西欧地域

1 ポンピドウ仏首相の来日と第二回日仏定期協議

(1) ポンピドウ・フランス共和国首相は、夫人およびクーヴ・ドゥ・ミュルヴィル外相以下六名の随員を伴い、一九六四年四月六日来日し、同月十二日まで滞在した。

同首相夫妻は四月七日天皇・皇后両陛下に謁見し、宮中における午餐会に出席したほか、ポンピドウ首相は池田首相と会談し(両国外相同席)、またクーヴ・ドゥ・ミュルヴィル外相は、同月八日、大平外相と会談を行った。

(2) ポンピドウ首相一行は東京滞在中、上野西洋美術館におけるミロのヴィナス展示会の開幕式に出席したほか、京都および奈良を訪問し、多数の文化財、史跡を視察した。

(3) 前記(1)の日仏首外相の会談は、一九六一年九月、大平外相が訪仏して行った日仏定期協議につづく第二回会合であり、日仏両国間の関係を討議するとともに、国際情勢、殊に中国問題、南東アジア情勢、欧州問題、東西関係および国際政治上の主要問題について意見を交換した。

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2 第二回日英定期協議

(1) 日英定期協議

一九六三年九月に大平外務大臣が訪英して行われた第一回日英定期協議に引続き、第二回日英定期協議は、英国よりバトラー外相(夫人同伴)が、一九六四年五月一日から同五日まで来日して、大平外務大臣との間で行われた。

バトラー外相夫妻は滞在中、天皇・皇后両陛下から拝謁を賜わった。

大平外務大臣とバトラー外相は五月二日及び四日の二回にわたって会談したが、会談の主な議題は、マレイシア連邦、インドネシア、ヴィエトナム、ラオス、カンボディアを中心とする東南アジア問題、中国問題、東西関係、軍縮問題及び経済問題等日英両国が関心を有する広範な問題にわたって行われ、相互の立場の理解が促進されるとともに、各種の問題について両国政府の見解が極めて類似していることが確認された。

バトラー外相は、また、池田総理大臣を訪問して会談を行った。

(2) 第三回日英定期協議

第三回日英定期協議は、椎名外務大臣が一九六五年一月十四日から十七日まで英国を訪問して行われた。

椎名外務大臣は一月十五日にゴードン・ウォーカー外相及びジエイ商相と会談した。また、同日ウィルソン英首相を訪問し、表敬、会談した。

椎名、ゴードン・ウォーカー両外相会談のおもな議題は、中国をめぐる情勢、東南アジア問題、軍縮問題及び日英両国間の経済関係等であった。ジエイ商相との会談では、英国の輸入課徴金、国連貿易開発会議、ケネディ・ラウンド等を含む国際貿易問題等について話合った。なお、従来と同じく、今回も両国の官吏級レベルにおいて各種の問題が討議された。

この日英定期協議を通じ、両国間の理解が一層深められ、この会談が両国間の親善関係を維持し、ますます発展させる上で極めて有益であることがあらためて確認された。

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3 日英領事条約の署名

日英領事条約は、一九六四年五月四日、外務省において、大平外務大臣と、第二回日英定期協議のため来日中であった英国のバトラー外相との間で署名された。この条約は批准書の交換の日から三十日後に発効することになっているが、英国においては一九六四年六月に議会の承認を了している。わが方においては、目下国会に提出中である。

この条約は、条約本文、署名議定書及び交換公文からなっており、領事館の開設、領事の任命、管轄区域及び特権、並びに在留民の保護などの領事の職務について規定している。

本条約締結交渉は、東京において、一九六二年八月から九月及び翌年六月から八月の二回に亘り行われた後、一九六四年一月から最終的交渉が行われた結果同年五月に合意に達したものである。

なお、この条約は、戦後わが国が結んだ領事条約としては、日米領事条約に次いで第二番目の条約である。元来、英国は伝統的に領事特権を相互主義に基づく条約上の基礎に置いており、無条約の状態では外国の領事に対し認める特権を極めて制限していること、並びに、英本国及び植民地におけるわが国の領事の職務権限は、この条約の規定により明確となること等の理由から、この条約の締結は大きな意義をもつている。

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4 日本・スウェーデン租税条約修正議定書の調印

スウェーデンとの間の租税条約の修正交渉は、一九六三年四月東京で行われ大綱について合意に達していたが、その後案文について折衡を行った結果、一九六四年四月最終的合意に達し、四月十五日東京において現行条約を修正補足するための議定書の調印が行われた。

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5 日仏二重課税防止条約の署名

フランスとの間の二重課税防止条約の締結交渉は、一九六二年以来パリ及び東京において行われ条約の大綱について合意に達していたが、その後案文について折衡した結果、一九六四年十一月最終的合意に達し、十一月二十七日パリにおいて条約および付属議定書の調印が行われた。この条約は、条約の対象となる租税に地方税が含まれる点及び、フランス側の法制上の要請により、条約実施の際の細則的規定を含む追加議定書が付されている点を除き、わが国が従来欧州諸国と締結している租税条約とほぼ同様の内容をもっている。なおこの条約は、日仏両国において条約承認に必要な憲法上の手続がみたされたことを確認する通告の交換後一カ月で効力を生ずることとなっている。

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6 日・西査証相互免除取極の締結

スペインとの間に査証相互免除取極を締結すべく交渉が行われてきたが、昨年十二月締結を促進することに両国間の意見の一致をみ、爾来折衝を重ねた結果両国政府間に合意をみるに至ったので、本年三月十六日外務省において椎名外務大臣と来日中のカスティエリャ・スペイン外務大臣との間で公文の交換が行われた。

取極の内容は、従来西欧諸国と締結したこの種取極と略々同じで、三カ月以内の観光などのための滞在には査証を必要とせず、査証を要する場合も査証料は免除されることになっている。

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7 マルタの独立

地中海のほぼ中央のシシリー島の南方約九〇粁に位する英領植民地マルタは、一九六四年九月二十一日に独立した。わが国は同日付けをもって同国を承認するとともに、できる限り早い機会に外交関係を設定することを希望する旨を同国政府に伝達した。

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8 イタリア海軍練習艦隊の訪日

イタリア海軍練習艦隊は、一九六四年十月四日から同二十五日まで、わが国を訪問した。同練習艦隊は巡洋艦A・ドーリア号(六、五〇〇トン)と輸送船エトナ号(一三、○○○トン)から成り、乗員は一、〇六五名であった。同艦隊は東京港、清水、神戸江田島及び長崎に寄港し、各地で盛大な歓迎をうけ、両国の友好関係増進に寄与するところが大であった。

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9 ドイツ海軍練習艦ドイッチュランド号の来日

ドイツ海軍の練習艦ドイッチュランド号は第二十九回世界一周遠洋練習航海に当ってわが国を非公式に訪問することになり、三月二十四日から二十九日まで東京に、四月一日から五日まで大阪に寄港した。同艦の乗り組み員五四九名は東京及び大阪に寄港中各種の日独親善行事に参加するとともに、鎌倉、日光、京都方面の観光を行った。

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10 要人の来日

(1) カスティエリャ・スペイン外相一行の来日

カスティェリャ・スペイン外相夫妻およびビリャベルデ候爵夫妻(夫人はフランコ統領の息女)一行十名は、一九六五年三月十五日来日し、同二十日まで滞在した。

スペイン外相の来日は、戦前戦後を通じ初めてであり、日西両国間の友好関係を一層緊密化する上で極めて有意義であった。

同外相は、滞日中天皇、皇后両陛下に拝謁し、佐藤総理大臣および椎名外務大臣と会談したほか、関西方面を視察した。(なお、同外相訪日に際し、日西査証相互免除取極が結ばれた。前項6参照)

(2) フランス上院議員団の来日

フランス上院ジャック・ボーメル議員(フランス与党UNRの幹事長)を団長とする九名の上院議員団は、重宗参議院議長の招待により一九六四年九月十九日来日し、同月三十日まで滞在した。同議員団は日仏両国国会議員相互訪問交換の一環として来日したもので、参議院議長および衆議院副議長、外務大臣、東京都知事を訪問したほか、NHK、オリンピック施設、わが国産業の視察を行い、認識を深めるとともに両国の親善に寄与した。

(3) ギリシャ国会議員団の来日

ギリシャ国会議長アタナシアディス・ノバスを団長とするギリシャ国会議員団一行五名は、一九六四年十月十日より同十九日まで船田衆議院議長及び重宗参議院議長の招待により来日した。一行の訪日は国会議員の交流を強化し、日・ギ間の友好関係の緊密化をはかることを目的とし、日・ギ両国々会議員相互交換訪問計画の一環として行われたものである。一行は滞日中、国会を訪問して衆参両院議長と会見した外、オリンピック東京大会各種競技を見学した。

(4) フランス国民議会議員団の来日

フランス国民議会ジャン・シャマン副議長(夫人同伴)以下七名の国民議会議員が船田衆議院議長の招待により、一九六五年二月三日来日し、同月十三日まで滞在した。同議員団は、衆参両議議長、外務、大蔵、通産の各大臣を訪問し、産業施設の視察、関西旅行を行い、認識を深めた。なお、同議員団は、日仏下院議員相互訪問計画の一環として訪日したものである。

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