資  料

○通 商 関 係

通商に関する日本国とキューバ共和国との間の協定

日本国政府及びキューバ共和国政府は、

両国間の通商関係を改善し、及び発展させることを希望して、次のとおり協定した。

第一条

1 すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連する規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又これに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられる。

2 1の規定は、日本国に対し、キューバ共和国がもっぱらアメリカ合衆国の産品に与えているか又は将来与える関税及び課徴金に関する特恵又は利益の享受を要求する権利を与えるものではない。

第二条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に合致するような為替制限を課することを妨げるものではない。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。

4 3の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、当該一方の締約国が、2の規定に基づいて当該時に課することができる為替制限と同等の効果を有する制限又は統制をすることができる。

第三条

1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域に当該他方の締約国の法令の規定に従って入ることを許され、かつ、入国に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内における滞在、旅行及び居住並びに同領域からの出国に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

3 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判を受けること、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

前記の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は二重課税の回避若しくは脱税の防止のため協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。

第四条

いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためにする場合を除くほか、収用し、又は使用してはならず、また、正当な補償なくして収用し、又は使用してはならない。この条で取り扱うすべての事項については、いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第五条

1 各締約国は、国家企業を設立し、若しくは維持し、又はいずれかの企業に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、その企業を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、民間貿易業者が行なう輸入又は輸出に影響を及ぼす政府の措置についてこの協定に定める無差別的待遇の一般原則に合致する方法で行動させることを約束する。この目的のために前記の企業は、この協定の他の規定に妥当な考慮を払った上で、前記の購入又は販売を商業的考慮(価格、品質、入手可能性、市場性その他購入又は販売の条件等に関する考慮をいう。)に従ってのみ行なわなければならず、また、他方の締約国の企業に対し、前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を通常の商慣行に従って与えなければならない。

2 1の規定は、再販売するため又は貨物の生産に使用するためでなく、直接に又は最終的に政府用として消費する産品の輸入には、適用しない。各締約国は、そのような輸入に関しては、他方の締約国の貿易に対して公正かつ衡平な待遇を与えなければならない。

第六条

1 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と均等の条件で、外国との間における通商及び航海のため開放されている他方の締約国のすべての港、場所及び水域に旅客及び積荷とともに入ることができる。これらの船舶は、当該他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関して、当該他方の締約国及び第三国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができるすべての貨物及び人を輸送する権利に関して、当該他方の締約国及び第三国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。またこれらの貨物及び人は、(a)すべての種類の関税及び課徴金、(b)税関事務並びに(c)奨励金、関税の払いもどしその他この種の特権に関して、当該他方の締約国の商船で輸送される同様の貨物及び人に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第七条

この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。

第八条

この協定の規定は、各締約国が次の事項に関する措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。

(a) 公共の安全若しくは国防又は国際の平和及び安全の維持

(b) 武器、弾薬及び軍需品の取引

(c) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護

(d) 金又は銀の貿易

第九条

各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施から又はそれに関連して生ずる問題に関して行なう申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。

第十条

1 この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかにハヴァナで行なわれるものとする。

2 この協定は、効力発生の日から三年間効力を有し、その後も効力を存続する。ただし、この協定は、いずれか一方の締約国の政府が他方の政府に対しこの協定を終了させる意思を少なくとも三箇月の予告をもって書面により通告した場合には、前記の三年の期間の終了の日に又はその後に終了する。

以上の証拠として、このために正当に委任された両政府の代表者は、この協定に署名した。

千九百六十年四月二十二日に東京で、日本語、スペイン語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違があるときは、英語の本書による。

日本国政府のために

藤山愛一郎

キューバ共和国政府のために

ラウール・セペーロ・ポニーリァ

議定書

通商に関する日本国とキューバ共和国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名の代表者は、各自の政府から正当に委任を受け、さらに、同協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 協定において「会社」とは、商業、工業、金融業その他営利を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。

2 第三条1の規定に関し、いずれの一方の締約国も、旅券及び査証に関するすべての事項を相互主義に基づく特別の協定により規制すべきことを要求することができる。

3 第三条3の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利の享有についての待遇が相互主義に基づくべきことを要求することができる。

4 この協定のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。

5 第四条の規定は、いずれか一方の締約国の領城内で収用され、又は使用された財産で他方の締約国の国民及び会社が直接又は間接に利益を有するものについても適用する。

6 第六条2に関し、各締約国は、沿岸貿易に従事する権利を自国の船舶のみに留保することができる。もっとも、いずれの一方の締約国の商船も、外国で積載した旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を陸揚げし、又は外国向けの旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を積載する目的をもって、他方の締約国の領域内のいずれかの港から他の港に向かって航海を続けることができる。

7 協定のいかなる条項も、キューバ共和国に対し、(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原、及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者に対して、又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の原住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して日本国が与えているか又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

千九百六十年四月二十二日に東京で、日本語、スペイン語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違があるときは、英語の本書による。

日本国政府のために

藤山愛一郎

キューバ共和国政府のために

ラウール・セペーロ・ポニーリァ

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通商に関する日本国とマラヤ連邦との間の協定

日本国政府及びマラヤ連邦政府は、日本国とマラヤ連邦との間に存在する通商関係を強化し、かつ、発展させることを希望して、日本国とマラヤ連邦との間の通商関係を規律する協定を締結することに決定し、次のとおり協定した。

第一条

1 各締約国は、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるすべての種類の関税及び課徴金に関する事項、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関する事項、輸入又は輸出に関連する規則及び手続に関する事項、輸入貨物若しくは輸出貨物については又はそれらに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関する事項並びに自国の領域内における輸入貨物の販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関する事項のすべてについて、他方の締約国に無条件の最恵国待遇を与えなければならない。

2 したがって、いずれか一方の締約国の産品で他方の締約国の領域内に輸入されるものには、1に掲げる事項について、いずれかの第三国の同様の産品に課されているか又は将来課される関税、内国税又は課徴金より一層高額の関税、内国税又は課徴金が課されることはなく、また、同産品に適用されているか又は将来適用される規則又は手続より一層厳重な規則又は手続が適用されることはない。

3 同様に、いずれか一方の締約国の領域から輸出され、かつ、他方の締約国の領域に仕向けられる産品には、1に掲げる事項について、同様の産品がいずれかの第三国の領域に仕向けられる場合に課されているか又は将来課される関税、内国税又は課徴金より一層高額の関税、内国税又は課徴金が課されることはなく、また、同産品が同様の場合に適用されているか又は将来適用される規則又は手続より一層厳重な規則又は手続が適用されることはない。

4 1に掲げる事項についていずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国の領域に仕向けられる産品に対して与えているか又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又はその領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件で与えられるものとする。

5 1の関税及び課徴金に関する規定は、日本国に対し、マラヤ連邦が英連邦諸国、アイルランド共和国及びビルマ連邦の産品にもっぱら与える特恵又は利益の享受を要求する権利を与えるものではない。

第二条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に合致するような為替制限を課することを妨げるものではない。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対しなんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。

4 3の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、当該一方の締約国が、2の規定に基づいて当該時に課することができる為替制限と同等の効果を有する制限又は統制をすることができる。

第三条

1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域に入り、同領域に滞在し、同領域内を旅行し、又は同領域に居住することを許される。ただし、この権利の享有は、一般的にすべての外国人に同様に適用される当該他方の締約国の法令及び規則に従うことを条件とする。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判を受けること、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

前記の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は二重課税の回避若しくは歳入の相互的保護のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。

第四条

いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他の締約国の領域内において、法令に従い、かつ、衡平な方法で行なわれる場合を除くほか、収用し、又は使用してはならず、また、迅速、適当かつ有効な補償なくして収用し、又は使用してはならない。この条で取り扱うすべての事項については、いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第五条

両締約国は、両国の貿易を発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済の発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することを目的として、相互の利益のため、協力することを約束する。

第六条

1 各締約国は、国家企業を設立し、若しくは維持し、又はいずれかの企業に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、その企業を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、民間貿易業者が行なう輸入又は輸出に影響を及ぼす政府の措置についてこの協定で定める無差別待遇の一般的原則に合致する方法で行動させることを約束する。この目的のため、前記の企業は、この協定の他の規定に妥当な考慮を払った上で、前記の購入又は販売を商業的考慮(価格、品質、入手可能性、市場性、輸送その他購入又は販売の条件等に関する考慮をいう。)によってのみ行なわなければならず、かつ、他方の締約国の企業に対し、前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を通常の商慣行に従って与えなければならない。

2 1の規定は、再販売するため又は販売のための貨物の生産に使用するためではなく、直接に又は最終的に政府用として消費するための産品の輸入には、適用しない各締約国は、そのような輸入に関しては、他方の締約国の貿易に対して公正かつ衝平な待遇を与えなければならない。

第七条

1 いずれか一方の締約国の国旗を掲げる船舶で、国籍の証明のため当該締約国の法令により要求される書類を備えているものは、公海並びに他方の締約国の港、場所及び水域において、当該一方の締約国の船舶と認められる。

2 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と均等の条件で、外国との間における通商及び航海のため開放されている他方の締約国のすべての港、場所及び水域に旅客及び積荷とともに入ることができる。これらの船舶は、当該他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関して、当該他方の締約国及び第三国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

3 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができるすべての貨物及び人を輸送する権利に関して、当該他方の締約国及び第三国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。また、これらの貨物及び人は、(a)すべての種類の関税及び課徴金、(b)税関事務並びに(c)奨励金、関税の払いもどしその他この種の特権に関して、当該他方の締約国の商船で輸送される同様の貨物及び人に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

4 前諸項の規定は、沿岸貿易には適用しない。もっとも、いずれの一方の締約国の商船も、外国で積載した旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を陸揚げし、又は外国向けの旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を積載する目的をもって、他方の締約国の領域内のいずれかの港から他の港に向かって航海を続けることができる。

5 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の船舶に対し、難破、海上損害又は不可抗力による寄航の場合には、同様の場合に自国の船舶に与えると同一の援助、保護及び免除を与えるものとする。それらの船舶から救い上げられた物品は、すべての関税を免除される。ただし、それらの物品が国内消費のため搬入されない場合に限る。

いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の沿岸で座礁し、又は難破した場合には、当該他方の締約国の当局は、もよりの地にある船舶所属国の権限のある領事官にそれを通告するものとする。

6 いずれか一方の締約国の権限のある当局が発給した船舶の積量測度に関する証書は、他方の締約国の権限のある当局によって、同当局が発給した証書と同等のものと認められる。

第八条

この協定のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有するか、又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。

第九条

この協定の規定は、各締約国が次の事項に関する措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。

(a) 公共の安全若しくは国防又は国際の平和及び安全の維持

(b) 武器、弾薬及び軍需品の取引

(c) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護

(d) 金又は銀の貿易

第十条

1 各締約国の政府は、他方の締約国の政府がこの協定の実施から又はそれに関連して生ずる問題に関して行なう申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国の政府に与えなければならない。

2 この協定の実施に関する協議は、いかなる場合にも、二年ごとの間隔で行なわなければならない。

第十一条

1 この協定は、批准されなければならない。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかに東京で行なわれるものとする。

2 この協定は、効力発生の日から三年間効力を有し、その後も効力を存続する。ただし、この協定は、いずれか一方の締約国の政府が他方の政府に対しこの協定を終了させる意思を少くとも六箇月の予告をもって書面により通告した場合には、前記の三年の期間の終了の日に又はその後に終了する。

以上の証拠として、このために正当に委任された両政府の代表者は、この協定に署名した。

千九百六十年五月十日にクアラ・ランプールで、本書二通を作成した。

日本国政府のために

   林  馨

マラヤ連邦政府のために

   M・K・ジョハリ

議定書

通商に関する日本国とマラヤ連邦との間の協定に署名するに当たり、下名の代表者は、各自の政府から正当に委任を受け、同協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 この協定において「会社」とは、商業、工業、金融業その他の利潤を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。

2 第二条1の規定は、通貨そのものについての準則に関するものではなく、したがって、異なる通貨に対して異なる待遇を与えることを妨げるものではない。同規定は、いかなる外国為替規則が施行されている場合にも、その下における国民及び会社の権利にのみ関するものであって、外国為替規則の適用に当たって、国民及び会社に対して国籍に基づく差別を排除することのみを目的としている。

3 第三条1の規定は、日本国に対し、マラヤ連邦が(a)シンガポールの市民若しくは居住者又は(b)英連邦諸国の市民である者に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

さらに、いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国が相互主義に基づいて旅券及び査証に関する事項についての二国間の取極を結んでいるか、又は将来結ぶいずれかの第三国の国民又は市民である者に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えられないものと了解される。

4 第三条2の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利の享有についての待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。

5 この協定のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。

6 第四条の規定は、いずれか一方の締約国の領域内で収用され、又は使用される財産で他方の締約国の国民及び会社が直接又は間接に利益を有するものについても適用する。

7 この協定のいかなる規定も、マラヤ連邦に対し、日本国が(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域を原籍とする者に対して又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の原住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

千九百六十年五月十日にクアラ・ランプールで、本書二通を作成した。

日本国政府のために

   林  馨

マラヤ連邦政府のために

   M・K・ジョハリ

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通商に関する一方日本国と他方オランダ王国及びベルギー=ルクセンブルグ経済同盟との間の協定

一方日本国政府並びに

他方千九百五十三年十二月九日に締結された通商政策に関する議定書に基づいて共同して行動する

オランダ王国政府及び

自己の名において、かつ、現行の諸協定に従いルクセンブルグ大公国政府をも代表して行動するベルギー王国政府は、

それぞれの領域の間における貿易をできる限り促進しようと希望して、

次のとおり協定した。

第一条

すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国を原産地とする同様の産品又は他方の締約国に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。

第二条

1 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。

2 1の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、国際通貨基金協定に従って適用される為替制限と同等の効果を有し、又はその為替制限を効果的にするため必要とされる制限又は統制をすることができる。

第三条

1 この協定の規定は、いずれの一方の締約国の貿易に対しても、他方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定を適用する国に対して与える権利のある待遇又は与える義務のある待遇より有利な待遇を与えるものと解してはならない。締約国は、できる限り、かつ、締約国の政府間で随時合意するところに従い、この協定に規定されていない事項に関し、締約国間の通商関係について、関税及び貿易に関する一般協定の規定を適用するものとする。

2 この協定の規定又はこの協定の規定に従って執られる措置は、関税及び貿易に関する一般協定第三十五条の規定に基づくいずれの一方の締約国の権利にも影響を及ぼすものでなく、また、関税及び貿易に関する一般協定の適用に関する締約国間の交渉におけるいずれの一方の締約国の自由をも損ずるものではない。

第四条

締約国は、海運業務が世界の通商に差別なしに利用されることを促進することに同意する。この目的のため、締約国は、諸政府による差別的な措置及び不必要な制限で、国際貿易に従事する海運に影響のあるものの除去を奨励することに同意する。

第五条

1 いずれの一方の締約国も、他方の締約国がこの協定の運用から生ずる問題に関して行なう申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の締約国に与えなければならない。

2 この協定の運用に関する協議は、いかなる場合にも、毎年行なわなければならない。

第六条

1 この協定は、ルアンダ・ウルンディに適用する。

2(a) この協定は、スリナム及びオランダ領アソティールについては、日本国政府がオランダ王国政府から書面による適用の通告を受領した後一箇月までは適用しない。

(b) オランダ王国政府は、日本国政府に対し三箇月の予告をもつて書面により通告することによつて、第七条2に掲げる最初の三年の期間の終りに又はその後いつでも、この協定のスリナム又はオランダ領アンティールへの適用を終了させることができる。

第七条

1 この協定は、批准されなければならない。批准書は、日本国政府に寄託するものとする。この協定は、三番目の批准書が寄託された日に効力を生ずる。

2 この協定は、効力発生の日から三年間効力を有し、その後も効力を存続する。ただし、この協定は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府に対しこの協定を終了させる意思を少なくとも三箇月の予告をもって書面により通告した場合には、前記の三年の期間の終了の日に又はその後に終了する。

以上の証拠として、このために正当に委任された下名の代表者は、この協定に署名した。

千九百六十年十月八日に東京で、英語により本書三通を作成した。

日本国政府のために

   小坂善太郎

オランダ王国政府のために

   N・A・J・デ・フォーグト

ベルギー=ルクセンブルグ経済同盟の各政府のために

   ユージェーヌ・デュ・ボワ

第一議定書

通商に関する一方日本国と他方オランダ王国及びベルギー=ルクセンブルグ経済同盟との間の協定に署名するに当たり、下名の代表者は、各自の政府から正当に委任を受け、さらに、同協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 協定の最恵国待遇の規定は、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条に掲げる地域に対して日本国が与えているか又は将来与える利益については、当該地域に対する行政、立法及び司法に関して同条後段に定める状態が存続する限り、適用しない。

2 欧州経済共同体の加盟国が共通の通商政策を採用することに決定し、かつ、その政策上必要な場合には、相互に受諾可能な解決(協定の必要な修正を含む。)を見いだすため、できる限りすみやかに交渉を開始するものとする。

以上の証拠として、下名の代表者は、この議定書に署名した。

千九百六十年十月八日に東京で、英語により本書三通を作成した。

日本国政府のために

   小坂善太郎

オランダ王国政府のために

   N・A・J・デ・フォーグト

ベルギー=ルクセンブルグ経済同盟の各政府のために

   ユージェーヌ・デュ・ボワ

第二議定書

通商に関する一方日本国と他方オランダ王国及びベルギー=ルクセンブルグ経済同盟との間の協定に署名するに当たり、下名の代表者は、各自の政府から正当に委任を受け、さらに、同協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 いずれの一方の締約国も、予見されなかった事態の発展の結果、他方の締約国のいずれかの産品が同様の産品又は直接的競争産品の国内の生産者に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある条件でその領域内に輸入されていること及びその損害を防止し、又は救済するためなんらかの措置を必要とすることについて合理的な証拠があると認めるときは、他方の締約国に対し、書面をもってその旨を通告しなければならない。締約国は、この通告が行なわれたときは、相互に満足する解決を見いだすため、直ちに協議に入らなければならない。

2 前記の協議が相当な期間内に相互に満足する解決をもたらさなかったときは、輸入締約国は、当該産品について、その損害を防止し、又は救済するため必要な限度で及び必要な期間、協定に基づく義務を停止することができる。

3 緊迫した事態においては、すなわち遅延すれば回復し難い損害を生ずる場合には、2の規定に基づく措置は、1に掲げる通告が行なわれた後に、又は同項に掲げる協議が完了する前に、暫定的に執ることができる。ただし、協議は、相互に満足する解決を見いだすため、継続しなければならない。

4(a) 輸出締約国は、2又は3の規定に基づいて輸入締約国が執った措置によりその利益を著しく阻害するほど多くの数の産品又は多くの量の貿易に影響を受けると認めるときは、それまでに発展した事態(執られた措置を含む。)について、輸入締約国と協議を行なうことを書面により要請することができる。

(b) 相当な期間内に満足する合意に到達することができなかったときは、輸出締約国は、輸入締約国が執った措置の効果と実質的に等しい限度で、協定に基づく義務を停止することができる。

(c) 輸入締約国がこの議定書に基づく措置を終了させたときは、輸出締約国は、直ちにその義務の停止を終了させなければならない。

5 2、3又は4の規定が適用された場合には、締約国は、個別的に及び相互に協力して、協定に定める状態をできる限り完全にかつすみやかに復活するため、最善の努力をしなければならない。

6(a) いずれか一方の締約国において他方の締約国の特定の産品について輸入制限が従来から継続して実施されており、かつ、当該産品に対する制限を突然撤廃すれば同様の産品又は直接的競争産品の国内の生産者に重大な損害を生ずる場合には、輸入締約国は、過渡期的措置として、締約国の政府間で合意される輸入制限を適用することができる。

(b) 前記の制限を適用する締約国は、次のことを約束する。

(i) 他方の締約国の貿易に対し、市場の公平なかつ合理的な割当分を与えること。

(ii) できる限り早い時期に前記の制限を緩和し、又は撤廃するための政策を実施すること。

7 この議定書は、協定が第七条の規定に従って効力を有している間は、関税及び貿易に関する一般協定が締約国間に適用される時に効力を失う。

以上の証拠として、下名の代表者は、この議定書に署名した。

千九百六十年十月八日に東京で、英語により本書三通を作成した。

日本国政府のために

   小坂善太郎

オランダ王国政府のために

   N・A・J・デ・フォーグト

ベルギー=ルクセンブルグ経済同盟の各政府のために

   ユージェーヌ・デユ・ボワ

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合意された議事録

日本国政府代表及びベネルックス諸国の政府代表は、本日署名された通商に関する一方日本国と他方オランダ王国及びベルギー=ルクセンブルグ経済同盟との間の協定の締結のための両代表団の間の交渉の過程において到達した次の了解をここに記録する。

A

1 通商に関する協定の締結のための交渉の過程において、日本国代表及びベネルックス代表は、ベネルックス諸国の日本国に対する関税及び貿易に関する一般協定第三十五条の規定の援用に関し意見を交換した。

2 日本国代表は、関税及び貿易に関する一般協定が日本国とベネルックス諸国との間に適用されていないことを遺憾とするものである旨を表明した。

3 ベネルックス代表は、これに対し、第三十五条の規定の援用の理由が、日本国からの輸入品の数量の急激な増加又は同輸入品の価格の過度の変動によってベネルックス市場がかく乱されるおそれがあるとのベネルックス諸国における危惧の念にあること、及びこのような危惧がなんらかの適当な措置によって根拠のないものとならない限り、第三十五条の規定の援用の撤回が困難であることを述べた。

4 よってベネルックス代表は、ベネルックス諸国の政府が次のことを約束すると述べた。

(a) 第三十五条の規定の援用を撤回する可能性を通商に関する協定に基づいて得る経験に照らして絶えず検討し、かつ、この問題について日本国政府と随時意見を交換すること。

(b)(1) 日本国政府と協力して、関税及び貿易に関する一般協定の枠内における「市場かく乱の防止」の問題の一般的なかつ多角的な解決に到達するように努力し、並びに

(2) ベネルックス諸国及び日本国の双方が受諾しうる前記の解決が得られた時は、直ちに日本国に対する第三十五条の規定の援用を撤回すること。

(c) (b)に掲げる多角的な解決が通商に関する協定の効力発生の日の後二年以内に実現しないときは、関税及び貿易に関する一般協定のベルネックス諸国と日本国との間における適用の可能性を検討するため、通商に関する協定の三年の期間の終了に先だつ適当な時期に、日本国政府と討議を行なうこと。

5 日本国代表は、ベネルックス代表が行なった前記の言明を了知し、日本国政府は、関税及び貿易に関する一般協定の日本国とベネルックス諸国との間における適用に向かって進むため、あらゆる可能な方法によりベネルックス諸国の政府と協力すると述べた。

B

1 ベネルックス代表は、ベネルックス諸国から日本国への特定の輸出品、特に日本国代表に手交した品目表に記載されている産品について保証を要請したが、ベネルックス諸国に特別の保証を与えることは、現存の二国間割当てを廃止しようとする日本国政府の政策に反すると考えられ、したがって、日本国はこのような特別の保証を与える立場にないことを遺憾の意をもって聴取した。

2 日本国代表は、ベネルックス諸国を原産地とする産品の日本国への輸入が、現行の輸入制度、すなわち自動承認制、外貨資金自動割当制及び外貨資金割当制による全地域割当て等に基づいて実施されていること、並びにそれらの輸入制度の枠内において、ベネルックス諸国を原産地とする産品が非差別的基礎において輸入されていることを説明した。さらに、日本国代表は、自動承認制が事実上自由化に等しいものと考えうることを説明した。

3 全地域割当てについて、ベネルックス代表は、日本国への輸出を増大し、かつ、ベネルックス諸国からの輸入について過去の実績を有しない日本国の輸入業者との取引関係を進展させようとするベネルックス諸国の輸出業者の希望をいれるため、多教の商品について全地域割当ての増大を希望する旨を表明した。日本国代表は、この希望をテーク・ノートしたが、日本国の輸入業者が自己の選択する地域から輸入する自由を有しているので、全地域割当ての中で分け前を取得することが、基本的にはベネルックスの輸出業者の努力のいかんにかかっている旨を指摘した。もっとも、日本国代表は、ベネルックス代表の表明した希望を考慮に入れて、現在の数量的輸入制限の漸進的な緩和及び終局的な撤廃を目標とする日本国政府の自由化計画の枠内で、可能なときはいつでも全地域割当てを増大することが日本国政府の意図であると述べた。

4 日本国代表は、さらに、日本国政府が他の一又は二以上の国の産品に対し輸入の可能性を与えている限り、ベネルックス諸国の同様の産品についても同等の輸入の可能性を与え、かつ、ベネルックス諸国の産品を現行の部分的全地域割当てに参加させる用意があると述べた。

C

1 第二議定書6の規定に関連する討議において、ベネルックス代表は、自国政府が一般には日本国からの輸入品に対し自由な許可政策を適用してきたが、若干の特定の産品については現在数量的輸入制限を維持していること、及びこの制限が日本国の若干の輸出品によって生ずるおそれのある特別の事態にかんがみ欠くことのできないものであると考えられる旨を述べ、さらにこの議事録に附属する品目表に掲げられている産品の輸入に課される制限を突然撤廃すると、同様の産品又は直接競争関係にある産品の国内生産者に対し重大な損害をもたらす結果となるので、自国政府が通商に関する協定の効力発生と同時に前記の制限を撤廃する立場にない旨を述べた。

2 よって、ベネルックス代表は、自国政府が日本国政府に対し次のことを提案することを希望すると述べた。

(a) 協定の最初の一年間は、附属品目表に提げられている産品のベネルックス諸国のヨーロッパ地域への輸入が、少なくとも同品目表に記載された金額又は数量まで許可される。ただし、ベネルックス諸国の政府は、前記の金額又は数量を増加することの可能性について絶えず検討する。

(b)(1) 第二年度又はその後の年度において前記の産品に対する制限の維持が第二議定書6(a)の規定の趣旨にかんがみ欠くことができないと認められるときは、ベネルックス諸国の政府及び日本国政府は、当該期間の開始前に相互に協議を開始し、かつ、その維持までに得た経験及び資料に照らして、制限を維持しうる産品及びこれらの産品の輸入許可の金額又は数量について合意する。ただし、いかなる場合にも、合意される制限の範囲は、前年度の制限の範囲をこえてはならない。

(2) (1)にいう協議により特定の産品についていかなる合意にも達しないときは、前年度において実際に許可された輸入に金額若しくは数量又は前年度につき合意された金額若しくは数量のいずれか大きい方が、次年度において有効となるものとする。

3 ベネルックス代表は、前記の輸入制限の実施及びこれに関する協議を行なうに当たり、並びに同制限に関連するすべての他の事項について、ベネルックス諸国の政府は、第二議定書6(b)に掲げる原則を指針とすること、及び通商に関する協定第二条の規定の完全な適用をすみやかに実現するため、できる限りすみやかに当該制限を撤廃することを約束する旨を述べた。

4 日本国代表は、このような事情の下において前記の提案は日本国政府にとって受諾しうるものであると述べた。さらに、日本国代表は、日本国政府は、独自に、及びベネルックス諸国の政府と協力して、並びに多角的な枠内において、ベネルックス代表が言及しかつ当該制限の維持の唯一の理由であると考えている特殊な事情の解決に努めることを約束すると述べた。さらに、日本国代表は、この合意された議事録Bに定める措置を検討するに当たつては、関係政府の前記の約束の結果として将来達成されるべき当該品目に対する輸入制限の緩和の進展状況を考慮すると述べた。

以上の証拠として、下名の代表者は、各自の政府のためにこの合意された議事録に署名した。

千九百六十年十月八日に東京で、英語により本書三通を作成した。

日本国政府のために

   小坂善太郎

オランダ王国政府のために

   N・A・J・デ・フォーグト

ベルギー=ルクセンブルグ経済同盟の各政府のために

   ユージェーヌ・デュ・ボワ

 合意された議事録C附表

過渡期的措置の適用を受ける日本国産品の表

協定の最初の一年間におけるベネルックス諸国のヨーロッパ地域への輸入に対する割当て

1 木製品、たとえば、つまようじ、カクテル・スティック、アイス・クリーム・スティック及びロリーポップ・スティック並びにフォーク及びスプーン   二、〇〇〇ドル

2 あみかご類(ベネルックス諸国における病弱者及び不具者職業補導所の盲人が製作する種類のもの)   一二、〇〇〇ドル

3 人造繊維(長繊維及び短繊維)糸又は同繊維くず糸(純合成繊維糸及び小売用のものを除く。)   一一〇トン

4 人造繊維(長繊維)織物(なつ染したもの)   四四トン

5 人造繊維(長繊維)織物(生地を除くなつ染していないもの)   二六〇トン

6 人造繊維(短繊維)織物(なつ染したもの)   七八トン

7 人造繊維(短繊維)織物(生地を除くなつ染していないもの   一五〇トン

8 人造繊維(長繊維及び短繊維)生地織物及び綿生地織物(未さらしのもの)   一、〇〇〇、〇〇〇ドル

9 リボン(ゴム入りリボンを含む。)、レース、並びにブレード及びトリミング(絹製以外のもの)   二〇トン

10 毛糸(ポリエステル繊維を混じえたもの)  一六トン

11 綿織物(パイル織物等も含み、なつ染したもの)並びに同織物のシーツ、まくらカバー、テーブル・クロス、ナプキン及びタオル   六五トン

12 綿織物(パイル織物等も含み、なつ染していないもので生地を除く。)並びに同織物製のシーツ、まくらカバー、テーブル・クロス、ナプキン及びタオル   一七五トン

13 外衣類(毛製品又は他の繊維を混じえた毛製品で編んだもの又はクロシェ編みのもの)   七〇トン

14 人造繊維製手袋類(編んだもの又はクロシェ編みのもの)   一七、五〇〇ダース

15 綿製手袋類   五、〇〇〇ダース

16 婦人、少女及び幼児用外衣(絹製品又は毛製品以外のもの)(着物及び典型的な日本式衣服を除く。)   三五トン

17 成年男子及び少年用シャツ及びパジャマ(人造繊維製、綿製又はリネン製のもの)   六五トン

18 ハンカチーフ(綿製及び人造繊維製のもの)   一二トン

19 ショール、スカーフ、マフラー、マンティラス及びベール類(人造繊維製のもの)   五五トン

20 ゴム製はきもの及びゴム底の繊維製はきもの(ゴム製ビーチ・サンダルを除く。)   二四〇、〇〇〇足

21 食器及びその他の通常家庭用又は化粧用に使用される陶器製品   四〇〇トン

22 食器及びその他の通常家庭用又は化粧用に使用される磁器製品   一、七五〇トン

23 鉄鋼製ナイフ、スプーン及びフォーク   一六五トン

24 家庭用ミシン及びミシン頭部   三九、〇〇〇台

25 プラスチック製外衣   五二、〇〇〇ドル

26 ボタン(コロゾ、セルロイド及びその他のプラスチック製のもの)   二二六、〇〇〇ドル

27 全種類の鉛筆   六〇、〇〇〇グロス

28 敷石用及び道路補装用タイル、炉及び壁タイル(普通の陶土製品は除く。)   二五〇トン

備考

(1) 前記に使用した単位の定義は、次のとおりである。

ドル アメリカ合衆国ドル

トン メートル・トン

(2) ベネルックス諸国は、再輸出し又は加工の後再輸出する

ための商品の輸入が自由であるから、当該輸入を前記の割当てに算入してはならないことが了解される。

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交 換 公 文

(オランダ側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本使、本日署名された通商に関する一方オランダ王国及びベルギー=ルクセンブルグ経済同盟と他方日本国との間の協定(以下「協定」という。)に関し、次のことがオランダ王国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。

協定が効力を有している限り、オランダ王国と日本国との間で千九百十二年七月六日にヘーグで署名された通商航海条約の規定でこの協定に合致しないものは、協定をもって代える。もっとも、このように代えられた前記の千九百十二年の条約の規定は、協定が終了した時に自動的に再び実施され、同条約に定めるところにより終了するまで、引き続き完全な効力を有する。

本使は、閣下が、前記の了解を日本国政府に代わって確認されれば幸いであります。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十月八日

N・A・J・デ・フォーグト

日本国外務大臣 小坂善太郎閣下

(日本側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

本使は、本日署名された通商に関する一方オランダ王国及びベルギー=ルクセンブルグ経済同盟と他方日本国との間の協定(以下「協定」という。)に関し、次のことがオランダ王国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。

協定が効力を有している限り、オランダ王国と日本国との問で千九百十二年七月六日にヘーグで署名された通商航海条約の規定でこの協定に合致しないものは、協定をもって代える。もっとも、このように代えられた前記の千九百十二年の条約の規定は、協定が終了した時に自動的に再び実施され、同条約に定めるところにより終了するまで、引き続き完全な効力を有する。

本使は、閣下が、前記の了解を日本国政府に代わって確認されれば幸いであります。

本大臣は、さらに、前記の書簡に盛られている了解を日本国政府に代わって確認する光栄を有します。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十月八日

小坂善太郎

日本国駐在オランダ王国特命全権大使

  N・A・J・デ・フォーグト閣下

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日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約

日本国政府及びフィリピン共和国政府は、

両国間に存在する友好の関係を維持し、及び強化することを希望し、並びに

相互に有利な基礎の上に両国間の貿易及び通商を容易にし、及び発展させることを希望して、

友好通商航海条約を締結することに決定し、そのため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

日本国政府

フィリピン共和国駐在特命全権大使 湯川盛夫

外務審議官            島 重信

外務省経済局長大使        牛場信彦

フィリピン共和国政府

前下院議長          J・B・ラウレル・ジュニア

上院外交委員会委員長     ロレンソ・スムロン

下院外交委員会委員長     ラモン・P・ミトラ

上院外交委員会委員      ロヘリオ・デ・ラ・ロサ

下院外交委員会委員      アントニオ・V・ラキサ

日本国駐在特命全権大使    マヌエル・A・アデバ

商工次官           ペルフェクト・E・ラギオ

フィリピン賠償使節団団長公使 セサール・Z・ラヌーサ

中央銀行副総裁        アンドレス・V・カスティリヨ

公  使           エンリケ・M・ガルシア

これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

第一条

いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域への入国並びに同領域内における滞在、旅行及び居住に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第二条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判所の裁判を受け、及び行政機関に対して申立てをする権利、契約の締結及び履行、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 1の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は二重課税の回避若しくは歳入の相互的保護のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。

第三条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、いかなる第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に合致するような為替制限を課することを妨げるものではない。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。

4 3の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、当該一方の締約国が、2の規定に基づいて当該時に課することができる為替制限と同等の効果を有する制限又は統制をすることができる。

第四条

1 すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。

2 1の規定は、いずれか一方の締約国が内国漁業の産品に与える特別の利益には適用しない。

第五条

両締約国は、両国間の貿易を発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済の発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することを目的として、相互の利益のため、協力することを約束する。いずれの一方の締約国も、自立を基礎とする自国経済の健全なかつ均衡のとれた発展に役だつような他方の締約国の資本又は技術を自国の領域内に導入することを妨げてはならない。

第六条

1 いずれか一方の締約国の国旗を掲げる船舶で、国籍の証明のため当該締約国の法令により要求される書類を備えているものは、公海並びに他方の締約国の港、場所及び水域において、当該一方の締約国の船舶と認められる。

2 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と均等の条件で、外国との通商及び航海のため開放されている他方の締約国のすべての港、場所及び水域に旅客及び積荷とともに入ることができる。これらの船舶は、当該他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関して、いずれかの第三国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられ、また、係留場所の割当て、積卸しの施設の使用、水先人の役務並びに燃料、潤滑油、水及び食糧の補給その他すべての種類の技術上の便益に関して、当該他方の締約国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

3 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができるすべての貨物及び人を輸送する権利に関して、いずれかの第三国の同様の船舶に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。また、これらの貨物及び人は、(a)すべての種類の関税及び課徴金、(b)税関事務並びに(c)奨励金、関税の払いもどしその他この種の特権に関して、当該他方の締約国の商船で輸送される同様の貨物及び人に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

4 各締約国は、沿岸貿易に従事する権利を自国の船舶のみに留保することができる。もっとも、いずれの一方の締約国の商船も、常に他方の締約国の法令に従い、外国で積載した旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を陸揚げし、又は外国向けの旅客若しくは積荷の全部若しくは一部を積載する目的をもって、当該他方の締約国の領域内のいずれかの港から他の港に向かって航海を続けることができる。

5(1) いずれの一方の締約国も、他方の締約国の船舶に対し、難破、海上損害又は不可抗力による寄港の場合には、同様の場合に自国の船舶に与えると同一の援助、保護及び免除を与えるものとする。それらの船舶から救い上げられた物品は、国内消費のため搬入された場合を除くほか、すべての関税を免除される。ただし、国内消費以外の目的のため搬入された物品については、それが当該他方の締約国から搬出されるまでは、歳入の保護のための措置を執ることができる。

(2) いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の沿岸で座礁し、又は難破した場合には、当該他方の締約国の当局は、もよりの地にある船舶所属国の権限のある領事官にそれを通告するものとする。

6 いずれか一方の締約国の権限のある当局が発給した船舶の積量測度に関する証書は、他方の締約国の権限のある当局によって、同当局が発給した証書と同等のものと認められる。

第七条

この条約の規定は、いずれか一方の締約国が、

(a) 公共の安全若しくは国防又は国際の平和及び安全の維持

(b) 核分裂性物質又はその生産原料である物質

(c) 武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び資材の取引

(d) 公衆道徳の保護及び人、動物又は植物の生命又は健康の保護

(e) 金又は銀の貿易

に関する措置を採用し、又は実施することを妨げるものと解してはならない。

第八条

1 各締約国は、他方の締約国がこの条約の実施に関する事項について行なう申入れに対しては、好意的考慮を払い、かつ、その申入れに関する協議のため適当な機会を与えなければならない。

2 この条約の解釈又は適用に関する両締約国間の紛争で外交交渉により満足に調整されないものは、両締約国が他のなんらかの平和的手段による解決について合意しなかったときは、国際司法裁判所に付託するものとする。

第九条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにマニラで交換されるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日の後一箇月で効力を生ずる。この条約は、三年間効力を有し、その後は、3に定めるところにより終了するまで効力を存続する。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し六箇月前に文書による予告を与えることによって、最初の三年の期間の終りに又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。

第十条

この条約は、日本語、フィリピン語及び英語によるものとする。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

以上の証拠として、各全権委員は、この条約に署名調印した。

昭和三十五年十二月九日(フィリピン共和国独立第十五年十二月九日及び千九百六十年十二月九日に相当する。)に東京で、本書二通を作成した。

日本国のために

   湯川盛夫

   島 重信

   牛場信彦

フィリピン共和国のために

   J・B・ラウレル・ジュニア

   ロヘリオ・デ・ラ・ロサ

   アントニオ・V・ラキサ

   マヌエル・A・アデバ

   ペルフェクト・E・ラギオ

   セサール・Z・ラヌーサ

   アンドレス・V・カスティリヨ

   エンリケ・M・ガルシア

議定書

日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約(以下「条約」という。)に署名するに当たって、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受け、さらに、条約の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 永住の許可に関するすべての事項は、条約の範囲外であると了解される。

2 第一条の規定に関し、いずれの一方の締約国も他方の締約国が相互主義に基づく特別の取極によりいずれかの第三国の国民に対して与えているか、又は将来与える旅券及び査証に関する事項についての利益の亭受を要求する権利を与えられないものと了解される。

3 条約において「会社」とは、営利を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。

4 第三国に与える待遇よりも不利でない待遇の許与に関する第二条1の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利及び自由職業に従事する権利の亭有については、前記の待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。

5 条約のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。

6 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産並びに当該国民及び会社が直接又は間接に利益を有する財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためを除くほか、収用し、又は使用してはならず、また、正当な補償なくして収用し、又は使用してはならないことが確認される。

7 条約の規定は、裁判所の裁判を受け、及び行政機関に対して申立てをする権利を除くほか、いずれか一方の締約国が、第三国の国民がその所有又は管理について直接又は間接に支配的利益を有する他方の締約国の会社に対して条約に定める利益を拒否することを妨げるものと解してはならない。

8 第三条3の規定は、いずれか一方の締約国が、商業的性質を有しない慣習上の理由により、又は詐欺的な若しくは不公正な慣行を防止するため、制限又は禁止をすることを妨げるものではない。ただし、その制限又は禁止は、他方の締約国の通商に対してほしいままに差別をするものであってはならない。

9 両締約国の政府は、相互の貿易の拡大がそれぞれの国内の生産者に対し重大な損害を与えることなく、又は与えるおそれなく達成されることを期待する。もっとも、いずれか一方の締約国の製品が他方の締約国の同様の製品又は直接的競争製品の生産者に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある条件で当該他方の締約国の領域に輸入されていることについて合理的な証拠があるときは、輸出締約国の政府は、輸入締約国の政府の要請により、協議に入るものとし、また、協議の上、その権限内において、前記の損害を防止し、又は救済するために適当な措置を執るものとする。

10(1) 条約のいかなる規定も、日本国に対し、千九百四十六年七月四日にマニラで署名され、千九百五十五年九月六日にワシントンで改正された貿易及び関係事項に関するフィリピン共和国とアメリカ合衆国との間の協定又は両国間のその他の協定、条約若しくは協約に基づいて、フィリピン共和国が、もっぱら、

(a) 同国の領域内で公益事業並びに天然資源の処分、開発及び利用その他の事業活動を営むことに関して、アメリカ合衆国の国民及び会社に対し、又は

(b) 関税及び課徴金に関して、アメリカ合衆国の産品に対して

与えているか、又は将来与える権利及び特権の亭受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

(2) 条約のいかなる規定も、フィリピン共和国に対し、日本国が、もつぱら、(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者に対し、又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の原住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の亭受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

以上の証拠として、各全権委員は、この議定書に署名調印した。

昭和三十五年十二月九日(フィリピン共和国独立第十五年十二月九日及び千九百六十年十二月九日に相当する。)に東京で、日本語、フィリピン語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国のために

   湯川 盛夫

   島  重信

   牛場 信彦

フィリピン共和国のために

   J・B・ラウレル・ジュニア

   ロヘリオ・デ・ラ・ロサ

   アントニオ・V・ラキサ

   マヌエル・A・アデバ

   ペルフェクト・E・ラギオ

   セサール・Z・ラヌーサ

   アンドレス・V・カスティリヨ

   エンリケ・M・ガルシア

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合意された議事録

(訳文)

日本国及びフィリピン共和国の全権委員は、本日署名された日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約(以下「条約」という。)の交渉において到達した次の了解を記録する。

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、条約の第二条1の規定に基づき、会社の組織並びに支店、代理店その他の事務所の設置及び維持に関して、第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を亭受する権利を有することが確認される。

2 条約の第三条1の規定は、いずれか一方の締約国が、すべての外国人及び外国会社に同様に適用される関係法令を採用し、及び施行することを妨げるものではないと了解される。

3 第三条3の規定に関しては、同規定に基づいて課することができる輸入の制限又は禁止は、国内の生産者を保護するため、原産国と関係なく製品そのものに対して課する制限又は禁止をも含むことが確認される。

4 条約の第五条の規定に関し、各締約国の権限のある当局は、いかなる資本又は技術の自国の領域内への導入が、自立を基礎とした自国経済の健全なかつ均衡のとれた発展をもたらすことに役だつかどうかを無差別の原則に従って決定するものと了解される。

5 条約において「商船」とは、漁船、娯楽用ヨット及び運動競技用舟艇を含まないことが確認される。

千九百六十年十二月九日に東京で

日本国のために

   湯川 盛夫

フィリピン共和国のために

   J・B・ラウレル

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第一条に関する交換公文

(訳文)

(日本側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本使は、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約に署名するに当たって、同条約第一条の規定に言及する光栄を有します。同規定によれば、いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域への入国並びに同領域内における滞在、旅行及び居住に関するすべての事項について、いかなる第三国の国民に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられることとなっております。

前記の待遇を具体的に定めることが実際上不可能であるので、本使は、前記の規定の適用に関し、いずれの一方の締約国の国民も他方の締約国の領域への入国及び同領域内における滞在に関してはこの書簡の附属書に掲げる待遇を亭受する権利を有するという本国政府の了解を閣下に通報いたします。いずれか一方の締約国の関係法令になんらかの改正が行なわれた場合には、両政府は、必要あるときは、この書簡の附属書に適当な修正を加えるものとします。

本使は、さらに、閣下が前記の了解を貴国政府に代わつて確認されることを要請する光栄を有します。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月九日

フィリピン共和国駐在

日本国大使 湯川 盛夫

フィリピン共和国全権委員団長

   J・B・ラウレル・ジュニア閣下

附属書

A いずれか一方の締約国の商用目的の一時入国者は、可能なときはいつでも、次に掲げる期間他方の締約国の領域内に在留することを認められる。

(1) 最初の期間として、入国の日から六箇月

(2) 追加の期間として、六箇月。ただし、この追加の期間の申請者がその最初の期間における在留資格を維持する場合に限る。

B いずれか一方の締約国の国民であって、もっぱら、(a)主として両締約国の領域の間における貿易を営むこと、又は(b)当該国民が相当な額の資本を投下した企業若しくは当該国民が現に相当な額の資本を投下する過程にある企業を発展させ、若しくはその企業の運営を指揮するため他方の締約国の領域に入る者並びにその者の配遇者及び成年に達しない未婚の子は、当該他方の締約国の領域内に最初の三年の期間在留することを認められる。この最初の期間をこえる在留のための申請に対しては、できる限り好意的な考慮が払われるものとする。

(フィリピン側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本全権委員は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

前記の書簡の附属書は、この書簡に添付されております。

本全権委員は、さらに、閣下の書簡に述べられた了解をフィリピン共和国政府に代わって確認する光栄を有します。

本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月九日

フィリピン共和国全権委員団長

J・B・ラウレル・ジュニア

フィリピン共和国駐在

 日本国特命全権大使 湯川盛夫閣下

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日本国とフィリピン共和国との間の貿易に関する合意された議事録

(訳文)

日本国政府(以下「日本国政府」という。)及びフィリピン共和国政府(以下「フィリピン政府」という。)の代表者の間における両国間の友好通商航海条約(以下「条約」という。)の署名に至る交渉において、日本国政府及びフィリピン政府は、条約の実施に関連して、それぞれの憲法上の権能の範囲内で実施されるべき次の了解に到達した。

1 両政府は、近年、通常の市場経路を通じ、かつ、商業的条件で、日本国とフィリピン共和国との間に高水準の貿易が行なわれていることを了知する。両政府は、将来においてもこのような高水準の貿易が維持され、かつ、さらに拡大されることを期待する。

2 条約第三条4及び議定書10(2)の規定を留保して、

(1) 日本国政府は、フィリピン共和国に対し、糖みつ、含みつ糖、分みつ糖、葉たばこ、葉巻、バナナ及びパイナップルの外国為替割当総額について競争する機会を与えるものとする。

(2) 日本国政府は、日本国の全般的な貿易及び外国為替に関する政策に従うことを条件として、フィリピン共和国が日本国への輸出につき相当な関心を有する産品を自動承認制品目表に掲げておくものとする。

3 両政府は、第一次産品輸出国が直面する国際商品貿易の障害及び不安定性並びにこれらの困難が前記の国の経済的安定に及ぼす影響を考慮して、第一次産品の国際貿易に一層大きな安定性と予見可能性とを生み出すための方法を見出す緊急の必要があることに同意する。したがって、両政府は、いずれか一方の国に直接利害関係のある第一次産品の国際貿易の状況を改善することを目的とする国際的な措置に対し、好意的考慮を払うものとする。

千九百六十年十二月九日に東京で

日本国のために

   湯川 盛夫

フィリピン共和国のために

   J・B・ラウレル・ジュニア

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民間航空運送協定並びに二重課税の回避及び脱税の防止のための条約の締結の交渉開始に関する交換公文

(訳文)

(フィリピン側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本全権委員は、フィリピン共和国と日本国との間の友好通商航海条約に署名するに当たって、両政府が、フィリピン共和国と日本国との間の友好通商航海条約の署名後の最も早い実行可能な日に、本国政府の提案による民間航空運送協定の締結並びに貴国政府の提案による所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約の締結のための交渉を開始することを合意したというフィリピン共和国政府の了解を閣下に通報する光栄を有します。

本全権委員は、さらに、閣下が前記の了解を貴国政府に代わって確認されることを要請する光栄を有します。

本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月九日

フィリピン共和国全権委員団長

J・B・ラウレル・ジュニア

フィリピン共和国駐在

 日本国特命全権大使 湯川盛夫閣下

(日本側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(フィリピン側書簡)

本使は、さらに、閣下の書簡に述べられた了解を本国政府に代わって確認する光栄を有します。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月九日

フィリピン共和国駐在

日本国大使 湯川 盛夫

フィリピン共和国全権委員団長

J・B・ラウレル・ジュニア閣下

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日本船舶の船員名簿の査証手続免除に関する交換公文

(訳文)

(日本側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本使は、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約に署名するに当たって、日本船舶の船員が船員名簿の領事査証なしではフィリピンの港において上陸することを許可されていない事実について、閣下の注意を喚起する光栄を有します。

この点に関し、本使は、日本国の港に寄港するフィリピンの船舶の船員がなんらの査証手続なしで上陸許可書を与えられていることを閣下に通報するとともに、本国政府の訓令に基づき、フィリピン共和国政府が同国の港に寄港する日本船舶の船員の上陸に関する査証手続を免除することに同意することができるかどうかについて照会いたしたいと思います。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月九日

フィリピン共和国駐在

日本国大使 湯川 盛夫  

フィリピン共和国全権委員団長 J・B・ラウレル・ジュニア閣下

(フィリピン側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本全権委員は、日本船舶の船員の上陸に関する査証手続に関する千九百六十年十二月九日付けの閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

本全権委員は、回答として、フィリピン共和国政府が、フィリピンの港に寄港する日本船舶の船員の上陸に関する査証手続を免除する意思を有し、この免除をできる限りすみやかに実施するため必要な措置を執ることを閣下に通報いたしたいと思います。

本全権委員は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月九日

フィリピン共和国全権委員団長

J・B・ラウレル・ジュニア  

フィリピン共和国駐在

 日本国特命全権大使 湯川盛夫閣下

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日本国とパキスタンとの間の友好通商条約

日本国及びパキスタンは、両国間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、両国の国民の間の貿易上及び通商上の関係を促進し、並びに相互に有益な投資及びその他の形態の経済的協力を助長することを希望して、無条件に与えられる最恵国待遇の原則を一般的に基礎とする友好通商条約を締結することに決定し、そのための全権を有する、日本国内閣総理大臣池田勇人及び日本国外務大臣小坂善太郎とパキスタン大統領元帥モハマッド・アユーブ・カーンは、それぞれ日本国及びパキスタンのために、次の諸条を協定した。

第一条

いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域に当該他方の締約国の法令に従って入ることを許され、かつ、当該他方の締約国の領域への入国並びに同領域内における滞在、旅行及び居住に関するすべての事項について、最恵国待遇を与えられる。

第二条

1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、(a)良心の自由を享有し、(b)公私の宗教上の儀式を行ない、(c)国外の公衆に周知させるため資料を収集し、及び送付し、並びに(d)当該領域の内外にある他の者と郵便、電信その他一般に公衆の用に供される手段によって通信することを許される。

2 この条の規定は、公の秩序を維持し、及び公衆の道徳又は安全を保護するため必要な措置を執る締約国の権利の行使を妨げるものではない。

第三条

1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、いかなる種類の不法な迫害も受けることはなく、かつ、いかなる場合にも国際法の要求する保護及び保障よりも少なくない不断の保護及び保障を受けるものとする。

2 いずれか一方の締約国の領域内で他方の締約国の国民が抑留された場合には、もよりの地にあるその者の本国の領事官は、その者の要求に基づき、直ちにその旨を通告され、かつ、その者を訪問し、及びその者と通信することが許される。その者は、(a)相当なかつ人道的な待遇を受け、(b)自己に対する被疑事実を正式にかつ直ちに告げられ、(c)自己の弁護のための適当な準備に支障がない限りすみやかに裁判に付され、及び(d)自己の弁護に当然必要なすべての手段(自己が選任する資格のある弁護人の役務を含む。)を与えられる。

3(a) いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、すべての強制軍事服役及びその代りに課されるすべての課徴金を免除される。

(b) いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、すべての強制公債、軍事取立金、軍用徴発又は強制宿営に関して、最恵国待遇を与えられる。

第四条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、不断の保護及び保障を受けるものとする。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、その住居、事務所、倉庫、工場その他の建造物で他方の締約国の領域内にあるものについては、不法な侵入及び妨害を受けないものとする。当該建造物及びその中にある物件について必要がある場合に行なう当局の捜索及び検査は、占有者の便宜及び業務の遂行に周到な考慮を払い、法令に従ってのみ行なうものとする。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の国民又は会社がその設立した企業、その資本又はその提供した技能、技芸若しくは技術に関し適法に取得した権利又は利益で当該一方の締約国の領域内にあるものを害するおそれがある不当な又は差別的な措置を執ってはならない。

4 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためにする場合を除くほか、収用し、又は使用してはならず、また、正当な補償を迅速に行なわないで収用し、又は使用してはならない。その補償は、実際に換価することができるもので行なわなければならず、また、収用し、又は使用した財産に十分相当する価額のものでなければならない。

5 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、2及び4に規定する事項に関しては、いかなる場合にも、最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第五条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、税金の賦課、裁判所の裁判を受け、及び行政機関に対して申立てをする権利、財産権、法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項について、最恵国待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、特許権の取得及び保有並びに商標、営業用の名称及び営業用の標章に関する権利並びにすべての種類の工業所有権に関して、内国民待遇を与えられる。

3 1の規定にかかわらず、各締約国は、相互主義に基づき、又は二重課税の回避若しくは脱税の防止のための協定により、租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。

第六条

一方の締約国の国民又は会社と他方の締約国の国民又は会社との間に締結された仲裁による紛争の解決を規定する契約は、いずれの一方の締約国の領域内においても、仲裁手続のために指定された地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは、執行することができないものと認めてはならない。その契約に従って正当にされた判断で、判断がされた地の法令に基づいて確定しており、かつ、執行することができるものは、いずれの一方の締約国の領域内においても、その判断がされた地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは、無効と認め、又は執行のための有効な手段を拒否してはならない。

第七条

すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連する規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の締約国がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。

第八条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、両締約国の領域の間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払、送金及び資金又は金銭証券の移転に関して、最恵国待遇を与えられる。

2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に合致するような為替制限を課することを妨げるものではない。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国のすべての産品の輸入に対し、又は当該他方の締約国の領域に仕向けられるすべての産品の輸出に対し、なんらの制限又は禁止をも課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止されている場合は、この限りでない。

4 3の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、貨物の輸入及び輸出について、当該一方の締約国が、2の規定に基づいて当該時に課することができる為替制限と同等の効果を有する制限又は統制をすることができる。

第九条

両締約国は、両国間の貿易を発展させ、及び経済関係を強化すること並びに、特にそれぞれの領域内における経済の発展及び生活水準の向上に資するため、科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することを目的として、相互の利益のため、協力することを約束する。

第十条

1 各締約国は、(a)その政府が所有し、又は支配する企業及びその領域内で排他的の又は特別の特権を与えられた独占企業又は機関が、他方の締約国の通商に影響を与える輸入又は輸出を伴う購入又は販売を商業的考慮(価格、品質、入手可能性、市場性、運送その他購入又は販売の条件等に関する考慮をいう。)によってのみ行なうべきこと並びに(b)他方の締約国の国民、会社及び通商が、前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を通常の商慣行に従って与えられるべきことを約束する。

2 各締約国は、他方の締約国の国民、会社及び通商に対し、(a)政府による需品の購入、(b)特権の賦与その他政府による契約及び(c)政府又は排他的の若しくは特別の特権を与えられた独占企業若しくは機関が行なう役務の販売に関しては、第三国の国民、会社及び通商に与える待遇と比べて公正なかつ衝平な待遇を与えなければならない。

第十一条

1 この条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有するか、又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。

2 この条約は、次の措置を執ることを妨げるものではない。

(a) 金又は銀の輸入又は輸出を規制する措置

(b) 核分裂性物質、核分裂性物質の利用若しくは加工による放射性副産物又は核分裂性物質の原料となる物質に関する措置

(c) 武器、弾薬及び軍需品の生産若しくは取引又は軍事施設に供給するため直接若しくは間接に行なわれるその他の物資の取引を規制する措置

(d) 国際の平和及び安全の維持若しくは回復に関する自国の義務を履行し、又は自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置

(e) 美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護のために執られる措置

(f) 公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護に関する措置

(g) 第三国の国民がその所有又は管理について直接又は間接に支配的利益を有する会社に対してこの条約に定める利益(法律上の地位を認めること及び裁判所の裁判を受ける権利を除く。)を拒否する措置

3 第七条及び第八条の規定は、いずれか一方の締約国が与える次の利益には適用しない。

(a) 内国漁業の産品に与える利益

(b) 国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益

(c) 当該一方の締約国が加盟国となる関税同盟又は構成地域となる自由貿易地域の存在に基づいて与える利益。ただし、当該一方の締約国が、自国の計画を他方の締約国に通報し、かつ、協議のための適当な機会を当該他方の締約国に与える場合に限る。

第十二条

1 「内国民待遇」とは、一締約国の領域内で与えられる待遇で、当該締約国のそれぞれ国民、会社、産品その他の対象が同様の場合にその領域内で与えられる待遇よりも不利でないものをいう。

2 「最恵国待遇」とは、一締約国の領域内で与えられる待遇で、第三国のそれぞれ国民、会社、産品その他の対象が同様の場合にその領域内で与えられる待遇よりも不利でないものをいう。

3 この条約において「為替制限」とは、いずれか一方の締約国が課するすべての制限、規制、課徴金、租税その他の要件で、両締約国の領域の間における支払、送金又は資金若しくは金銭証券の移転について負担又は妨害となるものをいう。

4 この条約において「会社」とは、関係法令に基づいて設立された商業、工業、金融業その他営利を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。

第十三条

1 各締約国は、他方の締約国がこの条約の実施に関する事項について行なう申入れに対しては、好意的考慮を払い、かつ、その申入れに関する協議のため適当な機会を与えなければならない。

2 この条約の解釈又は適用に関する両締約国間の紛争で外交交渉により満足に調整されないものは、両締約国が他のなんらかの平和的手段による解決について合意しなかつたときは、国際司法裁判所に付託するものとする。

第十四条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにラワルピンディで交換されるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日の後一箇月で効力を生ずる。この条約は、五年間効力を有し、その後は、この条に定めるところにより終了するまで効力を存続する。

3 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し一年前に文書による予告を与えることによって、最初の五年の期間の終りに又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。

以上の証拠として、下名は、この条約に署名した。

千九百六十年十二月十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

   池田 勇人

   小坂善太郎

パキスタンのために

   モハマッド・アユーブ・カーン

議定書

日本国とパキスタンとの間の友好通商条約に署名するに当たって、下名は、さらに、同条約の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

1 第一条の規定は、日本国に対し、パキスタンが英連邦諸国の市民に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

2 第一条の規定に関し、いずれか一方の締約国の国民で特定の目的のため他方の締約国の領域に入ることを許されるものは、その入国許可の条件として法令により明示的に課される制限に反して営利的職業に従事する権利を有しない。

3 各締約国は、外国人がその締約国の領域内で営利を目的とする活動(事業活動)に従事する企業を設立し、又は当該企業における利益を取得することができる限度を定める権利を留保する。ただし、いかなる場合にも、最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えることを条件とする。もっとも、いずれか一方の締約国がその領域内でそれらの活動を行なうことを外国の国民又は会社に許す限度について新たに行なう制限は、その実施の際その領域内でそれらの活動に従事している企業で他方の締約国の国民又は会社が所有し、又は支配しているものに対しては、適用しない。

4 第五条1の規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利の享有についての待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。

5 この条約のいかなる規定も、著作権に関して、いかなる権利をも許与し、又はいかなる義務をも課するものと解してはならない。

6 第四条の規定は、いずれか一本の締約国の領域内で収用され、又は使用される財産で他方の締約国の国民及び会社が直接又は間接に利益を有するものについても適用する。

7 第八条の規定は、輸入及び輸出に関する差別を排除することを目的とするものであって、国際収支上の理由に基づいて、ある通貨による取引に対し他の通貨による取引よりも有利な待遇を与える特別の取扱いを排除することを意図するものではない。

8 第七条及び第八条の規定はパキスタンが英連邦諸国及び隣接国に与えている特恵又は利益で、この条約の署名の日に存在するものについては、適用しない。

9 この条約のいかなる規定も、パキスタンに対し、日本国が(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域を原籍とする者に対し、又は(b)同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し同条後段に掲げる事態が継続する限り、同地域の原住民及び船舶並びに同地域との貿易に対して与えているか、又は将来与える権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。

以上の証拠として、下名は、この議定書に署名した。

千九百六十年十二月十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

   池田 勇人

   小坂善太郎

パキスタンのために

   モハマッド・アユーブ・カーン

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交 換 公 文

(訳文)

(日本側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とパキスタンとの間の友好通商条約に関して、同条約を補足する海運に関する取極を締結するため交渉を引き続き行なうとの了解を、本国政府に代わって確認する光栄を有します。

本大臣は、さらに、閣下が前記の了解を貴国政府に代わって確認されることを要請する光栄を有します。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月十八日

池田勇人

パキスタン大統領元帥

   モハマッド・アユーブ・カーン閣下

(パキスタン側書簡)

書簡をもって啓上いたします。本官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

本官は、さらに、前記の了解を本国政府に代わって確認する光栄を有します。

本官は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

千九百六十年十二月十八日

モハマッド・アユーブ・カーン

日本国総理大臣 池田勇人閣下

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