西欧関係

1、西欧諸国との友好関係の増進

西欧大陸諸国は、米国および英国とならんで自由主義陣営の中核であり、また東西陣営の接触面とし国際政治上に極めて重要な地位を占めている。

これら諸国は、第二次大戦で痛手を受けたにもかかわらず、着々と復興の事業をなしとげ、現在ではその政治的、経済的実力を背景とし、国際社会において重要な地位を占めるに至っている。

これら諸国との国交は、わが国の対外政策上つねに重要な意義をもってきたが、ことに近年わが国とこれら諸国との関係は、政治、経済、文化その他各種の領域でますます緊密となっている。

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2、第九回在欧公館長会議の開催

第九回在欧公館長会議は昨年七月十八日から二十一日まで四日間ロンドンで開催された。同会議には在欧全公館(二十四館)の公館長が参加したほか、地域外から在レバノン河野大使および在米安川参事官が参加し、本省からは島外務審議官、金山欧亜局長、鶴岡連局長、関経済協力部長および木本西欧課長が出席した。この会議においては、欧州を中心とする国債情勢、とくに首脳会談流会後の東西関係を検討するとともに、わが国と欧州諸国との政治、経済、文化関係について意見の交換を行ない、わが国の対欧外交施策の上に得る所が少なくなかった。

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3、西欧諸国との航空協定の締結

わが国は一九五三年二月以来、オランダ、スウェーデン、ノールウェー、デンマーク、フランスおよびスイスの各国と航空協定を締結してきたが、さらに、一昨年六月ベルギー、本年一月西独との間に同種の協定の署名が行なわれた。これらの航空協定の締結は、わが国と西欧諸国との間の経済、文化関係の緊密化に貢献するものであり、さらに日航の欧州乗入れのための基礎の一部を構成するものである。

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4、オランダ空母「カーレル・ドールマン」号の訪日中止問題

(1) 昨年六月三日在本邦オランダ大使館は、口上書をもって西ニューギニアに派遣する同国空母カーレル・ドールマン号の日本寄港(非公式訪問)を許可するよう要請してきた。

(2) わが方は、オランダ側に対し、わが方のインドネシアとの関係と同空母訪日とに関連するわが方の立場の説明に努めた。しかし、オランダ側は、日蘭修好三百五十周年記念行事の一環であるとして同空母の訪日を強く希望して譲らなかったので、日本政府は、結局友好国に対する国際礼譲をも尊重して、八月八日に至り、同空母を含むオランダ海軍「第五艦隊」の横浜非公式訪問に異議がない旨正式に回答した。

(3) インドネシア政府は、わが国政府の決定に対して、厳重な抗議を行ない、一方、同国の国内世論も一斉にわが国の態度は非友好的であると非難し、わが国との経済断交、国交断絶を同国政府に迫り、わが国との関係は極めて憂慮される事態に陥入ること必至の情勢となるに至った。

よって、わが国は、オランダ側に対し引続き十数回にわたり同空母の訪日に伴なう対インドネシア関係の悪化を説明し、かかる重大な新事態の発生により、同空母の訪日を自主的に取止めるよう説得工作を続け、他方インドネシア側に対しても、わが国の措置決定に対し理解ある態度をとるよう求めた。

このような状態にあって、事態はなんらの進展をみないまま、九月三日に至り、空母カーレル・ドールマン号は、すでに二日夕刻日本に向けニュー・ギニアを出航したことが判明し、この問題をこれ以上遷延することができない事態に立至った。よって、同三日夜、小坂外務大臣は、駐日オランダ大使を外務省に招致し、同空母の派遣は将来適当な時期まで延期するよう要請せざるを得ず、この間の事情を十分理解されることを希望する旨述べ、同様趣旨の口上書を手交した。これによりオランダ政府は、同空母のわが国派遣を中止した。

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5、要人の訪日

(1) アデナウアー・ドイツ連邦共和国首相の訪日

コンラット・アデナウアー・ドイツ連邦共和国首相は、ブレンターノ外相等随員九名を帯同し、昨年三月二十五日国賓として来日し、四月一日離日した。この間同首相は天皇陛下に謁見したほか岸内閣総理大臣および吉田元内閣総理大臣と会見し、また関西方面を視察した。

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(2) マルロー仏国務相の来日

アンドレ・マルロー文化担当国務大臣は、日仏会館新築落成式にフランス政府代表として出席するため、夫人および随員二名と共に、昨年二月二十一日来日し、同月二十九日まで滞在した。

同国務相は二月二十二日前記式典に参列したほか、滞在中に天皇陛下に謁見し、また岸内閣総理大臣、藤山外務大臣、松田文部大臣、田中最高裁長官と会見し、さらに関西地方におもむき、京都および奈良の古美術を鑑賞した。

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