対外啓発活動関係 |
政府は、米国がケネディ新政権の発足とともに新しい経済政策を立案中である時期に、わが国財界の有力者が米国新政権および財界の首脳と日米両国が直面する経済諸問題につき意見を交換し相互の立場の理解を深めることは、今後の日米経済関係の緊密化に寄与するものと考えたので、本年三月、佐藤喜一郎氏(三井銀行会長)を団長とし八名よりなる経済使節団を米国に派遣した。
同使節団は、紡績、電力、重工業、化学工業等の業界の代表的実業家八名からなり、三月三十日から約一カ月にわたって米国の主要六都市を訪問した。同使節団はワシントンにおいてケネディ大統領を始め、商務省、財務省、労働省等政府の要人および労働組合の有力者等と日米経済問題につき懇談したほか、他の主要都市において財界の首脳と意見を交換し、かつ米国市場を視察した。
フランスは現在日本に対し欧州において最も厳しい輸入制限を行なっている国の一つであり、わが国は昨年以来パリにおいて交渉(別項参照)を行ない対日待遇の改善に努めているが、仏側のこの対日態度は日本産品の競争力に対する過大な警戒の念にその一因があると考えられるので、日本経済および産業の実情に対する仏側の認識を深め、かかる誤解を解く必要ありと考え、経済団体連合会および経済同友会の協力を得て、ボーヌ鉄鋼会社のアンリ・ヴィケール社長以下四名からなる経済視察団を本年三月十四日から四月四日まで約三週間本邦に招請した。
一行は、滞日中わが業界の首脳部と十分意見を交換し、また東京周辺、中京、関西、北九州方面にわたり広く工場等を視察した。この結果、一行は、わが国の経済および産業に対する認識を大いに深めたように見受けられ、本招待はかなりの成果をあげたものと考えられる。
昨年二月、ビルマ米の追加買付によりビルマ側による対日輸入の全面的停止措置の解除をみたが(別項参照)、ビルマの主要輸出品たる米の買付は、わが国にとってますます困難となることが予見され、米以外のビルマ産品の買付の促進により対緬輸入の増加を図ることが、日緬貿易関係発展のため必要と考えられた。このため日緬間に経済使節団を交換することにつき合意をみ、その結果、わが方より現中小企業金融公庫総裁森永貞一郎氏を団長とする経済使節団を派遣することに決定した。この使節団は、昨年三月二十四日から四月四日に至るまで、ラングーンにおいてウ・セン・チ貿易次官を首席代表とするビルマ側代表団と米以外の農林産物、鉱産物の輸入増大方法および日緬経済協力の推進等に関し一連の会談を行ない、同月六日離緬した。
一方ビルマ側は、同使節団とのラングーン会談を継続する目的をもって、ウ・セン・チ貿易次官を団長とする経済使節団を派遣し来り、わが方代表団との間に十月三十一日から十一月九日まで一連の会談を行ない、十六日離日した。
政府は、エジプト、スーダン、ギリシャ、トルコ、ユーゴースラヴィア、イタリア、テュニジア、モロッコ、ポルトガルおよびスペインの十カ国に対し、昨年三月十五日から約二カ月にわたり、旭電化社長東海林武雄氏を団長とする十名から成る対地中海沿岸諸国貿易使節団を派遣した。この使節団は、これらの諸国においてわが国との貿易増進の障害となっている点を究明するとともに今後どのような方策により貿易拡大を図るべきかを検討することをその使命として、各国において政府、民間首脳と懇談、意見の交換を行なうとともに、訪問国経済の実情を視察した。
昨年十月、政府は、中近東の一次産品、とくに生産国からの買付要求が強く、しかも一応買付の可能性のある綿花、羊毛、鉱産物、乾燥果実、デーツの五品目について、買付可能性の実地調査を行なわしめるため、三菱商事浅見清一氏を団長とする十三名の専門家から成る「中近東向一次産品買付調査団」を派遣した。
ギニア経済省フラモイ・ベレテ貿易局長を団長とするギニア貿易使節団の一行四名は、昨年十一月二十九日来日し、その滞日中、両国間の貿易取極締結の可能性につき討議を行なった。同使節団来日の主目的は、両国親善関係の増進と貿易取極締結に関する日本側の意向の打診にあった。
昨年八月十六日から九月五日までモスクワ市のソコーリニキ公園で開催された日本産業見本市は、わが国が戦後海外で開催した見本市では最大のものであった。
この見本市への出品物は約一万点、価格にして約一五〇万ドルであったが、小間数の約七〇%が機械類で占められたのがその特色であった。
政府は、この見本市開催に当り石井通産大臣を派遣したが、会期中ソ連側からは、フルシチョフ首相、ミコヤン第一副首相等の要人が視察を行なったほか、参観者は約百万人に達し、日本産業の実体についてソ連人の認識を深めさせるのに大いに役立ち、一般人に多大の好感をもって迎えられた。
第三次日本産業巡航見本市船は、昨年十一月から本年二月に至る期間、東南アジア太平洋地域諸国を巡航し、主要十三港において見本市を開催した。外務省は、さきの両次の産業巡航見本市船派遣の場合と同様、その企画および業務に参加するとともに寄港諸国所在公館を通じて見本市開催を指導し協力した。
見本市船は、昨年十一月十五日のウェリントン(ニュー・ジーランド)を皮切りに、オークランド(同上)、ブリスベーン、シドニー、メルボルン、アデレード(以上オーストラリア)、ポート・スエッテンハム(マラヤ連邦)、シンガポール、バンコク、サイゴン、マニラ、香港、および基隆に寄港し、その間、総計約二十四万人の参観者を集め、わが国産業の現状および技術水準を広く紹介し、市場開拓とその確保を図るというその所期の目的を十分達成した。