共産圏諸国
一九六三年におけるわが国の対共産圏貿易は、通関実績で輸出二億五、八〇〇万ドル、輸入二億七、九〇〇万ドルであって、前年比をそれぞれ一三・二パーセント及び二〇・六パーセント、総額において一七パーセントの増加を示している。この貿易額の上昇は、主要相手国であるソ連および中共との貿易が、昨年に引続いて増加したためであり、ソ連との貿易支払協定の締結、中共との民間貿易協定の成立等が貿易拡大の基礎となったものと思われる。なお対共産圏貿易がわが国総貿易額中に占める比率も、一九六二年の四・四パーセントから、一九六三年には四・七パーセントヘと増加している。
なお、一九六三年一~九月における西欧諸国の貿易総額中に占める対共産圏貿易の比率は、西独六・〇パーセント、英国四・一パーセント、イタリア七・九パーセント、フランス三・六パーセントであり、わが国を含めた場合の順位は、伊、独、日、英、仏の順となっている。但し西欧諸国の場合、ソ連、東欧との貿易が大きな比重を占めているので、対中共貿易については、日本の比重が最も大きい。
一九六三年の対ソ連輸出は、通関統計では一億五、八〇〇万ドルで、前年比六%弱の増加を示している。一九六二年に比し、この増加率は可成り低くなっており、頭打ちとも見れない事はないが、これは、日本の対ソ輸入の伸びが鈍ったため、ソ側としても買付を積極的に進めなかったためと見られる。六三年には特殊鋼を中心として約三〇万トンの鋼材が輸出されているが、六四年の見積はソ連側の需要減退で七万トンと大幅に減少することになっている。スフ綿、人絹糸、コード織物、コンベア・ベルトは引続き六二年の輸出水準を維持しているが、傾向としては、今後重要性は減少していくものと思われる。
船舶、機械の比率は、輸出の半分を占め、今後とも対ソ輸出の中心をなすものと見られる。
輸入は一億六、二〇〇万ドル、前年比約一〇%の増加である。主要品目の木材はやや増加し、石油は横ばいを統けている。銑鉄は六二年より大幅に伸び、六四万トンと、日本の銑鉄輸入の四一%を越した。前年比一〇%の増加は主としてこの銑鉄の輸入増加によるものである。
一九六三年のわが国の対中共貿易額を、通関統計によってみれば、輸出六、二一七万ドル、輸入七、四五六万ドル、計一億三、六七三万ドルに達し、前年にくらべ輸出入ともそれぞれ六二パーセントの増加となっている。しかし、わが国の輸出入総額に占める比率はそれぞれ一・一パーセントにすぎない。
現在、中共との貿易は、一九六〇年秋中共の対日貿易三原則にもとづいて開始されたいわゆる友好取引と、一九六二年十一月北京で調印された高碕・塵承志覚書にもとづく、長期総合取引(LT取引)の二本立で行なわれている。
右の如く六三年の日中貿易の拡大は、(1)中・ソ対立の結果による中共のわが国を含めた自由圏諸国への接近、(2)一九五八年来の大躍進政策(重工業優先)が、五九年からの三カ年にわたる自然災害と、人民公社運営の不手際という人的障害のために失敗し、六二年に入り国内経済調整(農業の最優先、軽工業および重工業の育成強化)策に変更のやむなきに至ったため、鋼材、化学肥料、プラント類等の資本財および消費材の購入の必要上、わが国をはじめとする自由圏との貿易意欲が日を追って活発化したことによるもので、わが国との関係では
(1) 二月十三日、東京銀行および中国銀行間のコルレス契約の締結
(2) 八月二十日、倉敷レーヨン、ビニロン・プラントの中共向輸出決定
(3) 九月二十四日、北京におけるLT取引第二年度貿易議定書の調印
(4) 十月五日から三カ月間に及ぶ、北京、上海での日本工業展覧会の開催
などが特記される。
なお、六四年のLT取引第二年度取決め(輸出入目標約一億二、○○○万ドル)については、ほぼ商談を完了した趣であり、友好取引をも併せ、六四年は、通関統計で輸出入合計約二億五、〇〇〇万ドル程度となり、わが国の貿易総額に占める比率も二パーセント弱となる見込みである。
六三年の輸出入品目についてみると、輸出では、化学肥料二、六五五万ドル(輸出総額の四二パーセント)鋼材一、一九八万ドル(一九パーセント)繊維および同製品一、一八九万ドル(一九パーセント)機械類四一四万ドル(六パーセント)となっており、一方輸入では、大豆二、三七四万ドルが輸入総額の三二パーセントを占め、その他は、えび五二四万ドル(輸入総額の七パーセント)とうもろこし五一五万ドル(七パーセント)繊維くず四〇九万ドル(六パーセント)塩三五三万ドル(五パーセント)銑鉄三五〇万ドル(五パーセント)といずれも一〇パーセントを下廻っている。
わが国と東欧諸国との貿易は、地理的に遠隔、かつ伝統的交易関係も薄く、また各国とも貿易の二国間均衡を建前としており、わが方の買付可能品目も少いため、従来からその貿易規模は極めて小さかった。その上、一九六三年は、各国の対日主要輸出品目たる農産物の生産が天候不順のため振わず、対日貿易額は東欧八カ国合計で輸出二、七九〇万ドル、輸入一、八六一万ドル、往復で前年の三%減で、わが国対外貿易額に占める割合は〇・四%に過ぎない。
主要取引品目は、輸出は化学品、鋼材、各種機械・設備(船舶を含む)、繊維品等の工業製品のほか冷凍まぐろ、また輸入は麦芽、とうもろこし、ひまわりの種、綿実、等の農産物および銑鉄、カリ塩等の工業原料である。
しかし、最近、各国とも対日貿易増進に意欲的態度を示していることは注目される。