西 欧 諸 国

 

1 西欧諸国との貿易の現状

一九六三年のわが国の対西欧(英国およびアイルランドを含む)貿易額は、通関統計で輸出七億三〇〇万ドル、輸入六億七、○○○万ドルで、それぞれ前年に比し三・四パーセントおよび一一・○パーセント増加した。また、この貿易

額のわが国貿易総額に占める割合は、輸出が一二・九パーセント、輸入が一〇・〇パーセントとなり、対西欧貿易の比重は年々着実に増大している。品目別にみると、わが国の対西欧輸出では機械機器、繊維品、食料品(主として缶詰類)、金属品が主なもので、輸入では機械類、化学品が主なものである。

このようなわが国の対西欧貿易の増大は、わが国および西欧諸国の経済発展によるものであると同時に、英国およびフランスの対日ガット第三十五条援用の撤回ならびにベネルックス経済同盟加盟国の対日ガット第三十五条援用撤回の確約等わが国の対西欧貿易関係が改善されつつあることによるところも多いと考えられる。

しかし、西欧諸国には現在依然として対日輸入に対する警戒心が残っており、特に低価格、無秩序輸出、意匠侵害等の問題に関する不信感は相当根強いものがあり、大半の国が実質的な対日差別待遇を維持しているのが実情である。

政府としては、対西欧輸出の一層の拡大をはかるため、これら西欧諸国の対日差別の撤回に努力を続けるとともに、秩序ある輸出の確立に努めている。

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2 EEC諸国との貿易関係

一九六三年のわが国の対EEC貿易は、輸出額三億三、二〇〇万ドル、輸入額三億九、五〇〇万ドルで、同年におけるわが国総輸出入額のそれぞれ六・一パーセントおよび五・九パーセントにあたるが、これを前年の輸出入額に比較すれば、輸出は二一・二パーセント、輸入は一四・八パーセントと順調な伸び率を示している。なお、双方とも貿易の拡大に努力を払っているので、今後においても、この傾向が続くものと考えられる。

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3 EECの対日共通通商政策

EECは対日共通通商政策についてすでに、(1)日本との協議(コンフロンテーシヨン)実施の提案、(2)共通通商政策実施計画の決定、(3)第二段階中の共同体活動計画に関するEEC委員会覚書の発表、および(4)対日共通セーフガード条項に関するEEC委員会案のEEC閣僚理事会への提出等の動きが見られた(詳細は第七号二二四~二二五頁参照)。その後のEECの動きのうち注目されるものとしては、次のようなものがある。

(1) 対日同一セーフガード条項の採用に関する加盟国政府に対する勧告

EEC委員会は、一九六三年二月加盟国政府に対して、各国が同一のセーフガード条項を取得するため、日本政府に対し申し入れを行なうよう勧告するとともに、日本政府が加盟国政府との交渉に際し右セーフガード条項を与えて貰いたいとの希望を表明した。

(2) 対日共通通商政策に関するEEC委員会案の提出

EEC委員会は、一九六三年七月のEEC閣僚理事会に対し、対日共通通商政策に関する理事会決定案を提出した模様であり、次の如き事項を含むものと伝えられる。

(イ) 委員会は次の如き理由で、日本とEECの間に通商協定締結のための予備会談を開始する時期が到来したと認める。(a)EEC加盟国と日本との現在の通商関係には、セーフガードの有無、センシティヴ品目の数により大きな格差が存するので、対日通商関係を共同体として樹立する要がある。(b)特にケネディ・ラウンドを控え、EECも日本も関税一括引下げの例外品目を明らかにせねばならず、また本件関税引下げの重要性に鑑み、セーフガード条項が緊急性を帯びてくる。(C)更にローマ条約第一一五条(通商政策上の措置の実施が迂回貿易により阻害されることを防止するための規定)の日本品に対するの適用を最小限にする必要がある。

(ロ) 日本を究極的に旧OEEC諸国と同様に取扱うべしとの目標を定め、センシティヴ品目についての解決、そのために共通セーフガード条項及び共通センシティヴ・アイテム・リストの設定が必要であるので、これらの問題に関し、三カ月の期間を限り委員会が日本政府との間に予備的話し合いを行なう権限を与えるよう理事会に要請する。

(ハ) 対日共通通商政策に関するEEC委員会案提出以後の動き。

一九六三年七月より同年末にかけて、EEC閣僚理事会は対日共通通商政策に関する委員会案を審議するに至らなかった。

その後、一九六四年二月EEC委員会は一九六四年において一般的に共通通商政策の実現を促進するための覚書を理事会に提出した。本覚書は特に対日通商関係にも言及し、(イ)上記(2)の委員会案につき理事会が直ちに方針を決定すべきこと、並びに(ロ)理事会は対日通商予備交渉の開始につき直ちに決定を行なうこと、及び対日予備交渉の結果は、遅くとも、六月末までに理事会に報告されるべきことを述べているといわれる。

このようにEEC内部においては、対日共通通商政策策定促進の機運が見られ、同理事会は本年四月十五日、上記(2)の委員会案につき審議を行なった。同審議内容は公表されていないが、理事会は委員会に対して、加盟各国のエクスパートと協力して、共通セーフガード、共通ネガティヴリスト及び共通クォーターの管理の3点につき検討し、六月の理事会に作業結果を報告するよう指令した旨伝えられている。

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4 英国との貿易の現状

わが国の対英輸出は、一九六二年の一億九、二三五万ドルから一九六三年には一億五、五七九万ドルヘと一九・○%減少したが、他方対英輸入は一九六二年の一億四、五七七万ドルから一九六三年には一億四、九一六万ドルヘと二・三%の増加を示した。このため貿易尻は一九六二年には四、六五七万ドルの出超であったが、一九六三年は六六三万ドルの出超にとどまった。一九六三年における対英輸出の減少は、主としてさけ・ます缶詰の減少によるもので(一九六二年は納期の関係で異常に増加した)、一般的には繊維、化学製品、光学機器などを中心に順調に増加している。

日英両国間の貿易は、従来両国間の年々の貿易取決めにより規制されてきたが、一九六二年十一月十四日、六年余の交渉を経て日英通商居住航海条約が署名調印され、翌六三年五月四日発効に伴ない貿易取決めにとってかわることとなり(暫定的に同年九月まで有効)、両国間の貿易関係は現在この条約およびその付属文書により規制されている。

条約の発効以来、セーフガードとセンシティヴ・アイテム(貿易に関する第一および第二議定書)の例外を除き、日英両国間には最恵国待遇関係が成立している。英側が対日センシティヴ・アイテムとして輸入制限を維持している品目は、シガレット・ライター、金属洋食器、家庭用ミシン、釣具の一部、双眼鏡、顕微鏡、玩具の一部および家庭用陶磁器の八品目であり、その各々について自由化期限を約束しているほか、年々漸増する対日輸入枠も定められている。

このように英国はセンシティヴ・アイテムを除き従来の対日差別的輸入制限品目を全部自由化するにいたったわけであるが、この自由化品目の中には英側の脆弱産業と競合し、放置すれば英国においてセーフガードの発動を誘発しかねないものがあるところ、これらの品目についてはわが方の輸出秩序維持の見地から条約発効と同時に自主規制を行なうことを英側に通告し、現在これを実施している。自主規制の対象品目は繊維製品、トランジスター・ラジオおよびテレビ等十四品目である。

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5 日伊混合委員会

イタリアの対日輸入制限縮少のための第三次日伊混合委員会(「わが外交の近況」第七号二二一頁参照)および第四次日伊混合委員会は、六三年春および同年秋に、ローマ、及び東京において、それぞれ開催された。

その間イタリアの対日差別品目数は九二品目となったが、伊側がその後新にOECD諸国に対し二四品目の追加自由化を行い、他方これをわが国に均てんせしめなかったため、現在差別品目数は一一六品目である。

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6 日独貿易会談

一九六〇年七月一日の日独貿易協定および一九六二年十月五日のドイツの輸入制限についての協議に関する議定書(「わが外交の近況」第七号二一九~二〇二頁参照)に基き、輸入制限縮少のための交渉が日独両国間に一九六三年九月二十日よりボンにおいて開催され、現在なお交渉継続中である。

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7 業 界 会 談

(1) 日独金属洋食器業界会談

ドイツ業界は、わが国の金属洋食器の対独輸出が急増しているので、輸出数量を規制するため日本側業界との会談を要請した。かかる独側の要請に基き金属洋食器に関する両国業界会談が一九六三年十一月上旬東京で開催された。

この会談により両者の意見にかなりの歩み寄りがみられた。

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(2) 日独ミシン業界会談

ドイツ業界は、わが国の家庭用ミシン及びその部品の対独輸出について、日本側業界と意見の交換を希望していたが、(1)の金属洋食器及び(3)の合繊糸に関する両国の各業界会談開催の機会を利用して、ミシンに関しても日本側業界と会談したい旨要請越した。かかる独側の要請に基づき家庭用ミシン及びその部品に関する両国業界会談が一九六三年十一月に東京で開催され情報および意見の交換が行われた。

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(3) 日独合繊糸業界会談

ドイツ業界は、わが国の合繊糸の対独輸出が急増しているので、輸出数量を規制するため日本側業界との会談を要請し、またドイツ政府からも日本政府に対しかかる両国の業界会談の開催あっ旋方要請してきた。独側のかかる要請に基き合繊糸に関する両国業界会談が一九六三年十月二十八日より三日間大阪で開催された。しかし輸出数量規制の必要性の有無をめぐり双方の主張が対立したため、会談は不調に終った。

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(4) 日英陶磁器業界会談

日英条約交渉の過程において、条約発効後あらたに自由化されることとなった「伝統的日本風デザインの陶磁器」の具体的範囲の確定は、日英両業界の直接の話い合いにより確定することとなっていたが、一九六三年四月このための日英業界会談が名古屋において行なわれた。この会談の結果「伝統的日本風デザイン」の具体的見本の選定が行なわれ、各輸出品はこれらの合意に達したデザインの範囲内である旨の日本デザイン・センターの証明があれば、自由に通関が認められることとなった。

本業界会談は両国間貿易の具体的問題を、業界同志の会談で解決したものとして有意義である。

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