貿易協定および貿易取決め
一九六〇年二月十日に締結された日本とカンボディアとの間の貿易取決め(同年二月十五日発効)は、一カ年の有効期間満了後、毎年交換公文により一カ年ずつ延長されてきている。わが国産品は、この取決めに基づき、カンボディア側より最低税率の適用をうけてきたが、一九六四年二月十四日にその有効期間が満了することとなった(「わが外交の近況」第七号一八一頁参照)ので、カンボディア政府と折衝した結果、取決めの効力をさらに一カ年延長することに合意が成立し、同年二月十五日プノンペンで、駐カンボディア芳賀大使とサンバット・カンボディア外務長官との間で取決め延長に関する書簡の交換が行なわれた。
一九五三年十二月八日に締結された日本とビルマとの貿易取決めは、四カ年の有効期間満了後、毎年交換公文により一年ずつ延長されてきている。一九六三年においては、十二月三十一日にその有効期間が満了することとなっていた(「わが外交の近況」第七号一八一頁参照)ので、ビルマ政府と折衝した結果、取決めの効力をさらに一カ年延長することに合意が成立し、同年十二月二十七日ラングーンで、駐ビルマ小田部大使とセイン・チ・ビルマ貿易省次官との間で取決め延長に関する書簡の交換が行なわれた。
一九六三年度のわが国とベネルックス経済同盟(オランダ、ベルギーおよびルクセンブルグの三国)との間の年次貿易協議は、特にベネルックス三国のガット第三十五条の対日援用撤回に関する二議定書とともに同年四月三十日に署名された合意議事録(別項「ベネルックス三国とのガット第三五条の対日援用撤回交渉」参照)に基づき、ベネルックス側の対日輸入制限を実質的に縮少するため同年六月五日から二十四日まで東京で、引き続きヘーグにおいて行なわれたが、十二月二十三日に実質的合意に達し、これを確認する書簡交換が本年二月二十七日に在オランダ大使館高瀬参事官とベネルックス代表カールスホーフェン・オランダ経済省対外経済局長との間で行なわれた。
これによりベネルックスは、木製品、あみかご類およびプラスチック製外衣の三品目(ブラッセル関税分類表四桁分類では五品目)の対日輸入を自由化し、この結果ベネルックスの対日輸入差別品目は二四(右四桁分類では三三となる。)となった。
一九六二年三月締結された日本とスペインとの間の貿易取決めは、一九六三年三月末をもって失効し、現在無協定状態にあるが、一九六三年二月以来行われて来た交渉はマドリードにおいて引続き行われており、円満解決のための努力が払われている(「わが外交の近況」第七号一八五頁参照)。
一九六二年九月十九日ウィーンで締結された日墺間の年間貿易に関する交換公文(「わが外交の近況」第七号一八五頁参照)に次いで、六三年十一月一日から一年間の両国間貿易に関する交渉が六三年十月七日よりウィーンで開かれ、同十二月十六日公文の交換が行われた内容の要点は次のとおりであるが、オーストリアの対日待遇は前年の交換公文の内容に比し相当改善された。すなわち、オーストリアは、
(1) あらたに電気製品、鉄道車輛、安全ガラス、時計、手工具、動力機等一八五品目の対日輸入を自由化し、
(2) メリヤス製品、織物、陶磁器、刃物、ラジオ、テレビジョン、玩具等八五品目について計一一八万ドルの対日輸入割当を設定し、また、
(3) オーストリアの輸入自由化品目中、前記(1)及び(2)の品目以外のものについても、事情の許す限り日本品に対し自由に輸入許可を与えることとなった。
なお、綿製品の対墺輸出については、一九六二年九月十九日にウィーンで締結された日墺間長期取決めにより別途規定されている。
今次合意により、オーストリアの対日差別品目数は、OECD諸国に比し前年の三八三(ブラッセル関税品目四桁分類による)から二五七に縮少された。
一九五九年五月十六日に署名された一年間有効のわが国とスウェーデンとの貿易に関する議定書は毎年延長適用されてきたところ、一九六三年には両国政府の都合により四月一日より三カ月間だけ延長され六月三十日に失効することになっていたが(「わが外交の近況」第七号一八四頁参照)、前記議定書第五項に基づき、一九六三年五月二十七日から六月十五日までの間ストックホルムで開催された日本・スウェーデン混合委員会で、一九六三年七月一日以降の両国間貿易の運用に関する問題が討議された結果、同議定書を一九六四年三月三十一日までの九カ月間延長して適用することに意見の一致をみた。よって、一九六三年六月二十八日ストックホルムにおいて、鶴岡大使とニルソン外務大臣との間でその旨の公文の交換が行なわれた。この取決め延長により、一九六四年三月三十一日まで、スウェーデンは、日本からの輸入について引続き原則として自由かつ無差別な政策を維持し、わが国は、スウェーデンからの輸入に対し、従来どおり公平かつ無差別な待遇を与えることとなった。
イランは、国際石油会社により販売される石油の輸出代金が直接同政府の外貨収入にならないとの理由から、石油の輸出を貿易収支に含めない建前をとっており、石油以外の輸入のすくないわが国との貿易を、欧米諸国との比較において極端な片貿易とみなし、一九六一年十月十日に前貿易取決めが失効してから現在に至るまで、対日輸入制限(「わが外交の近況」第七号一八六頁参照)を実施している。
わが国としては、このような差別待遇を撤廃させ、両国間の正常な貿易関係を確立するため、新協定の締結交渉を行なっていたが、一九六三年十月末日に至り、両国間に新貿易協定の大綱について合意をみた。
その後イラン側で、対日輸入特別税を廃止する法案を議会で審議中であり、この法案が通過次第、新貿易協定に署名する運びになっている。
イラクは、同国から石油以外の産品をほとんど買付けていないわが国に対し、特に同国輸出の大宗であるデーツ(なつめやしの実)の買付けを強く要望し、十四分類以外の品目の輸入を禁止する措置をとり、更に右品目についても輸入ライセンスの発給を操作しつつ買付けを迫っていた。
わが国としてはこのように著しく不安定な貿易関係を改善すべく、本年四月ジャミール経済次官を団長とするイラク貿易使節団の来日の機会に、同国との間の貿易協定交渉を行なった結果、合意に達し六月十七日バグダッドで署名した。
本協定は相互に輸出入許可の発給ならびに関税、租税その他の課徴金、およびそれらに関連する手続について現行法令の範囲内で他の外国に対して与えているよりも不利でない待遇を与えること、入国、滞在、旅行、居住、および事業活動について、現行法令の範囲内で、無差別の原則に従い相互に相手国の国民に便宜を与えること等を規定している。
本協定はそれぞれの国の国内法上の手続に従って承認された後発効することになるが、本協定が実施されれば同国が現在行なっている対日輸入制限措置が撤廃されるので両国間貿易の拡大が期待される。
一九六三年四月十二日、ギニア共和国のムファマラ・ケイタ商業大臣一行四名の貿易使節団が来日し、同月二十三日まで滞在した。同使節団の滞日中、両国間の貿易取決めについて交渉した結果、合意に達したので、四月十九日その署名が行なわれた。
この取決めは、両国の法令の範囲内において、関税および輸出入許可について無差別の原則に従い、できる限り好意的な待遇を相互に与え、また、入国、滞在、旅行、居住および諸種の活動を無差別の原則に従い容易にすること、両国がガットの締約国となる場合には、両国は、ガットに規定されている正常な関係の枠内で協力すること等を規定している。有効期限は一カ年で、廃棄通告のない限り更新できることとなっている。
一九六三年十月二日、トーゴー共和国のジャン・アグベメニヤン商工大臣一行四名の貿易使節団が来日し、同月十七日まで滞在した。同使節団の滞日中、両国間の貿易取決めについて交渉した結果、合意に達したので、十月十六日、その署名が行なわれた。
この取決めの内容、有効期間等は前記のギニアとの取決めとほぼ同様に規定されている。
11 日本、ローデシア・ニアサランド連邦との新貿易取決め締結
わが国と、ローデシア・ニアサランド連邦との間には一九六〇年二月十五日初めて貿易取決めが締結され、以来毎年改訂交渉を通じ同連邦の対日待遇が改善されて来たが、一九六三年六月東京で行なわれた対日ガット第三十五条援用撤回および新貿易取決め締結交渉が妥結し、一九六三年八月二日ソールズベリーで深井在ソールズベリー総領事とウエレンスキー同連邦首相兼外相との間で新貿易取決めに署名され、同連邦は同日付で対日ガット第三十五条援用を撤回するに至った。
新貿易取決めは両国間のガット関係樹立に伴い、従来の貿易取決めに所要の修正を加えたもので5カ条からなり、ガットに基づく最恵国待遇の相互供与、両国間の貿易の促進、貿易状況の検討および協議を規定しており、有効期間は一年で、両国政府の合意があれば延長できることになっている。
これによって、わが国の同連邦向け輸出は安定した基礎のもとにおかれることになり、両国間の貿易は一層増大されるものと期待される。
その後同連邦は一九六三年十二月三十一日をもって南ローデシア、北ローデシア、ニアサランドの三国に解体されたので、わが国と南ローデシア政府との間に同日付で前記新貿易取決めを同連邦解体後も延長適用することを確認する書簡交換が行なわれた。
一九六三年四月二十九日、マダガスカル共和国のジャック・ラベマナンジャラ経済大臣一行三名の貿易使節団が来日し、五月十一日まで滞在した。同使節団の滞日中、両国間の貿易取決めについて交渉した結果、合意に達したので、五月十日取決めの署名が行なわれた。
この取決めは、両国の法令の範囲内において、関税および輸出入許可について無差別の原則に従い、できる限り好意的な待遇を相互に与え、また、入国、滞在および商工業活動について好意的に検討することを主として規定している。有効期限は一カ年で、廃棄通告のない限り更新できることとなっている。また、取決め署名と同時に発表された共同コミュニケにおいて、マダガスカルがガットに加入する場合、同国は日本に対してガット第三十五条を援用しないことが明らかにされている。
一九六四年二月十日、東京において、日本とソ連との間の貿易に関する議定書が署名された。この議定書は、一九六三年二月五日に締結されたいわゆる三カ年(一九六三年より六五年まで)貿易支払協定の第二年度の輸出入品目および金額・数量を最近の両国の経済事情に即して修正したものである。
右議定書付属の品目表によれば、一九六四年におけるわが国の対ソ輸出および輸入は、それぞれ一億四、二〇〇万ドルおよび一億三、〇〇〇万ドル(いずれもFOB現金受払いベース)と見積もられている。
主な輸出品目は、船舶、製紙機械、繊維機械、スフ綿、人絹糸、ゴムベルト、鋼材、化学品等で、前年に比べて変った点は、鋼材が減少し、また小量であるが化学肥料が入ったことである。
輸入品目は、従来に引続き原油、重油、木材が最も大きな比率を占め、銑鉄は八〇万トンと著しい増加を示している。その外石炭、カリ塩、白金、パラジウム等が主な品目である。