貿易経済関係の使節団および要人の交流
一九六三年九月九日から約一カ月間にわたり日本鋼管社長、河田重氏を団長とし、十二名からなる政府派遣貿易使節団がいわゆるアンデス諸国(コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリヴィア、チリ)を訪問した。これら諸国は、豊富な天然資源に恵まれながら開発が遅れているが、わが国重化学工業製品の輸出市場として将来性あるのみならず、わが国工業の原料供給源として最近貿易量も増大しつつあり、かつLAFTA(ラテン・アメリカ自由貿易連合)の進展に伴ない、わが国企業進出の可能性についても検討されている地域である。同使節団は、わが国輸出市場としての再検討、わ
が国産業水準についての各国の認識の向上、各国経済情勢・「進歩のための同盟」下の開発計画の進捗状況・LAFTAの実態の把握などに努力し、各国の政府、業界の指導者と接触して積極的な意見交換を行ない、わが国とアンデス諸国との経済交渉に貴重な足がかりを築くことに成功した。
政府は、ユーゴ、ルーマニア及びブルガリアの東欧南部三カ国に対し、右各国との貿易増進、特にわが国輸出増大の前提となる各国からの輸入拡大の可能性検討を目的として、一九六三年十月一日から三週間にわたり、富士電機製造会長和田恒輔氏を団長とし、十七名から成る東欧貿易使節団を派遣した。一行は右各国において、政府、経済関係首脳等と意見交換を行うとともに、産業事情を視察したが、これら諸国に対する初の政府使節団として相互理解を深めるのに大いに有望であった。
政府は、一九六二年の訪EEC(欧州経済共同体)経済使節団派遣(「わが外交の近況」第七分二六五頁参照)に引続き、EEC諸国と同様経済分野のみならず政治の分野においても国際的に大きた役割を演じているEFTA(欧州自由貿易連合)加盟の七カ国(スウェーデン、ノールウェー、デンマーク、イギリス、スイス、オーストリア、ポルトガル)、準加盟のフィンランド、およびスペインを加えた九カ国に対し、一九六三年十月二十日から十一月十六日までの二十七日間にわたり、住友銀行頭取堀田庄三氏を団長とし、九名からなる経済使節団を派遣した。同使節団は、各国において暖い歓迎を受け、訪問国政府、財界首脳との会談を通じて相互の理解と認識を深め、友好関係ならびに経済交流の促進に大きな成果を収めた。
政府は、一九六四年三月四日から三十四日間にわたり、古河電気工業株式会社会長小泉幸久氏を団長とし、財界人十一名、学者一名からなる北アフリカ経済使節団をモロッコ、アルジェリア、テュニジア、リビア、アラブ連合、スーダンの六カ国に派遣した。
使節団は各国で、政府および経済界の首脳と会談し、各国の経済の実態と将来性およびこれら諸国とわが国との間の貿易拡大および経済協力の可能性について調査し、従来、わが国との接触が少かった北部地域との経済関係の緊密化に多大の成果を収めた。
政府は、一九六四年三月二十日より約一カ月間にわたり、米国中西部を中心(サン・フランシスコ、ヒューストン、メンフィス、ノックスビル、シカゴ、ミネアポリス、デトロイト、シンシナチ、ピッツバーグ、ハリスバーク、ボストン、ニューヨークおよびワシントンの十三都市)に、岩佐凱実富士銀行頭取を団長とし、永野重雄富士製鉄社長を副団長とする訪米経済使節団を派遣した。この使節団には、経済界代表のほか経済学者、労働組合代表も団員ないし顧問として加わっており、米側政界および経済界の代表と隔意ない意見を交換し、今後の日米経済関係のあり方に資することを目的としたものである。
政府は、最近の世界情勢に占めるEECを中心とした欧州経済統合の重要性に着目し、経済統合の実態調査を目的に(金融的側面・証券市場の実態・賃金および労働の基本的動向・輸出振興の現状の四点を対象とした)、一九六三年十月十八日から約五週間にわたり、EEC加盟国(ドイツ・フランス・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ)および英国・スイスの八カ国に・日本経済調査協議会事務局長青葉翰於(富士銀行監査役)を団長とし、七名の専門家からなる経済統合調査チームを派遣した。同チームは、わが国が初めて公式に派遣する経済専門家の調査チームとして、各地において官民経済関係者および調査機関との懇談を重ね、欧州における経済統合の実態調査を通じて、双方の理解を深めたほか、大きな成果をあげた。
デンマーク工業連盟副会長アーンスエンセン氏を団長とし、主として工業連盟および商工会議所の有力メンバーからなる計十六名の経済使節団一行は、一九六三年五月五日来日し、同十五日まで十一日間滞在した。その間、同使節団は、政府ならびに関係業界の代表と会談し、両国共通の経済上の諸問題について意見を交換したほか、東京国際見本市の見学、各地視察を通じて日本の実情認識に努めたが、一行は、市場としての日本の重要性を強調していた。
オートラリア・タスマニア州首相リース氏を団長とするタスマニア通商使節団一行八名は、同州産の肉、酪農品、果実等の市場開拓のため、一九六三年五月二十八日来日し六月七日まで滞在した。同首相の一行は滞日中、大平外務、福田通産両大臣ならびに関係業界と懇談したほか各種産業施設の視察を行なった。
五月三十一日、スーダンから、ムサ・アブデル・カリム農務省次官補を団長とし、同国棉花栽培および輸出業界代表者等七名からなる棉花使節団が来日し、わが国外務、通産関係当局、棉花輸入および紡績業界等と棉花の対日輸出促進問題を中心に懇談したほか、各地の工場施設等を視察の上、六月十一日帰国した。
ブルガリアのテ・ジフコフ第一副首相を団長とし、外国貿易次官、国立銀行副総裁等八名から成る経済使節団は、一九六三年八月二十七日来日し、約十二日間滞在した。一行は滞日中、日本政府および民間業界関係者との会談を行うとともに、産業事情の視察を行なった。
ロンドンおよびバーミンガム両商業会議所の代表十四名からなる英国民間貿易使節団(団長ロンドン商業会議所日本部長アブラハム氏)は、一九六三年十月二十四日来日し十一月九日まで滞在した。一行は滞日中、日本商工会議所、東京、大阪、名古屋各商工会議所会頭など民間経済団体の代表と会談し、日英両国共通の経済上の諸問題について意見の交換を行なった。
一九六四年二月二十六日より三月二十一日まで、エル・サルヴァドル商工会議所会頭兼中米商業会議所連合会会長アルフォンソ・キニョネス・メサを団長とする中米経済使節団一四六名が来日し、諸産業施設、放送施設、大学等を視察し、関係方面とわが国と中米との間の貿易関係促進拡大につき意見を交換した。
(1) アフリカ・マダガスカル経済協力機構(OAMCE)事務局長一行
アフリカ・マダガスカル経済協力機構(OAMCE)の事務局長ジュール・ラザフィンバヒニー夫妻と同事務局員四名は、外務省の招待により、一九六三年四月三日来日し、同月九日まで滞在した。一行は、この間大平外務、福田通産両大臣に表敬したほか、政府当局および民間業界関係者と懇談し、また、各種の産業施設を視察した。
一九六三年四月十六日より四月末までコスタ・リカ経済使節ウンベルト・フェデルスピエルが訪日し、対日貿易アンバランスの是正を要望するとともに、両国間の通商協定締結を希望し、意見を交換した。
一九六三年七月十六日より十九日まで、外務省招客としてサルヴァドル・ハウレギ経済大臣およびメンヒバル経済
省経済振興局長が来日し、七月十九日大平外務大臣との間で日本・エル・サルヴァドル間の通商協定、議定書および付属交換公文に署名した。
S・K・パティル・インド食糧農業大臣は、一九六三年六月十六日米国よりの帰途、本邦に立寄り、大平外務大臣、重政農林大臣とそれぞれ会談したほか、砂糖、肥料業界と会談、久保田鉄工およびヤンマー・ディーゼルの工場を視察して同二十日羽田発帰国した。
英国の貿易担当国務大臣グリーンは、一九六三年十月十五日に来日し、同月二十三日まで滞在した。同大臣は滞日中、大平外務、福田通産、宮沢経企各大臣をはじめ、わが国政府および民間の要人と会見し、今後の両国間貿易の促進やその他共通問題などについて懇談した。
フランスのボカノウスキー工業大臣は、マニラで開催されたフランス工業設備展覧会に出席の帰途、一九六四年二月十一日夫人同伴来日し、同月十六日まで滞在した。同大臣は、滞日中、大平外務、福田通産両大臣と会談したほか、わが国の代表的工業施設および関西地方を視察した。