原子力の平和利用に関する国際協力

 

1 日米原子力協力協定第五条A改正議定書の署名

政府は、一九五八年六月に締結きれた日米原子力協力協定の第五条Aの改正につき交渉していたが、一九六三年八月七日、ワシントンにおいて同協定の改正議定書に署名した。同議定書は、国会の承認をえたので、一九六四年四月二十一日、国内手続を了した旨の通告が日米相互間で行なわれ、同日発効した。旧第五条Aは、米国が日本に提供する研究用特殊核物質の量に一定の限度を付していたのであるが、最近にいたりわが国における研究事業の拡大発展に伴い研究用特殊核物質の需要量がこの限度を越えることが認められ、また、現在のところこれら特殊核物質の入手は主として米国に仰がねばならぬ実情にあるため、前記限度枠の撤廃を求めたのに対し米国が同意しこのたびの改正となったものである。

目次へ

2 日米原子力協力協定に基づく保障措置のIAEAへの移管のための協定の署名

政府は、一九五八年六月締結の日米原子力協力協定第十一条に基づき、同協定第九条に規定する保障措置のための権利を米国から国際原子力機関(IAEA)に移管する日本、米国およびIAEA三者間の協定につき交渉し、一九六三年九月二十三日に同協定に署名し、同協定は一九六三年十一月一日に発効した。この協定により、従来日米原子力協定に基づき米国が日本に提供する設備、装置および物質の平和的利用を確保するための保障措置が米国により行なわれていたのが、今後はIAEAにより行なわれることになった。これは、原子力の平和的利用を保障するために設定されているIAEAの一般的制度をより広汎に適用することを促進する立場から望ましいことである。

目次へ

3 国際原子力機関の活動

わが国は、一九五七年に国際原子力機関(IAEA)が設立されて以来、極東地域における原子力開発の先進国として理事国に選ばれ、機関の事業に協力してきた。

一九六三年九月にウィーンにおいて開かれた第七総会には、駐オーストリア内田大使以下の代表団が出席し、一般的核軍縮と原子力の平和的利用を確保することが、平和と安全を維持するための重要な両車輪であると云う見地から、IAEAの役割を強調すると共に、わが国は、一九六三年九月二十三日に、平和利用確保のための保障措置をIAEAに移管する日米IAEA協定に署名した旨述べ、また、一九六三年三月に東京で開かれた「原子力平和利用推進のためのアジア・太平洋諸国会議」に触れて、IAEAも地域的活動を強化すべきであるという参加国の要請を伝えた。

この総会では、IAEAの長期事業計画、財政問題、任意拠出金の問題、および保障措置制度拡大の問題が主要議題として採り上げられたが、わが国は、特に保障措置拡大の問題につき、それが大型かつ商業用原子炉を対象とするものであるので、単に技術的側面のみならず企業経営の面からも適当な考慮が払われることが望まれる旨主張した。この保障措置拡大のための規則は、一九六四年二月二十日ウィーンにおいて開催された理事会で採択された。

なお、一九六三年四月二十九日からウィーンで、IAEA主催の下に開催された原子力損害の民事責任に関する国際会議において、五月二十一日に「原子力損害の民事責任に関するウィーン条約」が採択された。この条約は、原子力の平和的利用に伴う原子力損害についての民事賠償責任に関する国際的最低基準を設定するもので、同条約は会議で採択され、署名のために開放された。

目次へ