海外広報の現状

 

一方わが国の政治、経済、文化その他あらゆる分野の現状について海外諸国民の正しい理解を増進し、対日世論の好転をはかり、それによって対日友好関係確立に資することを目的として海外広報活動を行なっているが、そのうち主な事業は次のとおりである。

1 広報資料の作成

各種広報関係印刷物のうち日本に関する基本的事実を全般的に説明するパンフレット「今日の日本」が最も重要なものである。昭和三十六年度には英語版、仏語版合計一三万部を日本で印刷し、独語版、アラビア語版他数種を海外で作成した。三十七年度には内容を一段と改善し、英仏のほかロシア語版、中国語版を発行する予定である。また各項日別に説明を行なう基本資料ファクト・シーツが現在二七種出来ているが、これを五〇種に増加することが当面の目標である。その他日本紹介を目的とする写真集、ポスター、絵葉書等も作成している。

またわが国に関する各種のトピックを定期的に紹介する英文インフォメーション・ブレティンを月二回本省より発行しているが、これに基づいて在外公館を通じ十六カ国語によって毎回五万部のプレティンが全世界に配布されている。

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2 広報用映画、スライドおよび写真の作成配布

 (1) 映  画

映画は直接視覚にうったえる極めて有効な広報手段であるから、できるだけよい広報映画を多くの国語を通じ外国の人々に観せようとの方針の下に広報映画を作成している。外務省作成の広報映画は全在外公館に配布の上、貸出し、テレビ上映、巡回広報車による上映等を実施している。

三十六年度には「今日の日本」「日本の工業」「日本の学校」「生花」「日本の建築」「日本の四季」等二十分ないし三十分もののカラー映画を作成、在外公館へ配布した。

また三十六年七月以降、テレビ用映画「ジャパン・スクリーン・トピックス」(黒白十六ミリ、十五分)を毎月一本作成し、在ニュー・ヨーク総領事館、在カナダ、フィリピン、タイ、イラン、スイス各大使館ほか十二公館に配布している。本映画は、配布先公館所在国のテレビ局により毎月定期的に放映され、日本の現状紹介に大きな役割を果している。

右の外、三十六年度中、国賓の来日映画三本と、池田総理および皇太子ご夫妻のアジア訪問映画各一本を作成し、在外公館に配布した。

なお、外務省は、昭和三十五年度に、広報映画「日本の童謡」、「日本の力」、「日本の漁業」、「柔道」および「日本の体操」計五本を作成し、全在外公館に配布したが、これら映面は、いずれも昨年中各国で開催された国際映画祭において、優秀作品に選ばれている。例えば、昨年六月の第三回ローマ国際テレビ映画祭で、「日本の童謡」が児童映画部門、「日本の力」がドキュメンタリー部門でそれぞれ最高金賞を、同年十月の第十四川サレルノ国際小型映画コンクールで、「日本の漁業」が商工会議所杯を、また本年二月の第十八回イタリア・コルティーナー国際スポーツ映画祭で、「柔道」が最優秀賞、「日本の体操」が特別賞を獲得した。

 (2) スライド

外務省は、映画に次ぐ視聴覚広報手段として、在外公館保有スライドの充実とその効果的利用に努めている。そして各在外公館において、日本事情紹介講演会、その他の催しに際し上映し、また貸出しを行なって、広報上多大の効果をあげている。

昭和三十六年度には、外務省企画カラー・スライド「日本の義務教育」(七十枚一組)を作成し、全在外公館に配布した。また最新式のテープ・レコーダー付きスライド映写機を二十二公館に購送した。

 (ハ) 写  真

日本の現状を広く海外に紹介するため、前記資料の配布、映画およびスライドの上映等と併行して、広報用写真の配布と利用に努めている。これらの写真は、各国の主要新聞および雑誌等に掲載され、また在外公館主催の写真展に使用されている。

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3 報道関係者招待

海外の有力報道関係者をわが国に招待し、各分町にわたり懇談、視察等を斡旋することはこれ等報道関係者の訪日記事を通じ日本紹介を進める意味で極めて有効な広報手段である。世界各国より年間約五〇名の報道関係者をこの目的で招待している。一九六一年一月より一九六二年三月に至る期間における招待訪日報道関係者は次のとおりである。

一九六一年

 一月 英国ファイナンシャル・タイムズ紙経済部長M・H・フィッシャー氏の招待

 一月 カナダ国際問題研究所長ジョン・ホームズ氏の招待

 二月 米国シカゴ・サン・タイムズ紙経済部長エドウィン・ダービー氏他五名の招待

 三月 パラグァイ無所属新聞記者ラファエル・ナスタ氏の招待

 三月 ブラジル週刊誌ヴィゾン編集局長山城ジョゼ氏の招待

 四月 マラヤ内閣情報局報道渉外部長R・B・クオイ氏の招待

 五月 フィリピン、マニラ・タイムス紙記者ルナ・カストロ氏他五名の招待

 六月 パキスタン、モーニング・ニューズ紙主筆S・G・M・バドルディン氏およびパキスタン・タイムズ紙主筆モハメッド・サルファラズ氏の招待

 六月 カンボディア情報省官房長マウ・サムーン夫妻の招待

 七月 トルコ週刊誌ウィーク所有者ヴェダット・アブット氏の招待

 八月 インド、ヒンズスタン・スタンダード紙主筆クマール・バス氏の招待

 八月 セイロン夕刊紙ジャナタ編集次長E・M・C・グーネラトネ氏の招待

 八月 コンゴー公立放送局海外部長アルベール・コンゴ氏の招待

 八月 ナイジェリア、デイリー・タイムズ紙編集次長L・N・ナメ氏の招待

 八月 ビルマ情報省次官補ウ・ティン・トウェ他新聞人六名の招待

 九月 インドネシア、アンタラ通信バンドン支局長ダヤット・ハルジャクスマ氏他五名の招待

 九月 シンガポール星州日報編集次長葉世芙氏の招待

 九月 豪州週刊誌オーストレイリアン・ウィメンズ・ウィークリー観光担当記者ベティ・ダンリーヴィー女史の招待

 九月 スイス新聞雑誌科学欄寄稿家ジャクリーヌ・ジュイヤール女史の招待

 九月 英国シェフィールド大学地理学教授チャールズ・フィッシャー氏の招待

 九月 ベルギー、ルーヴァン大学教授、リーブル・ベルジッタ紙経済欄寄稿家フェルナン・ボーデュアン氏の招待

 十月 タイ新聞協会副会長、ピム・タイ紙編集顧問マライ・チュピニット氏他二名の招待

十一月 チリ日刊紙エル・メルクリオ論説委員、チリ大学政治学部教授ホルヘ・ピノチェット氏の招待

十一月 メキシコ日刊紙エクセルシオール論説記者フリオ・シェレル氏の招待

十一月 英国デイリー・ミラー紙観光担当記者マージョリー・ブループス女史の招待

十一月 ドイツ週刊誌ディー・ツァイト政治記者テオ・ゾンマー氏の招待

十一月 ケニア、デイリー・ネイション紙編集長J・D・ビアマン氏の招待

十一月 ポルトガル建築月刊誌ビナリオ編集長アニバル・ヴィエイラ氏の招待

一九六二年

 一月 米国月刊誌エスクワイア観光担当記者リチャード・ジョーゼフ氏の招待三月 英国新聞雑誌観光記事寄稿家ニーナ・エフトン女史の招待

 三月 ニュー・ジーランド夕刊紙イヴニング・ホスト外交記者エリック・ラムスデン氏の招待

 三月 米国クリスチャン・サイエンス・モニター紙編集長アーウィン・キャナム夫妻の招待

 三月 米国婦人雑誌マドマゼル観光担当記者フランセス・コルタン女史他一名の招待

 三月 イラン日刊紙セターレ・テヘラン社長ナセル・ホダヤール夫妻の招待

 三月 ビルマ情報省情報局次長ウ・キン他一名の招待

 三月 インドネシア、日本・インドネシア協会役員H・シアギアン女史の招待

 四月 レバノン新聞協会会長アフィフ・ティビ氏の招待

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4 在外広報センターの設置

海外においても各在外公館において資料配布、映画上映、照会の処理、講演の実施等を通じ広報活動を行なっているが、とくに重要な都市には広報センターを設け広報活動の強化をはかっている。現在ニュー・ヨーク、バンコック、ジャカルタ、ブエノス・アイレスの四センターがあり、三十七年度にはロンドンにセンターを新設することになっている。

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