の研究、海上運賃と商品価格との関係に関する研究等を目的として、概ね三カ月に一回程度で会議を行なっているが、一九六四年は特にUNCTADをめぐる海運問題、中南米諸国の差別的海運政策に重点を置いて意見と情報の交換が行われ、わが国はこれに積極的に参加した。

(vi) 観光委員会

観光委員会では、観光の分野における国際的な協力推進の立場から、各国の観光事情に関する制度乃至実績について検討を行なってきたが、昨年十月、本年一月の会議においては、特に一九六三年のローマにおける観光に関する国連会議勧告の内容を盛込んだ観光に関するルールをOECDとして作成する(最終的には理事会の決定又は勧告とする)ことについて検討を行なってきた。この検討の結果は、わが国の観光政策、入国管理、旅券制度に影響を及ぼすものであるので、わが国は、わが国の特殊事情を説明しつつ共通のルール作成に協力した。

(ニ) 開発援助関係

(i) 開発援助委員会(DAC)わが国は、OECD加盟前においてもDACのメンバーとして発足当初からその活動に積極的に参加してきており、一九六四年においてはDACの主要活動の一つである同年五月から六月にかけての年次審査(第三回。なお第四項対日コンフロンテーションの項を参照)、同七月末の年次上級会議各種の地域会議国別会議、作業部会等に参加した。

最近一年間における前述のDAC活動において注目されることは、六三年春の国連貿易開発会議及び六四年七月の上級会議で提起された新たな援助問題に対処するためと、DACの従来の作業を更に掘り下げるために新たに次のような三つの作業部会が設けられたことである。その第一は、国連貿易開発会議で採択された諸決議を検討し、先進国の立場の調整と一元化をはかることを、目的として設けられた作業部会である。

第二は、従来の援助条件作業部会の付帯条項を拡げ、低開発国の債務累積問題、輸出者信用の影響等を中心として従来より一層広い角度から援助条件の問題を検討することを目的としている。

第三の作業部会は、援助効果を高め、低開発国の自助努力を強化する見地から受入れ国の援助吸収能力を検討すると同時に援助供与国の援助能力を分析することを目的としている。これらの作業部会は六四年暮から現在迄に夫々二ないし三回の会合を開いた。

今一つ注目されることは、六四年四月以降開かれた、西アフリカ、コンゴ、ラ・米等を対象とする地域会議のうちラ・米の進歩同盟に対する協力の問題、全米開発銀行との協力の問題に重点がおかれたことである。またタイ調整グループ会議もバンコックにおいて引続き数回開催された。

この他にDACでは、多角的投資保証機構設置の問題、技術協力調整の問題などについても検討が行われた。

(ii) 開発センター

OECD開発センターは、一九六二年十月先進国が経済開発に関し有する知識と経験を低開発国の利用に供することを目的として設立され、六四年年央より本格的な活動を開始している。センターは、六四年七月カメルーンのヤウンデにおいて第一回セミナーを開催して以来、同年八月には象牙海岸、六五年一月にはギニアも続けてセミナーを開催した。また、六四年九月にはパリでシンポジウムを開催したほか、独自に幅広い研究活動を行っている。

(ホ) 工業・エネルギー関係

(i) 工業委員会

本委員会は、工業一般に関する諸問題を討議対象としているが、わが国は一九六四年五月の第六回会議、本年三月の第七回会議に出席した。

工業委員会にはその下に七つの作業部会があり、わが国はこれらにも常時参加している。

これらの作業部会のうち重要なものは、一九六四年十月と一九六五年一月に開催された第四作業部会(不況産業部門の研究)、現在まで前後七回開かれ、わが国もOECD加盟以前から特に参加を認められている第五作業部会(造船問題)、一九六五年一月の第七作業部会(工業投資の研究)等である。

また工業委員会はその下に九の特別委員会があるが、わが国の参加状況は次のとおりであった。まず、鉄鋼特別委員会関係では、一九六四年六月の鉄鋼需給調整のための作業部会の最終会議に初めて参加してから、特別委員会本会議のほか、原材料作業部会、年報作業部会、投資計画作業部会に参加した。非鉄金属特別委員会については、十一月の本会議の他貿易障害排除作業部会に二回にわたり出席した。化学特別委員会では、六月の本会議の他、医薬品関係の作業部会、染料関係の作業部会に夫々参加した。繊維特別委員会では、六月と十一月に行われた本会議に夫々出席した。その他の特別委員会では、七月のセメント特別委員会、五月の木材特別委員会、六月の紙・パルプ特別委員会、本年三月の皮革特別委員会の諸会合に出席した。

(ii) エネルギー委員会

この委員会関係では、わが国は一九六四年五月と十二月の会議に出席した。この結果本委員会の重要課題の一つである各国エネルギー総合政策のコンフロンテーションについては、わが国も一九六五年六月にこれを受けることに決定した。また、エネルギー委員会傘下の特別委員会のうち、わが国は石油特別委員会と同委員会の作業部会ならびに石炭、電力各特別委員会に参加した。

(ヘ) 農業水産関係

(i) 農業委員会

OECDの農業関係の活動は、五つの作業部会および各種専門家会議を統轄する農業委員会により行なわれている。農業委員会は、日本のOECD正式加盟後は一九六四年七月、同九月、一九六五年二月と計三回開催されたが、わが国はそのいずれにも積極的に参加した。一九六五年二月の会議においては、「農業における供給と所得の相互関係の報告」が主要議題の一つとして取り上げられ、討議の結果採択された。わが国は、日本の農業が他のOECD加盟国のそれと異なる点に重点をおいてわが国の事情を説明した。

(ii) 水産委員会

水産委員会は、一九六四年六月に日本初参加の第一〇回会議、そして十二月に第一一回会議を開催した。

(ト) 科学関係

OECD科学関係活動は三つの関係委員会とENEAを通じて行なわれ経済成長との関連において、特に最近その活動が重要視されてきている。

(i) 科学者技術者委員会

この委員会においては、主として教育投資計画、科学者、技術者の教育、訓練や適正配分等の問題について意見を交換し、又セミナーの開催などの事業を行なっており、わが国は、これら会議に出席して、日本が経済成長との関連でいかなる教育政策をとっているか等の事情を説明した。

(ii) 科学研究委員会

この委員会は加盟国における科学政策、技術革新と経済成長、科学研究の経済的評価等の問題についての討議の他、特定問題のケーススタディを行なうなどの活動を行ない、又その下部機構の国際研究協力会議においては、大気汚染、道路安全等広い分野に亘って専門家による具体的な研究活動が行なわれている。わが国は各種の資料を提出するとともに専門家の派遣を行なった。

(iii) 科学大臣会議中間委員会

この委員会は、科学政策の確立、科学と経済発展の問題を中心に科学大臣会議(二年に一回開催)の準備委員会としてその活動を行なっているものである。

(iv) ENEA

一九六五年二月にわが国の準加盟が実現したことは前述のとおりである。

(チ) 労働関係

労働力社会問題委員会は、労働力不足対策及び関連問題の処理に積極的に取り組み、きめ細かい活動を行なっており、特に経済成長を促進する手段としての積極的労働力政策をいかに行うかに重点を置いた討議を進めて来た。わが国は一九六四年九月、一九六五年二月の二回の本委員会会議に出席しわが国の労働事情及び関係政策の説明を行なった。

(3) 自由化規約に関する問題

(i) 経常的貿易外取引の自由化に関する規約

(a) 従来の自由化義務を拡大する規約自体の変更として、観光渡航のための外資制限範囲を従来の五〇〇ドルから七〇〇ドル以上に改めること(四月)、及びテレビ用映画フィルムに関する自由化を新たに規定すること(七月)の二つの決定が行なわれた。

(b) 一方、わが国の関係では加入の際の了解覚書の定めに従い七月一日以降、(あ)観光旅行に関しては五〇〇ドルまでの範囲で自由化し、(い)劇場用映画フィルム関係の取引を自由化することにより従来のフィルムに関する留保を撤回し、また、十一月には、(う)用船契約のうち石炭及び鉄鉱石に係るものは過渡期間修了に伴い全面的に自由化を実施し、それぞれ正式通報を行なった。

(ii) 資本移動の自由化に関する自由化規約

貿易外取引委員会、支払委員会での審議の後、七月の理事会で従来の規約の全面的改訂が決定した。この結果規約による自由化義務は大幅に強化されたが、わが国はOECD加入を機にかなり自由化を進めたので今回の改訂に当っては概ね現状維持のラインで必要な留保を付した。

(4) 主要な対日コンフロンテーション

(i) 対日年次経済審査 経済及び関発の検討に関する委員会によるわが国に対する経済審査は加入後間もない一九六四年六月英国、フランスを審査担当国として行なわれ、わが方は松村経済企画庁次官以下の代表が出席した。討議は、日本経済の高度成長の要因、景気調整等として財政金融政策の役割、短資移動の国内的、国際的に及ぼす影響を中心に行なわれ、その結果は七月の理事会で承認された後八月に公刊された。

(ii) 援助政策と実績に関するDAC年次審査

わが国に対する第三回DAC年次審査会議は、一九六四年五月二十七・八日の両日に亘り、ドイツ、EEC委員会およびデンマークを審査国として開催された。わが国からは、森大使、西山経済協力局長をはじめとして、関係各省および0ECD代表部の担当官が出席した。年次審査も今回で第三回目となり、質問は詳細かつ的を得たものが多くわが国の一層の援助努力強化を期待する空気が強かった。本審査会議の最後にソープ議長はわが国援助に対する講評を行い、特に次の点を指摘した。(i)援助量の延び悩み、(ii)援助条件が依然厳しいこと、(iii)援助総額に占める技術協力の割合が少ないこと、(iv)援助機構が分権化され過ぎているきらいがあること。

(iii) 海運

海運委員会によって加盟国の海運政策についての検討が逐次行なわれているが、わが国海運政策についてのコンフロンテーションは本年三月に行なわれた。

(iv) 資本取引の規制に関する実情調査貿易外取引委員会は自由化の障害を明らかにする観点から主要加盟国について資本取引規制の実情を逐次調査してきたが、一九六五年十月からわが国について同様の調査を始めることが決定した。

(v) 科学政策 日本の科学政策についてのコンフロンテーションを一九六六年に行なうことが決定され、この準備のために一九六五年二月OECDから調査員がわが国へ派遣されている。

(5) その他の協力関係

(イ) セミナーへの参加

労働力社会問題委員会、工業及び科学関係の諸委員会等の主催の各種セミナーには、加盟以来政府、民間の関係者が積極的に参加した。

(ロ) フェローシップ応募

OECDには人的資源開発のための教育投資計画立案等の専門家を養成するフェローシップが設けられているが、一九六五年度の研修員公募にわが国からも若干名が応募した。なお、採用された者は七月から約一年間経費OECD側負担で所定の研修を受ける。

(ハ) 広報担当官会議

一九六四年四月二十三日、四日の両日、OECDの広報担当官会議がパリで開催され、わが方からも担当官が出席した。

(ニ) 統計交換

わが国とOECDとの間には、一九六三年十月OECD事務局のシーゲル統計及び国民経済計算部長等の来日を契機として、統計資料の迅速な交換のルートが樹立されたが、この方面での協力はその後着実にその成果をあげている。

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3 0ECD加盟の意義

OECD加盟の第一の意義は、わが国が名実ともに世界経済における最も重要なメムバーの一つとしての国際的地位を確立したことにある。

第二に重要なことは、世界的に重要性のある殆んどすべての経済問題について欧米先進国との間に意見の交換を行いアジアの一員としてのわが国の立場を表明しつつ、協調をはかることが可能になったことである。例えば、低開発国問題については、OECDの各種の委員会において、一九六四年夏以来、従来のDACにおける開発援助の分野にとどまらず国連貿易開発会議でとりあげられた貿易、海運、融資等経済の各分野についても工業国間の政策調整の努力が試みられている。また、輸出信用の分野における過当競争排除のための意見の交換、更には国際金融面での、例えば英国のポンド危機に際しての意見調整等が右にあげた先進国間協調の好例である。

第三に考えられることは、OECDの諸活動への参加は、単に経済面のみにとどまらず労働、科学等の広範囲な分野において、欧米各国との相互理解を深めるのに役立っていることである。OECDの場を通じての協力は、地理的にも欧米から遠く離れたわが国にとって極めて貴重な機会である。さらに「経済及び開発の検討に関する委員会」(EDRC)における対日年次審査等を通じわが国の経済および政策について客観的な検討が加えられ、併せて欧米諸国に日本経済の実体と政府の真に意図するところを正しく認識せしめる機会を与えられたことも付け加えるべきであろう。また、OECDにおいては一部諸国が鉄鋼、造船等の分野は不況産業であるとの認識に立ち、国際的な対策を打出そうとする動きがみられるが、これら産業のわが国における現状は欧米諸国のそれと必ずしも同じではなく、この意味でわが国代表がOECDの諸会議でこれらの産業分野に一方的判断に基く規制措置を行なうことが適当でない所似を具体的に説明したことも大きい意義があった。

OECDの諸会合、諸活動を通じて得られる資料、統計、情報は、OECDの広範囲な活動に応じ工業、科学原子力関係、経済財政政策、鉄鋼、繊維をはじめ各主要工業分野等極めて多岐にわたっており、わが国の政策立案の参考として有益なものが少くなかった。又民間人をも含めた人物交流がひんぱんに行なわれていることも加盟の意義の一つとしてあげられる。

しかしながらわが国はOECD加盟以来まだ日も浅く、かつOECDそのものが速効性を期待せず、長期的視野に立った活動を行っているので、わが国加盟の意義はむしろ将来に期待されるべきであり、この意味でも、今後ともOECDの諸活動にますます積極的建設的に参加するよう努力する必要がある。

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ガット(関税及び貿易に関する一般協定)との関係

1 ケネディ・ラウンド交渉

(1) 経  緯

(イ) ガットは一九四八年発足以来、五回にわたり大規模な関税引下げ交渉を主催してきたが、六一-六二年の第五回関税交渉(いわゆるディロン・ラウンド)の前後にかけて、従来の交渉方式がほぼ限界に達し、充分な関税引下げの成果が期待できないことが痛感されるに至り、六一年末に開かれたガット大臣会議では、今後世界貿易の一層の拡大をはかる見地から「関税一括引下げ」の構想が打ち出された。

かかる気運をうけて六二年秋には米国で画期的な通商拡大法が成立し、各国との交渉を通じて米国の関税率を五年間に五〇%まで引下げうる権限が大統領に与えられた。米国は、この権限を最大限に活用すべく、ガットの枠内で行なわれる関税一括引下げ交渉(いわゆるケネディ・ラウンド)を積極的に推進する態勢を固めた。

(ロ) 六三年五月に再び開かれたガット大臣会議によってケネディ・ラウンド交渉の具体的な準備がととのえられ、交渉の基本原則として次の諸点が合意された。

(i) 関税引下げは均等一律引下げを基礎とし、例外は国家的重要性を有する最少限のものにとどめる。なお、各国間の関税率に大幅な格差がある場合には特別の引下げ規則に従がう。

(ii) 交渉は農産物を含むすべての産品を対象とし、農産物についてはその輸出増大のための合理的な条件を創設する。なお、農産物のうち、穀物、肉、酪農品など一部のものについては世界商品協定の締結により問題を解決する。

(iii) 関税以外の貿易障害についても交渉する。

(iv) 後進国の輸出に対する障害の軽減にはあらゆる努力を払うものとするが、後進国に対しては相互主義を要求しない。

さらに、右の諸原則にてらして具体的な交渉規則を策定し、また実際の交渉の運営にあたる中心機関として新たに「貿易交渉委員会」の設置を決定した。

(2) 六四年五月の大臣会議前後の動き

前記貿易交渉委員会は、六三年六月以降具体的な交渉規則の検討をつづけたのち、六四年五月四日から六日までの間再び大臣レベルの会合を開いて、それまでの討議の進捗ぶりをレヴューした。この会議では、五月四日をもってケネディ・ラウンドを正式に発足させることを確認するとともに、すでに工業製品の分野では「国家的重要性を有する最少限の例外を除き、原則としてすべての品目の関税率を五年間に五〇%引下げる」ことを骨子とする交渉規則の大綱が合意されていることにかんがみ、右例外品目のリストを六四年九月十日に各国が一斉に提出すべきことを決めた。(なお、この期日はその後十一月十六日と変更された。)一方、農産物の取扱いについては、下記(4)のとおり米国とEECの意見の調整がつかず、交渉規則の策定に至らなかったため、大臣会議は必要な規則を早急に確定するよう要望するにとどまった。

(3) 鉱工業品に関する交渉開始

六四年十一月十六日、各国はジュネーヴのガット事務局に対して、五年間五〇%引下げの原則に応じられない鉱工業品の「例外リスト」を一斉に提示することにより、いよいよケネディ・ラウンドは鉱工業品に関する限り実質的な交渉段階に入った。この日に例外リストを提示したのは、日本、米国、EEC、英国、フィンランド、スイス、オーストリア、ノールウェー、スウェーデン、デンマークの一〇カ国であり、これらの国については例外品目を除いてすべて自動的に五〇%の関税引下げが行なわれることになる。

また同日、チェコおよびカナダもリストを提示したが、チェコは計画経済国であることから関税の機能が自由経済国の場合と異なるために特殊な形のオファーとなっており、またカナダは農産物の輸出を中心とする特殊な貿易構造をもつために、前記諸国の関税引下げによる期待利益に見合って関税を下げられる品目だけを掲げたリストを提示している。

さらに、その他の交渉参加希望国に対しても、必らずしも五〇%引下げの原則にこだわらず、各国の国力や経済力に応じた弾力的な交渉手続が用意され、または今後検討されることになっている。

なお、前記の例外リストは「国家的重要性を有する最少限のもの」という大臣会議の決議にてらして各国の判断で作成されたものであり、六四年十二月から六五年二月にかけて前記一〇カ国がジュネーヴに集まり、各国の例外品目が真に国家的重要性の基準に合致したものであるか否かについて客観的な多角的審査が行なわれた。この会合では、当事国からの理由説明とこれに対する質疑応答が行なわれた。更にその後、利害関係国との二国間交渉を通じて相互にリストの範囲を調整することになっており、これら一連の交渉の妥結には一年は充分にかかるものと見られている。

(4) 農産物に関する動き

農産物については、世界農産物貿易拡大のための合理的な条件を創設すべきことが大臣会議で合意され、この目的にそって農業委員会を中心に交渉が行なわれてきた。

即ち、農産物はその多くの特殊性のため、鉱工産品とは異なったアプローチがとられることになり、先ず農産物に関する一般交渉ルールを策定しようとする努力が続けられた。

農産物のうち、穀物、肉、酪農品など特定産品については、これを世界商品協定の締結によって問題を解決するというアプローチが合意され、穀物、肉、酪農品の三専門グループが設置された。このうち、特に穀物及び肉についてはすでに国際価格の安定、輸入漸増の保証、国内政策に関するコミット等のエレメントを中心に協定の内容につきかなり具体的討議が行なわれている。

他方、世界商品協定対象品目以外の農産物については、各種農産物に与えられている支持水準を交渉の対象とし、この支持水準を一定期間固定化しようとする所謂モンタン・ド・スティアン方式を主張するEECと、関税その他の貿易障害の軽減撤廃を通じて輸入の増大を可能ならしめるような交渉規則の策定を主張する米国等主要輸出国が対立して討議が難航した。

一方、鉱工業製品については前記(3)のごとく既に実質的交渉の段階に入っているのに対し、農産物については一向に進展がみられず、米国その他多数の国が農産物の実質的交渉の早期開始を強く望むに至ったことにもかんがみ、一九六五年一月開催された農業委員会でガット事務局長ウィンダム・ホワイトは、交渉の行きづまりを打開するため一般交渉ルールを先ず策定しようとする従来の方法を避けて、各国が商品協定対象品目を含め各品目毎にオファーを一定期日に提出し、これに基づいて交渉を進めようとの幅のある妥協案を示し、目下この提案に沿って解決がはかられる方向にある。

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2 低開発国貿易問題

(1) 貿易開発に関するガット新章の採択

(イ) 経  緯

現在ガット加盟国(六六カ国)の三分の二以上は低開発国で占められているが、現行ガット協定三十五カ条のうち低開発国の特殊事情に対する配慮を定めた規定は、一カ条(第十八条)に過ぎず、内容的にも不十分なため、低開発国より低開発貿易促進の見地からガット規定の改正を検討すべしとの声が強くなりその結果一九六三年五月の大臣会議において実行計画第八項に基づき規定機構委員会が設けられた。右委員会は一九六四年十一月迄六回の会合を開き、低開発国貿易促進のため先進国がとるべき措置を定める規定(新章)をガット協定に追加するための改正議定書のテキストを作成、一九六五年二月八日ジュネーブで開催されたガット締約国団特別会議で右テキストが、採択され、直ちに各国の受諾のため開放された。

(ロ) 新規定の骨子

新規定は、「原則及び目的」、「約束」及び「共同行動」の三条からなっているが、そのうち実質的部分たる「約束」の骨子は次の通りである。

先進締約国は、次の措置をとる。

(i) 法律上その他やむを得ない理由がある場合をのぞくほか、低開発国にとり特に輸出についての関心が深い産品に対する関税、数量制限等の貿易障害を現行以上に強化せず、かつ、これらの軽減廃止に努める。

(ii) 全部又は大部分が低開発国で生産される産品に課される内国税等の軽減撤廃に努め、またこれを輸入する先進国の政府がその再販売価格を決めている場合には、当該政府は、その産品についての販売差益を衡平な水準に維持するようあらゆる努力を払う。

(iii) 先進国は、低開発国からの輸入を促進するためのその他の措置(国内経済構造の改革、消費奨励、貿易促進等が含まれうる。)を講ずるよう検討する。

(ハ) 前記の改正議定書は、少なくともガット締約国の三分の二が受諾しなければ発効しないので、発効までにはなお相当の期間が要すると予想されるが、低開発国側はできるだけ早く実施を希望しているので、各国政府は発効までの間、とりあえず追加規定を事実上実施することとし、右特別会議において、「憲法上及び法律上認められた権限の範囲内において追加規定を事実上実施する」との趣旨の宣言が採択された。低開発国と密接な貿易関係をもつわが国は、低開発国との貿易を円滑に行うため右宣言に参加し、又国会の承認を求めた上、受諾すべくその準備を進めている。

(2) 貿易開発委員会の設立

右ガット特別会議において、ガット貿易開発委員会が設置され、日、米、英、インド、ブラジル等五〇カ国が構成国となった。右委員会は、新章の運営(義務実施に必要な協議の準備及び実施等)にあたるほか、従来のガット低開発国問題関係各種機関(第三委員会、実行委員会、特恵作業部会等)を吸収、再組織し、懸案の検討及び総会に対する勧告の作成をその任務とする。今後委員会が取上げるべき重要問題としては、新章の適用対象品目の検討、新章運営手続の策定、低開発国特恵問題等がある。

貿易開発委員会により吸収された諸機関の主な活動は次の通りである。

実行委員会及び貿易拡大第三委員会

一九六三年に開かれた実行委員会の報告は、一九六四年三月のガット第二一回総会において審議され採択された。(「わが外交の近況」(第八号)五、ガットとの関係、4、(2)参照)

実行委員会の会合は十一月九日開かれ、本委員会に先立って開かれた第一小委員会及び第二小委員会の報告について討議を行ない、低開発国側は、実行計画の実施状況に不満を表明し、(イ)数量制限の維持により譲許税率が無効の場合の代償を出すべきこと、(ロ)貿易拡大第三委員会における低開発国関心品目追加リストを決定すること、(ハ)EEC及びEFTAが連合低開発国や英連邦国に対して与えている待遇を他の後進国関心品目に対しても供与すること、(ニ)低開発締約国のケネディ・ラウンド参加のベースを至急決定すること、(ホ)小パネルを設けて実行計画実施振りを審査すること等を要求した。

また、一九六三年十月及び一九六四年三月に開かれた貿易拡大第三委員会の報告は、一九六四年三月のガット第二一回総会において審議され採択されたが本委員会の会合は、十一月十二日に開かれ、(イ)低開発国輸出関心追加品目、(ロ)開発計画の検討計画、(ハ)国際貿易センター、(ニ)生産及び市場化技術等について討議が行なわれた。

結局、十一月二十六日の特別総会において、議長は、(イ)貿易拡大第三委員会の検討品目追加は来年早々貿易開発委員会で検討することとする。(ロ)低開発締約国の輸出関心品目に対し、数量制限を維持している国に対し補償の適用、また、数量制限を廃止するためのパネルの設置については事務局長に検討させ、来年三月の総会直前の理事会にはかった上で、第二二回総会に報告することとするという諸点を提案し、異議なく認められた。

なお熱帯産品についてはケネディー・ラウンドを通じて貿易障害の軽減廃止に努め、右で解決されない問題は貿易開発委員会で取りあげることになった。

特恵作業部会

本作業部会の第三回会合は二月二十五日から三月十九日まで開かれたが、先進国対低開発国、さらに、低開発国間の意見が対立して進展せず、討議状況と各国の態度をとりまとめた報告がガット第二一回総会に提出され、テーク・ノートされるに止った。

本作業部会の第四回会合は十月二十二日から二十六日まで開かれた。

インドは、(イ)低開発国産品に特恵待遇を与える、(ロ)特恵譲許のための交渉、協議及び運用審査のための委員会を設ける、という趣旨のテキストをガット新章に挿入する提案を行ない、低開発国側は右提案を支持した。

先進国側は米国を先頭にインド提案の討議に反対した。

結局、特恵問題の検討を続けることにし、(イ)特定品目に関し、先進国の低開発国に対する特恵の付与、(ロ)特定品目に関し、低開発国が他のすべての低開発国に対する特恵の付与についての具体的提案をできれば十二月三十日までに提出すべきことが合意され、本問題の検討が総会の適当な機関に委任されるべきことが希望された。

なお、低開発国間特恵に含まれる原則については、少くとも地域的基礎のものである限り異議がなかったとされたが、右についてわが国は、その条件が明らかとならない限り、あらかじめ原則を認めることはできないとして留保した。

本作業部会の報告は十月二十九日の理事会に提出され、理事会勧告とともに十一月二十五日ガット特別総会に提出され、採択されたが低開発国側は特恵が低開発国の貿易拡大に必要であるにもかかわらず、見るべき進歩がなかったことは遺憾であると述べた。なお低開発国間の地域的特恵につき留保を付していたのはわが国のみであることにかんがみ、わが国は右特別総会において、「わが方としては低開発国間の地域的特恵はその内容及び条件のいかんにより判断されるべきものと考えるので、したがって、今後ガットにおいてこれに関する政策を検討すること自体に反対するものではない。」ということを記録にとどめた。本作業部会は、新設される貿易開発委員会に引き継がれることとなった。

国際貿易センター

本センターは、一九六四年二月の本センターに関する専門家グループの第一回会合において設立が合意され、(「わが外交の近況」(第八号)五、ガットとの関係4(5)参照)、報告は貿易拡大第三委員会の報告の一部としてガット第二一回総会で採択され、五月一日から発足し、各国政府は本センターとの連絡担当官を指名した。また、国際貿易フォーラム(季刊)第一号が刊行された。

専門家グループの第二回会合は一九六五年二月十五日-十八日に開かれ、米、英、仏、インド、ブラジル、アラブ連合等一五カ国が代表を、わが国、スイス、ポーランド等一〇ヵ国及びEFTA、OECD、国連はオブザーバーを派遣した。

今後の事業内容のうち、特に強調されたのは、(イ)貿易情報業務の照会の優先処理、(ロ)国際貿易フォーラム(季刊)から貿易政策及び貿易機会ノートを切り離して月刊とすること、(ハ)低開発国の貿易促進に従事する人の研修方法についてである。

(なお低開発国貿易問題については「OECDとの関係」の項目及び「国連貿易開発会議」の項目も参照ありたい)

3 対日ガット三十五条援用問題

わが国は、従来ガットの場において総会その他あらゆる機会をとらえ対日ガット三十五条援用の早期撤回を強く要請するとともに、二国間の場を通じてもその早期撤回の実現に努めてきた。この結果、オーストラリアが一九六四年五月二十七日、ベルギー、ルクセンブルグ及びオランダが同年十月二十一日、マダガスカルが同年十二月十六日に対日三十五条援用を撤回し、主要貿易国の対日援用問題は大方解決をみるに至った。

しかし、新たにガットに加入する新興独立国が独立時における旧宗主国のガットの権利をそのまま継承して、三十五条を援用する傾向が一般化しており、このため援用国の数は依然としてかなりの数にのぼっているが、今や援用国の大部分は後進国であり、本問題は対後進国関係を中心とする新しい段階に入ったといえよう。

わが国としては、このように対日援用国がなお多数存在する現状はひとり日本のみの問題であるにとどまらず、ガット自体としても好ましくなく特にケネディ・ラウンドとの関連において、その交渉によってわが国が受ける利益は限られたものとなるので、本問題の早期解決を強く要請し、援用を撤回しない国に対してはケネディ・ラウンド交渉及びガット新章を通ずる自由化、関税引下げの利益に均霑せしめることは困難であるとの立場を明らかにしてきている。

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IMF(国際通貨基金)との関係

IMF東京総会

第一九回IMF年次総会は世界銀行およびその姉妹機関と合同で、一九六四年九月七日から十一日まで東京において開かれた。右年次総会には加盟百二カ国の大蔵大臣、中央銀行総裁ら世界の国際金融関係者約二千名が参加し、わが国からは池田前総理が歓迎の挨拶を行なったほか、田中大蔵大臣、山際前日銀総裁らが出席した。

今回のIMF東京総会では定例議題である年次報告、財務報告等を万場一致で可決したほか、マラウイの新規加盟を承認し、また理事の改選、役員の選出等を行なった。

他方、右総会における各国代表の主要関心事である国際流動性問題、とりわけIMFクォータの増額問題については、フランス、オランダ等のEEC諸国の一部が準備通貨国の国内政策如何によって世界の流動性供給が左右される現行IMF体制は行き詰まりの兆候を示していると指摘した後、国際通貨制度の中心的存在はあくまで金とすべきであり、このためIMF枠外の国際機関で金との結びつきを強めた新らしい信用準備資産(新国際通貨)を創出の上、現在の準備通貨を補う必要がある旨主張し、現行のドル中心の通貨制度を批判したほか、準備通貨国が今後とも一層金融節度を遵守するよう強く要請したが、結局「総務会は理事会がIMF加盟国のクォータ調整問題につき検討を始め、早い時期に適当と考える提案を総務会に提出するよう要請する」との決議案が低開発諸国をも含め、万場一致で可決承認されたので、IMF理事会は一九六五年秋までにIMFクォータの増額を実現すべく、早急に具体的細目をとりまとめた上、総務会に勧告案を提出することとなった。

なおIMF以外に於ても一〇カ国蔵相会議で国際流動性に関する基本的問題の検討がなされたほか、英国のポンド危機に際しては緊急援助融資が行なわれるなど、金融面に於ける国際協力の気運が高まっており、我国もこれに積極的に貢献して来た。

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商品問題に関する国際協調の動き

1 第三次国際すず(錫)協定

現行の第二次国際すず協定(一九六一年七月一日に発効)は、五カ年の有効期間をもって明年六月末に失効するので更新する協定(第三次国際すず協定)草案を作成するため、昨年初めより準備委員会を開き検討して来たが、このほど草案がまとまったので、本年三月二十二日より国連主催のもとにニューヨーク国連本部で会議を開き新協定締結のため交渉が行なわれる。

わが国は消費国としてこの協定に加盟しており、この会議にも代表を派遣し消費国の利益が保たれるよう努める方針である。

この協定の目的は、すずの国際的需給関係を調整することによってすずの価格を安定させることにあるが、そのために、緩衝在庫の売買操作による国際市場のすずの量の調節および加盟生産国に対する輸出割当の二方法が協定に規定されている。

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2 国際小麦協定

現行の国際小麦協定は、本年七月三十一日失効することになっているが、国際小麦理事会は二月四日ロンドンで開かれた第四一回会期の会合で、現行協定の有効期間を明年七月三十一日まで一年間延長することを決定した。このため、理事会は「一九六二年の国際小麦協定の有効期間の延長に関する議定書」を採択したが、この議定書は三月二十二日から四月二十四日まで各国の署名のためワシントンで開放される。この議定書が現行協定(加盟国四九)と同様、各国の支持を得て発効することは間違いないものと見られている。

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3 国際砂糖協定

一九五八年の国際砂糖協定は一九六三年十二月末失効するので同年八月ロンドンで開催された国連砂糖会議で有効期間二年の延長議定書が採択され、これが発効して現在に至っているがこの議定書は同協定の輸出割当、価格等経済条項の適用を停止せしめ、協定の運用にあたる砂糖理事会の機能のみ存続している。砂糖理事会は一昨年末より新協定草案作成のため準備委員会を開き検討を行なっている。一九六四年十一月ロンドンで開催の砂糖理事会は新協定草案作成の参考として執行委員長を主要国に派遣せしめ、その感触を得た上本年四月の砂糖理事会で更に新協定の構想を討議し、その結果意見がまとまれば起草委員会を開き新協定交渉会議を開催する運びとなろう。

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4 国際ゴム研究会第一七回総会

国際ゴム研究会は、一九四四年、ゴムの生産、消費および貿易事情の研究を目的として設立され、わが国は一九五二年に加盟した。

第一七回総会は一九六四年五月十八日から二十二日まで東京において開催され、わが国の他、米、英、仏、マレイシア、インドネシア、カンボジャ等二四カ国が参加し、加盟国中二カ国が欠席した。

主要討議事項次のとおり。

(1) 天然ゴム及び合成ゴムの一九六四年々間需給推定。

(2) 天然ゴムと合成ゴムの現在の競合事情及び将来の発展状況の検討。

(3) 天然ゴムと合成ゴムの相互協力による最善の発展についての審議。

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5 国際羊毛研究会第八回総会

国際羊毛研究会は一九四七年、世界の羊毛需給事情検討のため設立され、わが国は一九五二年第五回総会に際して加盟した。

第八回総会は一九六四年十二月七日から十日までロンドンにおいて開催され、わが国の他、米、英、仏、豪、ニュー・ジーランド、アルゼンティン等三〇カ国が参加した。

主要討議事項次のとおり。

(1) 世界羊毛事情、特に(イ)原毛の生産、消費及び在庫、(ロ)原毛価格、(ハ)国際貿易についての検討。

(2) 原毛ならびに競合人造繊維の世界的事情についての研究。

(3) 研究会の将来の活動についての討議。

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6 国際綿花諮問委員会第二三回総会

国際綿花諮問委員会は、一九三九年、主要綿花輸出国が世界綿花事情を検討するため設立したものであるが、その後輸入国も参加し、わが国は一九五一年に加盟した。

第二三回総会は一九六四年六月一日より十日までフランクフルトにおいて開催され、わが国の他、米、英、仏、メキシコ、ペルー、アラブ連合等三八カ国が参加した。

主要討議事項次のとおり。

(1) コットン・プロモーション計画樹立についての討議。

(2) 国際綿花協定問題の討議。

(3) 米国新綿花政策についての見解の交換。

(4) メートル法移行状況についての報告。

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