貿易支払取極関係

1、日英貿易取極の締結

一九五八年四月ロンドンにおいて締結された日英貿易取極の有効期間は、一九五九年三月までの一年間であったが、その後さらに昨年三月まで一年間単純延長されていた(本書第三号一三九頁および第四号一六二頁参照)。これを改訂し新取極を結ぶための交渉は、昨年二月八日以降ロンドンにおいて進められ、五カ月余の長時日を費して、七月五日妥結した。

 交渉の問題点

(1) 英国は一九五九年から一九六〇年にかけ、数次にわたり大巾な輸入自由化を実行し、OEEC諸国等に対する輸入制限の緩和(一九五九年六月)、およびドル地域に対する大巾な輸入制限解除(同年十一月)に踏み切りながら、わが国に対する輸入制限については、とくに是正策を講じなかったため、わが国に対する輸入制限は差別の度合をますます深める結果となった。従って、わが国としては日英貿易取極改訂交渉を通じて、英国が第三国に対して自由化している品目には、わが国も均てんせしめるよう差別撤廃のための努力をするとともに、どうしても英国がわが国に自由化待遇を与えられない品目については、わが方の輸出関心を十分満足させるに足る大巾なクォータを獲得することが緊要であった。一九五九年十一月に東京で開催されたガット総会を契機として、わが国においても輸入自由化推進の政策が樹立され、自動承認制度の拡大、自動外割制度の新設および拡大、ならびに従来輸入を認められていなかった完成消費財に対する輸入枠の新設等が決定されたが、これらの新たな利益について英国を従前どおり無差別に均てんさせるべきか否か、また英国を均てんさせる場合、どの程度の代償を英側から獲得すべきかが問題となった。

(2) さらに、わが国においては右にのべた輸入自由化の根本方針に沿う措置として、非ドル地域枠(いわゆるノンダラー・クォータ)および従来の対英シングル枠を、無差別のグローバル枠に切り替える必要が生じたのであるが、この場合、新設されるグローバル枠の中で英国の占める割合(すなわち英国が得べき利益)がどの程度のものとなるかを判断することは技術的にすこぶる困難であった。

このような複雑な事情を背景として、交渉は極めて難航したが、結局次のような内容で円満妥結をみることとなった。

 取極の内容

(1) わが方の輸出

(イ) 従来わが国からの輸入が英国において差別的に制限されていた六二品目中、養殖真珠、オートバイ、電気器具、まぐろ罐詰等わが国からの輸出増が期待される約四〇品目について自由化(OGL)が与えられることとなった。

(ロ) 現在なおわが国からの輸入が数量制限に付されている残余の諸品目についてもカメラ、トランジスター・ラジオ、玩具、プラスティック材料、果実罐詰、衣料品等わが方輸出関心の強い品目については、従来の数倍ないし数十倍に及ぶ大幅なクォータが与えられた。

(ハ) 英植民地においては、従来日本に対するOGL供与の率が対日総輸入額の一〇%と定められていたが、その比率が二五%まで引上げられることとなった。

(2) わが方の輸入

(イ) わが国の輸入自由化については、原則として英側よりこれに見合う代償を得て英国に均てんを認めることとした。

(ロ) 従来英国との特殊関係から維持していた対英シングル枠をグローバル枠に切換えるとともに、旧取極で規定していた非ドル地域枠をもすべてグローバル枠とした。

(ハ) 植民地については、英本国の場合と別に、わが方自由化の利益を均てんせしめることとした。

わが国と英本国との貿易実績は、昨年度(一九五九年四月-一九六〇年三月)において輸出入各四千万ポンド程度であったが、今回の新取極の結果として、今年度は輸出入各一割程度の増加が見込まれる。

他方英植民地との貿易については、わが国におけるコーヒー豆等原料品の自由化により植民地からの輸入が若干増え、従来わが方の大幅出超となっていた対英植民地貿易がある程度是正されるものと思われる。

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2、日仏通商協定締結交渉

一九五九年七月調印の日仏貿易取極は、有効期間が一年とされていたため、昨年六月初旬パリにおいて新協定締結のための交渉を開始した。日仏貿易は、わが国が輸入制度上フランス産品に対して無差別待遇を与え、かつ実際上も,ニッケル鉱石、カリ塩、燐鉱石等を年々大量に買付けているのに対し、フランスは日本に対しガット三十五条を援用し、わが国産品を対OEECおよび対米加自由化に比して自由化率のはるかに低い「その他地域」自由化にしか均てんせしめていない事情もあり、わが国の恒常的入超となっている。従って、昨年六月開始された交渉において、わが方は日仏貿易改善のため右の原則問題の解決を図ったのであるが、昨年六月末までには同交渉の妥結をみなかった。そこで、とりあえず前記取極を三カ月間単純延長したが、その後の交渉において妥結までにはなお相当の時日を要することが予想されるに至ったので、この間の暫定措置として同取極をさらに本年三月末日までの六カ月間延長した。なおこの延長にあたっては、対日自由化品目の拡大、最低税率供与品目の拡大および対日クォータの新設ないし増枠等相当の手直しが行なわれた。

本年四月以降の貿易については待遇論交渉に関する仏側準備体制が未だ整っていないことおよび四月以降のわが国の自由化拡大等に鑑み、現行取極に多少の修正を加えた上で、同取極をさらに六カ月間延長することとし、この点について仏側と原則的了解に達した。

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3、日独貿易交渉の妥結

(1) 日独貿易協定の締結

日独貿易は、一九五一年八月二日の日独貿易協定が一九五七年三月三十一日に失効して以来、無協定のまま行なわれてきたが、両国間貿易になんらかの法的基礎をもたしめたいとの独側提案もあり、第十四回ガット総会における西独の輸入制限に関する決定に基づく日独間協議と併行して(別項参照)、一昨年七月から十一月まで東京において、また昨年一月から六月末までボンにおいて貿易協定締結のための交渉を行なった。この交渉は、昨年七月一日妥結をみ同日東京において日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の貿易協定ならびに付属議定書が署名された。

本貿易協定の中心をなすものは、両国政府が、IMFおよびガットの範囲内での無差別待遇の義務を確認し、将来残存する輸入制限の撤廃に努力するとの意向を確認する旨の規定である。なお、この協定は、署名の行なわれた昨年七月一日から発効し、有効期間は一年であるが、自動更新が可能である。また付属議定書には、統計の交換、技術契約の促進、混合委員会の任務等に関する規定が設けられている。

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(2) 日独間ガット協議

西独が一九五七年IMFにより国際収支上の理由による輸入制限を行なう資格なしと判定されて以来、同国の輸入制限撤廃問題は、ガットの懸案となっていたところ、一昨年五月の第十四回総会において米・加・豪等から輸入制限の即時撤廃を強く要求された結果、西独は、三年ないし五年以内に、自由化すべき品目、事実上自由化すべき品目および自由化への努力を行なうべき品目を明らかにするに至った。しかし、わが国がとくに関心の深い繊維品、陶磁器、ミシン、双眼鏡、玩具およびライターの六品目については、一応自由化の対象にはなったが、その時期については、わが国を含む主要利害関係国との間に協議を行ない、その結果をガットに報告することになった。

このガットの決定に基づき、日独両国政府は、一昨年七月以降前記日独貿易協定交渉と併行して協議を行なった結果、自由化時期が定められなかった一部の繊維製品および陶磁器を除き、前記六品目の輸入を一九六〇年七月一日から一九六五年一月一日までの間に段階的に自由化し、かつ自由化までの間、これら六品目に対するグローバル枠を逐年増額することとなり、昨年五月二十七日ボンにおいて右の協議内容を記録した合意議事録の署名をみた(ドイツ政府は、同年五月三十一日ガット第十六回総会において報告を行ない、わが国を始めとする利害関係国との協議の結果実施することとなった自由化計画を発表した)。

なお自由化時期の決定をみなかった一部の繊維製品および陶磁器については、前記日独貿易協定の署名に際し、わが国のこれら商品の対独輸出を漸進的に増大する具体的方途について合意をみた。

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4、日伊貿易関係調整交渉

一九五六年一月、日伊貿易支払取極が廃止されて以来、わが国はイタリアに対し無差別待遇を許与してきたのにかかわらず、イタリアはわが国を通貨圏という面ではドル地域に指定しながら、輸入制度上は特別扱いし、対ドル地域自由化をはるかに下廻る三十一品目の自由化を認めていたに過ぎなかった。日伊両国はガット関係にあり、このようなイタリア側の措置は、ガットの無差別待遇の原則に反するので、わが方は、その後機会ある毎に伊側の反省を求めてきたところ、伊側より両国間貿易関係調整のため新取極の締結申入れがあり、一九五九年夏と秋の二回に亘り東京で日伊会談を行なったが、最終的合意に達するに至らなかった。

他方、イタリアは、一九五九年秋のIMF理事会で国際収支上の理由による輸入制限維持の資格なしとの判定を受け、次いで昨年春のガット第十六回総会で、イタリアの輸入制限に関してはイタリアと利害関係国が直接協議を行なうべき旨の決定が行なわれた。

このガットの決定に基づき、イタリアはまずドル地域に属する諸国と協議を行なった結果、ドル地域に対しては昨年六月以降年末まで二回にわたり自由化拡大措置を講じ、非自由化品目を八〇数品目に縮減するに至った。また、わが国に対しては、昨年九月、非自由化品目を約五二〇品目に限定し、他の品目については自由化を実施した上、右非自由化品目につきわが方と協議に入りたい旨申入れてきたが、わが方は対ドル地域待遇との懸隔が甚だしいので、これを基礎として協議に入ることは不可能であるとして、イタリア側の再考を求めたところ、十月末に至りイタリア側は、さらに約一二〇品目を自由化する用意ある旨申し越した。それでも非自由化品目はなお約四〇〇品目に達し、ドル地域との懸隔が依然大きく残されているので、わが方としては不満であったが、協議をいたずらに遅延せしめることはかえって不利であると考え、昨年十一月より年末にかけローマにおいて右の約四〇〇品目に関しイタリア側と二国間協議を行なうこととした。その結果、伊側は右リストのうちからある程度の品目をさらに自由化する用意があることを示すに至ったが、なおドル地域との差は相当大きく、かつ非自由化品目として残されているものの中にはわが国において主として国内向けに生産され輸出余力のない品目やイタリア国内市場では競争力の弱い品目等がかなり含まれているので、今後さらにイタリアとの協議を継続することとなっている。

なおイタリアは、本年初頭より前記約一二〇品目の自由化を実施したので、現行対日非自由化品目は約四〇〇品目である。

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5、日本・スウェーデン貿易取極の単純延長

一九五九年五月十六日に署名されたわが国とスウェーデンとの貿易に関する議定書は、昨年三月末をもって失効することとなっていたが、両国間貿易は、右取極期間中円滑に進展しており、昨年四月以降の貿易についてとくに新たな取極を行なう必要も認められなかったので、スウェーデン政府と話合いの上、同議定書をさらに本年三月三十一日までの一年間延長適用することとし、昨年四月八日ストックホルムにおいて、在スウェーデン松井大使とウンデーン外相との間で右趣旨の書簡の交換を行なった。この取極延長措置により、一九六〇年四月から一九六一年三月までの一年間スウェーデンは、日本からの輸入につき原則として自由かつ無差別な政策を引続き維持し、わが国は、スウェーデンからの輸入に対し従来どおり公平かつ無差別な待遇を与えることになった。

さらに右議定書第五項に基づく日瑞混合委員会が昨年五月九日より同七月六日までの間ストックホルムで開催されたが、両国間の貿易に関する諸問題、とくにわが国最近の自由化および輸入制度の変更にともなう諸問題につき討議が行なわれ、両国間貿易の拡大およびより一層の円滑化のため、両国がともに現存の輸入制限の撤廃にさらに努力することに意見の一致をみた。

本年四月以降の日瑞貿易については、上記の混合委員会以後かなりの時日を経過しており、かつ、その間わが国の自由化がさらに進展をみている事情にも鑑み、わが国としては三月末までに両国間貿易の運用に関する話合いを行ないたい意向であったが、スウェーデン側の都合によりこれを開始することが不可能となったため、とりあえず現行取極をさらに四月一日より六月三十日までの三カ月間だけ延長することに両国政府間で意見の一致をみた。よって本年三月三十日東京で右趣旨の書簡の交換を行なった。

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6、日本・ギリシャ貿易取極の締結

一九五五年三月十二日に締結された日・希貿易および支払取極は、昨年三月末をもって失効したが、その後の両国間貿易について話合いを続けた結果、本年一月二十四日妥結をみるに至ったので、二月七日、在ギリシャ黒田大使とギリシャのアヴェロフ・トツシッツア外相との間に合意事項に関する公文の交換を行なった。この取極は、昨年十月一日から本年九月三十日までの両国間の貿易に適用され、その主な内容は次のとおりであるが、わが国産品がギリシャのOEEC諸国に対する自由化に均てんすべき旨の保証を得た点に大きな意義がある。

(イ) 両国間の支払いは交換可能通貨により行なう。

(ロ) 日本政府は、葉たばこ、干ぶどう、綿花、エメリー、大理石、ぶどう酒等のギリシャ産品のグローバル・クォータによる輸入のため所要の措置をとる。

(ハ) ギリシャ政府は、全地域要許可品目を除き、日本産品の輸入許可について所要の措置をとる。

(ニ) ギリシャ政府は右の要許可品目についても公正に輸入許可を発給する。

なお、今次取極の妥結と前後して、本年一月末、旧日・希オープン勘定を清算する期限が到来したので、ギリシャ側は一月二十八日に対日借越残高六一万ドル余の対日送金を行ない、これをもって日・希オープン勘定は最終的に閉鎖された。

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日華貿易会議

日華間の貿易は、一九五三年六月十三日に日本および中華民国両国間に署名された日華貿易取極および支払取極ならびにこれに付属して一年毎に採択される貿易計画に基づいて運用されている。この取極に基づき、一九六〇年度の貿易計画を作成するため、昨年三月二十八日から台北で開かれた日華貿易会議は、中国側の米の輸出とわが方の化学肥料の輸出の問題をめぐり交渉は難航したが、結局米、化学肥料とも保留とし、貿易計画には米、化学肥料の金額は同年内適当な時期に決定する旨を注記することにして漸く妥結に至り、昨年四月一日から本年三月三十一日まで新計画を適用することに関し意見の一致を見たので、五月二十七日両国代表の間で、一九六〇年度日華貿易計画採択に関する交換書簡に署名が行なわれた。

 貿易計画の内容

新貿易計画は、米、化学肥料を除き輸出入とも六、五七五万ドルで、これは昨年度の計画片道八、五五〇万ドルに比べ一、九七五万ドルの減少となっているが、昨年度の計画から米、化学肥料の額を除いて対比すれば、むしろ本年度計画は、輸出では二二五万ドル増となり、輸入において三二五方ドルの増額となっている。

わが国の主な輸出品は、化学肥料の保留を除き、鉄鋼製品、船舶、車輛および部品、薬品、医療品および器具、化学品、繊維品、電気関係需品、農水産物、通信機材等である。

わが国の主な輸入品は、米の保留を除き、粗糖、バナナ、塩、パイナップルかん詰等となっている。

 日華間清算勘定残高の処理

昨年、わが国より八月末現在の日華間清算勘定のスウィング・オーヴァー額の米ドル貨による現金決済方を中国側に申し入れたところ、先方は、十一月末のバランス(アクチュアルバランス二一、九九五、三一七ドル五〇セント、スウィング限度額一、〇〇〇万ドル)とその後の見通しを勘案し、現金支払額を七〇〇万ドルとし、一昨年と同様昨年十二月より毎月一四〇万ドルの割合で五カ月間に分割払いするという案を提示し、わが方の最終的了解を求めてきたので、わが方はこれを了承し、十二月二十六日台北で右合意に関する文書の交換を行なった。

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8、日本・ビルマ貿易取極の単純延長

一九五三年十二月八日に締結された日本・ビルマ貿易取極は、その後毎年交換公文により一年間ずつ単純延長されてきたところ、一九五九年末の更新時期到来に際して、ビルマ側は、一九六〇年度ビルマ米の売買取極の締結をまって、その単純延長のための公文交換を行なうよう強く希望した。そこで一九六〇年度ビルマ米の売買取極の署名をまって、昨年四月五日ラングーンで公文の交換を行ない、同取極を同年一月一日に遡り、同年十二月末日まで、一年間単純延長することとした。

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9、日本・カンボディア貿易取極の単純延長

カンボディアは、一九五九年八月十八日に新関税法を実施して、わが国産品に一般税率(最低税率の三倍)を課したので、わが国のカンボディア向け輸出は停滞するに至ったが、昨年二月十日わが国とカンボディアとの間に貿易取極が成立した結果、両国政府は同取極の有効期間中はそれぞれ相手国産品に現行法令の範囲内で最低の輸入税率を適用することになった。

この取極の締結により、過去一年間の両国間の貿易は、輸出入いずれも漸増の傾向を示し、順調に推移したので、日本政府は本取極を延長することを希望し、カンボディア政府と交渉の結果、本年二月十日から、さらに一年間単純延長することに両国政府間に合意が成立し、本年一月十四日同取極第六条の規定によりこのための書簡の交換が行なわれた。

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10、日本・ジョルダン間の貿易に関する交換公文の署名

わが国とジョルダンとの貿易関係は、例年わが国の一方的出超という甚しいアンバランスを示している。すなわち一九五七年および五八年において、わが国の対ジョルダン輸出は、それぞれ三三四万ドルおよび三六〇万ドルであるに比し、わが方の輸入は、皆無であり、五九年において輸出四〇二万ドルに対し、輸入がわずか三万ドルとなっている。

このような貿易の不均衡は、わが方がジョルダンから買付けるべき産品がないことから生じたものであるが、ジョルダン側は、わが国が同国のほとんど唯一の輸出品たる燐鉱石を輸入していないことに対し、かねてから強い不満をもっており、一九五九年十二月、マジャリ経済省次官を団長とする四名からなる使節団をわが国に派遣してきた。

わが方は同使節団に対し、燐鉱石の輸入についてはA・A制を適用しているので、ジョルダンに対しては何ら差別待遇は行なっていないこと、従って燐鉱石の輸入は専ら業者の採算ベースによることの二点を説明したところ、同使節団は、今後価格引下げ等競争力の強化を図ることにより対日輸出の促進に努力したいとの意向を示した。

使節団は、また、両国間の貿易拡大のための協定締結をわが方に提案、わが方もこれに同意し、十二月二十五旦高野経済局次長とマジャリ次官との間に、貿易と支払いに関する書簡のイニシャルを了し、翌一九六〇年三月三日アンマンにおいて在ジョルダン河野公使とアル・ハイリ経済相との間で署名を行なった。なおこの書簡は、本年二月さらに一年間自動更新された。

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11、日本・イラン貿易取極の締結

一九五九年二月に開始された日本・イラン貿易取極交渉は、イラン側がわが国の買付が事実上不可能な米・塩・たばこの三品目にウェイトを置いたバーター案に固執したため難航し、同年十月にはイラン政府が綿織物等の消費物資六品目を除くすべての品目について対日輸入制限措置をとるという事態をみるに至った。わが政府は、このような事態を遺憾とし、先方の反省を求めるとともに、情勢打開のためかねて先方が希望していた経済協力につきその具体案の検討を進めていたところ、昨年一月イランの商相が更迭し、これを契機に先方は貿易交渉の再開をわが国に申入れ、これに基づいて四月三十日から取極締結交渉がテヘランにおいて再開された。

その結果、わが国のイラン産品輸入努力目標を一二〇〇万ドルとすること、および日本側において適当な範囲で経済協力を供与することに意見が一致し、十月十一日に、テヘランにおいて在イラン上川臨時代理大使とモガダム・イラン商務次官との間に日・イ貿易取極の署名が行なわれ、同時に経済協力に関する書簡の交換が行なわれた(経済協力関係書簡については別項参照)。これによって、イランの対日輸入制限措置はすべて撤廃され、新たな基礎の上に両国間の貿易関係の一層の緊密化のための努力が続けられている。

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12、日本・アラブ連合(エジプト州)貿易取極の単純延長

日・エ貿易取極は、両国間の清算勘定制廃止にともない一九五八年十一月に締結されたが、最近両国間の貿易は縮小化の傾向にあり、同取極についてもその再検討を求める声が聞かれるようになった。しかしながら、日本側については対エジプト貿易の大宗を占める原綿輸入の自由化、エジプト側については貿易に対する国家統制の強化傾向と日エ双方においてその貿易体制に大きな変化が予想されている折でもあるので、取敢えず同取極は、昨年十一月二十八日より向う一年間単純に延長されることとなった。

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13、日本・テュニジア貿易取極の締結

日本・テュニジア貿易取極交渉は、一九五六年七月にパリで行なわれたが、妥結にいたらず、中断されたままになっていたところ、一九五九年十一月ガット東京総会においてテュニジアの仮加入宣言が採択された際、これと関連しテュニジア側から、わが方に対し、貿易取極締結交渉開始の申入れがあった。そこでわが方としてもこれに応ずることとし、昨年一月二十六日からテュニスで交渉を開始し、三月三日両国代表の間で両国間貿易取極に署名を了し、同取極は四月一日発効した。

本取極の締結により、両国は、相互に輸入自動許可制およびグローバル輸入への相手国産品の無差別的均てんを保証するとともに、とくにテュニジア側は冷凍魚、一部繊維製品、バス、トランジスター・ラジオ、カメラ等について計八六三千ドルの対日シングル・クォータの供与を認めることとなった。なお同取極は、本年四月一日以降も一年間単純延長された。

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14、日本・モロッコ貿易取極改訂交渉

日・モ貿易取極は、一九五八年五月十六日に署名されてから、二回にわたり単純延長され今日に至ったが、わが国の貿易自由化の促進、モロッコ側輸入手続の大幅改革およびタンジール自由港のモロッコ領編入等両国間の貿易関係にも相当の影響を及ぼすような事態の変化があったので、わが方では昨年十二月二十三日の有効期間満了を機にこの際両国間の貿易取極もこれに即応し得るように改訂することをモロッコ側に申入れた。そこで十一月十一日から予備交渉を、また本年二月からは本格的交渉を行なっているが、一方、旧取極は昨年の十二月二十三日で失効したので、新取極成立までの間の両国貿易は旧取極の精神にそって行なわれるべきことが了承された。

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15、日本=ローデシア・ニアサランド連邦貿易取極締結交渉

わが国とローデシア・ニアサランド連邦との間には昨年二月十五日貿易取極が成立していたが(本書第四号一六四頁参照)、これを改訂し新たな取極を結ぶための交渉が、昨年十一月二十一日から東京において行なわれ、十二月六日両国代表団の間で、政府の正式承認を条件として原則的了解に達した。新取極の内容は旧取極とほぼ同一である。ただし一年限り有効であった旧取極と異なり、新取極は、一年ごとに自動延長されることになっている。

両国間の貿易は、貿易取極が締結された昨年二月以来、安定した基礎の下に相互に増大してきた。すなわち昨年わが国の同連邦からの輸入は、一昨年の二倍強に当る二、二〇〇万ドルに、わが国から同連邦への輸出は、一昨年の実績を六割上廻る五二八万ドルにそれぞれ達しており、本年はさらに一層の貿易拡大が期待されている。

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16、日本とルーマニアおよびブルガリアとの貿易支払協定の締結

わが国とルーマニアおよびブルガリアとの貿易は、これまでわが国とこれら両国との国交がなかったこと、貿易関係者の往来もきわめて少なく、相手国市場についての認識が足りなかったことなどによってその実績はほとんど皆無に等しかった。しかし一九五九年両国との国交が回復するにともない、貿易関係者の交流も盛んになり、両国は、対日貿易の促進に熱意を示すようになった。このような背景のもとに、東京で両国との貿易交渉が行なわれ、ルーマニアとは昨年十一月三十日に、ブルガリアとは本年二月二十四日に、それぞれ貿易支払協定が締結された。

この二つの協定は、ほとんど同じような内容をもっており、(イ)支払は交換可能の通貨で行なわれること、(ロ)協定に附属する品目表(品目のみが記載され、数量または金額は掲上されていない)は、単に例示的なものであって、拘束的なものでも制限的なものでもないこと、などを規定している。

今回の協定締結によりこれら両国との貿易は従来に比し、かなりの発展が予想され、差当り本年の貿易額は、ルーマニア、ブルガリアともに輸出入合計でそれぞれ六〇〇万ドル程度と見込まれる。

なお両協定による主要取引品目としては、ルーマニアからの輸入品は、とうもろこし(、、、、、、)、楽器用木材、岩塩等であり、またブルガリアからの輸入品は、ひまわりの種、綿実、ほたる(、、、)石、松脂等であるが、これら両国が日本から輸入を希望している品目は、船舶、繊維機械その他の機械類、ベアリング、タイヤ、繊維品等となっている。

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17、日本・ソ連聞一九六一年度貿易議定書の署名

昨年十二月二十一日、モスクワにおいて一九六一年度貿易議定書が署名された。

この議定書は、昨年三月に署名された三カ年貿易支払協定の規定に基づいて、協定第二年度である一九六一年度の品目表を現状に即して改訂することを目的としたものである。

今回の議定書による改訂の主な点は、輸入面では、鉄鉱石、鉛、無煙炭、飼料用穀物の四品目が追加されたほか、石炭、石油、木材等十品目につき相当の増量が行なわれ、輸出面では、技術上その他の問題で旧品目表に掲上されていながら成約にいたらなかったプラント類を大巾に削除し、代りに輸出の可能性あるプラント類(パルプ工業設備、フィルム製造プラント等)を掲上するとともにステンレス鋼板、特殊鋼、炭素鋼管、大口径鋼管その他の品目が新規に追加された。

この改訂された品目表によれば、本年度の貿易額は、為替の受払ベースで輸出八、五〇〇万ドル、輸入七、五〇〇万ドルと見積られ、当初の見積額に比し、輸出約三〇%、輸入約二五%方それぞれ増加している。

この改訂された品目表によれば、本年度の貿易額は、為替の受払ベースで輸出八、五〇〇万ドル、輸入七、五〇〇万ドルと見積られ、当初の見積額に比し、輸出約三〇%、輸入約二五%方それぞれ増加している。