共産圏諸国と日本

1 共産圏諸国との貿易の現状

一九六四年におけるわが国の共産圏貿易(ユーゴスラヴィアを除く)は輸出入合計で八億三、○○○万ドル(通関べース)と前年の五億二、七〇〇万ドルに比し五八%の増加を示した。このうち輸出は三億八、六〇〇万ドル、輸入は四億四、四〇〇万ドルで、前年に比しそれぞれ五三・二%及び六一・七%の増加を示している。また、わが国の貿易総額に占める共産圏の比重も一九六三年の四・三%から一九六四年には五・七%へと増加しており、西欧諸国の対共産圏貿易の割合に比べてもむしろ高率となっている。

このような急速な拡大は特に対中共貿易の飛躍的な伸び(前年比一二七%増)に負うところが多いが、ソ連、東欧もれぞれ二七%、六六%の増加となっている。

なお、国別の内訳ではソ連、中共二国との貿易がわが国の共産圏貿易の八六%を占めており、西欧諸国の東西貿易において東欧の比重が高いのと対照的である。

昨年、共産圏貿易において目立った動きがみられたのは西欧諸国によるソ連及び東欧諸国向けの長期信用供与である。すなわち、一九六四年七月英国がソ連向けテリレンプラントの輸出に一五年の延払いを認めたのに続きフランス、イタリアもソ連に対し包括的に長期信用供与に同意した他、東欧諸国に対しては既にかなりの西欧諸国が五年を超える長期信用を供与しており、わが国においても一九六四年五月ミコヤン副首相(当時)の訪日に続き、三億五、○○○ドルにのぼるといわれる一七品目のプラントの買付予定リストが提示され、同年九月ソ連向け尿素プラントの輸出に八年の延払いが認められた。

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2 ソ迎との貿易の現状

一九六四年の日ソ貿易は、同年二月十日に東京で締結された日ソ貿易議定書により、わが国の対ソ輸出一億四、二〇〇ドル、輸入一億三、〇○○万ドル、わが国の対ソ輸出超過一、二〇〇万ドル(FOB現金受払べース)と見積られたが、同年上半期の輸出は四、二〇〇万ドル、輸入七、○○○万ドル、対ソ入超二、八○○万ドルとなり、その後もわが国の入超傾向が続く公算が大であった。

このため、わが方はソ連政府に対し、日ソ貿易の中間実績検討を提案し、昨年十月末、東京で実績検討を行い、ソ側に対日輸入の促進を強く要望した。

しかしながら結局同年の日ソ貿易は、FOB現金受払べースで輸出一億二、二〇〇万ドル、輸入一億五、一〇〇万ドル、対ソ入超二、九〇〇万ドル、通関ベースで輸出一億八、二〇〇万ドル、輸入二億二、七〇〇万ドル、対ソ入超四、五〇〇万ドルに終った。

一九六四年の通関べースによる日ソ貿易は、前年に比べ輸出入とも増加しているが、輸出の一五%の増加に比べ、輸入は四〇%と著るしい増加である。

一九六四年の日ソ貿易が、貿易議定書で予想したわが国の対ソ出超とならず、大幅な入超となった主な理由は、木材、銑鉄等の原材料の対ソ輸入がわが国の需要の旺盛を反映して大幅に増加した反面、対ソ輸出の面では、肥料、スフ綿等の輸出余力に問題が生じ、またプラント輸出が遅延もしくは不成立に終ったことなどの事情に求められよう。

一九六四年十二月中旬から、モスクワにおいて一九六五年の貿易についての交渉が行われ、六五年二月五日日ソ貿易議定書が署名された。この議定書は、一九六三年二月五日に締結されたいわゆる三カ年(一九六三年より六五年まで)貿易・支払協定の最終年度の輸出入品目及び金額・数量を、最近の両国の経済事情に即して修正したものである。

この議定書付属の品目表によれば、一九六五年におけるわが国の対ソ輸出は、一億八、九〇〇万ドル、輸入は一億六、九〇〇万ドル(FOB現金受払ベース)と見積られている。これは前年の品目表に比べ、輸出三三%、輸入三〇%の増加、前年の実績に比べ、輸出五五%、輸入一二%の増加である。

主な輸出品目としては、船舶、肥料プラント、軽工業及び繊維機械、各種の機械、ゴムベルト、コード織物等従来からの輸出品目のほか、鋼管、合成ゴム、人造皮革、カプロラクタム、ポリエチレン、各種の化学品等が挙げられる。またメリヤス及び縫製品の如き消費物資が輸出品目表に加えられたことは、今後の消費物資の対ソ輸出という見地から注目される。

他方輸入品目は、従来に引続き、石油、木材、銑鉄、石炭等の原材料が主な品目であるが、ソ連は各種の設備、機械の対日輸出の増大による貿易構造の高度化を希望している如くである。

また一九六六年以降の新貿易協定については、前述のモスクワ交渉で、五年の期間とすることに原則的な合意がみられ、一九六五年秋、東京で協定の締結交渉が行われることとなっている。

なお、日ソ間には、現行三カ年協定締結と同時に、一九六三年度の日本とソ連極東地方との間の消費物資の交換に関する書簡が交換されている。一九六四年はこれがそのまま延長され、一九六五年についても引続きこれが延長適用されることとなり、その旨の書簡が前述のモスクワ交渉の際双方の間に交換された。

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3 東欧諸国との貿易の現状

わが国と東欧諸国との貿易は、地理的に遠く隔っており、かつ伝統的交易関係も薄く、またわが方買付可能品目も少いため、従来からその規模は極めて小さいが、最近はソ連の平和共存政策の影響ないし、一部東欧諸国の自主的な経済発展傾向を反映し、各国とも対日貿易の増進に積極的態度を示し、特に一九六四年には、各国の対日主要輸出品目たる農産物の生産が過去数年間の不振より回復したこと等もあって、わが国との貿易額は輸出入ともかなり増え、ユーゴスラヴィアを含む東欧八カ国合計で、輸出四、六〇〇万ドル、輸入三、〇○○万ドル、輸出入合計で前年の五九%増となっている。しかし、わが国対外貿易額に占める割合はなお○・六%に過ぎない。

主要取引品目は、輸出は化学品、鋼材、各種機械・設備(船舶を含む)、繊維品等の工業製品のほか冷凍まぐろ、また輸入は麦芽、とうもろこし、採油用種子等の農産物および鉄鉱、石油、麻等の工業原料である。

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4 アジア共産圏との関係

アジア共産圏とは何れも国交関係がなく、貿易も民間べースで行われており、その九〇%近くは中共との貿易である。中共及び北鮮との貿易が一九六三年の二倍以上に急増したことが目立っている。

(1) 中   共

一九六四年の中共との貿易は、通関統計に依れば、わが国の輸出一億五、三〇〇万ドル、輸入一億五、八○○万ドル、計三億、一〇〇〇万ドルで、前年に較べて一二七%の大幅な増加となり、わが国の総貿易額に占める比率も二・一%に上昇した。

主な輸出品は化学肥料(三〇・一%)、鋼材(二三%)、人造繊維(一〇・四%)、機械類(九・八%)であり、輸入品は銑鉄(二八・七%)、大豆(一九・三%)、えび(七・三%)、とうもろこし(五・六%、塩(三・六%)などである。

プラント類の延払い輸出商談も行われているが、これに伴って延払いに輸出入銀行の融資を認めるかどうかが問題となった。政府はこれはわが国の国内問題であり、わが国が自主的に決定すべきものであるとの態度をとっているが、中共側は輸銀融資を約することを要求し、貨物船一隻の輸出契約は六五年三月失効するに至った。

なお現在の日中貿易はLT取引と、友好商社取引との二本立で行われているが、両者の取扱比率を推定すると、六四年の総額のうち五八%、即ち一億八、○○○万ドル程度が友好商社取引で、残余の四二%、一億三、○○○万ドル程度はLT取引の取扱い分と思われる。

一九六四年四月以降における両国間の貿易面での主なる出来事としては、

(イ) 六四年四月十日、中共経済貿易展覧会の開催(四月三十日まで東京、六月十三日から七月五日まで大阪)

(ロ) 同年七月二十三日、LT貿易中共側連絡員の入国許可(八月十三日来日)

(ハ) 同年一月二十五日、LT日本側連絡員訪中

などがあげられる。

(2) その他の地域

北鮮、および外蒙との貿易は、いずれもわが国の貿易総額の一%にも満たず特に外蒙との貿易は往復一〇〇万ドルに達していない。

北鮮との六四年の貿易額は、通関統計(以下同じ)で総額三、一〇〇万ドル(輸出一、一〇〇万ドル、輸入二、○○○万ドル)、対前年比一一三%の増加を示し、金額的には比較にならないが、共産圏ではソ連、中共に次ぐ地位を占めるに至った。

わが国からは主として金属及び金属製品、繊維製品、化学製品などを輸出し、北鮮よりは鉱産物、農水産物などを輸入している。

北越との貿易総額は、一、三〇〇万ドル(輸出三〇〇万ドル、輸入一、○○○万ドル)で、わが国の北越からの主要輸入品であるホンゲイ炭の供給不足などにより、対前年比九・三%の減少を示した。

同国への輸出品は繊維及び同製品、化学製品などである。

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