西 欧 地 域

1 大平外務大臣の北欧三国訪問

大平外務大臣は、ノールウェー、スウェーデンおよびデンマークの三国政府の招待により一九六三年八月二十五日東京発、九月三日まで前記三国を夫人同伴にて公式に訪問した。

大平外務大臣は、八月二十六日から二十九日までノールウェーに滞在、その間オラフ五世陛下より謁見をたまわり、ランゲ外相と会談した。

同大臣は、八月二十九日から三十一日までスウェーデンを訪問、エルランデル首相、ニルソン外相およびランゲ通産相と個別に会談した。

次いで同大臣は、八月三十一日から九月三日までデンマークを訪問、フレデリック九世陛下の謁見をたまわり、クラウ首相およびヘッケルプ外相とそれぞれ会談した。

同大臣は、九月三日北欧三国公式訪問を終へ、同日英国に赴いた。

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2 第一回日英定期協議

大平外務大臣は、北欧三国訪問後第一回日英定期協議のため、九月三日英国に赴き、スコットランドのヒューム外相私邸に招かれ、同日ヒューム外相と二回にわたり会談を行なった。議題の主なものは次のとおりである。

(1) 最近の米英ソ・モスコー会談以後の東西関係、特に全面的軍縮およびその関連措置達成の見込み、

(2) 中ソ関係

(3) アジア情勢、特にマレイシア連邦、ラオスおよびヴィエトナム情勢

(4) 国際連合に関する諸問題

(5) 欧州統合問題

大平外務大臣は、四日ロンドンに赴き、翌五日エロル商相と会談した。主要な議題は、国際経済問題、特に関税一括引下げ交渉および国際連合貿易開発会議であった。

これらの会談は、率直かつ友好的に行なわれ、この成功により定期協議は両国の理解を深めるのに極めて有益であることが確認された。

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3 第一回日仏定期協議

大平外務大臣は、九月五日ロンドンよりパリに到着、八日まで同地に滞在、クーヴ・ド・ミュルヴィル外相と二回にわたり会談し、第一回日仏定期協議を行なった。

両国外務大臣は、政治の面のみならず経済および文化の面においても日仏関係が緊密化したことを認めるとともに、東西関係の現状、世界的および地域的経済問題、欧州情勢、アジア、特に東南アジアにおいて最近発生した事態について意見の交換を行なった。

これらの会談は、極めて友好的雰囲気の中に行なわれ、日仏定期協議が有益であり、これが相互信頼に根ざした実り多い日仏協力関係のために果し得る役割が確認された。

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4 リュプケ・ドイツ連邦共和国大統領の訪日と日独定期協議に関する決定

(1) リュプケ・ドイツ連邦共和国大統領は、夫人並びにシュレーダー外相夫妻、フォン・ヘルヴァルト大統領府長官等を伴い、一九六三年十一月六日国賓として来日され、同十五日まで滞在された。この間天皇、皇后両陛下と会見されたほか、歌舞伎を観覧され、埼玉県の農家、農業協同組合を視察された。大統領一行は四日間の東京滞在後、京都、奈良、大阪および神戸に赴き多数の文化財および史跡を視察したが、各地において盛大な歓迎をうけた。リュプケ大統領の訪日は欧州の元首の最初の訪日として、日独両国の関係、ひいては日本と欧州との関係を一層緊密強化する上に極めて有意義であった。

(2) リュプケ独大統領の首席随員として来日したシュレーダー外相は、滞日中、池田総理大臣および大平外務大臣とそれぞれ会談した。

右会談においては、一般的国際情勢、特に最近の東西関係、アジア情勢、欧州情勢、一般国際経済問題、低開発国援助問題、その他両国に関連する諸問題について意見が交換されたほか、日独両国間で定期協議を行なうことが決定された。この定期協議はすでに日仏、日英間において設けられた定期協議と同趣旨のもので、年一回ボンと東京において交互に、国際情勢および両国間の関係に関する諸問題について、外務大臣レヴェルで意見を交換することを目的としている。(日独共同コミュニケ巻末参照)

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5 ベルギー国王の来日

(一) ベルギーのボードワン国王およびファビオラ王妃両陛下は、スパーク外相以下十二名の公式随員を伴なわれ、一九六四年一月二十日国賓として来日された。

両陛下は、天皇および皇后両陛下と会見され、宮中における晩餐会およびレセプションに出席された。両陛下はまた、皇太子および同妃両殿下の御招きにより歌舞伎を観劇され、両殿下と晩餐をともにされた。

国王陛下は滞京中、工業施設を見学されたほか、柔道、茶の湯、盆石なども観賞された。また、王妃陛下は、育児院、保育園を訪問された。

両陛下は、天皇陛下の御見送りをうけて一月二十四日原宿駅より京都に向かわれ、同地において名所、旧蹟を御見物になられた後、姫路、広島、長崎の諸都市を視察され、一月三十日板付空港発香港に向かい離日された。

(二) ベルギー国王に随行して来日したスパーク外相は、滞京中池田総理大臣および大平外務大臣とそれぞれ会談し、東西関係、アジア情勢、欧州統合問題等について意見を交換した。

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6 日英領事条約の締結交渉

日英領事条約の締結交渉は、一九六二年八月から九月にかけて第一次交渉が、また一九六三年六月より八月にかけて第二次交渉がそれぞれ東京で行なわれた結果、実質的な問題について日英間で合意に達したので、八月二十三日日英両国代表により本条約英文テキストの仮署名が行なわれた。その後本年三月より東京で英側と日英両文テキストの最終的な打合せを続行中であり、近く署名が行なわれる見込みである。

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7 重宗参議院議長一行の訪仏

重宗参議院議長は、ボーメル仏上院日仏友好議員団長の招待を受け、九月二十五日から十月五日までフランスを訪問し、モネルヴィル仏上院議長と会談したほか、両国議員間の関係の親密化につくすとともに、四日間にわたり、国内を視察旅行し、各地において丁重なる歓迎を受けた。

なお右の参議院議長訪仏に先立ち、仏上院の日仏友好議員団に対応するものとして、両国議員間の親睦と、両国の友好親善促進を目的とする二十八名の各派議員から成る参議院日仏友好議員連盟が七月六日結成された。

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8 昭和三八年度海上自衛隊遠洋航海

本年度の自衛隊練習艦隊はアジア、中近東およびヨーロッパ諸国を公式訪問した。公式訪問国は、セイロン、タイ、アラブ連合、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、トルコの各国である。

この練習航海は、七月十九日、横須賀を出港より十一月二十五日までの一三〇日間、総航程、二六、五〇〇海里におよぶ大航海であった。

練習艦隊がアジア、中近東およびヨーロッパを訪問したのは戦後初めてであり、ヨーロッパへは、戦前の八雲による訪問から二六年ぶりである。

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9 要人の来日

(1) クーヴ・ド・ミュルヴィル仏外相

クーヴ・ド・ミュルヴィル仏外相は、夫人とともに、日本政府の招待に応えて、一九六三年四月十二日から同二十日まで来日した。(本件詳細については、わが外交の近況第七号一一九頁以下参照)

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(2) ヘッケルプ・デンマーク外相

ペール・ヘツケルプ・デンマーク外務大臣は、夫人とともに、わが国政府の招待に応えて、一九六四年一月十二日から同十九日まで来日した。

デンマーク外務大臣の公式訪日は戦前戦後を通じ初めてのことであり、日丁両国の関係を一層緊密なものとする上にきわめて有意義であった。同外相夫妻は、滞日中天皇、皇后両陛下より拝謁をたまわったほか、池田総理大臣および大平大臣と会談し、さらに関西方面の視察を行った。

池田総理大臣および大平外務大臣と同外相との会談では、東西関係およびアジア情勢、最近の中ソ関係等に関する情報と意見が交換されたほか、日本とデンマーク間の経済関係について話合が行なわれ、その結果、今後相互に理解を深め貿易を拡大するため、両国間の貿易交渉を促進することに意見の一致をみた。

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(3) ニルソン・スウェーデン外相

ニルソン・スウェーデン外相は夫人および五名の随行者とともに日本政府の招待に応えて来日し、二月八日より同月十六日まで滞在した。

同外相夫妻は天皇、皇后両陛下より拝謁を賜わり、また池田総理大臣、大平外務大臣と当面の国際情勢および両国の友好、貿易関係増進について意見の交換を行った。また同外相一行は関西に赴き名所旧蹟を見学し、その他各地で、光学、重電機、トランジスター工業関係の施設を視察した。

スウェーデン外相の公式訪日は戦前戦後を通じ始めてのものであり日瑞両国関係の緊密化に極めて有意義であった。

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(4) リズディール英空軍政務次官

英国における英日議員連盟名誉会長であるリズディール英国空軍政務次官は夫人を伴ない、一九六三年十月九日来日、同十八日まで滞在した。同次官は滞日中、国会、外務省および防衛庁等を訪問したほか関西方面に旅行し浜松航空自衛隊基地等を視察した。

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(5) 英国議員団

英国下院議員サー・ハーマー・ニコルスを団長とする英国議員団一行六名は、一九六四年三月十四日より同二十四日まで船田衆議院議長の招待により来日した。一行の訪日は国会議員の交流を強化し、日英間の友好関係の緊密化をはかることを目的としており、一九五五年の英国議員団の訪日及び一九五七年日本側議員団の訪英につぐ第二回目の相互訪問計画の一環である。滞日中、天皇陛下に拝謁をたまわったほか、国会を訪問して衆・参両院議長と会見し、また、池田総理大臣および大平外務大臣に表敬し会談を行なった。なお、一行は関西に旅行した。

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